ハイスクールD×D 死を宿した人外   作:ゼルトナー

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Life.13 顔合わせ

 

 翌朝、コカビエルの動向に関しての情報が届いた。

 

 まずは堕天使勢力。堕天使の中でも屈指の実力を誇るコカビエルに対して、生半可な実力者を送っても返り討ちにあうと判断した上層部は、白龍皇を差し向けることにしたようだ。

 

 俺は妥当な判断だと思う。白龍皇、ヴァーリならコカビエルに遅れをとることはないからだ。

 

 それだけの実力をヴァーリは備えている。あいつなら簡単に事を片付けられるだろう。あいつとサシで戦った俺が言うんだ。間違いない。

 

 次に天界勢力だ。これは思い付きもしないことだ。コカビエルは聖剣エクスカリバーを強奪していた。

 

 なぜエクスカリバーを強奪したのかはまだ分かっていないがこれには流石に驚いた。エクスカリバーは折れて、七つの剣に作り直されたとしても、その威力は絶大で、天界が持つ聖剣の中でも強力な武器だという事実は変わらない。

 

 天界はエクスカリバーを悪用される前に回収、あるいはその破壊を命じたエージェントを送り、近いうちに駒王町に到着するようだ。

 

 たぶんどこかで偶然、鉢合わせするかもしれない。そこでそいつらと協力関係を結ぼうと思っている。エクスカリバー回収を任されたエージェントなんだ。話のわかる相手だと、信じている。

 

 そして次に悪魔勢力だが、ハッキリ言って呆れた。この事を知っているコウモリは一人もいない。魔王どもはなにかが起きていることに感付いてはいるが、確証がないため動いてすらいない。

 

 何をやっているんだ、こいつらは。なぜ町の管理者のグレモリーすら気付かないんだ。恐らく大分前からコカビエルはこの町に潜伏していた。

 

 それに気付かなかった俺にも落ち度はあるが、管理者が気付かないのは大問題だ。

 

 いや、むしろ以前の堕天使騒動の時もあれだけの人数がいたにも関わらず気付かなかったんだ。当然だと納得してしまうな。

 

 残念だがグレモリーはその程度だったんだ。魔王の妹だと過大評価し過ぎていたみたいだな。

 

 まったく嘆かわしい。自分に反吐がでる。ああ、ああ、イライラするな、クソがっ!!

 

 まあいい。もうしばらくの間は仲良くしてやろう。あれはあれで面白いからな。特に赤龍帝は。

 

 さて、悪魔勢力はこんなもので、他の神話に動きはない。この騒動は彼らにとって関係がないからな。

 

 資料に纏められた内容を簡潔に見るとこんな感じだったな。

 

 さて、肝心のコカビエルだが、今は部下に索敵を任せている。事を起こすとしたら夜しかないしな。それまでにこの町の至る所を探し、見つけ出して殺す。

 

 それまではいつも通り、学園生活に勤しんでおくとしよう。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 そして昼休みになるが-―-

 

「なんで俺がこんなところに連れてこられなきゃいけないんだ」

 

「別にいいじゃない。減るものでもないでしょ」

 

「まだ昼飯食ってないんだよ」

 

「後で何か奢るからそれで我慢してちょうだい」

 

「よし、わかった。デラックスカレーパン5つで手を打とう」

 

「………あなたって、たまにがめついわよね」

 

「貰える物があったら遠慮なく貰ってるだけだ」

 

 グレモリーと姫島に無理矢理オカルト研究部に連れてこられていた。

 

 放課後に連れてこられるならならまだ良かったさ。だがな、昼休みはダメだ。飯が食えないじゃないか。授業中に腹が鳴ったらどうするつもりなんだ。

 

「それで、なんであんたもここにいるんだ」

 

 俺の向かいにあるソファで優雅に紅茶を飲んでいる眼鏡をかけた美少女に声をかける。

 

「今日は普段の活動報告を聞きに来たのと、お互いの新しい眷属を紹介しに来たんです」

 

 なるほど。新人の同士の顔合わせをしに来たのか。

 

「リアス、お前が俺を連れてきたのもそれが理由か」

 

 その質問にグレモリーはイエスと答えた。グレモリー眷属の面々は把握しているが、シトリー眷属の新入りに会ったことはないな。

 

「シトリー眷属の新人と顔合わせが済んだら戻ってもいいんだな?」

 

「ええ。私があなたをここに連れてきたのもそのためだもの」

 

 それで連れてきたのか。面倒なことを頼まれるのかと思ってたが、別にそれだけなら問題ないな。だが、飯を食っていないのと、ここまでの道中に色んな生徒に睨まれたせいで機嫌が悪いんだ。後でデラックスカレーパン奢れよ。それでチャラだ。

 

