今日からまた投稿していく予定ですので、どうかよろしくお願いします。
それでは、本編を読む前に捕足を。
・これは戦闘校舎のフェニックス編からではなく、月光校 庭のエクスカリバー編から始めています。理由は絡む要 素がなかったからです。
・主人公は既にシャルバと決闘を行い勝利しています。そ のときの様子は別の機会に。
以上の事を注意してください。
Life.12 動きだすモノ
シャルバとの決闘に勝利したことによって俺の『禍の団』での立ち位置が決まった。
それはオーフィスに次ぐNo.2だった。
我こそが上に立つべき存在だと主張していたシャルバは俺との戦いで惨敗、そのせいで旧魔王派の立場は地に落ち、それにより旧魔王派に属していた魔法使いたちの多くが旧魔王派より離脱、旧魔王派の勢力は激減し、しばらくの間は活動ができなくなっていた。
喧嘩を売る相手を間違えたコウモリどもが悪い。喧嘩の原因?覚えてないな。そんなこと、一々覚えてられるか。
俺に負けたシャルバを含むコウモリどもは会議の場に顔を出さなくなりやがった。人間に負けた事実が奴等のプライドをボロボロに砕いたんだ、簡単に顔出しなんてできる筈もないか。
貴様のような人間ごとき、私の足下にも及ばん!なんて言ったわりには、呆気なく負けたもんな。
恥ずかしすぎて穴蔵に潜っているんだろう。アア、あんな連中の姿はなんて素晴らしいんだ。愉快で爽快で痛快で快哉で、なにより愉悦に浸る瞬間は最っ高の気分だ。
雑魚を倒した時より遥かに気分が良い。病み付きになりそうだ。………いつからこんなことを考えるようになった。
俺よりも高みにいた者を初めて倒した時からか。
地獄の様な修行の過程で精神がイカれたからか。
過去に大切なモノを失ったせいでなのか。
あるいはそのすべてが原因なのかもしれない。
なにがきっかけでそんな風に人を狂わせるか分からない。人は脆くて儚い生き物だからな。
なんて、変なことを考えてみたが、それは個人の考えだし気にすることもないな。
次の話に移ろう。
シャルバに勝ち、一つの事故を片付けることに成功した今、穏やかな日々を送っていた。
悪魔狩りをたまにこなし、エレナや真記、ミッテルトにカラワーナと不自由のない生活を満喫していた。
ああ、それでミッテルトたちなんだが、俺の家に暮らす様になって、料理と洗濯物の量が増え、家事が今まで以上に大変になっている。………というのをエレナから聞いた。
住人が増えるとそういったことが大変になるのは仕方のないことだ。それに、いずれ慣れるだろうから大丈夫のはずだ。
さて、少し話が逸れたが、ミッテルト達が暮らし始めたことによって俺の日常生活が変わった。なぜ俺の日常生活が変わったのかと言うと、俺が彼女たちの修行を指導しているからだ。
彼女たちの潜在能力はたしかに高いが、彼女たちの今の戦闘能力は見るに耐えない物だ。どれくらいかと言われれば、俺が今まで戦ってきた奴らの中でも下の下か良くて下の中と言ったところだな。
力の無いまま俺の傍に居続ければ、いつ死んでもおかしくない。そこで俺は彼女たちの実力を向上させるために今までの生活リズムを変えて彼女たちを鍛えることにしたんだ。
もちろん、彼女たちの承諾を得てから修行を始めたさ。俺の勝手で修行を始めるのは迷惑になるからな。
承諾を得た次の日からミッテルト達には俺が普段から使っている訓練所で実力をつけてもらうことにした。最初のころは基礎訓練と筋トレをしてもらった。
基礎訓練と筋トレをほぼ毎日続けたこともあって戦闘に不可欠な要素つまり、体力や反射神経とかのことだ。それを短い間だが、上級悪魔とサシで戦い続けられるだけの能力を身に付けさせた。
そしてその能力を身に付けたミッテルトとカラワーナはというと――
「隙だらけっすよ、ハースッ!!」
基礎訓練の時間を減らして俺を敵と仮定した実戦訓練をしている。
ミッテルトが上空から投擲してきた光の槍を躱すと後ろから光の剣を片手にカラワーナが斬りかかってくる。
まだ直すべき点はいくつもあるが、初めて会った日に比べると動きと連携がかなりよくなってるな。期待通りで安心した。この勢いで成長し続ければ、次の段階の訓練に進んでも良さそうだ。
っと、そろそろ切り上げた方が良さそうだ。ミッテルト達も体が慣れてきた頃だろうが、朝の訓練はこのくらいしておくか。時間的にここで切り上げないと学校に遅刻するからな。
