俺はMUGENの可能性 作:轟く雷鳴のギース
ちゃんと反省すること
あの屋内戦闘訓練の後数日が経った
あれから特に何があったかと言われれば学級委員長が非常口飯田になったといったくらいだろうか
だがそれはクラスのみで見た場合だ
学園の変化としてみれば何者かがマスコミを唆して学園に侵入させた
これは公式見解ではないが少なくとも俺はそう考えている
あの平和の象徴オールマイトが教師として勤めているなんてマスコミからしたらとんでもないスクープだ
どこの編集社も連日のように張り込んで情報を得ようとしている
それを利用したと考えれば納得ができる
「けど…証拠ねぇもんな…」
「何考え込んでんだよ」
ひょこっと現れたのはみんなの切島だ
「ん〜別に。ただ俺らも学園内だから安全だって思ってると足下掬われるかもしれねぇな〜って考えてただけだよ」
現にこないだの時みんなパニックになってたしよ
またあんな事が起こらないとは限らないじゃん
「それもそうだな。備えあれば憂いなしってやつか」
と切島は呑気に笑ってる
この時の俺は早々あんなことが起こるはずもない、と高を括っていたことを後悔することとなる
☆☆☆
「今日のヒーロー基礎学だが俺とオールマイトともう1人の3人で見ることになった」
午後の授業が始まるときに相澤先生がそう言った
「今回やるのは災害水難なんでもござれ、
レスキューか…
俺の個性じゃ上手いこといかないことのが多いだろうな
対人用の個性じゃ救助は難しい
「えー、今回コスチュームの着用は各自の判断に任せる。活動を限定するコスチュームの存在も確認しているからな。それに訓練場所はここから離れた場所にあるからバスで移動することになる。それでは一時解散10分後にバスの待機してある場所に集合だ」
という相澤先生の話を聞いて各々準備に取り掛かる
因みに俺はコスチュームを着るぞ
俺のコスチュームには特にこれといった特殊な加工されたものとか含まれてないからな
本当にただの見た目だけの服だ
爆豪みたいなチャージする籠手なんかねぇし
つーことで俺は普段通りさっちんスタイルだ
そんなこんなでバス移動の最中だがみんなこのあいだの戦闘訓練でみた他の生徒の個性について話し合っていた
この手の話になるとほぼ確実に俺が話題に上がるため個人的には避けたいものだったのだが案の定というわけか俺に白羽の矢が立った
「あ、あの、僕よりも嶽君の個性がなんなのかの方が気になるな…なんて…」
自分へ向いたヘイトを全て俺に丸投げした緑谷は今度何かしらの10割コンボ叩き込む
「説明めんどくさいから切島頼んだ」
「はぁ!?俺かよ!」
ぶっちゃけこれは避けては通れない道だっただろうから切島に話しておいたんだがな
こうやって丸投げするために
「えっとな、こいつのはなんか格ゲーの技が使えますよって個性らしい。だから対人戦は滅法強いけどそれ以外は点でダメなんだってよ」
「か、格ゲー?」
「俺も格ゲーには詳しくないけどこいつ入試で昇竜拳であのでっかいやつ倒してるんだよ。俺見てたんだけどあの光景だけははっきり覚えてる」
切島の言葉に嘘はない
もっと細かく見ていけば違うのだが概ね合っている
というよりも俺の個性は他人が理解することはほぼ出来ないから他人に説明させるのが一番なんだよな
「けどそれって…」
「俺の個性で繰り出される技は俺の気分次第で無限に広がっていく。つまり俺の個性はタネが割れても相手に何1つ情報アドバンテージを一切与えないという点にこそ真価がある」
ヒーローとして一番されてはいけないこと
それは自分の個性に対して対策を取られること
「けどそれだけが俺の個性の利点ってわけじゃない。そこで聞きたいんだが爆豪君。俺の被害者第一号にしてウルフファングを喰らった感想を教えていただきたい」
「あ!?なんかいきなり体が全く動かなくなって気付いたらぶっ倒れてたんだよ!!」
流石性格まで核弾頭
ちょっとした煽りですらこれだ
けどちゃんと答えるあたりやっぱこいつ素直な奴だわ
「今爆豪が言った通り俺の技の一部は相手の動きを止める性質を持つ。ま、格ゲーっていえば必殺技があるだろ?それを当てたら特殊演出が入るものってがある。いい例がトドメ演出だな。その演出の間って当たり前のことだけど敵は動かないだろ?それが俺の個性でもちゃんと再現されてるわけ。だからあの時俺に掴み技を爆豪に当てた時点でトドメのウルフファングまでのルートが確立したんだよ。つまりあの時点で爆豪の負けは確定だったってことになる」
