IS-Twin/Face-   作:reizen

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ということで今月分の投稿です。
もう一つはどうしたって? い、忙しいんですよ、色々と。

というか最近色々と趣味に目覚めたりしたので、そっち優先したり「これ絶対に環境破壊の一端を担ってるだろ」と声を大にして叫びたいとある書類にかかりきりになっていたり、そのせいで投稿遅れているだけなんです!

……本当はこれも、0時に投稿しようと思っていた(笑)


第7話 乱入

 ———ドォンッ!!

 

 吹き飛ばされた一夏はそのまま壁にぶつかる。あまりのことに驚きを隠せないセシリアは、それを行ったのがさっき自分が倒した静流だという事に気付くのが遅れた。

 そのせいか距離を詰めることを許してしまい、そのままメイスで顔面に一撃をもらう。

 

「くっ!?」

 

 すぐさま体勢を立て直したセシリアは自身のメインウェポンであるレーザーライフル《スターライトMk-Ⅲ》を静流に向ける。

 

「落ちなさい!」

 

 それをメイスで消した静流は対IS用手榴弾を展開してそれを左で投げる。本来なら山なりなのだが、まっすぐと飛んだことでセシリアの虚を突く。だが流石は代表候補生と言うべきか、セシリアは地面スレスレにまで下降して回避、機体に備わっているミサイル発射口2門から2発ずつ発射すると、《スターライト》でそれが当たらないように狙撃する。

 すると静流に通信が入り、真耶がいった。

 

『何をしているんですか、舞崎君! そんなことをしたら―――』

 

 静流は無言で通信を切り、目の前にいる敵に集中する。

 

「落ちなさい!」

 

 レーザー、そしてミサイル4基をまともに食らい、爆炎を起こす。

 

(これで少しは足止めをできればいいのですが、それにしても一体どうして―――!?)

 

 結論から言うと、全く足止めにならなかった。

 むしろまるで油断させるために少し間をあけたようで、そのままミサイルを思わせる猪突猛進で進む静流。セシリアはそれを狙撃し落とそうとするが、予測し、とても素人とは思えない絶妙な操作でレーザーを回避される。

 

(い、一体どうなって―――)

「弱いね」

 

 静流の手に握られている某RPGで戦士が持っている剣を模して造られた《ソルジャーソード》でセシリアの胴体を真っ二つするかのようにラインを描き、そのまま上に吹き飛ばした。

 

「がっ!?」

「予想以上に、弱すぎる」

「この―――」

 

 緊急復帰システムを使って彼女の機体に備わっている予備のビットを読み込ませる。本来競技中に使用すればルール違反となるが、今は静流の暴走という建前があるため、緊急時のシステムを使用したのである。もっともそれは一度しか使えないものだが。

 だがセシリアとて、一夏に暴露されたことで静流にも伝わっていることは理解している。

 それでもセシリアは自身の腕と相手の未熟さを信じて自機の名となった武装を信じたのである。

 

「わたくしを舐めないでくださいな!」

 

 4基のビット兵器が散開し、静流を仕留められる位置へと移動する。

 

「当たりなさい!」

 

 四方からのビットによる一斉射撃。静流はそれをフェードアウトするかのように移動する。

 

「かわした!?」

「なるほど。ISというものはこうもできるのか。流石に異空間に行くことはできないようだが―――それでも十分か」

「何を―――」

 

 ―――わけのわからないことを

 

 内心、セシリアはそう思っているが、すぐに戦闘へと思考を切り替える。静流の動きが先程とか各段に違うためであり、それが彼女の中にある恐怖を掻き立てていた。

 

 ———油断すると、殺られる

 

 ISには絶対防御があるため、死ぬことはない。が、それはあくまでISを展開する限りのことだ。ISを解除されれば人にISが攻撃すれば容易に死ぬ。

 セシリアはビットで牽制しつつ《スターライト》で狙撃するが、静流の独特の動きで絶妙なタイミングで避けられる。当たるとしても、両肩に浮いている非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)の防御シールドに当たる程度だ。しかしそれも高速で修復されていくので、実質ダメージは0である。

 

「こんな……こんなこと………」

 

 セシリアの顔が焦りに変わる。それを見てか観客席も今どんな状況か理解し始めた。

 するとビットがすべて爆散する。

 

