IS-Twin/Face-   作:reizen

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補足
ワンサマ―は原作通りに落ちましたが、箒は原作とは違う心情です


第40話 ブラッドデーモンズ

 それは突然のことだった。

 男たちは素早く侵入し、次々と部屋を制圧していく。予め持ってきていた娯楽に興じていた生徒たちはわけがわからず、銃を突きつけられて男たちの要求に従っていく。

 そしてそれは、風花の間も同様だった。

 

「動かないでもらおう」

 

 千冬は抵抗しようとしたが、教員の中には素人が半数いる。さらに、

 

「抵抗すれば生徒を数人殺すことになる」

 

 その事実を突きつけられれば、千冬は動けない。彼女は束とは違って非情ではなかった。

 

「今は作戦行動中だ!」

「それはこちらも同じことだ。安心しろ、目的の物を回収すればすぐに撤収する」

 

 それを言われて、千冬は戦慄した。

 男たちが急に現れて生徒を人質。だが……生徒はまだ人質でしかない。

 

「………その目的の物とは何だ?」

「言うまでもないだろう。ともかく、あなた方は現状を維持し―――」

 

 突然の事だった。

 男のインカムから別の男の悲鳴が上がったのである。

 

「おいどうした!? 何があった!?」

『り、リーダー………わかりません。急に襖が開いたと思ったら仲間が殴られて―――ぎゃぁあああああああああ!!?』

 

 悲鳴と共に通信が切れる。どういうことか全くわからない一同はその場で沈黙する。

 その頃、現場では―――鬼が暴れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話は少し遡る。

 

「いつつ………あいつら、いきなりぶっ放しやがって………」

 

 銃で撃たれたはずの零司は生きていた。それもそのはず、彼は中に男性用のISスーツを着ていたのである。それは悠夜も同様だが、彼の場合は刺された挙句まともな治療をされずに森に移動され放置されていたのだ。普通ならば死んでいてもおかしくはない―――のだが、

 

「……………………………もういい」

 

 その一言で零司は察した。

 ISスーツを着ていた恩恵か傷も大して深くなさそうだと判断した零司はそれ以上何も言わずにとある場所に連絡する準備をする。

 

「………悠夜?」

「起きた? ちょっと行くわ」

「たぶん聞かなくてもわかったけど一応聞くね。どこに?」

 

 悠夜は醒めた眼で零司を見て一言、たった一言だけ言った。

 

「―――花月荘」

 

 試作型の剣は持たせているし問題ない。そこまで考えた零司は凄い形相で向かって行く悠夜をただ眺め、

 

「あ、楯無? ちょっと悪いんだけど轡木十蔵に変わってくれる?」

 

 心の中で悪いと思いながらそう言った。

 

 

 

 

「え? 良いんですか?」

『ええ。事態は概ね把握しました。あなたたちの行動はこちらでフォローしましょう。それにあなたも行きたいでしょう?』

「はい! だってまだ届けていませんからね!」

 

 何を、とは言ってはいけない。

 

『……零司』

「大丈夫。ちゃんと手加減するから」

『……それもそうだけど、簪ちゃんと本音ちゃんのこと、絶対に救ってね』

『お嬢様、たぶんそれ愚問かと思います』

 

 虚の突っ込みに笑い、零司は通信を切って花月荘に向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1年8組のために用意された部屋は、もはや処刑場と化していた。

 辺りには血が飛び散り、畳の上には大怪我をした男たちが倒れている。中には眼球を傷つけられている人間もおり、今ものたうち回っている。

 その惨状を作り上げた存在は、両手のすべての指を破壊した男の足を折っていた。

 

「…………助けて……くれ……」

「じゃあ、次腕を切断するね」

「……あのね、悠夜君」

 

 見かねた朱音は悠夜に声をかける。

 

「何だ?」

「あのね、もうちょっと丁寧にできない?」

「………四肢をちゃんと切断すればいいの?」

「ごめん。まだマシな提案をしてくれると嬉しいかな」

 

 ちなみに8組の生徒はその会話に戦慄していた。それもそうだろう。いきなり銃を突きつけられて従わされたと思ったら別の男が乱入し、素手で次々と潰したのである。

 

「……朱音、この人は……」

「大丈夫。私たちの味方だよ。サイコオーガって二つ名持ってるけど」

「………朱音の味方だから………いざという時は見捨てる」

 

 そう本人に言われたことで全員が泣きそうになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1年1組の生徒たちは恐怖していた。いや、この程度の恐怖なんて慣れたものだと思っていた。

 だけど、いざ銃を突きつけられてみれば呆気なく捕まったのだ。1組には本音がいるが、すぐに別の生徒が捕まったこともあって動けずにいた。

 

