IS-Twin/Face-   作:reizen

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ちょっと駆け足気味っぽいですけど、気にしないでいただけると助かります。

あと、念願の女神が降臨しました! S/Nじゃおなじみの姿は宝具レベル5になりましたし、後はピースを集めないと……。


第35話 過保護な周囲

 せっかくの外出日。まともに墓参りに来ることができなかった(というか鍛えることしか頭になかった)ので初めて訪れて線香を上げて近況を報告した。アニメとかで墓に話しかけるとか滑稽だと思っていたのが懐かしい。

 土地は俺に譲ってくれた……というか、重要保護プログラムのせいで権利者不明となっていたので勝手で悪いが奪った。その旨を報告してもらっているが、向こうから手紙は届かない。まぁ、そういうものだろう。もし見せしめに叔父と叔母を殺したなら、おそらく俺は日本政府関係者をすべて殺し、女権団の重要役職に就いている奴らの家族すべて殺しているだろう。

 まぁ、物騒な話はともかくとして、墓地から移動して俺はレゾナンスに来ていた。決して陰陽師カップルが使う能力ではない。

 

「クラリッサから怒られた」

 

 今日の予定は世間知らずの子どもの相手らしい。

 その相手であるラウラは少し涙目なのが印象的だった。

 

「何で?」

「『せっかくの海に、スクール水着で行くな!』……と」

 

 ……まぁ、まともな10代女子がビーチでスクール水着は流石にマズいか。周りは当然遊ぶつもりだろうし、その中でたった1人だけスクール水着はかなり浮くか。

 仕方がないと思い、俺たちは水着店にも足を向けることを決めるが、

 

(……そう言えば、篠ノ之の誕生日ってそろそろだっけ)

 

 初めて七夕生まれと聞いて俺は正直篠ノ之の運に引いた。どれだけ星に恵まれれば気が済むんだよ、と。ま、俺とは違ってこれからはまともに過ごせるかもしれない……と、思ったが篠ノ之博士の妹である以上はそれは難しいか。

 

「あれ? 静流じゃないか」

「……織斑、それにデュノアか」

 

 その2人を見て俺は内心ため息を吐いた。

 

(………あの馬鹿が)

 

 余計なところで躊躇いやがって。

 そもそも、織斑を狙っているのは専用機持ちだけじゃない。その容姿はもちろんのこと、態度も礼節も一応はわきまえているのでハニトラ狙いの奴らも一気に織斑を狙い始めている。デュノアは一応開放したが、専用機に乗り続ける限りいつデュノア社の言いなりになるかわからない。そして俺の方にハニトラが来ないのは、ラウラと悶着があったからだろう。

 俺はつい最近、ベッドに忍び込もうとした裸のラウラと織斑先生を寮長室から蹴り飛ばしたことがある。

 

「ただのトイレだったら眼を瞑ってやるがな、俺の睡眠の邪魔をするんだったら教師であろうがぶっ殺す」

 

 そのせいで部屋の一部に破れた痕跡があるが、後悔はしていない。……ま、ラウラと一緒に寝ることになってパジャマがないから改めて買いに来たわけだが。

 

「そうだ、静流も一緒に水着を買い物に行かないか?」

「悪い。俺たちはこれからランジェリーショップに行くから」

「「え………?」」

 

 2人は揃って唖然とする。

 

「ああ、勘違いするな。ラウラの下着を買いに行くんだ。だがこいつはそういうのが一切わからないって言うから追いて行くだけ」

「そうだぞ。私はお兄ちゃんと買い物に行くんだ!」

 

 ちなみにこれは俺からの指示だ。いくらラウラのような篠ノ之と同じ堅物タイプだとしてもこうして言わせておけば少しはマシになる。……要は、他人にもわかるように妹の振りをさせているわけだ。

 

「だ、ダメだよ! そんなことしちゃ!?」

 

 だというのに、何故かデュノアが反対した。

 

「いい? 舞崎君だって男の子なんだよ? そんなところに入って行ったら―――」

『おい元スパイ女。ちょっと周囲をハイパーセンサーで確認してみろよ』

 

 個人間秘匿通信を使ってデュノアに指示する。ちなみに今のは正気に戻すために言った。

 

『……これって……』

『ま、全員が俺か織斑を狙っているのは間違いないな。ということで、あまり織斑を1人にしない方がいい。別にランジェリーショップに本当に行くわけじゃないし、行ってもラウラの付き添いだということで見逃してもらえるだろうし………そもそも、ブスのパンツ見たって吐き気しかしねえっての』

 

 何で平然と命令してくるゴミ共の下着なんてみたいと思っていると考えられるかわからない。

 

『……わかった。気を付けるよ』

 

 別に気を付けなくても良いんだけどな。

 

「じゃ、また学校でね」

「お、おいシャル、静流と一緒に」

「彼には彼のやることがあるの」

 

 ……説明が無駄にカッコいい気がしたが、たぶん気のせいだと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意外なことに、俺は何も言われなかった。

 ラウラがお金を持っていないから俺が支払ったが何故か同情されたんだが。

 ちなみに、お金は後で払ってもらうことになっている。これも何故か織斑先生が「絶対にそうしろ!」としつこく言ってきたからだが……。

 

「じゃあ、今度は水着を買いに行くか」

「はい。ですが、少しお願いが。私はどの水着が似合うのかわかりません。ですから、選んでもらえませんか?」

 

 ……これは、中途半端な水着は選べないな。

 下手すれば、他のドイツの奴らから巡り巡ってオッサンの方に連絡が行く可能性がある。

 