「だからあんたが来ているのか。駒王学園生徒会会長の支取蒼那、いや、この場ではシトリー家次期当主ソーナ・シトリーとでも呼んだほうがいいか?」

 

「いつも"会長さん"と呼んでいるのに、なぜ今その名前で呼ぶんですか。何か意図でもあるのですか?」

 

「別に、大したことでもないさ。ただ、ここにいるのは悪魔ばかりだ。本名で呼んでも問題ないと判断しただけだ。それに、会長になる前は支取で呼んでたろ?」

 

「そうでしたね。会長さんと呼ばれていたのに馴れていたのかすっかり忘れていました。でしたら、この場でぐらいなら名前で呼んで構いません」

 

「なら遠慮なくそう呼ばせてもらうぜ、蒼那」

 

 ボッ!と急に下の名前を聞いたせいか、支取は顔を赤くした。蒼那、なんて呼んだことなかったからな、耐性がなかったんだろ。普段の彼女の立ち振舞いを知っている人が見れば可愛いって言うな。俺は弄り甲斐があると思ってる。

 

「会長に何をしているんだ!!」

 

 こいつは最近生徒会の書記になった奴だったかな。名前はえっと……。

 

「匙・ク○ス○ードだったか」

 

「匙元士郎だっ!!名前を間違えるな!!」

 

 そうだった。そんな名前だったな。某ロボットアニメに似た名前のキャラがいたんでな、そいつと間違えた。

 

「すまなかったな、ダンガム・匙・ク○ス○ード。今度からは気を付けよう」

 

「気を付けるつもりないだろ!?匙元士郎だっ!!ダンガムでもク○ス○ードでもない!!」

 

「お前はダンガムではないのか!?」

 

「違う!!俺は匙元士郎だっ!!」

 

「いいや、ダンガムだ!」

 

「俺は匙元士郎だっ!!」

 

「ダンガムっ!」

 

「匙元士郎っ!」

 

「ダンガムっ!」

 

「匙元士郎っ!」

 

「お前は―-」

 

「俺は―-」

 

「ダンガームッ!!」

 

「匙元士郎だーッ!!」

 

「いい加減そこまでにしておきなさい」

 

 支取の呼び止めが入ったので漫才を止めた。もうさっきので最後だから意味は無いんだがな。

 

「ノリが良くて面白かったぞ。匙元士郎くん」

 

「いえ、先輩ほどの有名人と仲良くできたんで俺としても面白い経験ができましたよ」

 

 へぇ、嬉しいことを言うね。こういう気遣いのできる後輩とは仲良くやっていけそうだ。

 

 親睦の証に右手を差し出す。

 

「知っているとは思うが、ハース・ベスタードだ。よろしく。それで、君のことはなんて呼べば言いかな?」

 

「こちらこそよろしくお願いします。皆にはサジって言われてるんでそう呼んで下さい」

 

 サジね、今日からそう呼ばせてもらおう。

 

 お互いに握手をする。

 

 ッ!?この波動は………なるほど。こいつにも龍が宿っているのか。まったく、この町はどうなっているんだ。龍を宿した神器所有者はこれで四人目だぞ。龍の溜まり場か此処は。

 

 コカビエルの騒動を片付けたとしても絶対なにかが起こる気がするな、この町で。

 

 その時の中心にサジが関わるかどうかは今後の動き次第だな。

 

 さて、顔合わせもしたことだしもういいだろ。

 

「教室に戻ってるぞ」

 

「ええ、わかったわ。近いうちにデラックスカレーパンを奢るわ」

 

「ああ、楽しみにしている」

 

 姫島がいれた紅茶を飲み尽くし、ソファから立ち上がって部室から出た。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 放課後、特に予定もなかった俺は帰ろうと校門を出るが、近くに親衛隊長の気配がするのに気が付き、すぐに足を止めた。

 

「コカビエルを見つけたか」

 

(申し訳ありません。駒王町全域を徹底的に捜索したのですが、姿どころか痕跡すら見つかりませんでした)

 

「お前らは精鋭の筈なのに何をしているんだ。1日で見つけ出すと言っていただろうが!」

 

(言い訳のしようもありません。ですが、それには理由があります)

 

「ほう、どんな理由だ?」

 

(痕跡がなにもないのです。それはあまりにも可笑しすぎるのです。まるで私達が来るのを知っているのかと思える程に)

 

「つまりお前は我々の中に内通者がいると言いたいんだな」

 

(はい。そしてその内通者が誰なのかも憶測ではありますが、検討がついています)

 

「そうか。それで、誰だ、その内通者は」

 

(失礼を承知で申し上げますと、ハース様が気にかけた堕天使のカラワーナだと私達は睨んでいます)

 

「………そうか。カラワーナが内通者だという証拠は挙がっているのか?」

 

(まだ証拠はありません。ハース様の許可さえあればいつでも監視をします。いかがいたしますか?)