「!?」

「何を驚いているの?」

 

 いつの間にか静流の両手には対IS用拳銃が装備されている。どうやらそれで撃ち壊されたらしい。

 

「君のビットパターンはすべて見切った。もっとも、自分が動けないという救いようがない弱点を抱えているようだけどね」

「………さっきまでのはすべて演技だった、ということですの」

「当たり前だろ? 僕が織斑を含めて家畜如きに本気で仲良くするわけがない」

「………家畜、ですって……」

 

 セシリアの手がわなわなと震え始める。だがセシリアはすぐに正気に戻ったが、目の前には打鉄の脚部装甲があった。

 それがセシリアの側頭部に当たり、そのまま観客席を守るように展開されるシールドバリアにぶつかる。

 

「まだですわ!」

 

 セシリアはすぐにさまミサイルを発射すると、静流はメイスを展開と同時に横に薙ぐ。すると先端が分離してアンカーとなり、ミサイルを破壊した。

 

「そんな!?」

「これを持ったら言わないとね……滅、殺!」

 

 メイスアンカーを巻き戻し、射出と同時に叫ぶ静流。セシリアは飛んでくるアンカーを回避し、アンカーがバリアにぶつかって反射されるが静流はそのまま力任せに振り抜き、バリアから音を上げつつ移動させてセシリアの左肩にぶつける。

 

「ま、まだですわ!」

「そう」

 

 ———ドゥルルルルルルルルルルルッッ!!

 

 静流の手元で不気味なエンジン音が鳴り響く。だが本人は気にせずそのまま突っ込み、持っていた武器でセシリアの首を掴んだ。

 

「こ、これは―――」

「アンタみたいなのがいるから、世界はぁあああああ!!!」

 

 チェーンソーが付いた枝切狭を模して造られた《チェインシザー》が唸りを上げ、ブルー・ティアーズのシールドエネルギーをガリガリと削る。それは一種の処刑に見え、観客席の各所で悲鳴が上がった。

 すると突然、下の声が叫び声にも似た声が上がる。

 

「———やめろぉおおおおお!!」

 

 《チェインシザー》が真っ二つに切断され、寸でのところでセシリアは解放される。それを行った本人―――織斑一夏がセシリアと静流の間に入った。

 その姿はまるで、姫を救いに来た騎士さながらだった。

 

「どうしてこんなことをしたんだ、しず―――」

 

 だがそれは、静流の手によって中断される。

 静流は一瞬で一夏の懐に飛び込み、パイルバンカー《灰色の鱗殻(グレー・スケール)》でピンポイントで一夏の鳩尾を攻撃したのだ。

 元々、度重なる攻撃で白式のシールドエネルギーはほとんどなくなっていた。それが今ので完全に消滅し、一夏はそのまま落下する。

 撃墜した一夏は白式が解除された。しかし静流は最初から気にするつもりはさらさらないのか、すぐさまセシリアを地面に叩きつけ、それでシールドエネルギーがなくなった。

 静流はその前に着地して《焔備》をセシリアに向ける。

 

「お、お待ちなさい! そんなことをすればあなたは―――」

「そうだね。確かに引き金を引けば僕は殺人者だ。じゃあ、これならどう?」

 

 すると静流はISを解除し、着地して背中に隠していたらしいトンファーを出した。その行動にどのような意味があるのか図り兼ねているセシリア。静流は動かない彼女を見て言った。

 

「これなら僕と君は対等の立場になった。さっさと戦闘態勢を取りなよ。ここからは肉弾戦だ」

「……そんな野蛮な―――」

 

 だがセシリアは最後まで言葉を言えることができなかった。一息に距離を詰めた静流に殴り飛ばされる。

 

「野蛮か……。それは君たち家畜のことでしょ?」

 

 バリアにぶつかったセシリア。しかし彼女に静流はバリア発生装置も兼ねている塀に飛び乗り、落下してくるセシリアを問答無用で攻撃しようとした。

 

 ―――だがそれは、突然遮られる

 

 突如として目の前に現れた水の球体。それがセシリアを中に入れると、すぐさま静流の方に鞭の形をした水を飛ばす。

 触手とも取れるそれが二本となり、尚も静流に攻撃を仕掛けるが、あるアクションをしたことで水は止まった。

 

