何とか今のペースを保って投稿したいと思います。それではどうぞ。
リアスから兵藤が堕天使に襲われたのを聞いてから数時間が経ち、放課後になっていた。
俺はオカルト研究部には行かず、エレナと一緒に家路についていた。
エレナと今日、学園で起きた出来事、世間話や兵藤がまた堕天使に襲われたことを話したりしながら帰り道の暇な時間を潰していた。
エレナも木場から兵藤が堕天使に襲われたというのは聞いていたらしく、一日だけ安静にしていれば良いと知った時からは、兵藤のことは特に気にしなくなったらしい。
それだけで兵藤についての話は終わり、また世間話などの話題に話を戻したが、俺の頭の中ではこのあと、兵藤を襲った堕天使共を消しに行くことしか考えていなかった。
我ながら酷いことをしていると思った。エレナの話を何度も聞き流し、それに対して適当な返事しかしていなかった。
重要なことを考えている時はいつもこんな風になってしまうのはエレナも理解してくれてるはずだ。
「ハース、何時もとは様子が違うようですが、今夜中に何かをするのですか?」
・・・やはり、エレナは俺のことをよく分かっている。先程までしていた話を聞いてから俺が今夜中に何かをすることを察したようだ。
「ああ、そうだ。俺は夜になったらこの町に潜んでいる堕天使共を消しに行く。エレナは何時ものようにしていてくれ」
先程まで考えていたことをエレナに伝えると、悩んだ素振りを見せた彼女はまだ幼さが残る顔で笑みを浮かべた。
「わかりました。ハースの後ろは私たちがお守りいたします。どうぞ、心置き無くお出かけ下さい」
それを聞いて安心した。これで心置き無く戦うことができる。やることも決まったことだし、帰ったらすぐに支度を始めるとしよう。
日が沈み、月が昇っている綺麗な夜。街灯が街中を照らし始めた。
家での支度を済ませた俺はリアスから聞いた教会に来ていた。
教会に着いてから数分が経ち、今は中の気配を探っている。
無闇に教会に突っ込んだところで罠が張り巡らされていると余計な時間を使ってしまう。それを回避するためには中の状況を確認しておいた方が良いだろう。
中の状況を確認してみたが、教会には一人だけしか気配がない。だがこの教会には地下があるのか、そこには堕天使の気配が一つに百人以上の気配がある。
配置具合から考えると、教会にいるのは見張り兼門番を務めていて、堕天使に協力しているはぐれ悪魔祓いの中でも特に実力のあると者と考えるべきだろう。
地下に人が集まっているのは、何か重要なことをするためだと想定さえすれば、教会に見張りがいるのも辻褄が合うな。
だとすると、あんなに大勢の人が集まっているのは規模の大きい何かをするためか。そうなると考えられるのはいくつかあるが、場所を考えると一つだけになる。
儀式だ。奴ら何らかの儀式を執り行うために集まっている。その中心を担っているのは堕天使か。
なんの儀式を始めるつもりなのかは知らないが、堕天使を潰すついでに止めたほうがよさそうだな。
やることを決めて教会の周りにある木の上から立ち上がろうとすると、人影が三つ教会に近づいてきた。
あれは、兵藤に木場、それに小猫か。兵藤はともかく、木場と小猫がここに来るのは意外だったな。
何をしに来たのか話しかけに行くか。・・・いや、今は止めておいたほうがよさそうだな。
教会に近づいてくる気配がある。この気配は堕天使だな。それも三人。ヴァーリが渡してきた情報だとこの町に潜む堕天使は全部で四人だったな。教会の地下にいるのが一人、今、教会に近づいて来ているのが三人、これで全員が揃うわけだ。
兵藤達の様子を見てみると、丁度教会の中に突入していた。そうなると、教会は兵藤達に任せるとして、外の堕天使は俺が相手をすることになるな。
今度こそ木の上から立ち上がり、堕天使が着くのを待つことにした。
兵藤達が教会に突入してから数分が経ち、中では戦闘音が響いていた。
教会での戦闘音が止まるのとほぼ同時に、堕天使を視界に捉えた。堕天使も俺のことを捉えたようで、少し離れた場所で動きを止めた。
