十文字と一条は、ある意味最強の盾と矛だった。
爆裂とファランクス、それの両方が上手い事重なり合い、敵を片っ端から片付けつつ、魔法協会支部へと歩を進める。
(俺、出番ねーな)
後ろでついていきながら、和寿はそう思った。
*
冬也は空中から敵の位置を把握していた。人や直立戦車などを上空から見下ろしながら、魔法を発動。
右手から焼却砲を出した。青白いビームのようなものが直立戦車に直撃し、一撃で燃やし尽くした。
「おい見ろ!アイアンマンだ!」
「うおお!マジかよ!」
「怯むな!奴はアタッシュケースからアイアンマンになった癖に飛んでいるぞ!偽物だ!」
大亜連合の面々が空中を自由に駆け回る冬也に集中砲火する。それを回避しながら冬也は新たな魔法を発動、すると、空中から紫色の魔方陣が出てくる。
その魔法陣から、金色のヤケに細いドラゴンが降りて来た。いつの間にか、青と赤の鎧に着替えた冬也が、そのドラゴンの背中に跨った。
「あ、あれは!」
「竜騎士ガイア!」
「懐かしい!」
そして、冬也は……いや竜騎士トウヤはランスを構えた。赤いランスを敵に向け、緑色のオーラを纏い始める。
「螺旋槍殺!」
そこから出た緑色の何かが敵の兵隊を全員叩きのめした。
「うおおお!」
「永続魔法じゃなかったっけあれ⁉︎」
「もうメチャクチャだよ!」
メチャクチャだった。
*
「………何をやってるんだあの人は」
遠目からその様子を見ていた達也は、思わずそう呟いた。
「どうした、特尉」
「いえ、大丈夫です。あちらは竜騎……ウィンター・エクゾディア・ルルーシュ・ランペルージ特尉に任せ、我々は別ポイントに向かいましょう」
「そうだな。奴の近くにいると我々の身が危ない」
直後、轟音と熱気が遠くから聞こえた。何事かとそっちを見ると、冬也の周りに魔法陣がさらに三つ出て来た。
一つ目から出てきたのは、真っ白の悪魔のようなモンスターだ。
「デーモンの召喚⁉︎」
「ほんと懐かしいチョイスだなオイ!」
さらに、二つ目からは何かが合体したようなロボットが現れた。
「マグネット・バルキリオン⁉︎切り札が勢ぞろいだ!」
「ということは、最後は一番の相棒とも呼べる……!」
三つ目、ブラックマジシャン・ガール。
「「お前の趣味じゃねえかああああ‼︎」」
二人の空中飛び蹴りが冬也の顔面に直撃した。
「痛っ!何するんすか!達也、やなぎん!」
「ブラックマジシャンじゃないんですか⁉︎そこまで面子を揃えておきながら!」
「てか、誰がやなぎんだ!女子高生でもないし異常でもねぇよ!」
「いいじゃん。かわいいじゃんブラックマジシャン・ガール」
「そんな、マスター……可愛いだなんて……」
「頬を染めるな!てか意思あるのかあんた!」
「そういうわけだから、達……竜也も黒柳徹子さんも持ち場に戻って下さい」
「だぁれが黒柳徹子だああああああ‼︎」
「柳大尉、行きましょう」
「お前あとでほんとマジ覚えてろ」
「あ、じゃあお二人にお守りってことで」
冬也はさらにモンスターを2体出した。達也と柳の周りに出て来るクリボーとビッグ・シールド・ガードナー。
「では、お気をつけて。大黒竜也特尉、柳の下に土壌」
「今日くらい本気で殴り合うか?ん?」
「あ、そいつら二人とも守備力八億くらいあるから」
達也と柳は持ち場に戻った。
「さて、戦闘再開」
冬也も敵との戦闘に戻った。
*
一高前。他の高校の生徒達は、バスなりヘリなりで帰って行った。残りは一高と三高の生徒だけだ。
深雪と七草が全員の人数を数えた。
「やっぱり、達也お兄様と冬也お兄様、十文字先輩の姿がありません……」
「将輝もいないよ」
「それと、私のバカ兄貴も」
吉祥寺とエリカが二人に言った。
「まったく……申し訳ありません。うちの兄が」
「いいのよ。私達が無事に帰って来れたのは冬也くんのお陰だから」
「まぁ、そうですね。横浜はもう終わりですから」
「ん?ど、どゆこと?」
エリカが聞き返すと、深雪は澄ました顔で答えた。
「んー……簡単に言うと、魔界になっちゃう感じ?」
「………へっ?」
「魔法協会支部は魔王城になって、城の周りを守る悪魔、空中を守るドラゴン、海を守る魔獣が彷徨くような世界に……」
「魔界⁉︎」
「まぁ、冬也お兄様に少しでも理性があれば大丈夫だとは思いますが……」
あの冬也だからなぁ……と、全員が全員思った。
*
横浜。気が付けば、ほぼ全ての敵が片付いていた。空中からの攻撃、やられても達也による蘇生、そもそも作品が違う悪魔達の無双、他にも十師族次期当主二人の参戦などで、大亜連合は押されていった。
「ふぅ……こんなものか」
ガース・オブ・ドラゴンと分離した冬也は、辺りを見回して呟いた。その冬也の耳元に声が聞こえた。
『ウィンター・エクゾディア・ルルーシュ・ランペルージ特尉。聞こえますか?』
「はい」
藤林からだ。
『魔法協会支部の背後から少数による奇襲を確認。フリーなら相手してくれない?』
「了解、キャプテン」
『引っ叩くわよ』
「…………なんでみんなこれ言うと怒るんだろう」
冬也は羽を生やして急行した。
魔法協会支部の背後に3秒で到着すると、ズダンッと音を立てて着地した。目の前には、呂剛虎とその部下が数人立っていた。
「………お前は、魔術師。大黒・ウィンター・エクゾディア・ルルーシュ・ランペルージ」
「あれ?虎じゃん。どうしたのこんなとこで」