「本音!」

 

 1人の男が本音を押し倒し、帯に手をかけた瞬間に槍が肩に突き刺さった。

 

「何!?」

「ハロハロ、いやぁ、間に合ってよかったよかった」

 

 笑みを浮かべる零司は槍が刺さっている男を教えて倒す。

 

「本音、大丈夫?」

「……大丈夫だよ、ありがとう」

 

 零司は指を鳴らすと全員の腕が切断された。

 

「そうだ本音、これ渡しておくからいざという時に使って!」

 

 そう言って零司は本音にリボンが付いたバックルみたいなのを渡す。

 

「………おいおい、そんなにゆっくりしていて良いのかよ」

「何が?」

「更識やテメェらに恨みを持ってる奴は何人もいるんだよ。当主の妹は今頃襲われてるだろうな」

 

 槍に刺されている男がそう言うと、零司は本音の肩に手を置いて行った。

 

「ちょっと……行ってくる」

 

 零司の姿が消えたのを確認して、本音は容赦なくその男に蹴りを入れた。

 

「………あーあ。君、バカだね。たぶん仲間はもう死ぬよ」

 

 

 

 

 

 

 4組の部屋ではまさに更識簪が襲われそうになっていた。

 本当ならISで応戦するべきだが、一体どこで彼女の機体が完成していることを仕入れたのか彼女ではなくクラスの人間を人質に取ったのである。彼女はすぐにISを奪われ、家の関係上で襲われそうになっていた。

 

「お前ら、早くしろ。俺だってやりたいんだけど」

「落ち着けって。まずカメラをセットしてだな」

 

 椅子に座らされ、拘束されている簪に向けてカメラをセットする男は良い位置に置けたのか、録画ボタンを押して簪の所に戻った。

 

「おら、さっさと自己紹介を―――」

 

 その時だった。突然襖が開かれ、零司が現れたのは。

 すぐに状況を察したのか、ビデオカメラを支える三脚を足でこかせて宙に浮かせ、畳に叩きつけることでたった1撃で破壊した。

 

「………お前は―――」

 

 一体どれだけ早く移動したのか、零司は簪を掴んでいた男の顔面に拳をぶつけていた。それだけでない。簪に近付こうとしていた男に砲筒を向けて容赦なく吹き飛ばす。

 

「………テメェ!?」

「おい、このガキじゃねえのか!? IS学園の生徒会全員とその娘でハーレムを築こうとしている奴は!?」

「男の敵が!!」

 

 1人がアサルトライフルで零司を撃つが、目の前に展開されたシールドによってすべて受け止められた。

 

「………嘘だろ」

「まさかこいつ、ISを使えるんじゃ……」

 

 そんな疑念が過ぎり、それは同時に4組の生徒を震撼させた。

 

「………全く。君たちって本当に馬鹿だね。僕と同じ人間か疑わしいよ」

 

 ―――IS使って何が面白いの?

 

 零司はそう言い、男の1人を蹴り飛ばした。

 

「正直、ムカついているんだよね。まさか君たち、僕がISという兵器として程度の低い機械で満足すると思ってるの? だとしたら心外だな。モードマジシャン」

 

 そう唱えた零司の周りに魔法陣が浮かび上がり、サークルが上昇して零司の姿を変えた。

 

「………お前……魔法使いか……?」

「ああ、これはIS技術の応用だよ。でも誰もしないんだよね。こんな簡単なこと、1年すれば俗物でもできるはずなのに」

 

 砲筒はなく、杖を持った零司は軽く畳に杖を打つとその先端から鞭が飛び出した。

 

「な、何だこれは!?」

「く、苦しい………」

「これは罰だ」

 

 静かに、だが覇気ある声を放つ零司に近くにいた簪は恐怖する。

 

「さっき誰かが言ったよね。僕がハーレムを築こうとしているって。ああ、そうさ。僕はハーレムを築こうとしている。だがそれは僕が優秀だからさ」

「ふざけるな! この変態が!!」

「ふざけてないさ。もちろん、僕は相手をちゃんと選んでいるよ。容姿はもちろん頭脳は秀でて気が合う相手を選んでいる。僕の眼鏡に適うのが、たまたま4人いて近くにいたってだけだ―――というのはすべて冗談。僕は優秀であり、優秀な僕は何人もの女と関係を持っていいと思っているし、それが男の義務だが―――残念なことにこのクラスは僕的に簪以外はゴミ屑でね。彼女と同じクラスってだけでバリアを張って生かしているだけに過ぎない」

 

 高らかに宣言した零司は簪を拘束していた縄を解き、抱きしめた。

 

「ふざけやがって………死ね! 世界の敵!!」

「世界……? まさか君、世界如きが僕の敵になれるとでも?」

 