「貴様、ここで何をしている?」
シルクハットをかぶり、紺色のコートを着た着た男が俺を睨んできた。コートを着た男以外にも、青髪のロングヘアーに黒紫色のボディコンスーツを着たスタイル抜群の女と金髪のツインテールに黒いゴスロリ服を着て白いタイツを履いた少女がいた。奴らの背中には一対の黒い翼が生えている。
青い髪か。あの日の夜に出会った名前を聞けなかった彼女のことを思い出すな。今はどうしているんだろう。
・・・っと、今はそんなことを思い出しているときじゃないな。
「何をしていると言われたら、そうだな。足止めだ」
言い終わる前に、教会に結界を張り、それと同時に俺たちの周りにも別の結界を展開した。
「っ!?貴様、一体なにを!!」
奴らは結界が張られたのに気づくと、光の槍を形成した。
「結界を張らせてもらった。これで俺を倒さない限りは教会に行くことはできなくなったぞ」
これで余程のことが起きない限り、奴らはここから出ることができなくなった。
堕天使が結界を見ていると、ゴスロリ服を着た堕天使が結界に向かって光の槍を投げつけようとしている。
「人間ごときが張った結界ぐらい、簡単に壊せるに決まってるっす!」
結界に光の槍を投げつけ、結界に当たるが、槍は虚しい音を出して壊れた。
「無駄だ。その程度の槍なんかで壊れるような結界じゃないんだぞ」
ゴスロリ服の少女、確か資料によると、ミッテルトだったか。そいつが苦虫を噛み潰したような顔をして、俺を睨んできた。
「私たちを足止めして、一体何のつもりだ、人間!」
ボディコンスーツを着た女性、彼女はカラワーナだったな。・・・ダメだ。どうしてもあの青い髪を見ていると、彼女のことを思い出してしまう。
「いま、教会では俺の後輩たちが悪魔祓いと戦っているんだ。あいつらが悪魔祓いと戦った後でお前らと戦うのは体力が足りないと思ってな、ここで足止めをしてやろうと思ったんだよ。まあ、本音は個人的に聞きたいこともあるんだが」
後ろにある教会を指さししながら、奴らを足止めする理由を話した。
「ほう、個人的に聞きたいこと?それはなんだ?」
紺色のコートを着た男、ドーナシークが俺を見下したような口振りで聞いてきた。
ダメだな、こいつは。相手の力量を計れていない。よく今まで生きてこれたな。
「俺の後輩、兵藤一誠って名前なんだが、そいつが悪魔の活動をしているとき、堕天使に襲われたんだ。・・・兵藤を襲ったのは誰だ」
殺意と怒気を含めた声で奴らに言うと、ドーナシークが鼻で笑った。
「ああ、あの小僧か。それならこの私がやったことだ」
やはりこいつだったか。リアスから聞いた通りの特徴だったから、こいつのことだとは思っていたが、確証が無かった。だが、これで確証が得たな。
「ドーナシーク、貴様が兵藤を襲ったのか?」
「そうだ。私はレイナーレにアーシアの監視をするように頼まれたのでな、フリードと共にアーシアの監視をしていた。その途中でフリードが悪魔を呼んでいる人間の家を見つけたのでな、その家の住人を始末していたら悪魔の小僧が来たのだ」
アーシア?知らない名前が出たな。・・・いや、待てよ。アーシア?何処かで聞いたことのある名前だ。なんだったかな、何かの噂で聞いた気がするんだが。そのことは後で思い出すか。
「一つだけ質問してもいいか?ドーナシーク」
奴はアーシアの監視をしていると言っていた。だが、監視をするだけだったなら、フリードとやらだけに任せておけばいいんじゃないか。
「いいだろう。質問の内容はなんだ、人間?」
「何故フリードとやらにだけ監視を任せなかったんだ。監視なら一人でも十分のはずだが」
監視は一人でも十分とは言ったが、人によっては数人必要な時もある。
「ふむ、そんなことか。フリードだけに監視をさせてもよかったのだが、以前レイナーレがある人間と戦ったことを話したのだ。その人間はあのレイナーレの槍を蹴り返したというとんでもないことをしたのでな、その者と偶然、出会った場合のことを考えて私が監視をすることになった。これで満足か、人間」
