IS-Twin/Face-   作:reizen

41 / 53
いつかは出したいと思ったこのネタ。

メデューサ(ロリ)が出てから、マイルームでタッチするのが楽しすぎる。


第36話 再会-ハジメマシテ-

 油断した。俺は自分の戦闘力には自信があったから完全に油断した。そして女ごときでは俺を運ぶのは難しいだろうと思っていた。……まぁ、ISの補助を使っているならば話は別だろう。

 

「……何やってんだ、戸高」

「すまない。今は緊急なんだ!」

「………いや、何が?」

「武藤君が、浮気した!」

 

 ………俺はこいつと武藤さんの仲を応援しているだけで、そもそも別に付き合っているわけではないと記憶しているが。

 だが武藤さんが浮気だとは少し気になる。あの人が他人と恋愛するなら関係の整理はするであろうとはわかるから。

 気になって戸高に追いて行くと、確かに武藤さんが女と話していた。

 

「………ロリコン?」

「少なくともあの女の子と一緒にいる今の君には言われたくないと思うけどね」

 

 ただし、女は中学生であの時の会話から察するに3年生だろう。

 

「……たぶんこれ、浮気じゃねえよ」

 

 近くの電柱から様子を伺う。名前は覚えていないがあの食堂の名前から考えて「五反田」だろう。

 にしても、中学生と一緒にいるなんて珍しいな。あそこでの会話から親戚ということはないはずなのに。

 

「ともかく、本人らに直接話を聞いた方が早いだろ」

「……そうだけど、もし付き合ってるなんて言われたら……」

「いや、それはない」

 

 とりあえず無理矢理髪を引っ張って中に入る。店員を手で制して2人がいる場所に移動した。

 

「何の用だ? 今日は君の護衛をする日でないはずだが?」

「いや、そうじゃない。この女が浮気だなんだと騒がしかったから無理やり真相を聞きに来た」

「……なるほど」

 

 にしても喫茶店で座っている姿が様になるな。将来はこういう大人になりたいと思える。

 なんて考えはしまって机の上の資料を見ると、IS学園のパンフレットを渡していたようだ。俺を見て五反田は震えている。

 

「ちょうど君の話も思っていたんだ。かけてくれないか。……そこの人も」

「そうだな」

 

 俺は武藤さんの、戸高は五反田の隣に座った。

 

「にしても驚いたな。五反田、お前IS学園の事を調べていたのか」

「は、はい。…どんな学校か、ちゃんと知っておきたくて……」

「仮にも自分の将来が決まる高校だしな。俺は勧めないけどな」

 

 そう言うと五反田は驚いたように言った。

 

「自分が通っている高校なのに、ですか?」

「じゃあ、お前には覚悟があるのか?」

「覚悟……?」

「そうだ。人を殺す、覚悟だ」

 

 五反田は顔を青くする。

 

「言っておくが俺にはそんな覚悟はない。邪魔な奴は精々……」

 

 俺はすぐさま机に上がり、ISを部分展開した。

 ガラスが割れて破片が飛び散るのを展開した盾で防ぐ。

 

「………全く。これだから女ってのは嫌いなんだよ」

 

 視線を向けた先には女。だがその前には人質らしき子どもがいる。年齢はわからないがおそらくは幼稚園児。

 

「………大丈夫か?」

「問題ない」

「バッチリ守ったよ」

「そうか。国家代表の割にはよくやった」

「これくらいは朝飯前だからね!?」

 

 軽口を叩きつつ、俺は女らに目線を離さずに外に出た。

 

「揃いも揃って何の用だ?」

「この子を殺されたくなかったら今すぐ死になさい」

 

 人質を取っている奴がそう言った。その女以外にも銃を所持している奴らがほとんどだ。そいつらは俺に向けているが、周りの被害のことを考えているのだろうか?

 

「随分な言い草だな。雑種共が高が銃を持っただけで俺をどうにかできると思っているのか?」

「当たり前よ。この数に勝てるわけがな―――」

 

 人質を取っていた女の顔面に蹴りを入れる。周りは高がこの程度のことで驚いているが、俺は躊躇いなく腕を切断して人質を鎖で掴んで武藤さんの方に放る。

 

「脆い脆い………この程度で俺に勝つ気かよ―――身の程を知れ」

 

 そう言って俺はコンクリートを蹴った。後ろに一部が飛び散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然、銃声が鳴り響いた。

 この賑やかな街中で異常な音声に千冬とラウラは戦士に戻り、箒に逃げるように言ってすぐさま銃声がした場所に移動する。

 

(クソッ! まだ舞崎が見つかっていないと言うのに……)

 

 千冬は内心そう思う。2人の前には既にハイパーセンサーが展開されていて、既に銃声音がした場所を特定していた―――が、

 

