今回は長く書きすぎたので、二つに分けて投稿します。
次は、20時に投稿します。それではどうぞ。
兵藤が堕天使に襲われてから、数日が経ったある日のこと、俺はいつもの様にエレナと他愛ない話をしながら一緒に駒王学園に登校していた。だが、今日はいつもと違うことが起きた。それは、俺とエレナがそれぞれの教室に向かい、俺が自分の教室に着いたときだった。
教室に着いて、自分の席に座ると、リアスに声を掛けられた。そんなリアスの隣には、黒髪のポニーテールに大和撫子として有名な姫島朱乃がいた。
おいおい、一人の生徒の前に『二大お姉さま』とまで称される二人が同時に居て良いのか?いや、駄目だろう。何たって、二人が俺の前に来た瞬間、周りの視線が一気に俺に向けられているんだぞ!?
「ハース、今日の放課後は時間空いているかしら?」
リアスはまるで周りの視線何か気にしていないようだ。朱乃も同様に視線が気にならないのかここに来てからも笑顔を絶やしていない。
と、とりあえず落ち着こう、俺。リアスの話の流れからして先日の兵藤が堕天使に襲われた件についてだろうな。
「ああ、時間なら空いてるぞ。先日の件についてか?」
リアスが小さく頷いた。
「そうよ。今日はイッセーも来れる様に祐斗を使いに出しているわ」
祐斗、おそらく木場祐斗のことだろうな。成る程、あいつもこちら側か。リアスが親しそうに名前を呼んだということは、リアスの眷属かな。
「分かった。それとリアス、頼みたい事があるんだがいいか?」
「あら?一体何かしら」
おい、待て。なんで俺がリアスと名前を呼んだだけで周りの奴等が騒がしくなったんだ?まずい、早くこの話題を終わらせてこの二人と離れないと精神が耐えられない。
「木場を兵藤のクラスに送るんだったら、一緒にエレナ・ルタスと言う女子も連れて来てくれないか?彼女は俺の仲間の一人だ。こちら側のことを知っているから、事情を話しておいた方が良いだろう」
エレナにはまだ兵藤のことを話していないからな。良いタイミングだし話しておいた方が良いだろう。
「そう、彼女もこちら側なのね、分かったわ。祐斗に彼女も連れて来てもらうようにするわ」
話が早くて助かるな。っと、やっとチャイムが鳴ったか。これでこの話題を終わらせられる。後少しだけ耐えてくれ、俺の精神!
「助かるよ。チャイムも鳴ったことだし、また放課後になったら話し合おう」
「ええ、そうしましょう」
話し合いが終わると、リアスと朱乃は自分の席に戻って行った。
た、助かった。流石にクラスの視線がほとんど俺に集中していたのは辛かった。後は、放課後になれば人目を気にせず話し合いができる。
そんなこともあり、放課後になるまでは特に何も起きず、時間が過ぎていった。
放課後になると、早速リアスと朱乃が俺の元に来た。
「さて、それじゃあ、話し合いの場所まで案内するから、私達に付いて来て頂戴」
リアス達の後に付いて行き、向かった場所は、旧校舎と呼ばれるところだ。旧校舎は木造で昔は使われていた様な雰囲気を漂わせている。周りは、木々に囲まれており、肝試しをするんだったら最適な場所とも言えるだろうな。
そのままリアス達の後を追い、旧校舎の中に入り、しばらく歩いていると、リアス達がある部屋の前で止まった。
部屋の戸に掛けられているプレートを見ると、部屋の名前が書かれていた。部屋の名前は、『オカルト研究部』と言うらしい。
成る程、ここが噂に聞くオカルト研究部か。確かここに入部できる人は限られていて、学園内でも特に人気のある生徒しか入れていないことで有名だな。
この部の噂を思い出していると、リアスが部屋の戸を開け、部屋に入り、続いて朱乃が部屋に入って行った。俺は朱乃の後に続いて部屋に入った。
部屋の中に入ってみると、至るところに読み慣れない文字が書き込まれており、部屋の中心には、この部屋の大半を占めている巨大な魔方陣が記されている。他にも、ソファーがいくつかあり、机も複数置かれている。