例を軽く交えたが実際は格ゲーをやるのが一番わかりやすい
今度携帯機持ってきてKOF辺りをやらせてみるか
他に動きを止める手段としては時止めなどがあるがこれは例外としておこう
時を止められるなんて言えば峰田辺りがうるさいことになる
「とまぁ、こと対人戦に限れば俺はこの中で誰にも負けるつもりはない。こればっかりは譲らないがそれ以外となるとダメだ。今からやるレスキュー訓練がいい例だな。俺の個性は助けるということだけはできない」
使い方を上手くすれば助けられる事もあるだろう
だがそれは全て何かを倒すことで結果として他者が助かったという事実が生まれた場合だけだ
「要は適材適所って話なんだがな。これからやる訓練だって俺は真剣にするが戦闘訓練の時みたいなことが出来るなんて期待はしないでくれな」
俺はなんでもできそうみたいに思われちまったらめんどくさいのでさっさと弱点を曝け出す
個性の幅があるため戦闘での情報アドバンテージは確実に取ることはできないがさっき言ったような守る戦いや救助を目的とした仕事、そして一番やられて困るのが人質を取られること
こうなってしまったらいくら俺の個性が幅が広く有用だとしても全く機能しなくなる
そういった面をどれだけ改善させることができるのか、という部分を俺は伸ばしていかないといけない
対策取られることが分かってるならそれに対策取らないとヒーローとしては失格だろうからな
と、こんな感じで各々自分の個性について話をしていると訓練会場に到着した
そこは様々なシチュエーションが想定された特設施設だった
火災、水難、震災etc
ウソの災害や事故ルーム通称USJだ
確かにこんな施設学園内に作ってたら敷地が足りないな
そしてこの場所の説明をしていたスペースヒーロー「13号」が真剣な雰囲気で語り始める
なぜ13なのかはしらん
「皆さんご存知だとは思いますが僕の個性は『ブラックホール』です。どんなものでも吸い込み塵にすることができます。それを使って数々の災害から被災者を救ってきました。ですがこれは使い方次第で簡単に人を殺せる力です。皆さんのなかにもそういった個性の方がいるかと思います。今の超人社会は個性の使用を資格制にして厳しく規制したことで成り立っているように見えますがこれは一歩間違えれば誰でも容易に人を殺せる強大な力を持っているということに繋がることを忘れないでください」
13号の言葉は全て真実である
故に俺たちの心の中にストンと入ってくる
誰よりも人を助けたい、そういった思いを持ったヒーローだからこそ人の命の尊さを理解している13号の言葉だからだ
「相澤先生の体力テストで自身の力の可能性を知りオールマイトの対人戦闘でその力を人に向けそして向けられるという怖さを体験したと思います。ですがこの授業ではこれまでとは全く逆、人命のために個性をどう活用するかを学んでほしいのです。君達の力は必ずしも他者を傷付けるためだけにかるのではないということを、助けるためにあるのだということを心に刻んで帰ってください」
ご清聴ありがとうございました
と13号は締めくくった
俺はこれがヒーローなのかと理解した
オールマイトのようなどんな敵でも倒すことだけがヒーローの姿ではないと肌で理解できた
だがそんな人命救助の訓練が無事に行われることはなかった
誰が予想できただろうか
突如歪んだ空間からわらわらと現れる人人人
その全てが明確な敵意と悪意を孕んでいる
「なんだありゃ?入試の時みたいなやつか?」
「馬鹿か!そんな悠長なことしてる暇あったらもっと危機感持て!ありゃ
切島が素っ頓狂な声をあげたので周りを見渡したが敵意と悪意を理解しているものが一切居なかったため思わず声を荒げる
それを聞いたクラスメイトたちは一斉に構えをとった
俺たちはここで初めてプロが何と戦っているのか何と向き合っているのかを理解する
「あれ、オールマイトがいるという情報を得て来てみたのですがいないようですね」
「あぁ〜、せっかく大衆引き連れて来たってのに平和の象徴がいないなんて…」
その圧倒的な悪意を…
「子供たちを殺せば嫌でも現れるよなぁ!」
真っ黒な底のない暗黒を…