あれから3日経った。冬也君は帰ってこない。私もほのかも達也お兄様もエリカも美月も西城くんもスケット部の皆様も探してくれたりしたが、見当たらなかった。
それもこれも、全部小さい子供にムキになって喧嘩してしまった私の所為……チンカスたぬきの所為……。
「はぁ………」
街を探している中、ため息が漏れた。
その時だ。私の前にアイアンマンが降りてきた。こんなものを使えるのは世界中探しても一人しかいない。
「! 冬也くん?」
『………………』
「どこに行ってたのよ!探したんですよ!?」
『………………』
「聞いてるの!?」
返事がないけど、私の心はホッとしていた。良かった……テロリストに捕まっていたりなんてしたらどうしようかと……。
そう思ってると、アイアンマンは私に右手の平を向けた。
「えっ?」
「深雪!」
いち早く気付いた達也お兄様が私を抱えてギリギリ回避した。
「きゃっ……!?」
転がりながら受け身を取り、CADをアイアンマンに向ける。
「待って下さい!中は冬也くんなのでは……!?」
「顔が見えていない。何者かは知らないが、冬也お兄様と同じようにスーツを開発した者だと思うのが妥当だろう」
「あんなもの作れる馬鹿は冬也お兄様しかいません!」
「た、確かに……!」
達也お兄様は攻撃を中止して、距離を取った。
すると、街の至る所からアイアンマンスーツが飛び上がり、横に並んだ。合計50体はいる。
「! なにあれ!?」
「いや、アイアンマンだろ」
「そういうことじゃなくて」
一緒に探してくれていた人たちが周りにわらわらと集まって来た。
すると、アイアンマンの一機から機械音声が聞こえてきた。
『あっあー、マイクチェック、ワン、ツー』
「…………?」
『我々は反魔法政治団体「町内会」』
えっ?どっち?反魔法政治団体なのか町内会なのか。
「貴様ら、何者だ?目的はなんだ?」
普段のバカやってる時とは大きく違う声で十文字先輩が聞いた。流石、十師族と思わせるオーラがある。
『我々の目的は、世界征服だ!』
反魔法でもなんでもない!というかどんだけザックリした説明してんの!?
「なら、ここで貴様らの野望は打ち砕かせてもらおう」
『やれるものならやってみろ』
「そうさせてもらおう」
『この中に一人、弟がいる!』
「………は?」
『司波冬也がこの中に一人いると言っているのだ。それでも貴様らに攻撃できるなら、やって見せてもらおうか』
「…………なんだと?」
『フハハハハ!攻撃出来るものならしてみろ!!』
確かに、まずいわね……。ボイスチェンジャーを使っているからどれが本物かなんて分からないし、冬也お兄様の作ったアイアンマンはどんな身長でも操れるのよね……。
万が一、一人殺してそれが冬也くんだったら……四葉の次期当主が死ぬ。冬也お兄様ならそんな簡単にはやられないでしょうけど、今は子供だ。
そこらの三流テロリストにここまで追い詰められるなんて……!
私達は奥歯を噛み締めた。その直後だ。
『んっ……』
一人のアイアンマンから声が漏れた。
『あれっ、なんで俺アイアンマンの中にいんの?確かデンドロビウムで爆発して、それで……あーもしかして幼児退行防衛モードに入ったのか』
あ、元に戻った。
『で、これなんの騒ぎ?』
『お、おーい冬也くん?君何してんの?頼むよ、ちゃんと打ち合わせ通りにやってよ。君の考えた作戦だろ?』
『誰だお前』
『』
『なーんか、みんな下に揃ってるし、よう分からんけどなんでお前俺のアイアンマン着てんの?』
お前があげたんだろ。
『さてはテメェら、泥棒だな?』
いえ、テロリストです。
『まぁ、俺のアイアンマンを盗み出したことは褒めてやる。だから、俺が引導を渡してやる』
言うと、冬也お兄様のアイアンマンは他のアイアンマンに手をかざした。
『ふん、寝返ったか!だが貴様とは違い、私達のアイアンマンは49体……この差に勝てるかな!?』
直後、アイアンマンのうちの一人が消えた。
私の隣の達也お兄様がCADを向けていた。
「敵は一人ではないぞ」
うふふ、そうね。どんな事情であれ冬也くんを誘拐した罪は償ってもらうわ?
うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。
『そういうわけだ、えと……変なオッさん達』
『グッ………!!』
『闇の炎に抱かれて消えろ』
そう言うと、本当に真っ黒な炎を手から出した。
『魔鳳炎閃波!!』
直後、敵のテロリスト達は出て来た黒い炎に次々と吸い込まれていった。
そうなのよね……うちの兄はあのアニメの妄想ぜんぶ実現出来るのよね……。
『あ、アイアンマンスーツは返せよ』
燃やした敵からアイアンマンスーツだけを取り出した。
もうなんでもありね。
卍解は出そうと思ったけどやめました。
次の来訪者編で出します。