 

 ………コカビエルの足取りが掴めるのなら監視もやむを得ないか。

 

「不本意だが、カラワーナに気付かれないように監視を付けることを許す。証拠が挙がったら真っ先に俺に知らせろ。いいな。それと駒王町だけでなく隣町にも捜索隊を向かわせろ。人手が足りなければ、人員を増やせ。奴を見つけるためなら、どんなことをしてもいい。確実に見つけ出せ」

 

(御意。それとコウモリについてなのですがよろしいですか)

 

「ああ。あいつらがどうした」

 

(平和ボケしているようなやつらですが、多少はコカビエル探索に役立つのではないでしょうか)

 

「あいつらにコカビエルが潜伏していることを話せと?そう言いたいのか」

 

(不本意ではありますが、そうです)

 

 平和ボケしていると言っている時点でこいつも分かりきっているのだろうが、グレモリー達が下手に動くとかえって足手まといになる。

 

「くだらん。コカビエルが潜伏していることにも気づいていない様な管理者がなんの役に立つ?精々はぐれと―-いや、待てよ」

 

(ハース様?いかがいたしましたか?)

 

 はぐれ、はぐれ、なにかが引っ掛かるな。そう、あの時、教会の地下に集まっていたはぐれ神父たちを始末した後、イッセーたちと合流したら―-

 

「グレモリー眷属、シトリー眷属全員を監視対象にしろ。今すぐに」

 

(何かコカビエルへと繋がる心当たりでも)

 

「以前に雑魚堕天使が起こした騒動の時に一人だけ生き延びたはぐれ神父がいる。もしかしたらそいつがコウモリどもに接触するかもしれん」

 

(そのはぐれがコカビエルと繋がっている可能性があると言うのですか)

 

「そうだ。あくまで、かもしれないに過ぎないが、もしもの事を考えれば、打てる手は打っておいた方がいい」

 

(わかりました。早速、監視の者を付けさせます)

 

「頼んだぞ。コカビエルは確実に殺さなければならん怨敵だ。失敗は許さん、どんな小さな事でも見逃すなよ、いいな」

 

(御意。我が父の名誉に懸けて、必ずコカビエルを見つけ出します。では)

 

 行ったか。相も変わらず、仕事が早いな。

 

 悪いがグレモリー、お前たちを利用させてもらうぞ。これも怨敵を見つけるためだ。許せとは言わん。

 

 しかし、カラワーナが内通者……か。彼女が内通者かもしれないと思うと辛いが、よく考えてみればその可能性はかなり高いな。仲間に誘った時、カラワーナたちはその日の内に仲間になっている。前の仲間を全員殺されているのにだ。

 

 なんでそこで違和感を感じなかったんだ。普通に考えればその日の内に仲間になるなんて、余程の目的でもない限りあり得ない。

 

カラワーナは最初からコカビエルに俺の事を報告するために潜り込んだのかもしれない。

 

 ならミッテルトは?彼女もカラワーナと同じ目的なのか?………いや、考えにくい。ミッテルトはエレナと四六時中ずっと傍にいるんだ。

 

 飯を食べるときも、寝るときも、登校するときも、ずっと一緒にいるんだ。どうしても、ミッテルトまでも内通者だとは思えない。

 

 ………一か八かの賭けをするか。

 

 それで彼女の白黒が決まる。内通者かどうかを聞くのに警戒せず話せるのはエレナしかいない。

 

 家に着いたら早速エレナに頼むとしよう。それが一番の筈だ。

 

 あー、けどなー、それが原因でエレナとかに嫌われたらどうしよう。話しかけづらくなるなー。やっぱり止めとくか、いや、ここで諦めて取り返しのつかないことになっても不味いしな、いやいや、エレナに嫌われたらと思うと迷うな。どうするよ、俺。

 

 なんかどうでもいいようで重要そうなことに深く悩みすぎていたせいで、隣を通りすぎていく白いマントにフードで顔を隠した二人の存在に気付くのが一瞬遅れた。。

 

 今の二人………教会のエージェントか。話しかけるか?………やめておこう。話しかけるタイミングを逃したんだ。今話しかけたとしても警戒されるだけだ。ここは諦めて、次の機会を伺うとしよう。

 

「それにしてもあのエージェント、どこかで………まさかな」

 

 

 

 

 

「どうしたの?急に立ち止まっちゃったりして」

 

「ん?いや、今すれ違った男、どこかで見た気がしたんだ」

 

「そぉ?私は見覚えがなかったわよ」

 

「だったら気のせいだ。すまない、イリナ」

 

「べつに気にしてないわよ、ゼノヴィア。さっ、速く私の幼なじみに会いに行きましょ」

 


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