「…何のつもりだい?」

 

 静流の視線の先には別種のISが存在し、静流を睨みつけていた。

 

「あなたの暴走を止めに来たのよ」

「……その言い方はおかしいよ。それじゃあまるで、僕が悪いことをしているとでも言いたげじゃないか」

「あなたは悪いことをしているのよ。現に、途中乱入して試合を荒らした。それが良いことだとはとても言えないでしょう?」

 

 その言葉に静流は盛大にため息を吐く。そして、同時に彼から殺気が放たれ始めた。

 

「―――笑わせないでよ。ルールなんて守って、法律なんかに順じた結果、君たちは何をした? 下らない嫉妬、下らない論理。そんなことでお前らは、僕の家族を潰したんじゃないか」

「そのことと彼女は関係ないわ! それに、彼も―――」

 

 女生徒の言葉に静流は視線のみで語る。「君は馬鹿だね」と。

 それを悟ったのか女生徒は黙った。

 

「その金髪は女尊男卑で、バカなことを吐いていたその男は最初から僕の敵だ。……ああ、君もだね。じゃあ、さっさとその機体から降りなよ」

「私はあなたの暴走を止め、拘束しに来たのよ。戦うつもりはないわ」

「……やはり君も同じか。つまらない」

 

 そう言うと静流は興が冷めたと言わんばかりに戦闘態勢を解く。だが水が襲うとすぐさま反応して回避行動をとった。

 

「所詮君も、ISと言う力に溺れて振りかざすだけに興味がないゴミでしかない。ここにいる女と同化していると言ってもいい」

「それは違うわ。私はただ、有効な手段を使っているだけよ」

「どうだか。だって君たち女はこれまでずっと男を見下してきたんだ。そんな君たちをどう信じろと? あれだけのことをしたくせに?」

「……………」

 

 静流の言うことに心当たりがあるのか、女生徒は沈黙する。

 

「へぇ。多少の良心はあるんだ。だったら今すぐISを解除して僕と戦うかそこの二人を置いて去るかどちらかだ」

「―――その必要はない」

 

 Dピットから全員が聞いたことがある声が響く。

 静流と対峙する女生徒が声の方を見ると、視線の先にはスーツ姿だが木刀を持つ千冬がいた。

 瞬間、会場が「女神が舞い降りた」と湧いた。

 

「織斑先生、どうして―――」

「更識、二人を保健室に連れて行け。ここは私が引き受ける」

「………ちょっと早いかなぁって思うけど、まぁいいや」

 

 呟くように言った静流は戦闘態勢を取って千冬に言う。

 

「木刀って言うのが手加減されているようで気に入らないけど、殺されても文句を言わないでよ?」

「無論だ。貴様は私が倒す」

 

 そう言ってピットから飛び降りた千冬は着地と同時に距離を詰める。間合いに入ったと認識するとすぐに抜刀した。

 

 

 

 

 千冬は後悔していた。

 よもや自分が騙されようとは思わなかったこともそうだが、何よりも静流が抱える怒りを理解しきれなかったこと。その状態で試合に出し、一夏とセシリアを傷つけたこと。

 静流が抱える怒りのことを、千冬は知っていた。

 だが静流はそれを一切感じさせずただ平穏にいた。いや、むしろ以前よりも大人しすぎたという印象を持っていたのだ。だからこそISに乗せ、少しでも自分がこれから一生関わっていくであろうISというものがどういうものかを知ってもらうために。そう、彼女は一切のひいき目なしに静流を参加させたのである。

 

 ―――だからこそ、自分が止めなければならない

 

 静流の怒り―――それが自分に向くように千冬は木刀を持ち、立ち上がった。今の静流にISで止めたところで女たちの力を認めず「どうせ兵器の力を借りなければ女はまともに戦えない」というイメージを捨てられないだろうと推測したのである。

 

 ―――ガッ!!

