ご注文は猫ですか?   作:峰白麻耶

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初めての二次創作です。指摘、感想などなどあればお願いします


再開は肉球で。

「久しぶりに帰って来たな。故郷へと」

 

電車を降り駅のホームに立つ。季節は寒いのか暖かいのかはっきりとしない3月。今日はどうやら暖かく、春の陽気を感じさせる。俺は海外から帰国し故郷の木組みと石畳の町に帰って来た。

 

 

本来なら今頃必死になって働いて居たのだが………ここまで言えば分かるだろう。クビになりました。考古学の研究職をしていたのだが見事に。はい、ついでに上司のミスをなすりつけられました。あのやろう、重要文献を壊しやがって。いくら俺が若くてやり直しが利くと言ってもそりゃないわ。まあ、20だしな。

 

 

取りあえず俺の親に電話するかな。ドタバタして連絡する暇が無かったし。さて、何て言われるかと言うよりどんな反応をするか。家の親はすごく、いやかなり変わっている。

 

 

スマホをポケットから取り出し家の電話番号を打つ。電話してもでない。

 

 

「ふむ。どっかほっつき歩いてるなあの変人夫婦」

 

 

仕方なく母親の方の電話に掛ける。すると2コールででた。

 

 

「もしもし。猫屋敷ですが?」

 

 

電話からの第一声はこれだった。

 

 

「もしもし。母さん?」

 

「ん?その声は鈴か?久しぶりだな。」

 

「久しぶり母さん」

 

「どうしたんだ?お前が電話を掛けてくるなんて珍しい。明日は猫でも降ってきそうだな」

 

「そんな怪事件やめてくれよ」

 

 

猫が可哀想だろうが。想像しただけでも怖いわ

 

 

「落ち着いて聞いてくれ」

「ああ。」

 

 

恐らく落ち着いてくれないだろうが言っておかないとこっちの気がもたん

 

 

「会社、クビになった。」

「会社をクビに?」

 

 

母さんは俺と同じく呟くと黙ってしまった。普通ならここから説教なりが始まるであろう。そう、普通ならな

 

 

「鈴。あんたクビって、寝言は死んでから言いなさいよ!」

 

「寝言を死んでから言えるかこのバカ母!完璧なゾンビじゃねーかよ!」

 

「バカとは失礼な。これでも頭はいいんだぞ?」

 

 

この言動の癖に頭はいっちょ前に良い。有名なハのつく大学を卒業している。ついでに父親もそうだ。

 

 

「そう言う意味のバカじゃない!何か言う言葉があるだろ!」

「ふむ。」

 

 

母さんは受話器越しに何だか考えるような素振りをする。

 

 

「やあ!無職くん。」

「うるさいわ!」

 

 

的確にこちらの傷を抉るんじゃない。

とまあ、こんな感じの変わった親なのである。

 

 

「さて、親子のスキンシップはこれくらいにしてと」

「最も軽くしてくれよ。」

「何。まだジャブよ」

 

 

ストレート何て想像したくない。俺に取っては地獄も良いところだ

 

 

「あんたやることないなら家で馬車馬のごとく働きなさい」

 

 

両親はこの町で喫茶店をやっているのだ。

 

 

「おい。実の息子に言うことかよ」

「冗談よ。冗談。」

 

 

全く冗談に聞こえない

 

 

「まあ、半分は冗談よ。」

 

 

聞かなかった事にしよう

 

 

「そう言えばさっき喫茶店の方に電話してもでなかったけど今どこに居るんだ?」

「ん?今ハワイ。」

「は?」

「私たちちょっと世界旅行言ってくるからその間の留守よろしくね」

 

 

この婆、今なんて言った?

 

 

「世界旅行?」

「そう、世界旅行。つい、昨日。父さんが起きた瞬間に世界旅行に行こうとか言い出してね?つい、私も面白そうなだと思ったから賛成したのよ。」

 

 

あの爺。変わらねーな。決めた瞬間に行動するって言うのは変わらないな。昔それに何度振り回されたか。

 

 

「おい、その間店はどうするつもりだったんだよ」

「ん?一時閉店?でも鈴が帰って来るなら大丈夫でしょ?」

「何て行き当たりばったりな。だが、いくら何でもすぐに開店はできないぞ?いくら手伝った事はあるとはいえ厨房だけだしな」

 

 

両親2人の前職は研究職だ。母は結婚を気に辞めて父の転勤先でパートをしているが父は生物学者。しかもフィールドワークが三度の飯より好きな人間だった。

 

 

しかし事故で足を悪くし、フィールドワークが出来ないならいいやと父は何故かこの場所で喫茶店をやっている。何でも老後に2人で喫茶店をやろうと決めていたらしい。それが父だけ早まっ店の手伝いをしていた時に役に立った。しかし重度の人見知りでずっと厨房にいたのだ。今は初対面でも大丈夫だ。うむ。

 

 

「さすが。1人じゃ店を回せないとは言わないのね。」

「人間やろうと思えば何でも出来るって言ったのはどこの誰だよ。」

「私だよ。まあ、こんな話をしたけど店を開けても閉めても留守番さえしてくれればいいよ。繋ぎのバイト先も心辺りがあるから見つけてやる。家で働くかよそで働くか帰ってくるまでに決めろよ?お前は私より人生を急ぎすぎだ。私以上に早く学校を終わらせたんだからな。18から仕事で疲れたろ。少しはゆっくりしろ」

