夏流はある人物と会っていた。人物というか、人外なのだが。
【パチュリー・ノーレッジ】
西洋の東洋魔術師と呼ばれる、七曜の魔女である。
彼女は夏流の親友であり、同時に、図書館のお得意様でもあった。
パチュリー自身も大図書館を紅魔館の地下に持っている。何故この図書館に来るのかと言うと、彼女が知らない本が大量に存在しているからである。
もちろん、彼女も本の提供はした。しかし、パチュリーの図書館の蔵書量をもってしても、ここの蔵書量には全く敵わないのである。
「精霊魔法に関する本って置いてある?」
「在るけど、前読んでなかったっけ?」
「確認し直したいのよ。一度目と二度目だと、大分印象が変わることが多いもの」
「そ。じゃあ、パラケルススの四大精霊を呼び出せる、〔妖精の書〕で良い?」
「確か、炎の
「〔千の嘆きの書〕ね。両方、次の満月までが期限よ」
「ありがとう。今度、咲夜の紅茶を持って来るわ」
バタンッ
「夏流ー、パチェこっちにいるかしらー?」
「あら、レミィ。パチェがここにいるって確信して来てるでしょ?」
「様式美ってヤツよ。パチェ、一仕事お願い出来るかしら」
「はいはい、わかったわ。じゃ、次の満月までにはちゃんと返すわ」
キィ、バタン
「ふぅ、さて、何を読もうかな〜」
コーヒーを注ぎながら、次読む本を思案する少女。だが、コーヒーを淹れ終わった直後、新たな客がやって来てしまった。
「……此処は、一体……」
☆
少女は怒っていた。繰り返す事しか出来ない自分に対して。
「また、ダメだった……!」
さて、このセリフで、解る人は解るだろう。時間を遡りある少女を救おうとする少女。暁美ほむらである。
彼女は時間を遡っている最中だった。つまり、時間の境界を超えようとしている最中なのだ。
だからこそ、彼女は招かれた。
「……此処は、一体……」
☆
黒髪ロングで、学校の制服を着た少女が入ってきた。
「いらっしゃい」
「……貴女は誰かしら。此処は何処なのか、きっちり答えて貰うわよ」
夏流へ向けて拳銃を構える少女。対して夏流は、一冊の本を開き、
「迷宮図書館へようこそ」
挨拶をした。
☆
「随分余裕ね。貴女、銃を突きつけられてるのよ?」
「防げるモノを何で恐れなきゃならないの?」
「……貴女は何者なの」
「迷宮図書館館長、水華夏流」
「此処は何処かしら」
「迷宮図書館。迷い辿り着く迷宮の書架。ま、ゆっくりしていきなさい」
「ふざけないで。……此処が魔女の結界だとしたら、貴女を殺せば出れるかしら?」
「結界は張られてるけど、多分貴女が思ってる結界と私が張ってる結界は違う」
タァン
「……いきなり何するの。驚いたじゃない」
「……何で弾が急に止まったのかしら」
銃弾は、謎の少女ーーー水華夏流の前で止まっていた。
「〔ステュクスの盾の書〕。一千の槍でも貫けない最強クラスの防護結界を張る幻書。貴女が何をしたいのか解らないけれど、悩みを聞くぐらいなら出来る。何故、そこまで焦っているの?」
「……まどかを、大切な人を守らなきゃいけないの。貴女にかまってる暇はない」
「……まどか、ね」
一冊の本を虚空から取り出す夏流。
「見つけた。鹿目まどか、見滝原中所属の女子。大きな因果を抱えている。関連項目として何人かの名前が在るけど……暁美ほむら、であってる?」
「ッ!?……何でわかったの?」
「曰く、出来事の方から書き込まれる辞書。出来事自身が書き込むから、何でも解るの」
「……なら、ワルプルギスの夜の攻略法も載ってるのかしら?」
「さあ?もう戻しちゃったし、解らないわね。取り出すの面倒だし」
「……此処は、図書館って言ってたわよね」
「ええ。どんな本でも在るわ」
「なら、ワルプルギスの夜に勝てる本はあるかしら」
「もちろん、色々あるわ」
「なら、貸して貰えるかしら?必要なの」
「いつ、ワルプルギスの夜とやらと闘うのか知らないけど、直前に借りに来なさい。貸し出し期限をオーバーするかもしれないし」
「如何すれば此処に来れるの?」
「此処に来たいと念じながら、何かの境界を越えなさい。鳥居をくぐるでもいいし、部屋を移るでもいいし。そうすれば、此処に来れる」
「……また来るわ」
「ええ。何時でも歓迎するわ」
扉を開け、図書館を出る。すると、いつも通りのーーーループ直後の病室に辿り着いた。夢だったのか、そう思ったが、拳銃の弾は確かに減っている。少しぐらい、期待してみるのも、いいかもしれない。
〔妖精の書〕
パラケルススの四大精霊を召喚出来る。出典は【ダンタリアンの書架】。名前が載って無かった気がするので名前は創作。
〔千の嘆きの書〕
炎の精霊を召喚出来る。【ダンタリアンの書架】出典。
〔ステュクスの盾の書〕
一千の槍でも貫けない盾。【ダンタリアンの書架】出典。
〔辞書〕
名前無し。とあるSSに載っていたアイテム。【人類は衰退しました】と【魔法少女まどか☆マギカ】のクロスSS出典。題名は【魔法少女は衰退しました】。
だいたいがダンタリアンの書架から出ている状況。
追記 パラケルススの本、ダンタリアンの書架一巻に名前載ってたので変更
【精霊の書】→【妖精の書】