ハイスクールD×D 死を宿した人外   作:ゼルトナー

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 やっと更新できました。まさかこんなにも遅くなるとは思いませんでした。でも仕方がありませんよね。テストもあれば学校の活動で忙しくて書く暇がなかったんですから。その事に関しては、遅くなって申し訳ありません。

 それではどうぞ。

 7/28日、7/29 文章を一部編集しました。


Life.10 『禍の団』の集まり③

 巨大な扉を開けてから部屋に入るとそこは床が白と黒の大理石で順番に並んでいた。そして部屋の中央には円卓とそれを囲んでいる人々がいた。俺が部屋に入るとオーフィスが肩から飛び降りて奥の間にある玉座の様な椅子まで歩いていき、椅子に座った。

 

 オーフィスが椅子に座るのを確認してから円卓に座っている人を見ていると1つだけ空席の場所があった。その席の隣には学生服の上に漢服を着た男、曹操が座っていた。

 

 曹操、十三種ある神滅具の中でも神を絶対に屠ることができると言われる最強の神滅具、イエス・キリストを貫きイエスの血に濡れた槍、聖十字架、聖杯などと同じ聖遺物の1つ、『黄昏の聖槍』の所有者。

 

 以前、『禍の団』について調べたときに曹操の資料を見たが、やはり資料で見たのと実際に見るのとでは全然違うな。

 

 曹操からは強者の風格がこの場にいる者達の中で最も強く感じられる。曹操以外の奴らもそれなりに強力な気配を感じるが曹操程ではない。

 

 曹操の事について考えていると、彼は自分の席から立ち上がり俺に近づいてきた。

 

「やあ、さっきの戦いは見させてもらっていたよ。君の神器はとんでもないものだな。あれほどの神器は初めて見たよ。後で詳しく教えてくれないか?」

 

 神器?俺はそんなのを持っていないぞ。何でそんなことを、いや、待てよ、もしかしたら曹操は『死』のことを言っているのか。確かに『死』を初めて見た奴からすれば神器を使った様にしか見えないのかもしれないな。

 

 これは嬉しい誤算だ。このまま『禍の団』の間ではこの力は神器ということにしておこう。

 

 曹操は『死』について知りたがっているがそう簡単に教えるわけにもいかないからな、この場はどうにかしてやりきるか。

 

「生憎と、自分の神器の能力を誰それと構わず話すつもりはないんだ。残念だが、この神器の事を知りたいんだったら俺の信頼を勝ち取ってからにするんだな」

 

 少し素っ気ない態度をとってしまったように思えるが、これぐらい言えば『死』について追及して来ないだろう。

 

「ああ、それもそうだな。すまなかった。初めて見た神器だったんでね、ついその神器について詳しく知りたかったんだ。だけど逆に安心したよ。オーフィスが連れてくる程の人が初対面の相手を警戒してくれる人で」

 

 ん?今の曹操の発言からだとここにいるメンバーの内誰かが自分の事を話したみたいな言い方だな。この中でそんなことをしていそうなのは、奴らだけか。

 

 一応念のために曹操に奴らが話したのか聞いておくか。

 

「その言い方から察するに既にこの中の誰かが相手を警戒せずに自分の事をペラペラと話したみたいだな。例えばあそこで俺を見ている奴等か」

 

 奴等、資料で見たから分かるが旧魔王達のことだ。奴等は俺の事を横目で見ているだけのつもりだろうがその目は俺の事を邪魔者としてしか見ていないな。

 

 それもそのはずだ。彼らの目的はオーフィスの力を借りてこの世界を一度滅ぼし、もう一度世界を構築して自分達に都合のいい世界を作ることなんだからな。

 

 その世界を構築するにはオーフィスの力が必要不可欠。そのオーフィスが連れてきた人となるとオーフィスが今一番信用している人物に他ならない。

 

 旧魔王達の最初の目的はまずオーフィスの信頼を得ることだろうな。そのためには俺の存在が邪魔なんだ。

 

 おそらく旧魔王達は近いうちに俺に刺客を送りつけてくるだろうな。

 

 だが、資料で調べた奴らの行動と曹操から聞いた少しの情報で奴らがまともな刺客を送りつけて来るとは思えないがな。

 