「ああ。んでいつ帰ってくるんだ?」

「さあ?多分最低2年は帰ってこないかも」

 

 

もう何も言うまい。この両親の破天荒ぶりは今に始まった事でない。一々これぐらいで動じていたら親子何て出来ない。

 

 

「んじゃ店をよろしく。家に集まる猫達、特によみはあんたが海外で働いてからこなくなって寂しいだろうから」

「そうなのか。わかった。」

 

 

ついでに、よみと言うのは昔俺が一緒に遊んでいた野良猫。ついでにロシアンブルーだ。何で?と思うが捨てられたのだろう。基本的に忙しい両親の変わりに俺はヨミと遊んでいたのだ。

 

 

「何か重要な事を言い忘れているような?まあ、いいか。元気でやりなよ」

 

 

 

 

そう言って電話は切られた。

 

 

なんか案外運が良かったな。取りあえずバイトをして時々店を開けると言うループをすればいいだろう。一応他の仕事も入れれば何とかなるだろう。貯金もあるし。考え事をしながら歩いてふと思う

 

 

「しかしまあ、改めてウサギが多いな」

 

 

この町はとにかくウサギが多い。町を歩けば必ず両手で数えるくらいのウサギがいて、しかも触れる。何ともウサギワールドなのだ。だが、実は猫もウサギ程ではないにしろ、多くいる。10のうちの2は猫だ。頑張れ猫。そんな肩身の狭い猫達が家には集まってくる。そこから家の喫茶店は猫の隠れ家と言う名前なのだ。

 

 

まあ、集まってくると言っても、厨房とお客さんには近づかないようにしつけてない猫は入れないよう隔離している。まあ、ふれあいスペースみたいなものを作って居るだけだ。まあ、猫達は自由に出入り出来るから猫が居ないときもある。俺が居るときは猫がたくさんいて俺が居ないと少ない。子供の時から猫によくなつかれる。猫が好きな俺にとってこんな幸運はない

 

 

そんなこんな俺の実家猫の隠れ家まで来た

 

 

「懐かしいな。」

 

 

レンガで作られた家。鍵を取り出し開けると2年ぶりに見た我が家があった。客席にカウンター。左にある猫が出入りするペット用の通路と仕切り。カウンターの左奥には厨房があり右奥は店ではなく家になっている。

 

 

全く変わっていない店を見ながら厨房にある冷蔵庫を開ける。 

 

 

「残っているよ食材が……まあ、冷凍してるし……じゃないか。俺が戻ってこなかったら腐っていたし。見たところ賞味、消費共に大丈夫だな。コーヒーと紅茶の茶葉は後で見るとして」

 

 

厨房を出てstaff onlyと書かれたドアを開ける。奥にはリビング、左には2階に上がる階段がある。そこを上がり、父、母、空き部屋を通り過ぎて俺の部屋に入る

 

 

取りあえず本棚がありゲームと俺の今までやってきた趣味の物が部屋に所狭しと並んでいる。

 

 

「相変わらずの統一性がないと言うか」

 

 

荷物を置き、荷物を片付ける。服などの最低限の物としか持ってきて無く後は輸送して貰っている。最低限の物を素早く片し、疲れたので昼寝をする事にした。

 

 

 

 

にゃー。ぺちぺち

 

 

にゃー。にゃーーにゃ。ぺちぺち

 

 

なんだ?

 

 

にゃーーーーーー!ぺちぺちぺちぺちぺちぺち。むに

 

 

「何だよというか誰だ?」

 

 

俺が起きあがると俺のすぐ横に一匹のロシアンブルーが居た。ちょうど俺の額に猫パンチを当てている。グレーの綺麗な毛並み。青色だった目はすっかりとエメラルドグリーンになっている。ここら辺に居るロシアンブルーはあいつしか居ない。

 

 

「お前よみか?」

「にゃん!」

「お前久しぶりだなー。おい。大きくなったな」

 

 

よみ。さっきも説明したとおり、俺の親友。懐かしいな。あの頃はまだよみも子供だったのに、すっかり大人?になっている

 

 

「にゃにゃー。にゃー」

「君も大きくなったねって俺の保護者じゃないんだから」

「にゃ。にゃーーにゃん。」

「あー悪いな寂しい思いさせてな。」

 

よしよし。よみの頭やあごなどをくすぐって上げる。

 

「にゃにゃにゃーーーん。」

 

うん。気持ちよくて何よりだ。何で猫と会話できるか?気にするな。何でかわかるんだ。猫は友達だ。いや。友達は猫だ。

 

 

「にゃ?にゃーにゃー?」

「そりゃー。」

 

何で帰ってきたか?それは分かりきった事だ

 

 

「今日から俺もここに居るからだ。2年ぶりだが、よろしくなよみ」

「にゃん!!」

 

こうして1人と1匹の喫茶店が始まる。

 

さて、明日はどれだけこの隠れ家を求めて来るだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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