迷宮図書館の館長さん【休載中】   作:零崎妖識

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ギャリー視点オンリー。夏流涙目。


五頁目「また会えた」

街を歩く。友人ーーいや、今となっては世界で一番大切な人ーーとの待ち合わせ場所に向かっている。彼女はもう待ってるかもしれない。やっぱり、彼女はもう待ってた。

 

「ごめんなさい。待たせたかしら、イヴ」

 

「ううん、私も今来たところだよ。ギャリー」

 

 

 

 

アタシ達は数年前、とても恐い出来事に巻き込まれた。ある美術家の展覧会に来ていたアタシ達は、その美術家の世界に取り込まれてしまったのだ。その美術家の名は、ワイズ・ゲルテナ。最高クラスの才能を持っていた美術家だ。彼らが遺した作品達は皆命が宿っているかのようで、実際、仮初めとはいえ命を持っていたのだ。アタシは、そこで二人の少女と出会った。

 

イヴ、そしてメアリー。

 

三人で脱出しよう、一緒にマカロンを食べようーーー

 

そう、誓った。

 

しかし、それが叶うことは無かった。

 

メアリー。彼女の父はゲルテナだった。ゲルテナは生涯独身であり、子供はいない。つまり、彼女はゲルテナの作品だと言うこと。

 

彼女は外へ出たがっていた。しかし、外へ出るには、誰かと存在を交換しなければならかった。それを知ったメアリーは、自分を悪役へと仕立て上げ、アタシ達に自ら(Maryの絵画)を燃やさせたのだ。アタシ達がそれを知ったのは、燃やし尽くした後。青い人形が教えてくれた。

 

アタシとイヴは、事件の後、すぐに再会出来た。もっとも、記憶は封印されていたのか、イヴはレモンキャンデーを食べるまで、アタシはイヴから借りた、彼女の名前が刺繍されているハンカチを見るまで思い出せなかったのだが。

 

「ギャリー、着いたよ」

 

暫くして、イヴはアタシに告白してきた。説得はした。自分なんかより良い相手がいると。けれど彼女は聞かなかった。だから、条件を付けた。三年間、アタシのことを好きでい続けたら、付き合っても良い、と。一昨日がその三年目。アタシ達は結婚を前提に付き合い始めた。今日はイヴの両親への挨拶をしに、イヴの家へと来たのだ。

 

「開けても良いかしら」

 

「うん、良いよ」

 

扉を開けて中へ入る。が、床を踏みしめる感覚が無い。見ると、両端がリボンで結ばれた、暗い内部に目が蠢く空間が口を開けていた。

 

「へっ、キャアアアァァっ!?」

 

「ギャリー!?」

 

慌てて中へ入って来たイヴも落っこちる。

 

長い様な短い様な浮遊感の後、突然視界が開けて背中に硬い物があたる。

 

「痛っ」

 

「きゃうっ」

 

イヴがアタシの上にのしかかる。

 

「あっ、ギャリーごめんなさい!平気!?」

 

「アタシは大丈夫。それよりここは……?」

 

 

 

「ほんとに、ほんとにイヴとギャリーだ……!」

 

 

 

背後から聞こえてきた、聞き覚えのある声。しかし、彼女は焼滅したはず、アタシ達が、燃やしてしまったはずーーー

 

「また会えた!やった!久しぶり!イヴ!ギャリー!」

 

振り返ると、そこには記憶と寸分違わぬ、メアリー(と青い人形三体)が立っていて、アタシ達に抱き付いてきた。

 

 

「私、主人公のはずなのに空気……」




次回、シリアスブレイク。

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