 曹操は俺が目線で旧魔王達のことを見ると鼻で笑った。

 

「ああ、そうだ。彼らは自分達の事を隠すことなくすぐに自分達が真の魔王の血を引く者だと話して来たよ。ついさっき話をしたときはこんなのが魔王の血を引いているのかと思ってね、正直呆れてしまったよ」

 

 曹操の気持ちも何となく分かる。初対面の奴がナルシストだなんて正直呆れるよ。しかも奴らは自分達の事を真の魔王なんて言っている。もしその言葉が本当なら奴らは今の魔王だと言っているのも当然だ。

 

 だが奴らは現魔王なんかじゃない。奴らは今の魔王より遥かに劣っている点が多く、そして何より他種族の者達を見下している。それさえ無ければ、現魔王と対等になっていただろうな。 

 

 現魔王は奴らより魔力の量、質ともに優れていて他種族のことをある程度だが、対等に見ている。だが、他種族を無理矢理、悪魔に転生させる上級悪魔がいるのは見過ごせないがな。それをどうにかしてほしいものだ。そうでもしないかぎり、俺達が手を取り合うことはできない。

 

「それが本当なら奴らは烏合の集まりとでも言うべきだな。血筋だけで自分が真の魔王だと言っている間は上に立つべき器じゃない」

 

「全く、その通りだな。さて、そろそろ席に座ろうか。その話は後でもできるからね。君の席は分かっているかもしれないが、俺の隣にある空いている椅子だ」

 

 俺の座る椅子を教えると曹操はさっきまで座っていた席に戻っていった。

 

 さてと、曹操も椅子に向かったことだし俺も椅子に座るとするか。っとその前にエレナに言わなきゃいけないことがあるな。

 

「エレナ、こっちに来てくれ」

 

「なんですか、ハース」

 

 エレナが俺の隣に来たので、周りの者に聞かれないように小さな声で話をした。

 

「『禍の団』と話している間は後ろにある柱の近くで待機していてくれ。その間はどんなことがあっても絶対にその場から動くなよ。この事は真紀達にも伝えておいてくれ」

 

 エレナは「わかりました」とだけ言うと、真紀達のところに向かい、話をし始めた。エレナは俺の指示通りにしてくれるみたいだな。

 

 曹操の話と資料で調べた旧魔王の情報が正しければ確実に俺の事を人間だという理由だけで馬鹿にしてくるだろうな。エレナにとってそれは自分のことも馬鹿にしていると判断するからな、もしエレナがその事にキレてこの場で暴れでもしたら今後の『禍の団』としての活動に支障が出るから、それだけは阻止しておきたい。だからエレナに待機するようにと言ったが、それだけでやらないとは思えないから、さっきエレナが俺の隣に来たときに動きを止める魔法をこっそり仕組んでおいた。これぐらいすればエレナでも動くことは出来ないはずだ。

 

 そこまでする必要があるのかと言われればその必要は無いが、念のためだ。なぜなら、数ヶ月前に堕天使のオッサンと、ある話をしていたときに俺の頭を酔った勢いで叩いたんだ。それにキレたエレナがオッサン、アザゼルを半殺しにしたんだ。その時は俺と真紀でエレナを止めたんだったな。その後アザゼルはエレナは今後絶対に怒らせないようにするって言ってから帰ったんだよな。

 

 まあ、そんなことがあったからエレナに捕縛魔法をかけてあるんだ。

 

 そろそろ椅子に座ろう。さっきから旧魔王が早くしろと目で訴えてきているからな。

 

「待たせてすまない。話を始めてくれ」

 

 こうして『禍の団』初の会議が始まった。

 

 

 

          

 

 

 

 さて、『禍の団』の会議が始まってから既に一時間が経過しているんだが、いまだにメンバーの自己紹介が終わっていない。

 

 こいつら自己紹介が長過ぎるんだ!!何で一人で五分以上も話すんだ!!しかも内容はどうでもいいことばかりだ。手を組んでいる派閥、傘下に入っている派閥、派閥にいる人数とか後で言えばいいことを先に話してやがる。