この部屋に一般の生徒が偶然入ってきたら、まさにオカルト研究部らしいと思うか、不気味だと思って逃げるかのどちらかだろうな。
「あら、小猫、もう来ていたの?」
リアスが声を掛けた方を見ると、ソファーに一人の少女が座っており、黙々と羊羮を食べている。
小柄な体に白い髪、そして、いつも無表情で有名なこの駒王学園のマスコットキャラの塔城小猫だ。初めて彼女を見たときは、小学生みたいだと思った。まあ、実際は背が高校生にしては低いだけなんだけどな。
「小猫、彼は私のクラスメイトのハース・ベスタードよ」
リアスが俺のことを塔城に紹介してくれた。塔城と視線が合うと、俺が先に挨拶をする。
「リアスが紹介してくれたが、一応挨拶しておこう。俺の名前はハース、ハース・ベスタードだ。ハースって呼んでくれ。以後よろしく」
俺が挨拶をすると、小猫が羊羮を食べていた手を止めて、ソファーから立ち上がった。
「・・・一年生。・・・塔城小猫です。・・・よろしくお願いします。ハース先輩。・・・小猫と呼んでください」
頭を小さく下げてから挨拶をすると小猫はまたソファーに座り、羊羮を食べ始めた。挨拶をしてる時に間が多かったけど、礼儀正しいじゃないか。
「あら、小猫が初見の人に、ああして挨拶をするなんて珍しいわね。そう思わない、朱乃?」
「うふふ、そうですわね。部長」
リアスと朱乃が小猫が挨拶したことについて意外だと言わんばかりに驚いてはいるが、どこか嬉しそうに話している。
そんなリアス達の様子を見ていると、俺の隣に小猫がやって来た。
「・・・ハース先輩。・・・立っていないで一緒に羊羮食べませんか?」
小猫が俺のことを見上げながら、訪ねてきた。初見の人相手にこんなに友好的に接してくれるなんて嬉しいな。
「そうだな。折角のお誘いだし、いただくとするか。良いよな、リアス?」
リアスに訪ねると、彼女は小さく頷いた。
「ええ、もちろんよ。むしろ、そうして頂戴」
そう言うと、リアスは部屋の奥に行った。部屋の中に入ると、彼女はシャワーカーテンをした。
・・・え?いや、待て。なんでこの教室にシャワーの付いた部屋があるんだ!?おかしいだろ!?普通は別の教室とかにあるもんだろ!?と言うより、なんで今シャワー浴びるの!?後からでもやれるじゃん!
俺が困惑していると、朱乃が近づいて来て、耳打ちをしてきた。
「リアスは時々ですけれど、放課後になるとシャワーを浴びる時があるので、気にしなくていいですわよ」
な、成る程。それならしょうがないな。リアスがシャワーをしてる間はなるべく振り向かないでおこう。
そんなことを考えていると、朱乃がリアスの元に向かい、リアスが先程まで着ていたと思われる制服を受け取っていた。とりあえず俺は、彼女から視線を外して、小猫に分けてもらった羊羮を食べることにした。
・・・美味い。口の中で小豆の絶妙な甘さが濃厚に広がり、羊羮を噛む度に脳を刺激してくる。こんなに美味しい羊羮は初めてだ。この羊羮が、どこで売っているのか後で小猫に絶対聞こう。
羊羮の美味しさを楽しんでいると、「部長、連れてきました」と言う声が戸の外から聞こえた。すると、リアスがシャワー室から木場達に入るようなに促した。
リアスがそう促すと、戸が開き、木場が教室に入ってきた。木場の後に続いて兵藤とエレナが部屋に入ってきた。
兵藤達は、各々違う反応をしている。エレナはやはりこのような部屋には慣れているのか、驚いた様子はしていない。それに対して兵藤の場合は、ひどく驚いていて、教室の中を物珍しげに見ている。まあ、この間まで唯の一般人だったんだから仕方ないな。
兵藤達の様子を見ていると、俺と兵藤の目が合い、兵藤がさっきよりも驚いていた。
「ハ、ハース先輩!?なんでハース先輩もここにいるんですか!?」
