それではどうぞ。
オーフィスが俺の家を突然訪れてからしばらく経っていた。エレナと真紀には自分の部屋に戻る様に言っており、今、オーフィスは俺がまた作ったカレーをさっきまでヴァーリ達が居たリビングで黙々と食べていた。
「ん、美味」
・・・どうやら美味しいらしいな。無表情だから美味しいのかどうかわからなかったよ。しかし、なんで突然俺の家に来たんだ。カレーが食べたかっただけなのか?
「オーフィス、いきなり何のようだ?」
とりあえず、来た目的を正確に把握しておこう。オーフィスがカレーを食べ終えると、俺を見つめてきた。
「ハース、我に協力する」
いきなり何を言い出すんだ。俺はつい溜め息をしてしまった。
「オーフィス。急に協力しろと言われてもな、何をするのか俺にはわからないんだ。まず、何をするのか教えてくれ」
協力するかどうかは目的次第だな。するとオーフィスは椅子から降りてガラス張りの窓まで歩いて行き、窓から夜空を見上げた。
「静寂な世界。我は故郷である次元の狭間に帰りたい」
・・・嘘だろ。オーフィスのやつ次元の狭間に帰りたいって言ったのか。冗談じゃない。次元の狭間にはオーフィスと同じ世界最強の龍、
「悪いがオーフィス。さすがに協力はできない」
おそらくオーフィスはグレートレッドを倒すために協力してほしいんだろう。だが、相手はオーフィスに並ぶグレートレッドだ。勝てる訳がない。するとオーフィスは首を傾げた。子供みたいでなんか可愛いな。
「なぜ?ハース、我には及ばないけど強い」
世界最強が強いと言っているんだ。本当なんだろう。だが、俺はそう思わない。
「オーフィス。お前が言うんだからそうなのかもしれないが、俺はそうは思わないぞ。なんたって、俺よりも遥かに強い存在はこの世の中にはたくさんいるんだ」
神龍、神話の神々、二天龍、冥界にいる超越者達、彼らのほうが俺より強い。俺は普通の人間より強いだけだ。
「それになオーフィス。俺はただの人間だ。次元の狭間に住んでいる
それは覆しようのない事実だ。それほどグレートレッドは強いんだ。世界最強には絶対に勝てない。
「嘘。ハース、人間辞ようとしている」
・・・オーフィスのやつ、俺の奥底に封じているものに気付いているのか。今までこれに気付いたやつはいないのにな。
「ハース、禍々しい何かがある。それに神の気配。ハースはなに?」
確かに、俺の中にはオーフィスが言っている禍々しいものがある。それは『死』だ。オーフィスは俺に宿っている『死』について聞いているんだろうな。
しかし、神の気配だと。俺は確かに神々の下で育てられた。俺に戦い方とこの世界についても教えてくれた。だが、それだけで神の気配がするなんてあり得ない。
・・・とりあえず、この事は後で考えよう。今はオーフィスと話しているからな。
「オーフィスが言う禍々しい何かってのは『死』の事だろうな。だが、神の気配については俺も知らない」
それだけ言うとオーフィスはこくりと頷いた。
「ん、神の気配についてはわかった。ハースに宿る『死』はなに?我わからない」
・・・オーフィスにこの事を話しても問題ないか。ただ俺が他の奴らに話したくないだけだからな。
そして俺は『死』を宿した時の出来事を話した。オーフィスがその話に興味を持っているのかどうかはわからなかったが。
それから『死』について話が終わるとオーフィスが俺のことをじっと見てきた。
「我、ハースの『死』見たい」
どうやらオーフィスは俺が宿している『死』について興味を持っていたらしいな。なら、オーフィスに見せるか。
そうして俺は右手首に着けている黒いブレスレットを外した。すると黒くて禍々しいオーラ、『死』が俺の身体を徐々に纏い始めた。
あの日の夜以来、『死』を解放していなかったからかな、『死』を纏うまで少し時間がかかったな。それにしても、まさか俺の知らない間に自分でも見えるくらい『死』が濃くなっているとはな。
「オーフィス、これが俺の宿している『死』だ」
オーフィスに『死』を見せるとさっきより興味深そうに俺のことを見ていた。
「それが『死』・・・。ん、わかった」
