そんなわけで、達也お兄様と西城くんと吉田くんはモノリス・コードに出ることになった。
「なあ、幹比古……マジ?」
ホテルの一室、吉田くんが二人にそのことを言うと、西城くんから引いたような声が出た。
「マジだよ。冬也さんがね……」
「またあの人か……」
達也お兄様がおでこに手を当てる。
「でもよ、俺も……つーかお前もだろ。何も準備してないぜ?」
「大丈夫、七草会長達が準備してくれるみたいだからさ」
「まぁ、CADなら俺が準備しよう。一人10分あれば終わる」
達也お兄様が頼もしすぎるにもほどがある台詞を言った。
「作戦とかも俺に任せてくれ。ぶっつけ本番になるが、構わないな?」
「ああ、俺にゃそういうの向かないからな」
「僕も達也にお願いしたいな」
まぁ、達也お兄様が出るんだし、何とかなるだろう。私は自分の試合以上に、達也お兄様の試合が少し楽しみだった。
そういえば、冬也お兄様は今日部屋に来なかったけど、何処へ行ったんだろう。押し付けたら必ず面倒見る人なのに、どうしたのかしら。
*
翌朝。ニュースを見ていた私の目に飛び込んできたのは、横浜グランドホテルの一室が消滅したらしい映像。まるで、そこには元々何もなかったかのように。
「…………」
私は一発で誰の仕業か分かった。そんな事が出来るのは一人しかいない。
「また、先を越されたな」
私の隣で達也お兄様が呟いた。
「はい……」
「あまり気にするなよ深雪。入学間もない時と全く同じ手をやられたとか思うな」
「分かっています」
「さて、じゃあ俺はモノリス・コードの準備をして来る」
達也お兄様はそう言うと、何処かへ行ってしまった。私は歩いて会場へ向かう。その途中、話し声が聞こえた。
「……僕が、ですか?」
『ああ、タダでさえ練習なしの即興チームなんだ。誰一人欠けちゃいけないが、特に重要なのがお前だ。緊張感持って挑めよ』
「…………はい」
『大丈夫、幹比古の本来の力が出せれば勝てるよ』
「分かりました」
『勝ってこい、いいな?』
「ヤェス、マムッ」
『え? マム?』
吉田くんは元気に走って達也お兄様の方へ向かった。
*
モノリス・コード一回戦目。八高相手に森林ステージ。普通なら不利かもしれない。だけど、達也お兄様にとってはその程度は不利のうちに入らない。
ものすごい勢いで森林を移動すると、八高選手の魔法を術式解体で吹き飛ばし、モノリスを開く。
「やった! モノリスが開いたわ!」
その様子を見て、ほのかが嬉しそうに声を上げた。
「……おかしい」
「雫、何がおかしいの?」
「モノリスが開いたのに何故離脱するんだろう」
「そう言えば……ねっ、深雪はどう思う?」
「いくらお兄様でも、敵の妨害を前にして五百十二文字の打ち込みは難しいわ」
モニターではさらに試合が続く。西城くんが小通連で敵を吹き飛ばし、もう一人は吉田くんの罠に見事に掛かっている。
無類の強さを誇るこのチームはあっさりと八高を倒してしまった。
「勝った! 勝った!!」
「すごいすごいすごい! 完勝ですよ、完勝!」
「おめでとう、深雪!」
「お兄さん、やったじゃない!」
まるで優勝したような騒ぎだが、私からすればこの程度は「お兄様なら当たり前」だった。
*
二回戦目も勝利し、私は達也お兄様とお昼を取りに向かった。その途中、ヤケに人が集まっているところを見掛けた。行ってみると、そこは縁日だった。
「……………」
冬也お兄様と桐原先輩と服部先輩が、誰の許可を得てるのか勝手に飯を作っていた。メニューを見ると、焼きそばたこ焼き綿あめあんず飴かき氷……etc。
「………すごい繁盛だな」
「一つの屋台でよくそこまでやれるもんだ」
「三人でまわしてるのもすごいですよね」
「いや、四人だぞ」
吉田くんも参加してた。あの子モノリス・コードに参加するの忘れてないでしょうね。
ぶっちゃけ、この辺って達也無双だからギャグ入れにくいですね。上級生の出る幕なんてまるでないし。
とりあえず、モノリス・コードが終わったらもっとギャグ入れたいですね。