『禍の団』に入った目的を最後に話すとか何で目的を先に言わないんだって思っていたら目的を話しても下らないことしか言わない。ほとんどの派閥は旧魔王に従っていやがる。この際、話す順番は気にしない。こんな奴らの話を聞いていると頭がおかしくなりそうだ。

 

 ・・・話が長いし下らな過ぎて眠い。もういっそのこと寝るか、その方が有意義だ。とりあえず手足を組んで話を聞いている様な態勢をして寝よう。

 

 

 

 

 

 エレナSIDE

 

 私の名前はエレナ・ルタス。ハースの仲間の一人で普段は家の家事を勤めています。

 

 私は小さい頃、家族をはぐれ悪魔に殺されました。家族は私の目の前で無惨に殺され、その記憶は今も私の中にあります。その時に私も殺されそうになりましたが、そこに私を助けてくれた人がいました。それが今、目の前にある椅子に座っているハースです。あのときの彼は今よりも幼かったのですが、既に上級悪魔を殺せる程の強さを持っていました。はぐれ悪魔を殺したハースは私に手を差し伸べてくれました。その手を取った私はその日からハースと共に暮らし初め、多くの事を学びながら今に至ります。

 

 そんな私は今、『禍の団』と言う名の組織の会議に参加しています。派閥のトップの話を聞いていますが、正直下らないことしか話していません。こんな話を聞くために来たのかと思うと反吐が出ます。

 

 今私が抱いているこの思いは一番近くで話を聞いているハース自身が最も辛いんだと思います。ああ、そう思うと今すぐにでもあいつらをコロシタイ。

 

 あ、どうやら曹操の自己紹介が終わったようです。彼の場合は簡潔で分かりやすかったです。次はハースですね。どうやら自己紹介と言う名のおしゃべりはハースで最後のようです。

 

 ハースはどんな自己紹介をするのでしょうか、楽しみです。

 

 この場にいる全員の視線がハースに向けられると彼はゆっくりと口を開きました。

 

「・・・ファースト」

 

 ファースト、それはハースがはぐれ悪魔狩りをするときに使うコードネームのことです。

 

 ファーストの名前を聞いた途端、周りが一斉に騒がしくなりました。

 

 それもそのはずです。ファーストとは裏世界の者なら誰でも知っているトップクラスのはぐれ悪魔専門の殺し屋の名前なのですから。本名、年齢、国籍は不明。分かっているのはファーストが男性だということだけです。

 

 ハースは自分からその事を話そうとしないので私なりにファーストとしての彼の情報を集めてみました。情報によると彼の依頼達成率は百パーセント、つまりパーフェクトでした。この数値は本来はあり得ないものです。

 

 誰にでも失敗はあるものですが、彼の場合はそんなことが一度もないのです。さらにこの一年の間に現れた上級悪魔と最上級悪魔の殆どは彼が殺してきています。下級と中級はほんの僅かです。このようにハースは強い者を殺すことが多いのでトップクラスのはぐれ悪魔専門の殺し屋として有名なのです。

 

 ですので、ファーストと聞いた途端に騒がしくなったんです。

 

「皆のもの鎮まれ。まだ彼の目的を聞いていないぞ」

 

 そうすると少しずつですが周りが静かになってきました。先程、この場を治めたのはシャルバ・ベルゼブブ。旧魔王派のリーダーです。彼の呼び声で周りが静かになったのは騒いでいた者の殆どが旧魔王派の傘下に加わっている者達だからです。

 

「さて、ファーストよ。周りを静かにしたので貴殿の目的を教えてくれないか?」

 

 シャルバはハースにたいして対等に接していますが、実際はどうなんでしょうか?もしかしたらシャルバは心の中でハースを見下しているのかもしれません。私は腹の探りあいなどが苦手なのでシャルバがどのように考えているのかわかりません。後でハースに聞いてみましょう。ハースは腹の探りあいが得意ですからね。

 

「・・・オーフィスの傍にいる」

 

 ッ!そうですか。ハースは、オーフィスの傍にいることにしたんですね。いままでオーフィスの傍にいると言ったものはこの中にいません。ハースがそのつもりでしたら私も共にオーフィスの傍に、ハースの傍にいます。これから先、ずっとです。

 

「・・・そうか、ファーストの目的はオーフィスの傍にいることか。それはつまり、我々の上に立つということか」

 

 不味いですね。どうやらシャルバからすれば今の発言は自分達より上の立場に立つと言った様に思えたのでしょう。ですがハースはそんなことを考える様な人ではありません。ハースなら上手く誤解を解いてくれるでしょう。

 

 そう思っていた私の思いに反してハースはコクりと頷きました。

 

 な、何をしているんですか、ハース!?そんなことを肯定してしまったらシャルバが黙っている筈がありません!