オーフィスが頷くと俺はブレスレットを右手首に戻した。すると『死』が霧散した。
このブレスレットを作ったあの方は凄いな。これほど危険なものを確実に抑え込む物を作ったんだから。
それから俺は自分の身体に異変が起きないかを確認し始めた。
数分ほど時間が経ったが何も起きなかった。『死』が濃くなっていたから身体に異変が起きるかと思ったがどうやらなにも起きないみたいだな。
「さて、オーフィス。『死』については納得したか?」
「ん、我、納得。でも、それなに?」
オーフィスは俺の右手首に着けている黒いブレスレットを指差していた。
「オーフィス。これは、俺の『死』を抑え込むために必要な物だ。俺はまだ完璧に『死』を制御できていないからな。これ無しだと俺は常に『死』を解き放った状態でいるんだ」
オーフィスにブレスレットのことを説明すると、オーフィスが俺の傍らまで来てブレスレットをつついた。
たったそれだけのことをするとオーフィスは俺の眼を見つめてきた。その眼は何かを決めた様な眼だった。
「ハース、我に協力して」
それさっきも言ってたよな。
「オーフィス。それはさっきも言ったが、俺は協力しないぞ」
オーフィスにしてはえらくしつこいな。それほど俺に協力してほしいんだろう。まあ、俺は協力するつもりはないがな。
「それにな、オーフィス。別に俺ばかりに固執しなくてもいいだろ。もしかしたらオーフィスに協力しようとするバカがいるかもしれないんだからな」
まあ、グレートレッドに戦いを挑もうとするやつなんて高が知れているがな。
「それなら問題ない。我に協力するもの既にいる」
・・・・・・は?オーフィスのやつ今あり得ないことを言わなかったか。協力するものが既にいる?一体どこのバカだ。グレートレッドに戦いを挑もうとするやつは。
「おい、オーフィス。一体誰が協力するんだ?」
わからないな。なんでグレートレッドを倒そうなんてことをするんだ。
「ん、魔王の血を引く者達と
おいおい、一体どういうことだ。魔王の血を引く者達ってことはルシファー、レヴィアタン、ベルゼブブ、アスモデウス達のことだろ。サーゼクス達、現四大魔王ではないのは明らかだ。だとすると旧魔王達しかいないな。
そんなやつらがなんでオーフィスに協力するんだ。
「オーフィス。魔王、いや、旧魔王達はなんでオーフィスに協力してるんだ」
やつらがオーフィスに協力する理由がわからん。
「我、協力する理由聞いてない。グレートレッド倒す約束してくれただけ」
オーフィスのやつ、協力する理由を聞いてないのかよ!くそっ、こっちで協力する理由の情報を集めなきゃいけないじゃないか。
「はあ、わかった。それと旧魔王達は何か協力する為の条件を出したりしてきたか」
これだけでも聞けば情報を集めるときの目星を定めることができる。
「我の蛇を貸してほしいと言ってた」
蛇と言えば確か能力を強化する為のものだったな。なんでそんなことをするんだ。そんなことをしてらオーフィスの力が弱まるだけなのに。
だが、やつらは力がほしいということはわかった。後はその力を得て何をするかという情報を集めればいいな。
「それで魔法使いたちはどうなんだ」
まあ、ある程度予想はつくがな。
「魔王の血を引く者達に協力している」
やっぱりか。どうせそんなことだと思ってたよ。そいつらも旧魔王達について情報を集めていればある程度のことはわかるだろう。
「最後は
おそらくこいつらが一番厄介なのかもしれない。オーフィスは
「ん、
嘘だろ。
「
それからオーフィスはどんな
だがまあ、
「オーフィス、教えてくれて助かる」
さて、明日から忙しくなるぞ。
「ハース、我に協力する?」
うん、どうしよう。オーフィスに協力している奴らがどんなやつなのか興味が湧いちまった。どうしよう・・・いや、マジで。
「とりあえずオーフィス。この返事はまた今度来るまでに考えておくから今日はとりあえず帰ってくれないか?」
「ん、わかった。我、帰る」
そう言ってオーフィスは一瞬でその場から消えた。どうやら帰ったみたいだな。さて、今後のことをエレナ達に話すか。
そうして俺はエレナ達にオーフィスとの話し合いの内容を話して今後の方針を決めた。
