ハイスクールD×D 死を宿した人外   作:ゼルトナー

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 投稿遅れて申し訳ありません。今回の回を書くのに苦戦しました。

 そして今回で一章が終わりです。次回から二章に入ります。可能であれば、月曜には投稿したいです。

 それとサブタイトルは今回の内容の一部だけですので、おかしいと思ったら教えてください。

 それではどうぞ。


Life.11 ハースの秘密

 『禍の団』での会議が終わってから数日が経っていた。この数日の間に俺はエレナから会議中に起きたことを聞いておいた。

 

 思ったことは1つだけだ。やっちまったな、俺。エレナが暴れて『禍の団』の派閥との関係が悪くならないように捕縛魔法を仕掛けておいたのに、俺自らが関係を悪くしてどうするんだよ!?もし、シャルバとの勝負に負けたら『禍の団』としての立場が危うくなるじゃないか!

 

 どうする、考えるんだ俺。この状況を打開する手段を考えるんだ。効率よく犠牲の少ない方法を!!

 

 とまあ、そんなことを数日の間ずっと考えていたんだが結局この状況を打開できる方法は1つだけだという結論に至った。それはシャルバとの勝負に勝つこと、唯それだけだ。

 

 シャルバに勝つこと事態は簡単だ。シャルバの実力は良くて最上級悪魔だろう。それにシャルバは俺が人間の中でもトップクラスの実力だということは解っていても所詮、人間だという理由だけで侮っている。そんな奴に負ける訳がない。

 

 だが、シャルバのことだ。ファーストとしての俺の実力と噂はよく知っているはずだからな、奴もそれなりの対策を練ってくるだろう。一応だが、万が一に備えて俺も対策を練るとしよう。

 

 そうと決まれば早速、折れた剣の代わりを用意するか。今、俺の手元には折れた剣の代わりになる得物がないからな。

 

 だとすると、実家に電話して予備を送ってもらうように頼むしかないか。運の良いことに今日は父さんに定時報告する日だしな。

 

 俺は自分の部屋から出て一階の居間にある電話機のところに向かった。居間にはエレナたち全員がテレビを見ていた。

 

 俺は電話をするからテレビの音量を下げるようにエレナに頼んでから電話機を取り、実家に電話を掛けた。それからすぐに電話先の相手が出た。

 

『ファファファ、何時もより電話をするのが早いではないか。何か問題でも起きたのか、我が息子ハースよ』

 

 電話に出たのは案の定、父さんだった。何時もは電話に出るのにかなり時間が掛かるんだが、今日はすぐに出たな。

 

「ああ、実は数日前に俺が使っていた剣が折れちまってな、その剣の予備を送ってほしくて早く連絡したんだ」

 

『ほう、あの剣が折れたのか?』

 

 俺が使っていた剣は、父さんと俺の知っている中では最高の鍛冶職人が打った剣なんだ。父さんがかなり少しだが驚くのも無理はない。

 

「ああ、俺の手元にはその剣の代わりになる物がないから、そっちに置いてある予備を送ってくれないか?」

 

『ファファファ、いいだろう。届くのにしばらく時間が掛かるがそれでもよいな?ちなみに剣の種類は何でもよいのだな?』

 

「ああ、種類は何でもいいさ。忙しいのにありがとう、父さん」

 

 とは言うものの、予備の剣の種類と数が半端じゃいんだよな。その鍛冶職人には丈夫な剣を一本造るように頼んだんだが、その鍛冶職人が俺の事を気に入っているせいなのと、剣を造るのは久しぶりだって気合いを入れて造ったら、五十本以上もの異なった剣を造ったんだ。

 

 一本だけあれば良かったのに何でこんなに造ったんだって最初は思っていたんだが、よくよく考えてみたら、これだけの数があれば、しばらくの間は剣に悩まされることはないということに気が付いたんだ。

 

 おかげで剣が無くて困るという事態もなくなったしな。

 

『そうか、それは良かった。私も忙しいのでな、ハースに物を送るということだけでも簡単には出来んのだ。父親らしいことが出来なくてすまんな』

 

「構わない。父さんが忙しいのは息子の俺がよく理解している。だから気にしなくていい。父さんは俺と過ごしている間は父親らしい事をしているじゃないか。それだけで俺は十分報われている」

 

