「全員気を引き締めて……!」
呂剛虎がそう言いかけた所で、呂剛虎の部隊を挟むように紫色の光の壁が出てきた。全員がその壁に目を奪われてる中、冬也が両手を前に突き出してパンッと手を叩き、敵部隊を全員、文字通り潰した。瞬殺である。
「藤林少尉?終わりました」
『あのさぁ……早くない?』
「まぁ、あんなのに時間かけていられませんし」
『相手、一応近接なら世界で五本指に入る相手なんだけど。何のために前話、二人が相対したところで切ったと思ってるの?』
「知りませんよ、そんな事。それより、魔法協会支部にもう一人誰かいますよ。ボスが」
『それ「誰か」じゃなくてボスよね』
「捕らえます?」
『お願い』
10秒後、捕らえた。
*
大体、というかもろ片付き、モンスター達も自分達の作品に帰った。残りは海の相手だけだ。
「逃げ遅れた敵兵は後詰めの部隊に任せて我々は直接敵艦を攻撃、航行能力を破壊する!」
柳はそう言うと、達也を含む部隊を連れて空中から迫った。その柳の耳に藤林の声が入った。
『柳大尉、敵艦に対する直接攻撃はお控え下さい』
「藤林、どういうことだ」
『敵艦はヒドラジン燃料電池を使用しています。東京湾内で船体を破損させては水産物に対する影響が大き過ぎます』
「ではどうする」
『退け、柳』
「隊長?」
突然、風間の声が入った。
『大黒ウィンター・エクゾディア・ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが攻撃準備に入ってる』
「了解です」
『こちら、大黒ウィンター・エクゾディア・ルルーシュ・ランペルージ。攻撃準備整いました』
『よし、やれ』
すると、まだ目視出来る距離にいる敵艦隊の真上に、紫色の魔法陣が、無数に縦に並んだ。最上階は火星と木星の間まで続いている。
『軌道エレベーター、発動』
直後、敵艦はその魔法陣の跡を沿って、宇宙まで駆け上がったあと、爆発した。
「………前から思ってたけど、なんかあいつだけ魔法の種類が違うような」
ポツリと、柳が呟いた。
*
場所が変わって、対馬要塞。大亜連合艦隊が出撃準備に入っているからだ。
独立魔装大隊の面々はそこの作戦室にいた。
「本格的に戦争を始めるつもりでしょうか」
若い少尉から質問が飛んだ。
「彼らは三年前からずっと戦争中のつもりなのだろうな」
そう答えたのは、柳だ。
「そうだな。我が国と大亜連合の間では、講和条約どころか休戦協定も結ばれていない。艦隊の動員について一言も通告がないということは、我が国はこれを攻撃準備と解釈しても構わないと考えているのだろう」
風間の言葉に全員が耳を傾けた。
「既に動員を完了している敵艦隊に対し、残念ながら我が海軍は昨日より動員を開始したところだ。現状では敵の海上兵力に、陸と空の兵力で対抗するしかない。苦戦は免れないだろう」
全員の顔が一気に引き締まる。
「そこで、この現状を打開するため、我が独立魔装大隊は戦略魔法兵器を投入する。本件は既に統合幕僚会議の認可を受けている作戦である。ついては第一観測室を我が隊で借り受けたい。また攻撃が成功した場合、それと同時に……」
そこで、達也は説明を聞くのをやめた。戦略魔法兵器、と聞いた時点で自分のやることはそこで終わりだと思ったからだ。だが、違った。
「では、大黒ウィンター(以下略、つーか長ぇんだよ)特尉。頼む」
「了解。あ、せっかくだから試作機試してもいいですか?」
「構わん。確実に敵を仕留められるならな」
「第一観測室からじゃ狙えないんですけど……」
「なら、外で待機しろ」
あれっ?俺じゃないの?みたいな顔をした。当然だろう。
冬也は基地の外に出た。
*
第一観測室。独立魔装大隊の幹部たちは、ここから外の冬也をモニタしていた。冬也は異空間から超大型CADを取り出した。
15メートルほどの砲塔、二つのアホデカいマイクロミサイルコンテナ、大型集束ミサイルも二つ、長い二つのアーム、その他諸々の兵器が詰め込まれた前後に長いその姿は………、
『ただのデンドロビウムじゃねえかああああああ‼︎』
観測室から全員のツッコミが響く中、冬也はアイアンマンスーツを装着して中央に乗り込んだ。ある意味、夢のコラボレーションである。
『大黒ウィ……いや、コウ・ウラキ?攻撃は可能か?』
「いけるぞ、キャプテン」
『殴るぞおま……いや、もういいや。好きにして』
「了解。突貫します!」
冬也はそう言うと、デンドロビウムを出発させた。
10メートルほど進んだ後、爆発した。
『』
『』
『』
『』
全員が黙り込んで、モニターでその様子を眺めてると、爆発した所から、ポチャンとアイアンマンのマスクが落ちた。
『何してんのお前えええええええ‼︎⁉︎』
全員のツッコミが炸裂した。
結局、敵艦隊は達也のマテリアル・バーストで壊滅させた。