 

「真の魔王の血を引く正統なる後継者たる我々より上に立つというのか!!我々が何も言わないのをいい気に調子に乗るなよ、人間風情が!!」

 

 ああ、思った通りの展開になってしまいました。これで私達と彼らの関係は悪くなってしまったではないですか。一応、シャルバがハースの事を見下していたことはわかりましたがこのあとの事はどうするつもりですか、ハース!

 

「貴様のような者が上に立つのは気に入らん!私こそが上に立つべき存在なのだ!この私と勝負をしろ!!どちらが上に立つべきかを決めようではないか!!貴様もそれでいいな!」

 

 どうするんですか、ハース!?どんどん取り返しのつかないことになってますよ!

 

 ハースが次に起こす反応を待ってみますが、なんの反応も起こしません。なにをしているんですかハース!早く何かしてください!

 

「無言は肯定と受けとるぞ。貴様のその反応はこの場にいる者全てが証人だ。勝負は次の会議の時にする!それまでに首を洗って待っていろ!!」

 

 するとシャルバが椅子から勢いよく立ち上がり足元に魔方陣を展開しました。それと同時にシャルバの両隣に座っていた男女も立ち上がり魔方陣の中に入っていきました。そして魔方陣が光を放ち、その場からシャルバ達は居なくなりました。

 

 シャルバ達がその場から去るとこの場にいた人々が次々に魔方陣を展開してその場から去っています。最後に曹操がハースの傍に近寄っていきました。

 

「頑張ってくれ、ファースト。君ならシャルバに勝てると信じてるよ」

 

 曹操がそれだけ言うと彼の仲間のところに行き、先程の人達と同じ様に魔方陣を展開してこの場から去っていきました。

 

 ああ、ハースのせいでこれからの私達の『禍の団』の立場が危うくなってしまいました。ハースがシャルバとの勝負に負けてしまったら最悪殺されてしまいますよ。ですが、ハースがシャルバごときに負ける筈がありませんが。

 

 とりあえずハースに声をかけましょう。間違えてもこの場でハースと呼んでしまわないように気をつけましょう。もしかしたらまだここに誰かがいるかもしれませんからね。

 

「ファースト、他の人たちは帰りました。私達も家に帰りましょう」

 

 ハースに声をかけてみましたが反応がありませんでした。おかしいと思ったのでハースの体を揺らしました。するとハースは両腕を上に伸ばしながら立ち上がりました。

 

 あれ、この動作はまさか・・・、いえ、そんな筈はありません。大事な会議の時に堂々と眠るなんてことは・・・念のためにハースに聞いてみましょう。

 

「ファースト、もしかして先程まで寝ていました?」

 

「ん?ああ、そうだが、それがどうしたんだ?」

 

 まさか本当に寝ていただなんて、なんてことをしているんですか!あっ、もしかして先程までのシャルバとの会話も・・・。

 

「ハース、1つ聞きたいことがあるのですが」

 

「なんだ、セカンド。聞きたいことって、よく見たらもう終わっているな。何かあったのか?」

 

「ファーストは先程までシャルバと話していたのを覚えていますか?」

 

「いや、全然覚えていないぞ。というより俺はシャルバと話していたのか」

 

「ええ、次の会議の時に勝負をしようと言う内容です」

 

「え?そんなことを話してたのか俺は」

 

「ええ、それは見事なまでにシャルバの言ったことを全て肯定していましたよ」

 

 この会話で全てわかりました。

 

 ハースは寝ながらシャルバと会話していました。それも誰から見ても違和感の無い程に。

 

 本当にこれからどうするんですか。ハースのバカッ!!

 

 

 

 こうしてハースの寝ぼけが原因で今後の『禍の団』としての活動が怖くなってしまいました。




 次回で第一章は終了です。

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