 ―――ドサッ

 

 上から血だらけの女性が倒れてきたことで、2人は足を止める。

 

「どうした、何があった?」

「………ち……ふゆさ……」

 

 その女は腕と足を切断されており、動けない状態だ。

 しかし千冬にはその惨状に見覚えがあった。

 

「……まさか」

「どうしましたか?」

「まさか舞崎が暴れているわけではあるまいな」

「義兄様が?」

 

 ラウラは知らないが、以前静流はISで女を潰した後に腕を切断するという暴挙を行っている。それを知っているからこそ千冬はすぐに犯人が静流だと予想した。……もっとも、同時に女たちが何をしたのかという疑問が出てきたが。

 

(……少なくとも、舞崎は理由なしに他人を攻撃するような奴ではない。こいつらは一体何をした……? いや、今はともかく応急処置だ)

 

 千冬のIS「打鉄特式」には応急セットが常備されている。すぐに展開して止血を始めた。

 

「ラウラは救急車を」

「わかりました」

 

 指示に従い、ラウラはすぐに電話する。

 その少し向こうでは静流が戦っていたが既に終わった。

 

「この程度か。もしヤバそうだったら武藤さんに助けてもらおうって思ったけど、その必要もねえとか弱すぎるだろ」

 

 馬鹿にするようにため息を吐くが、外は悲惨な光景が広がっている。

 まず、敵方に血を出していないものなんていない。全員が何らかの血を出していて、酷いものには壁にすら埋め込まれている者もいる。

 

「………何で……こんな……」

「まさか、銃を持ち出せば「いくら強くても所詮銃には敵わない」とか思ってたんだろ。残念ながらそんなレベルは超えている」

 

 静流は知らないが、彼に専用機が渡されないことは2つの事が起因している。

 1つは彼にしか動かせないISコアを所持しているということ、もう1つは彼のこの強さだ。

 ISの操縦は細かな操縦性も必要だが、ほとんどが生身で戦闘していた時の経験が生きてくる。国家代表は幼い頃に武術や射撃経験があるのがほとんどで、当然生身での戦闘も強い。中には達人級の実力者もいる。実のところ、IS学園で専用機を持っていない生徒の中で近接戦に限って言えば箒が一番有力とされているが、彼女の場合は篠ノ之束の妹という事とランクがCであるため専用機支給は見送られていた。だが、これはあくまで「女」という基準の中での話だ。

 女は男より強いという風潮はある意味では間違ってはいない。だがそれは本当にあくまで「ISがあるから」という面が大きく、身体能力が高い千冬でもそれ以上に裏の経験をしている轡木十蔵に勝つことは10回に1回勝てれば良い方だと言うのが実情だ。そしてドイツには「レイング・クロニクル」という化け物がいたが、静流はその男に勝てるほどの経験は既に積んでおり、1人を除いて生徒の中では強者という立ち位置にある。そして現に静流は何度も裏の荒くれ集団を纏める大人の組合を何度も潰しており、銃弾を読むのは最早朝飯前だった。

 それに今回勝ったのは、近くには静流側の人間がいたことで安心して攻撃に専念できたという点も大きい。

 

「武藤さん」

「安心しろ。こちらで今回の処理は受け持つ。そして女権団の方には正式に抗議しておこう」

「それは確かに安心だな」

 

 ホッとため息を吐き、目下の問題である子どもの方に向く。

 

「………この子の素性は?」

「残念ながらまだだ」

「そっか」

 

 とはいえ、静流もほんの数分程度で何かがわかるなどと思っていない。

 静流はおしぼりを使って軽く血を拭って少女の方を向いて何かを尋ねようとするが、すぐに蘭の後ろに回った。

 

「……あの、舞崎さん。流石にあなたは……」

「……まい……さき……? あなたも……まいさきなの……?」

 

 その問いかけに静流は驚き、背中にしまったはずのトンファーを出す。

 

「………お前は誰だ?」

「―――比奈!」

 

 蘭は思わず逃げ出したくなった。それほどまで静流の殺気は濃くなり、今にも近寄ってくる相手を殺さんとしていたからだ。

 

「………お前は」

「……よう、随分と久しぶりじゃねえか」

 

 瞬間、いきなり現れた男は静流に対して殴りかかるが、当たることはなかった。

 

「どこ見てんだよ、雑魚が」

 

 静流はその男の頭部を吹き飛ばそうと蹴り上げるが、それは途中で止まることになる。

 

「………それ以上は……ダメ……」

「……桂木」

 

 悠夜は2本の指で止めていた。

 

「………邪魔するな。これは俺たちの問題だ」

「……子どもが……路頭に……迷う……」

 

 静流は怯えている子どもを見て、ため息を吐いて渋々足を降ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………で、アレが6年前に生まれたのか」