 

 居合切りを足で受け止めた静流は、後ろに吹き飛ばされた。いや、ただ吹き飛ばされたのではない。距離を離すために敢えて飛ばされたのだ。

 着地するとそのまま滑る静流。停止すると同時に地面を駆け、千冬に接近する。

 

 ―――スッ

 

 静かな、それでいて素早く弧を描く木刀をそのスピードを維持して回避した静流は飛び蹴りを入れる。千冬はそれを片手で防ぐが、思った以上に力があり、左手首を痛めた。

 だが、その手で満足しない静流はそのままトンファーで目を潰そうとする。

 

(―――なら)

 

 木刀を自分の顔の前に持ってきて防ぎ、その反動を使って先ほど静流が見せたように距離を取る。

 

「逃がさないよ」

 

 ―――ゾクッ

 

 瞬間、千冬は寒気を感じた。目の前の舞崎静流という存在がより大きく感じた。

 だからだろう。千冬はすぐに我を忘れてしまう。

 

 元々、自分が出てきたのはあくまで静流を止めるまで。色々と虐げるつもりはないのだ。

 しかし千冬は静流から放たれた殺気にあてられ、動きを変える。

 風すらも切り裂くことを思わせるほどの高速の連撃。それを静流にぶつけた。

 

「―――へぇ」

 

 静流も負けておらず、それをトンファーで受け流していき、千冬の眉間に腕を突いて伸ばした。

 

 ―――瞬間、千冬の動きがさらに早くなる

 

 その速さは最早人間を超えており、二人の戦いを見ていた人間のほとんどがそれをすべて見ることができなかった。そしてそれは―――学園最強と言われる更識楯無ですらもだ。

 フィニッシュで千冬は静流を吹き飛ばす。最後に飛んでいた自分の意識を戻した千冬はすぐに静流の元に駆け寄った。

 

(また、やってしまった……)

 

 千冬の必殺状態であるある種の領域。その状態になった時、千冬はまったく手加減できなくなる。だが千冬をそこまでにする人間は本当に数が少なく、今のところそれができるのは同い年の二人であり、静流は三人目だった。

 

「すまない舞崎。だが―――」

 

 ―――貴様も悪いんだぞ

 

 先程のことを咎めようとした千冬だが、すぐに上体を左に逸らして回避した。

 

「舞さ―――」

 

 わけがわからず、千冬は静流に声をかける。だが静流には聞こえていないのか、構わず千冬に攻撃を繰り出した。

 彼女はその状態を予想すると同時に目の前に立つ男に恐怖を覚えた。

 

「……何故、貴様が……いや―――」

 

 千冬はもう何もかもを捨てた。

 教師としての自分、今までの自分を捨て、先程と同じ状態に入る。

 

 ―――目の前に立つ静流と同じ領域に

 

 その戦いは一瞬で決した。千冬が木刀は物干し竿と呼ばれるほどではないが長刀に当たるものであり、その木刀で殺さない程度に喉と鳩尾を一瞬で突いたのである。

 立ち上がらない静流。それを見て観客に座る生徒や教員は惜しみない拍手を送る。やはり織斑千冬は最強だと言わんばかりに。暴走し、一方的な暴行を加えた静流を蔑み、侮辱をはじめとした罵声を浴びせ続ける。

 だが千冬は瞬時に理解していた。横たわる静流が誰よりも強いことを。そして―――いずれ自分を超えるかもしれないと予感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人の戦いを見ていたとある教員はまるで汚物を見るように静流を見ていた。

 

(本当、馬鹿な男ね。所詮(あなたたち)(私たち)に勝てるわけがないのに)

 

 今となっては常識と化しているが、一般的に男が女に勝てることはない。法律では完全に女が優遇されており、どんな些細なことでも―――例えそれが嘘だろうが関係なく、犯罪と認識されれば男は懲役10年前後の刑が処される。

 それがISによる試合の無断乱入、さらに女生徒に暴行を加えたとなれば20前後かそれ以上は免れない。

 そのことに笑みを浮かべたその教師は肩を叩かれる。水を差されたことで不服そうな顔をして後ろを見ると、学園内の有名人がいた。

 

 ―――布仏(のほとけ)(うつほ)

 

 1年生はともかく、2,3年生で彼女の名を知らない者は少ないだろう。第3学年の整備科の主席であり、すべての技術者の憧れであるIS学園内の研究室である「轡木IS技術研究所」―――通称「轡木ラボ」の採用がほぼ確定されていると噂されるほどだからだ。

