迷宮図書館の館長さん【休載中】   作:零崎妖識

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作中で出た本は後書きで解説します。


一頁目「お客さん」

夏流はある人物と会っていた。人物というか、人外なのだが。

 

【パチュリー・ノーレッジ】

 

西洋の東洋魔術師と呼ばれる、七曜の魔女である。

 

彼女は夏流の親友であり、同時に、図書館のお得意様でもあった。

 

パチュリー自身も大図書館を紅魔館の地下に持っている。何故この図書館に来るのかと言うと、彼女が知らない本が大量に存在しているからである。

 

もちろん、彼女も本の提供はした。しかし、パチュリーの図書館の蔵書量をもってしても、ここの蔵書量には全く敵わないのである。

 

「精霊魔法に関する本って置いてある?」

 

「在るけど、前読んでなかったっけ?」

 

「確認し直したいのよ。一度目と二度目だと、大分印象が変わることが多いもの」

 

「そ。じゃあ、パラケルススの四大精霊を呼び出せる、〔妖精の書〕で良い?」

 

「確か、炎の精霊(ジン)を呼び出せる奴も無かった?」

 

「〔千の嘆きの書〕ね。両方、次の満月までが期限よ」

 

「ありがとう。今度、咲夜の紅茶を持って来るわ」

 

バタンッ

 

「夏流ー、パチェこっちにいるかしらー?」

 

「あら、レミィ。パチェがここにいるって確信して来てるでしょ?」

 

「様式美ってヤツよ。パチェ、一仕事お願い出来るかしら」

 

「はいはい、わかったわ。じゃ、次の満月までにはちゃんと返すわ」

 

キィ、バタン

 

「ふぅ、さて、何を読もうかな〜」

 

コーヒーを注ぎながら、次読む本を思案する少女。だが、コーヒーを淹れ終わった直後、新たな客がやって来てしまった。

 

「……此処は、一体……」

 

 

少女は怒っていた。繰り返す事しか出来ない自分に対して。

 

「また、ダメだった……!」

 

さて、このセリフで、解る人は解るだろう。時間を遡りある少女を救おうとする少女。暁美ほむらである。

 

彼女は時間を遡っている最中だった。つまり、時間の境界を超えようとしている最中なのだ。

 

だからこそ、彼女は招かれた。

 

「……此処は、一体……」

 

 

黒髪ロングで、学校の制服を着た少女が入ってきた。

 

「いらっしゃい」

 

「……貴女は誰かしら。此処は何処なのか、きっちり答えて貰うわよ」

 

夏流へ向けて拳銃を構える少女。対して夏流は、一冊の本を開き、

 

「迷宮図書館へようこそ」

 

挨拶をした。

 

 

「随分余裕ね。貴女、銃を突きつけられてるのよ?」

 

「防げるモノを何で恐れなきゃならないの?」

 

「……貴女は何者なの」

 

「迷宮図書館館長、水華夏流」

 

「此処は何処かしら」

 

「迷宮図書館。迷い辿り着く迷宮の書架。ま、ゆっくりしていきなさい」

 

「ふざけないで。……此処が魔女の結界だとしたら、貴女を殺せば出れるかしら?」

 

「結界は張られてるけど、多分貴女が思ってる結界と私が張ってる結界は違う」

 

タァン

 

「……いきなり何するの。驚いたじゃない」

 

「……何で弾が急に止まったのかしら」

 

銃弾は、謎の少女ーーー水華夏流の前で止まっていた。

 

「〔ステュクスの盾の書〕。一千の槍でも貫けない最強クラスの防護結界を張る幻書。貴女が何をしたいのか解らないけれど、悩みを聞くぐらいなら出来る。何故、そこまで焦っているの?」

 

「……まどかを、大切な人を守らなきゃいけないの。貴女にかまってる暇はない」

 

「……まどか、ね」

 

一冊の本を虚空から取り出す夏流。

 

「見つけた。鹿目まどか、見滝原中所属の女子。大きな因果を抱えている。関連項目として何人かの名前が在るけど……暁美ほむら、であってる?」

 

「ッ!?……何でわかったの?」

 

「曰く、出来事の方から書き込まれる辞書。出来事自身が書き込むから、何でも解るの」

 

「……なら、ワルプルギスの夜の攻略法も載ってるのかしら?」

 

「さあ?もう戻しちゃったし、解らないわね。取り出すの面倒だし」

 

「……此処は、図書館って言ってたわよね」

 

「ええ。どんな本でも在るわ」

 

「なら、ワルプルギスの夜に勝てる本はあるかしら」

 

「もちろん、色々あるわ」

 

「なら、貸して貰えるかしら?必要なの」

 

「いつ、ワルプルギスの夜とやらと闘うのか知らないけど、直前に借りに来なさい。貸し出し期限をオーバーするかもしれないし」

 

「如何すれば此処に来れるの?」

 

「此処に来たいと念じながら、何かの境界を越えなさい。鳥居をくぐるでもいいし、部屋を移るでもいいし。そうすれば、此処に来れる」

 

「……また来るわ」

 

「ええ。何時でも歓迎するわ」

 

扉を開け、図書館を出る。すると、いつも通りのーーーループ直後の病室に辿り着いた。夢だったのか、そう思ったが、拳銃の弾は確かに減っている。少しぐらい、期待してみるのも、いいかもしれない。

 

 




〔妖精の書〕
パラケルススの四大精霊を召喚出来る。出典は【ダンタリアンの書架】。名前が載って無かった気がするので名前は創作。

〔千の嘆きの書〕
炎の精霊を召喚出来る。【ダンタリアンの書架】出典。

〔ステュクスの盾の書〕
一千の槍でも貫けない盾。【ダンタリアンの書架】出典。

〔辞書〕
名前無し。とあるSSに載っていたアイテム。【人類は衰退しました】と【魔法少女まどか☆マギカ】のクロスSS出典。題名は【魔法少女は衰退しました】。


だいたいがダンタリアンの書架から出ている状況。

追記 パラケルススの本、ダンタリアンの書架一巻に名前載ってたので変更
【精霊の書】→【妖精の書】

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