 父さんが仕事の休暇を取った日は必ず俺と母さんの為にいろんな事をしてくれている。俺の修行に付き合ってくれたり、母さんの我儘を聞いたりしているんだ。そうした事をしているだけでも、父親らしいじゃないか。

 

『……そうか。さて、話が少し逸れたな。他に頼みたいことはあるか?』

 

「いや、特にない。頼みたい事は剣のことだけだ」

 

『なら良い。……では、ハースよ。頼み事がもう無いのならば、この一ヶ月の間に起きた事を報告しろ』

 

「分かりました」

 

 頼み事が終わると、そこから父さんの雰囲気が一気に変わった。さっきまではプライベートだったから気楽に話せていたが、ここからは上司と部下の話し合いになる。

 

 それから俺は父さんにこの一ヶ月の間に起きた事を話した。堕天使が駒王町で騒ぎを起こしたこと、その時にミッテルトとカラワーナを仲間にした事を話した。そして、俺が『禍の団』に入ったことも話した。勿論、今の状況についても話した。俺が会議中に寝ていた事は話していないが。

 

『成る程、カラスがそんなことをしたのか。それでその小娘達は大人しくしているのか?』

 

 父さんは堕天使の事をカラス、悪魔の事をコウモリと呼んでいるんだ。どうも父さんは三大勢力の事が嫌いらしいな。昔に比べたら大分ましになったと母さんは言っていたがな。

 

「はい、最初は戸惑っていましたが、こちらがそれなりの対応をしたら彼女達はすぐに俺の仲間になりました。それからの家での様子に問題はありません」

 

『そうか。それでその『禍の団』とやら、中々おもしろい奴等が戯れておるではないか。コウモリの首領になり損ねた者と最強の神滅器、さてさて、彼らがこの世界にどの様な影響を及ぼすのか楽しみだ』

 

 戯れているって、まあ、確かに父さんからすれば『禍の団』のメンバーは戯れているようにしか見えないのかもしれないけどな、それなりに危険なのも入ってるんだぞ。

 

「その『禍の団』には俺も入っているのですが……」

 

『お主は別だ。お主とコウモリどもの実力を比べては可哀想であろう?』

 

 露骨に酷い事をさらっと言ったよ。父さんらしいけど。

 

「そうですか。では、最後にオーフィスについてですが」

 

『オーフィスか……以前はオーフィスの強力な力に興味があったが、今はそんなのに興味はない。お主のしたい様にしなさい』

 

 俺のしたい様にしていいのか。昔の父さんの事を母さんに聞いたんだが、今以上にオーフィスの力に興味を持っていたんだよな。それが今は興味がないか。何で父さんは変わったんだろう?……まあいいか。父さんが何で変わったのかは気になるが、それは俺にとって重要なことじゃないし、いつか父さんにその事を聞けばいいだけのことだ。

 

「分かりました。以上で定時報告を終了させていただきます」

 

『うむ、ご苦労。さて、最後に聞いておきたいのだがコウモリの首領の妹との関係はどうだ?以前の報告と変わりはないか?』

 

「ああ、前に報告した通り親友としての関係を保っている。この関係が悪くなるのは余程のことがない限り起きないだろうな」

 

 報告が終わると、父さんの雰囲気がさっきと同じになった。報告が終わったのに安心した俺は喉が渇いているのに気が付いた。さっき父さんとの電話中にエレナが持ってきてくれた水を飲み始めた。

 

『そうか、ところでハース、いつになったら彼女ができるのだ?』

 

 吹いた。口の中に入っていた水を盛大に吹いた。それは本当、見事なまでに吹いた。俺でも驚く程に。

 

「い、いきなり何を言い出すんだよ!?」

 

『……実はな、私はハースに彼女が出来ていなくて不安なのだよ。今時の高校生の殆どは彼女が出来ているものなのだろう?』

 

 どこからそんなことを聞いたんだよ!?