 途端、零司を殺そうとした男の両手が鞭に貫かれる……いや、先端はワイヤーへと変化しており、両足も貫く。

 

「な……なんだ……」

「………テメェ、何をした!? いや、お前は何者なんだ!? ISを持たずにどうしてこんなことができる!?」

「………僕は以前、ガンオーガと呼ばれていた者。そしてこの時この瞬間を持って敢えて名乗ろうウィザードオーガと」

 

 男たちに魔法陣が展開され、そこから茨が出てきて縛り上げた。ただし、茨なので棘が刺さる。

 

「実はその茨の棘には毒が塗ってあってね。ああ、安心したまえ。死ぬようなものじゃない。ただ、動けなくなるだけさ」

 

 そう言いながら歩き、1人目に到着した零司は容赦なく男の局部を―――破壊した。

 

「ぎゃぁああああああああ!?!」

「覚えておくと良い。僕は他の鬼に比べて比較的に優しい方だ。僕の好きな女の子に手を出して、金玉を踏み潰されるだけで済むんだからね」

「止めろ……頼む、逃がしてくれ!! 潰されたくない!!」

「―――嫌なこった」

 

 零司は笑みを浮かべ、移動し、潰して回った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――三鬼

 

 それは裏の人間すら恐れを抱く者たちの総称であり、その名前を聞いた者は一斉に恐怖する。

 舞崎静流は「エアリアルオーガ」という名を持ち、早坂零司は「ガンオーガ」から「ウィザードオーガ」に変わり、そして桂木悠夜は「サイコオーガ」という名を持っている。この3人を潰そうと様々な手段を取った男たちは入院を余儀なくされた。

 彼が所属していたチームは「ブラッドデーモンズ」。そのチームに関わろうというものは今ではほとんどいない。

 

 そのチームの初代総長にして、2人目の男性操縦者こと舞崎静流は今、苛立っていた。

 作業に疲れて寝ていた彼は幸せな夢を見ていたが、その途中で物音を聞かされ目を覚ました。

 

「この程度かよ」

 

 その八つ当たりのため獲物を探していた彼はたまたま騒がしかった1組の部屋に入り、そこで本音と男たちが戦っていたので介入したが味気ないものと思い、腕を潰していた。

 

「動きも遅い、判断も遅い、何もかもが遅い。何だそのトロさは。仮にも俺と戦うって言うのに遅すぎる。その筋肉は飾りか、ああ?」

「………何故だ……お前は少なくとも怪我を負っているはず……なのに―――」

「はぁ? お前馬鹿か? あんなトロい攻撃なんかでダメージ食らう奴はただのゴミだ! 良きる価値のねぇ屑だ!! そしてお前は俺に期待させた挙句その体たらく詫びて死ね!」

 

 思いっきり腹部を蹴る静流。そして壁に向かって筋肉が多い男を蹴り飛ばしてめり込ませた。

 

「ゴミが」

 

 1組の生徒、そして床に穴を開けられて男たちに襲われていたところを助けてもらった5組の生徒は悟った。舞崎静流に喧嘩を売ったら死ぬ、と。

 静流は風花の間に向かい、襖を開けると銃弾が襲ってきたので回避した。

 

「中々の反射神経だな」

「………アンタが親玉か?」

「そうだ。仲間を忍ばせて暴れさせるとは、頭がはたらかぐばぁっ!?!?」

 

 一瞬のうちに懐に入って親玉をぶん殴った静流は消え、次々と暴力を振るっていく。

 全員が動けなくなるまで暴力を振るい、終わったからか姿を現した。

 

「………弱すぎて話にならねえな」

 

 盛大にため息を吐いた静流。彼の携帯が突然鳴り、電話に出る。

 本来ならば特殊任務中のため電話に出ることは禁止だが、まだ目が覚めていないことと千冬を含めた教員らが呆然としていたこともあって誰も静流に注意することはなかった。

 

「何だ?」

『…………アンタの大切な人間は預かっている。返してほしくば指定する場所に来い』

 

 それだけ言って乱暴に電話を切られる。静流は最初間違い電話か手の込んだイタズラ電話かと思ったが、次に来たメールでそう思うのを止めた。

 

「………くろ……え……」

 

 すぐに送られてきたメール。そこには指定する場所の座標と猿轡を噛まされて拘束されているクロエの姿があったからだ。

 静流は銃火器と予備の弾倉を回収し、一度部屋に戻って装備を整えて一目散にその場所へと向かう。

 

 余談だが、静流の部屋は彼を襲おうとした男たちの血だまりができていて、衛生的ではなくなっていた。         




早坂零司の魔法はIS技術を応用しているだけで、彼は天才であっても魔法使いではありません。

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