「朝練はここまでだ、汗を流してこい」
「ええっ!?これからがいいところだったのに、そりゃないっすよ、ハースゥ」
「そう言うな、ミッテルト。この後は学校もあるんだ。いいタイミングで切ってくれたと思うが?」
カラワーナが不完全燃焼のミッテルトをなだめながら地面に降りてきた。いつもながら上手くミッテルトをなだめているなカラワーナは。
「二人とも汗を流したらリビングに行って飯を先に食べてろ。特にミッテルト、お前は髪の毛をしっかり乾かしてからリビングに行くんだぞ。風邪をひいたらみんなが心配するからな。それと学校の支度は昨日のうちに終わらせたか?終わってないなら飯を食べる前にしておけよ。ああ、あとほかにも――」
「わかってるすよ、ハース!というかハースはうちの母親のつもりっすか!?それくらいもう自分で出来るっすよ!!」
「む、そうか、なら良い。ほら、早く汗を流さないと風邪をひくぞ」
もう、わかってるすよーと言いながらミッテルトとカラワーナは訓練所から出て行った。
母親のつもり……か。俺は兄のつもりで接しているんだが、なにか間違っているところでもあるのか?違いが分からん。
ま、そんなことは些細なことだし気にしなくていいか。大切に想っていることに変わりは無いんだからな。
さて、俺もなんだかんだで汗をかいたし、シャワーを浴びてくるとするか。
シャワーを浴びた後、家で支度を終えた俺は一人で学校に登校した。
最近は一人で登下校するようになっている。なんせ、エレナとミッテルトが二人で先に行くようになったからな。
あの二人は年が同じで話がしやすいからなのか、本当に仲が良いな。少し嫉妬しちまうよ。
だが、まあ、そうだな。友達と一緒に登下校するのは楽しいだろうからとやかく言うつもりもないし、たまには一人でいるのも悪くはない。
さて、今日の授業も終わったことだし、帰るとするか。帰り道はどうするか…………。シュークリームを買って帰るか。
そんないつもと変わらないことを考えながら帰り道を歩いていると、携帯から着信音が鳴り出した。
この着信音、父さんからか。
「こんな時間に電話なんて珍しいな、父さん」
『ファファファ。ただの気まぐれよ、気にするでない。それより、ハースに伝えなければならん重要なことがある』
伝えなければならないこと?
『カラスの幹部、コカビエルがその町に潜伏していることがわかった』
その名を聞いた瞬間、その場で立ちすくんだ。
「……………………いま、コカビエルって言ったか?」
まさか、やつがこの町に潜伏していると?
『然り。部下に何度も確認をとらせたが間違いないようじゃ』
「本当にやつなのか?嘘ではなく本当に……」
『本当だとも。ワシが息子であるお主に嘘をついてどうする?』
「そうか、そうだよな……ハハッ」
コカビエルがこの町に……。ようやくか。ようやく、やつに会えるのか。
「父さん、俺の好きなように行動していいか?」
『良いぞ、あのカラスはハースだけでなく、我等が神話全ての敵じゃ。あの時は訳あって許しはしたが、今回もあの時と同じ様なことが起きたらそんなものは気にせず好きにするがよい。我が許す』
今の発言で活動方針は決まった。あとは行動に移すだけだ。
「ありがとう、父さん。なにかあったら連絡するよ」
『うむ、コカビエルごときでは、今のハースの足元にも及ばぬであろうが、油断だけはするでないぞ』
「もちろん、そのつもりだ。それじゃ」
電話を切る。そこからの行動は速く、コカビエルがこの町の何処に潜伏し何をしているか、情報を集める為に親衛隊を使った。
親衛隊長いわく、一日以内にコカビエルと堕天使勢力の動き、その他すべての情報をまとめると言っていた。
なら、俺はコカビエルとの殺し合いに備えるとしよう。油断も隙も慢心もなく、確実に奴を殺すためだけに。
◇◆◇◆◇◆
「はい、抜かりはありません……ええ、もちろんです。私が彼の元にいるのはレイナーレとドーナシークの仇を討つためだけです。それ以外の理由はありません。………ミッテルトですか?彼女はついでです。彼女もいたほうが近づきやすかっただけです。………はい、彼女が邪魔をしたとしてもなんの問題もありません。………はい、レイナーレ達の仇を討てるのなら、不祥ながらこの身を全て捧げる所存にございます。
コカビエル様」
◇◆◇◆◇◆
しまった、シュークリーム買ってくるの忘れてた。来た道を戻って買ってこよう。
今回はいつもに比べて短いです。