 

「父さん、どこからそんなことを聞いたんだ」

 

『部下の娘から聞いた話だ』

 

 何でだろう、その部下の娘に心当たりがあるぞ。

 

「はぁ、まぁいいや。とりあえず父さん、俺に彼女が出来たときは報告するから気にするなよ」

 

『ふむ、そうか。ならばその時が来るのを楽しみにしておこう。ではな、ハース。母さんにもちゃんと連絡するんだぞ』

 

 そして電話が切れた。……しかし驚いたな。まさか父さんがあんなことを聞いてくるなんて。そのせいで水を吹いたじゃないか。後で濡れた服を洗濯するか。

 

「さて、次は母さんに電話するか」

 

 今度は母さんに電話するために電話番号を打とうとすると、後ろからエレナが声をかけてきた。

 

「ハース、今から奥様に電話をするのですか?」

 

「ああ、そうだ。さっきまで父さんと話していたからな、次は母さんに電話しようとしているんだ」

 

 今ごろ母さんは何をしているんだろうか。今の時期、母さんはある取り決めで自分の家に帰っているんだよな。

 

「実はハースがご自分の部屋にいる間に奥様から電話がありました」

 

 母さんから電話があった?だったらなんで俺を呼ばなかったんだ?

 

「どうして俺を呼ばなかったんだ?」

 

「奥様が呼ばなくてよいと言ったからです」

 

 どうしてだ?母さんが俺と話さないのは悪さをしたりとか母さんを怒らせた時ぐらいの筈だが何かしたのか俺は?

 

「そうか、母さんは何か言っていなかったか?」

 

「はい、奥さまから伝言を預かっています。自分で犯した失敗は今後の活躍で挽回しなさい、とのことです」

 

 ……エレナの奴、母さんに俺が会議で何をしたのかを話したな。道理で母さんが俺を呼ばないわけだ。だが……。

 

「それって逆に母さんが辛いんじゃないか?」

 

 母さんは普段から俺の事を溺愛しているんだよな。そんな母さんが自分から話さないなんて言ったんだ。今頃、後悔してるのかもしれない。

 

「かもしれませんね。それと、最後にもうひとつだけ伝言があります」

 

 なんだ、まだあったのか。大方、たまには親に顔を見せなさいとでも言ったんだろうな。言われずとも、夏休みに行く予定だ。

 

「いつになったら彼女を作るの?とのことです」

 

 全然、違ったぜチクショウ。つか、何で父さんと同じことを同じ日に言うんだよ。狙って言っているとしか思えないぞ!

 

「……そうか、父さんと同じことを言ったのか。出来たら教えるとだけ伝えておいてくれ。今、俺から伝えることができないからな」

 

「承りました。ところでハース、伺いたいことがあるのですがいいですか?」

 

 なんだ?エレナの奴、いつにもまして真剣な顔になっているな。何か重要なことでも話すつもりなのか?

 

「なんだ、エレナ」

 

「旦那様と奥様のことをミッテルトとカラワーナに話さなくてよいのですか?彼女達は私達の仲間の証としてペンダントを受け取り、この数日の間にさらに友好を深めました。彼女達にハースのご両親について話してもよいのではないですか?」

 

 なるほど。父さんと母さんのことをミッテルトとカラワーナに話すべきと言うのか。確かにこの数日の間にミッテルトとカラワーナの歓迎パーティーをオーフィスとヴァーリ達も交えて開いたし、オーフィスのことも彼女達に説明したな。

 

 面白かったな、特にオーフィスとヴァーリ達のことを知ったときの反応は。カメラがあったら写真を撮ってただろうな。

 

「確かにそうだな。だが、今はまだその事を話すことはできない」

 

 俺の返答が予想外だったのかエレナは驚愕していた。

 

「何故ですか!?ミッテルトとカラワーナはもう私達の仲間なんですよ!どうして話そうとしないんですか!」

 

 確かに仲間に話さないのはおかしいだろうな。だが、エレナは大事なことを忘れている。

 

「エレナ、俺の両親が誰なのか知っているだろ」

 

「知っています。ですが、彼女達に隠し事なんて…」

 

「エレナ、俺という存在は三大勢力も含めた全勢力の間では最高機密のひとつでそう簡単に話せることじゃないのは知っているだろ。わかってくれ」

 

 エレナはその重要性を理解してくれたのか、渋々と小さな声で「わかりました」とだけ言った。その声は震えていて泣くのを我慢しているのがわかる。

 

 本当は俺もこんなことはしたくない。エレナが辛いのもわかっている。すまない、エレナ。

 

「ああ、それとエレナ。その事とは別のことをミッテルトとカラワーナに話さなきゃいけないから一緒に来てくれ」

 

 この事を話せば、エレナの機嫌も良くなるかもしれないな。

 

 俺はテレビを見ているミッテルトとカラワーナに重要な話があると声をかけた。

 

