と、いうわけで、僕達はお化け屋敷に向かった。
「うう……吉田くん。実は私、余りこういうの得意じゃなくて……」
「大丈夫、柴田さんは僕が守るから」
はっ、しまった!つい、男前な台詞を!引かれてないかなぁ、と思って横を見ると、笑いながら言った。
「ふふ、じゃ、頼りにしちゃいますね」
よし!頼られた!ちなみに僕もお化け屋敷は得意じゃない。つーか大嫌いだ。だが、今の僕なら何物にも負けない。柴田さんパワーがあるからな!
二人でお化け屋敷の門を潜ると、まず現れたのは服部先輩だった。あ、これ僕だから分かるんだけど、服部刑子ね。お化け版の。
「ようこそ」
あ、もはや微塵の照れもない。ていうか、少し可愛いと思えるレベル。この人、段々慣れてきたな。女装趣味に走らないかどうか心配だ。
「ここは恐怖の館『鉄アレイ』」
いやどういうことだよ。意味わかんねーよ。
「あれ、怖いから気を付けて」
しかもテキトーだし。手抜きが目立つぞ服部先輩。まぁ、この分なら大して怖くないでしょ。
「じゃ、行こっか柴田さん」
「は、はい」
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。僕がいるし」
そう言いながら扉を開けた。直後、十文字先輩の白装束が現れた。
「うがあああああああああッッ‼︎‼︎」
「あーーーーーーーーーーッッ‼︎⁉︎」
すごい悲鳴が僕の口から漏れた。男女の壁を超えた甲高い声が響く。
「だ、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫………」
まーだ心臓バクバク言ってる……お、驚いた……。けど今のはイレギュラー。ゴリラの幽霊がいきなり出てきたら誰だってびびる。
「行こう」
「は、はい」
さらに中へ進む。流石、冬也さんと言うべきか、中は中々に凝っていた。雰囲気も出ていて、マジで霊いるんじゃねぇの?ってレベル。
「よ、吉田くん……私……」
ギュッと僕の腕に指を絡めてくる柴田さん。ちょっ、それ反則……。あとオッパイ当たってるから。反則。
二人で慎重にゆっくりと中を歩く。これ、僕一人だったら間違いなく奇声を上げながらガンダッシュしてたな……。
そのまま歩くこと5分。
「………なんか、何も出ませんね」
さっきまでの緊張感はほとんどなくなっていた。確かにさっきから何も出ない。こっそりと精霊を使って索敵していたのだが、それでも何か出る気配はない。
どうやら、この雰囲気のまま最後まで行くつもりらしい。ふん、甘いよ冬也さん。その程度のこと、看破すればこっちのモン……と、思った時だ。
ズガンッ‼︎という轟音が僕らの真後ろから響いた。恐る恐る後ろを見ると、全身緑色で身体が肥大化した十文字先輩が天井から降って来たようだ。
『ヴオオオオアアアアアアアッッ‼︎』
「今度はハルクぅううううう‼︎⁉︎」
渾身のツッコミと共に僕は柴田さんの手を引いて逃げた。猛然と追いかけて来るハル文字先輩。
マズイ、このままじゃ追いつかれる。すると、出口の光が見えた。あと少し……!あと少しで………!
仕方なく、僕は柴田さんの手を引っ張って、無理矢理前に投げた。
「! 吉田くん……⁉︎」
結果、柴田さんは外に脱出成功。だが、僕とハルクの距離は1メートルもない。ダメか……!そう思った時、「大男さん」と声がした。市原先輩がハルクの前で子守唄を唱え始めた。
………えーっと、なんだこれ。
*
「というか、これ僕ツッコむ為にデートしてるんじゃないの?」
さっきからアホな三文芝居を見せられているだけな気がする。と、思いつつも僕は何とかスルーしながら柴田さんと昼食を取った。あの後も色んなアトラクションに乗らされ、僕はツッコミ回る羽目になった。
だが、それももう終わり。時間も時間なので、最後に観覧車に乗った。
「ふぅ……なんか、ごめんね柴田さん。アホな目にばかり合わせて……」
「いえ、楽しかったですよ?色んなアトラクションに乗れましたし」
ええ子や……。気を使ってくれてるのかは分からないけど、本当に良い子だと思う。
「………柴田さん」
言っちゃおう。元々、その為に最後に観覧車に乗ったんだ。
「何ですか?」
「その、さ……僕……」
緊張する。桐原先輩はこんな緊張することを乗り越えたのか。
「…………僕、柴田さんのことが好」
「私もですよ?」
「早っ⁉︎」
「というか、気付いてましたし。冬也さんに教えてもらってましたから」
「…………じ、じゃあ、僕達は……」
「はい、こ、ここ恋人同士、ですね……」
自分で言いながら照れる柴田さんマジ可愛い。
「じ、じゃあ……その、よろしくお願い、します……」
「は、はい」
こうして、僕達は交際した。
はい幹比古終わりー。
そろそろ本編に戻ったほうがいいかな。