オーフィスが俺の家を訪れてから、数日が経った。その間に起きたことは特にない。兵藤達についてはいまだに兵藤が自転車を使って悪魔のチラシ配りをしているだけで、まだ悪魔の契約をするところまで進展はしていないということかな。
俺達はここ数日の間に集めた情報をリビングにあるソファーの前の長机に置き、ソファーに腰かけて、エレナ達と一緒に集めた情報を眺めていた。
この数日の間で旧魔王達のことと、
まず旧魔王達についてはバカな奴らとしか言いようがない。奴らは自分たちのことを「真なる魔王の血族」なんて言って現四大魔王のことを「偽りの存在」と言っている。奴らは現四大魔王に復讐したいがためにオーフィスに協力している感じだ。
奴らは確かに真の魔王の血を引いてはいるが、その座から引きずり落とされたのは実力がなかったからだろ。実力に名声があれば今も魔王の座に座れていたはずだ。まあ、俺には関係の無いことだがな。
次に
まず
次に
いつかゲオルクとやらに会ったら魔法について話し合いたいな。
最後に
まあ、曹操について調べてみると、どうやら
これらが数日の間に集められた情報だな。まったく、疲れたよ。情報を聞き出すのに情報屋には大金を払い、彼らのことを少しでも知っている異形の存在は少し拷問紛いのことをして吐かせたりして大変だったよ。
「エレナ、真紀。ご苦労様。数日の間に良くこれだけの情報を集めてくれた」
エレナと真紀に労いの言葉を言うが、二人から返事がなかった。俺は疑問に思って二人を見てみると、エレナと真紀は寝息を静かに立てながらお互いの肩に頭を預けて寝てしまっていた。
二人とも数日の間はほとんど寝ていなかったからな。疲れがピークに来て寝てしまったんだろうな。
俺は音を立てない様に立ち上がり、ソファーの近くに置いてある毛布を二人にかけてあげた。
さて、そろそろ良いか。
「オーフィス。居るんだろう。早く出てこい」
俺がそう言うと目の前に空間の裂け目が現れ、そこからオーフィスが出てきた。
「ハース。我、返事聞きにきた」
そんなことはわかっているさ、オーフィス。だが、その前に聞きたいことがある。
「オーフィス、返事をする前に聞きたいことがあるんだがいいか?」
「ん、なに?」
「オーフィスは協力してくれる奴らについてどう思っている?」
俺がオーフィスに協力するかどうかはこの返事で決まる。
「特に何も思ってない。彼らグレートレッドを倒す協力をしてくれると約束してくれた。我、次元の狭間に帰り、静寂を得たい」
「その約束ってのは口約束でしたのか?」
オーフィスは俺の言ったことに頷いた。俺はつい呆気にとられた。俺はかなり長いことオーフィスと居たからなオーフィスのことは良く分かる。
俺の中の疑問が今の反応で確信に変わった。やはりオーフィスは誰よりも純粋なんだ。それを奴らは道具の様にオーフィスを使おうとしている。そんなこと、俺が絶対に許さない。
「・・・そうか。オーフィス、決めたぞ。協力するかどうかを」
俺はそう言いながら眼を閉じた。これからオーフィスに言うことは俺の未来が決まることだ。
そして俺は眼を開き、オーフィスの眼をまっすぐに見つめて言うべきことを言う。
「オーフィス。俺は、俺自身の意思で、オーフィスの為だけに協力しよう、たとえ、この先に何が起きたとしても俺の命有る限り協力しよう」
オーフィスは俺の言ったことを聞き終わると、少しだけだが笑っていた。今まで笑ったところを見たことがないが、その笑顔は確かに心の底から出た笑顔だと思えた。
「ん、よろしく。ハース」
「・・・ああ、こちらこそよろしく頼む。オーフィス」
この選択に俺は後悔はしていない。これが、オーフィスの為に出来る最善の選択だと信じて。そして、オーフィスを利用しようとする奴は俺がすべて倒す。
こうして俺は後にオーフィスをトップとしたテロリスト組織、
ちなみにこの日以来、オーフィスは俺の家で暮らすことになった。それに対してエレナ達は驚きはしたが、家族として接するようにしてくれるらしい。1ヶ月後以降の食費が跳ね上がることを知らずに。
サブタイトルに違和感を感じる・・・。
感想、評価お願いします。