なんてことだ。ドーナシークの話が本当なら、レイナーレは俺を警戒してアーシアとやらに監視をさせたことになる。兵藤が堕天使に襲われないようにしたつもりだったが、こんなことになるとは予想外だった。
だが、これで兵藤を襲った堕天使のことがわかった。
「そうか、質問に答えてくれて助かった。お礼にあることをしようと思っているんだが良いか?」
「ほう、なんだ。結界を解くつもりになったか?」
結界を解く?いいや、違う。もっと別のことだ。
右手首にあるブレスレットを外して、ドーナシークを殺意の籠った眼で睨んだ。
「ドーナシーク、お前を殺す」
ドーナシークは話している間に少しずつ俺との距離を狭めていた。
この距離なら、絶対に逃がさないし、逃げられない。
「ドーナシーク!下がりなさい!!」
カラワーナが槍を構えてドナーシークに呼び掛けるが、もう手遅れだ。
後ろに下がろうとしたドーナシークの首を掴み、上空から一気に地面に叩きつけた。すると地面にクレーターができ、黒い羽が辺りに飛び散った。
ドーナシークは呻き声を上げたが、まだ意識が残っていた。
「き、貴様、なんのつもりだぁ。」
「なんのつもりって、お前を殺すと言っただろう?その言葉の通りだ」
ドーナシークは槍を形成しようとしていたが、俺はその前に奴の両腕をへし折った。骨が折れた音を出すとドーナシークは悲鳴を上げた。
「貴様、ドーナシークから離れろ!!」
「ドーナシークの旦那から離れるっす!!」
後ろからカラワーナとミッテルトが槍を持って近づいて来ている。今の俺は二人に背中を向けているが、顔が二人に見えるように後ろを向いた。
「カラワーナ、ミッテルト。お前ら二人はその場から"動くな"」
殺意の籠った声と眼だけで二人の動きを止めた。彼女たちは蛇に睨まれた蛙のようにその場で動きを止めた。
「さて、ドーナシーク。お前はこの状況でどうする?」
ドーナシークは口を動かすだけで何を言っているのか俺には分からなかった。
「ん?ああ、悪い。俺がお前をしゃべれない様にしていたんだな。それじゃあ、このままなにも話せずに死んでしまえ」
俺は『死』を使ってドーナシークの体を黒く染めた。奴は体の変化に気づいて足だけで暴れようとしていたがその前に『死』が体を完全に染めきり、ドーナシークの体が崩れていき死んでいった。
その場にはドーナシークだったものだけが残り、黒い羽は飛び散っていなかった。
これで目的は達成したか。後は彼女達をどうするかだ。
カラワーナとミッテルトの方を見ると二人ともまだその場で動きを止めているが、彼女達は意識を保っている。しかし、口元が震えている様でまともに話せそうにないな。
「へえ、驚いたな。まだ意識を保っているのか。上級悪魔ですら気絶するほどのものだったんだがな、さっきのは」
もしかしたら、彼女達にはそれなりの才能かなにかがあるのかもしれないな。
俺の目的は兵藤を襲った堕天使を始末することだけだったんだが、彼女達を見て気が変わった。彼女達を俺の家に連れて帰ろう。とりあえず、結界を解くか。
俺たちの周りに張った結界を解いた俺は彼女達の額に指先を当てた。すると彼女達は糸が切れたかの様に倒れそうになったが、咄嗟に彼女達を両肩で抱きかかえた。
目的も済んだことだし、帰るか。
そう思い帰ろうとするが、すぐそこで魔方陣が出現した。魔方陣の紋章はグレモリー家のものだ。
リアスか。大方、兵藤達がここに来たのに気づいて足を運んだ感じか。
そして魔方陣からリアスと朱乃が現れた。リアスは学園の制服を着ているが、朱乃は巫女服を着ていた。二人は俺がこの場所に居たことに溜め息をついてきた。
「ハース、やっぱりここに居たのね」
「なんだ、リアス。俺がここに居るのがそんなに変か?」
「いいえ、寧ろ納得したところよ。ハースに何度も連絡したのだけれど、反応がなかったからこれで納得したわ」
「そうか、それは悪かったな。俺はそのとき堕天使と戦っていたと思うぞ」