 

「あら、布仏さん。こんなところでどうしたの?」

「実は先生に話がありまして……」

 

 ―――ガチャ

 

 周りが騒いでいることで音がかき消されたが、何か重苦しい音がした。

 近いこともあって聞こえたらしい教員は手元を見ると、彼女の右手首には手錠がかけられている。

 

「……これは一体どういうことかしら?」

「それはあなたが良くご存知でしょう? ねぇ? 昨日、あなたが舞崎静流君にした仕打ちを忘れたことについて話を聞きに来たんです」

 

 虚がそう言うと、その教員は鼻で笑った。

 

「ああ、あれ? あれは昨日、彼から申し出たのよ。体調が悪いから辞退させてほしいと」

「―――隠し事は止めた方が良いですよ。既にあなたが彼に対してISを使わないように言っている証拠は押さえております」

「………」

 

 教員はコンクリートを蹴る。そのまま虚をかわして逃げ出そうとするが、虚が教員の足を引っかけてその先の階段を転げ落とした。

 教員はすぐに立ってドアを押し開け、逃げ出す。だが―――急に足を取られてその場で転がった。

 

「にひひ~」

 

 虚とどこか似ているが、声質が少し違うことに気付いたその教員は顔を上げると、見たことがない生徒が自分の前に立っていた。リボンからして1年生だと気付いたが、動くよりも早く顔を蹴られる。

 小さいことで大人しいと感じたが、戦闘力はそれなりにあるようで尻もちをつかされる。

 

「退きなさい! 退かないと―――」

 

 教員の警告を無視して1年生で虚の妹―――布仏(のほとけ)本音(ほんね)は何かのスイッチを入れると、彼女の手元から自分の声が再生された。内容は昨日のことで、もう一人男の声も流れる。

 

「あなた、どうして―――」

「実は~、昨日の会話を聞いちゃったんだ~」

「そういうことです。これからあなたにはこれからの業務を止めていただくことになるでしょう。最初の職員会議で言いましたよね? 生徒―――特に男子生徒に対する強い差別行為を禁止し、された場合、最悪強制退職は覚悟してもらうと」

「………あなたたちねぇ!」

 

 立ち上がった教員は虚の方を向いて叫んだ。

 

「ISが男に汚されているのよ!? そんな現状に何とも思わないの?!」

「思いませんが」

「ぜ~んぜん?」

 

 二人は否定する。そして本音が続けて言った。

 

「むしろ~マッキーはちゃんと勉強しているんだし~私としてはもうちょっと評価されるべきかなぁ~」

「戯言を! あんなゲーム如きで勉強した気でいるなんて―――」

「最近のゲームは結構馬鹿にできませんよ。それを利用して専用機持ちになっている生徒を私たちは知っていますので。それにわかりませんね。するならば何故、織斑一夏君にもそういう風にしないのですか?」

「千冬様の弟気味があんな男と同列なわけがないでしょ!?」

 

 それを聞いた虚はため息を吐き、冷たい目で彼女を見ながら言った。

 

「まぁ良いでしょう。あなたには然るべき処遇が決定されます。それまで地下部屋で大人しくしてなさい」

 

 そう言ってもう一つの手錠をかけた虚は、その教員をどこかへと連行していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 観客席では静流に対するブーイングが響いていた。

 そんな中、とある生徒はどこか納得した顔で運ばれていく静流を見ていた。

 

(叔母さんが妙に入れ込むから見に来たけど………)

 

 最初は正直、彼女は叔母の目が狂ったと思った。

 大人しく、真面目に授業を受けて仇敵である織斑一夏と仲良く話をしている姿を見た時は本当に信じられなかった。織斑千冬と同等の強さを持つと言われている叔母が入れ込む相手が、こんな腑抜けかと。

 だが実際は違った。さっきの暴言といい、織斑千冬との一戦といい、少なくとも余裕で自分たちのレベルにいるとその生徒は確信していた。

 

(というか、下手すればオレよりも強いんじゃね?)

 

 そんな疑問が浮かんだが、やがて彼女は首を振り、後輩に言われてその席から立つ。

 

 ―――どこか満足気に、そして獲物を狙う目を見せながら


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