「重要な話ってなんすか、ハース」

 

 そうだな、先にミッテルトの方から話すか。

 

 俺はカラワーナにミッテルトのことから話していいか承諾を得てから、話を進めた。

 

「ミッテルトに、ペンダントとは別のプレゼントがあるんだ。本当は歓迎パーティーの時に渡そうと思ったんだが、渡すタイミングが無くてな、渡すのが遅れた」

 

 剣を入れていたのと同じ空間を開いて、その中からリボンの付いたの箱を取り出し、その箱をミッテルトに渡した。

 

 ミッテルトは箱の中身が何かと聞いてきたが、俺は開ければわかるとだけ言い、箱を開けるのは自分の部屋で開けてくれと言った。

 

 その事に疑問を抱いたミッテルトはどうすればいいのかエレナを見ていた。俺はエレナにミッテルトと一緒に部屋に行って手伝うように言った。

 

 エレナは「わかりました」と言い、ミッテルトと一緒に二階の部屋に上って行った。

 

 さて、次はカラワーナか。彼女にもプレゼントがあるんだ。俺はカラワーナに声を掛けてからさっきミッテルトに渡したのと同じ箱を空間から取りだし、カラワーナに渡した。

 

 箱を受け取ったカラワーナは「私も自分の部屋に行ったほうがいいのか?」と聞いてきたが、俺はその必要はないと言った。ミッテルトの場合はそうしないといけない理由があったからな。

 

 カラワーナがその事を聞くと箱の蓋を開けた。箱の中身を見たカラワーナは驚いたのか俺の顔と箱の中身を交互に見ていた。彼女に渡した箱の中身はカラワーナの髪の毛と同じ色のエプロンだ。

 

「何故、私にエプロンをプレゼントしたんだ?」

 

「それはな、明日からエレナの代わりに家の家事をしてほしいと思ったからだ」

 

 実は、エレナはこの家の家事を殆ど一人で執り行っているんだ。毎日が大変だということは知っているが、代わりに家事をやってもエレナ程の家事スキルを持っていない俺達じゃ足手まといにしかならなかった。

 

 だが、ここ数日の間のカラワーナの様子を見ていたが、どうやらカラワーナはエレナ以上の家事スキルを持っていることがわかった。

 

 カラワーナなら、この家の家事を任せられると思ったからエプロンを渡したんだ。

 

「そうか、確かに私は家事が得意だ。というより、大好きだ。本当に私に家事を任せてくれるんだな」

 

 カラワーナが目を輝かせて詰め寄ってきた。カラワーナが俺の目の前に来ると女性特有の良い匂いがして一瞬だけドキッとしてしまった。

 

「も、もちろんだ。エレナに負担をかけない為にも頑張ってくれ」

 

「わかった。私に家事を任せてくれてありがとう」

 

 俺は、カラワーナにエプロンを着るように言うと、カラワーナは箱からエプロンを取りだしてエプロンを着てくれた。

 

 カラワーナがエプロンを着たのと同時に二階からエレナとミッテルトが降りてきた。エレナはリビングに入ってきたが、ミッテルトは抵抗があるのか、リビングに入ってこようとしない。エレナがミッテルト手を引っ張ってリビングに連れてきた。

 

「ハ、ハース、この服は一体なんすか?」

 

 今、ミッテルトが着ているのは、駒王学園の制服だ。見たところサイズもピッタリみたいだ。エレナと同じサイズのを選んで正解のようだな。

 

「それは駒王学園の制服だ。ミッテルトには明日から二年生として駒王学園に通ってもらうぞ。ちなみに編入手続きは勝手に済ませておいた」

 

「え、いつの間にそんなことしてたんすか!?」

 

「歓迎パーティーをした次の日に決まってるじゃないか」

 

 編入試験?細かいことは気にするな!権力はこのときに使うものだ!

 

「えっと、うちは明日からエレナと一緒に学園に行っても良いってことすか、ハース?」

 

「そうだ。ミッテルトが学園に行きたがっていたのはエレナに聞いていたからな。エレナ、明日からミッテルトはクラスメイトになるから学園にいる間は任せたぞ」

 

 リビングを出る前にエレナの肩に手を乗せてから自分の部屋に戻った。今日するべきことは全部やったな。夜の十一時か、明日に備えて寝るとしよう。

 




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