俺も、と言うことはエレナが木場に誘われた時にも驚いたんだろうな。
「ああ。それは、俺もあの時、兵藤が襲われた現場に居たからだ。エレナが居るのも、俺がリアスに頼んでエレナを連れて来るように頼んだからだ」
「ハース先輩があの場所にいた!?」
兵藤が他にも聞きたいことがあるのか、俺の元に来て気になることをどんどん聞いてくる。とりあえず落ち着かせよう。
「兵藤、俺から聞きたいことがあるかもしれないが、後で話すつもりだからしばらく待ってろ」
兵藤にそう言うが、やはり俺がここに居るのと、兵藤が襲われた現場にも居たという疑問を抱いているのか、中々言うことを聞いてくれない。
そんな兵藤を落ち着かせようと、木場が間に入ってきてくれた。
「兵藤くん、落ち着いて。ハース先輩がここに居るのに疑問を持っているのは君だけじゃないから。それにハース先輩も困っているみたいだし、落ち着いて」
木場が兵藤を宥めると、正気を取り戻してきたのか兵藤は深呼吸をし始めた。ありがとう、木場。助かったよ。
やっと落ち着きを取り戻した兵藤は、部屋の中を見回していた。すると、兵藤は小猫がソファーに座っているのに気がつき、兵藤と小猫の視線が合った。
「こちら、兵藤一誠くん」
木場が兵藤のことを小猫に紹介すると、小猫は頭を小さく下げて、兵藤も同じ様に頭を下げた。それを確認した小猫は羊羮をまた食べ始めた。
あれ、小猫?挨拶はそれだけ?さっきの俺とは全く違う挨拶だね。
兵藤の反応が気になり見てみると、兵藤は部屋の奥にあるシャワー室に目が行っていた。
おい、兵藤。お前、なんていやらしい顔をしているんだ。さっきまでの落ち着きの無さが嘘みたいじゃないか。兵藤はかなりスケベだとは聞いていたが、予想以上だな。
兵藤の変わりように呆れていると、シャワーの音が止まった。
「部長、これを」
「ありがとう、朱乃」
部屋の奥では、おそらく朱乃がリアスにタオルと制服を渡しているんだろうな。
「・・・いやらしい顔」
小猫が呟いた。小猫、君も俺と同じことを考えていたんだね。
「顔は良い方なのに、変態すぎるせいで女子に嫌われるのは当たり前ですね」
俺の隣には、兵藤の視線が部屋の奥に行っている間に来たエレナが居て、兵藤に対して思っていたことを呟いていた。
シャワーカーテンが開くと、紅い長髪がまだ少し濡れているが、制服を着たリアスと彼女に付き添っている朱乃も出てきた。
兵藤と朱乃の視線が合うと、朱乃の方から挨拶をした。
「あらあら。はじめまして、私、姫島朱乃と申します。どうぞ、以後、お見知りおきを」
朱乃が兵藤に挨拶をすると、兵藤は緊張しながら、朱乃に挨拶をしている。
そんな中、突然、隣にいるエレナが俺に話し掛けてきた。
「ハース、聞くのが遅くなりましたが、突然私を呼び出してどうしたんですか?木場が私も呼んだときは大変でしたよ。特に女子からの嫉妬のような視線は」
「その事についてはすまないと思っている。だが、呼んだことについてはこれから説明されるから待っててくれ」
そう言うと、彼女は溜め息をついた。
「はあ、わかりました。ですが、こういうことはもっと早く教えてください」
むう、今回のことについては俺が悪いな。後で食べた羊羮のことを教えよう。
エレナに羊羮のことを教えようと考えていると、リアスがわざと咳払いをした。そろそろ話を始めるつもりなんだろう。エレナとの話は後でしよう。
「これで全員揃ったわね。兵藤一誠くん。いえ、イッセー」
「は、はい!」
「なんで私があなたを呼んだか理解はしているかしら?」
「えっと、祝日に起きたことですか?」
なんでリアスに呼ばれたのか把握はしているみたいだな。
「そう。その日に起きたことについてこれから話していくわ」
そうして、俺たちは兵藤の身に起きたことを話し始めた。
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