するとリアスは俺の後ろに出来ているクレーターや辺りに飛び散っている黒い羽を見ようとしていた。だが、リアスはそれより先に俺の両肩にかかえられている二人のことを見ていた。
「ハース、その二人はだれ?」
「ん?この二人はレイナーレの部下のミッテルトにカラワーナだ」
二人のことをリアスに教えると、リアスは目を細めた。
「ハース、どういうつもりかしら?まさか、その堕天使を助けるつもりじゃないでしょうね?」
彼女の目にはミッテルト達に対しての敵意しか宿っていない。俺は朱乃の方に顔を向けると、彼女はニコニコ笑いながら俺たちのことを見ていた。
朱乃の奴、もしかして今の状況を見て楽しんでいないか?まあ、いいか。
「その通りだ、リアス。俺は彼女達に興味が湧いから、家に連れて行くことにした」
リアスの目に宿った敵意が更に強まった。
「ハース、それは私に喧嘩を売っているのかしら」
おいおい、確かに兵藤が堕天使に襲われたことに対して怒るのは最もな理由だが、いくらなんだも敵意が強すぎる。
「落ち着け、リアス。彼女達は今回の件についてはほとんど無関係だ。関係あるとしたら、レイナーレの部下ってことだけだ」
「それだけでも万死に値するわ」
何だろう、今まで見てきたリアスのなかで一番迫力があるな。眷属が襲われてそんなに怒っているのか?
「いいか、兵藤を襲った堕天使はもう殺したし、兵藤達はおそらく教会の中でレイナーレと戦っている。それに兵藤を襲ったことがある堕天使はその二人だけだ。こいつらは関係ないだろ!」
それからしばらくリアスとミッテルトとカラワーナをどうするかの話し合いを数分ほどした。話し合いの末、リアスはようやく彼女達のことは条件付きで俺に任せることにしてくれた。
「それじゃあ、俺が出した条件で異論は無いな?」
「ええ、もちろんよ。数日の間に堕天使をどうにかしてなかったら消し飛ばすわよ」
俺が出した条件とは、俺がミッテルト達を説得してオカルト研究部には手を出さない様にすることだ。もし、説得することができなかったらミッテルト達を消し飛ばすというものだ。
殺すには惜しい逸材だからな。そんなことはさせない。
話し合いが終わると俺は足元に魔方陣を展開した。
「それじゃあ、リアス。教会の地下に飛ぶぞ」
「ええ、分かったわ。朱乃はここの処理をお願い」
「はい、部長」
こうして俺はミッテルト、カラワーナにリアスを連れて教会の地下に飛んだ。
教会の地下に着くとそこでは木場と小猫が悪魔祓いと戦っていた。
「リアス部長!それにハース先輩も!」
「小猫、木場、無事か?」
「はい、無事です」
木場は西洋剣で悪魔祓いを切り倒し、小猫は拳で相手を殴り飛ばしながら返事をしていた。
「そうか。小猫、木場、二人とも下がれ」
それを聞くと小猫と木場は後ろに飛び、リアスの隣に立った。
「リアス、ここは俺が引き受けた。上に行って兵藤のところにいってやれ」
小猫と木場は俺を止めようとしていたが、それをリアスが治めてた。
「わかったわ。ハースも速めに来るのよ。行くわよ、小猫、祐斗」
小猫と木場は少しだけ躊躇いながら、リアスと共に階段を上って行った。
三人が階段を上って行ったのを確認した俺は、ミッテルトとカラワーナを壁の近くまで連れて行き、起きなうようにゆっくり座らせた。
「貴様ぁ!!悪魔と結託しているとはなんのつもりだ!!」
悪魔祓いの一人が叫ぶが、俺の知ったことではない。
「何を言ってるんだお前は?俺はただ、さっきの後輩たちを助けるためにここにいるだけだぞ」
掌を前に突きだし、足元に魔方陣を展開させた。そこからは、巨大な岩に黒い鎖で全体を縛られた大鎌がある。その大鎌を握ると岩が砕けた。大鎌はまだ鎖で縛られている。
「さあ、来いよ。全員、まとめて相手してやる!」
そう言うと、悪魔祓いたちは全員で俺に斬りかかってきた。
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