「そうだ。お前に攻撃されて死ぬかと思ったがな」

「安定期に入ってたはずだろうが。それをテメェらがギャーギャー騒いで俺を徹底的に痛めつけた結果だろ。文句なら過去に馬鹿みたいに俺をボコった無能な自分らに言えよ」

 

 全く。何で俺がこんな屑と話さなきゃいけねえんだよ。虫唾が走る。

 ちなみにこの場には既に五反田と比奈という俺の妹はいない。五反田は織斑先生が、比奈はラウラと戸高が連れ出している。で、俺たちはその場に待機という事で裏道にいる。

 

「………それよりも、何故お前が生きている? 日本政府に引き渡したはずだが?」

「よくもまぁ、自分よりも格上の奴にんなことを堂々と言えるよな。頭腐ってんだろ。ま、どっかの誰か共が余計な情報を配ってくれたおかげで祖父母は死んだがな」

 

 男が俺の顔をめがけて殴ってくるが、それを止めて強く握る。

 

「………お前のせいだ。お前がISを動かしたせいで父さんと母さんが死んだんだ!!」

「そっか………で?」

「で……だと……」

「あの女はまだ女権団にいるのか?」

 

 6年前、女権団が力を付け始めた頃にこいつの女が入ったことは知っている。もし抜けたら勘弁してやろうと思うが―――

 

「まだいるさ。それがどうし―――」

 

 俺は軽く腹部を殴る。だがそれでもこの男には十分だったようだ。

 

「俺がISを動かしたとして、それがどうした? あの2人を殺したのは俺じゃない。お前ら夫婦だろう?」

「……何を……」

「情報を送っておいてよく自分じゃないとほざけたな、屑が。だが娘に感謝しておくんだな」

「………ふざけるなよ、家族殺しが」

「お前ら夫婦は気に食わないが、今の俺は学生だ。だが卒業した瞬間、お前らから比奈を引き剥がす」

 

 これは復讐だ。俺がいるのに人質になっていないことは疑問だが、そんなことはどうでもいい。

 

「………ふざけるな。比奈に指一本触れさせない!」

「まぁいいけどな。女権団に入ったら、真っ先にミンチにするから」

 

 そんなことよりも俺にはすることができたので先に表通りに戻ってそのまま帰路に着く。武藤さんには悪いが今は構ってられない。

 

「待て、舞崎。お前には話を―――」

 

 俺は反射的に織斑千冬を弾き飛ばしていた。

 

 ―――このレベルじゃダメだ

 

 もう、織斑千冬じゃ相手にならない。かと言って桂木にも頼めない。今はアレを倒すのが目標なんだから。

 

 ―――だとすれば、俺にはたった1人しか思い当たらない

 

 モノレールでIS学園に戻った俺はすぐに用務員室に向かった。その途中で目当ての人物を見つけた俺は早速話しかけた。

 

「………1つ聞きたいことがある」

「……何だ?」

「アンタが桂木悠夜を孫の彼氏として認めたのか?」

 

 俺が見る限り、轡木家の実権はこいつが握っているはずだ。どんな家柄かは知らないがな。

 

「だとしたら何だ?」

「なに。ちょっと目標を見つけちまってな。死ねとは言わないが―――俺の特訓の相手になってくれ」

 

 立ち上がった轡木十蔵を見て俺は早速仕掛けた。

 

 俺はIS学園に来てから、妥協したことはあまりない。

 ウザい奴らは全部潰した。休みに休みらしいことをしたことはあまりない。例え俺以上の存在がこの学園にいなかったとしても、誰にも負けない強さを求めた。だと言うのに、俺は呆気なく桂木悠夜に蹴りを止められた。それも指2本でだ。

 

 ―――まだ、まだまだ足りない

 

 授業だけじゃ話にならない。成績を多少落としても、こいつに勝たなきゃ意味がない。―――いや、少なくとも、本当の意味で戻らないといけないんだ。あの頃に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 手続きを終わらせた千冬は少し疲れながら部屋に帰ると、ボロボロになった状態で眠っている静流を見て安堵する。

 あの後、十蔵から連絡が入って静流がIS学園に戻ってきたことは知っていたがボロボロになった理由に疑問を抱く。

 

「おかえりなさいませ、教官」

「ラウラか。舞崎がこんなことになっている理由はわかるか?」

「……いえ。ただ、老人が「ISの使用を認めるので部屋に運んでなさい」と言われたのでそうしました。既に治療は済んでますし、問題ないと思って置いています。……ですが」

 

 ラウラはふと、思い出してポツリと言った。

 

「攻撃されないので、少し心配です」

「……私はもうごめんだけどな」

 

 ちなみに、ラウラはもちろんのこと静流は臨海学校の準備はしていない。そのことで慌てるのは8時間後だった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。