「………わかった」

 

 センスは悪い方だとは思うが、努力はしよう。時に大切な者を守るための人は恐ろしいほど強いことを知っている俺は頑張ることに決めた。

 水着売り場に移動した俺たちは、どちらも女性用水着はアウェーであるため圧倒される。

 

(………あの引きこもりなら、何故かセンスが良いからサクッと決められるから聞けばあるいは……)

 

 とはいえ、クロエに似ているラウラの水着を決められるのはかなり癪な気がする。

 

「………静流…君の彼女……固まってる……」

「あ、悪い。ラウラ、早く行く―――」

 

 俺は思わず後ろを向いた。

 

「……桂木?」

「久しぶり……君の話……よく聞く……」

 

 引きこもりが外に出ていた。じゃなくて、何でこいつがここにいる!?

 

「珍しいな。お前がここにいるなんて」

「最近……バイト初めたから……」

「へー」

「義兄様、この方は?」

「桂木悠夜。大人しそうに見えて、IS学園生を普通に潰せる奴だ」

 

 ま、条件付きだけど。

 

「……初めまして……よろしく……確か君は……シュヴァルツェア・レーゲンの……パイロット……」

「私のことを知ってるのか?」

「……名前は……知らない……」

「こいつはロボットが好きなんだよ。俺の知り合いの中じゃ珍しくISに詳しい……」

「………でも……ISは……正直……好きじゃない…」

「そうなのか………?」

「女のパイロット……いても普通だけど……露出度高いから……痴女を見るみたいで嫌……20代はまだギリギリ許せるけど30以上は死ねばいいのに」

 

 身長は180近くからあること、そして見た目が怖いことも相まってかなり恐ろしく見える。

 

「そんなことより……ここは危険……」

「……だな。じゃあお前は彼女の所にでも行ってろ」

「…そうする。またね……静流……」

 

 普段大人しそうな奴だけど、切れると割とてこずる。ま、俺も成長しているし勝てるだろうが、アレの執着心は心臓を穿たないと終わりそうにない。

 それはともかく、俺はラウラと共にまずは男性用の水着を見て回ることにした。流石に織斑とデュノアはいないだろうが、カップルの邪魔をする気は毛頭ない。と言っても、適当に商品を見て回るだけだが。

 適当な物を買ってからラウラの物を買うために移動する。……と、その前にだ。

 

「ラウラ、まずは自分で選んでみろ」

「ですが私は……」

「もし任務でわがままな女の世話をすることになった時のための服選び。そう思ってやってみろ」

「わかりました」

 

 転入初日に来た時のことを彷彿させる綺麗な敬礼をしてラウラは早速水着を探しに行く。………サイズは知ってるだろうし、水着を漁って犯罪者と思われなくて済むようになった。

 

(俺はゴーグルとか買っとくか)

 

 ラウラはズレているとは言え年頃の女の子。化粧とかにも気合は入れるかどうかは正直怪しいが、せめて視力は落ちないようにゴーグルでも買っておくか。

 どんな水着にも合うような無難なゴーグルを探していると、

 

「そこのあなた」

 

 別の方向から声が聞こえてきた。まさか悠夜が絡まれているわけじゃないよな。

 

「男のあなたに言ってるのよ」

 

 このご時世、男を女の奴隷と勘違いをしている奴がいる。そいつらの70%が女権団に所属しているという話だ。

 

「聞いてるの? 返事しなさい!」

 

 問題は、そうかもしれない女が俺に話しかけていることだが。

 

「………俺か?」

「そうよ。鈍いわね。頭腐ってんじゃないの?」

 

 一度ボコってやろうか、このアマ。

 

「生憎、アンタみたいな奴の相手をしているほど暇じゃねえんだ。他を当たれ」

「随分と舐めた口を利くわね。良いわ。あなたに立場というものをわからせてあげる」

「………立場?」

「ええ。見てなさい。所詮あなたは私たちの奴隷でしかないのよ」

 

 そう宣言する女が近くにいた警備員を呼ぶ。そして案の定の反応をした。

 

「お、お前は……舞崎静流!?」

「よぉ、ポリ公。俺を知っているってことは………俺の過去で潰した奴か? 生憎、誰であれ潰しまくったからなぁ」

「……舞崎静流? !? あなた、あの舞崎静流ね!? よくも私の仲間を!!」

 

 ナイフを出して来たのでため息を吐いた。まさかその程度で俺を殺せると思っているのだろうか。

 警察が動くよりも先に女が俺を攻撃してくるので軽く捻って地面に寝かせる。

 

「何の騒ぎ……どうしましたか?」

「気にするな」

「そうですか? ところで、これは……」

「俺を攻撃してきただけだ。気にするな」

 

 とりあえず離すとすぐにナイフを持ってもう一度襲って来るので止めた。

 

「……ここまで行くと、多少本気出しても正当防衛の気がしてきた」

「いつまで触ってんのよ! キモいのよ!」

 

 ………そうか。

 ラウラに俺の財布を回収してもらい、それで支払いを済ませてもらって俺は女を外に連れ出す。

 

「………一体、どれを出せばいいんだ? 必要なものは手配されるからわからん」

 

 そんな声がしたのは気のせいだと思いたい。

 俺は女を噴水に投げ飛ばして、後は警察に任せて戻った。

 戻ってみれば、どうやら俺が持つポイントカードのどれを出せばいいのかわからなかったらしい。俺はホッとして店を出ようとしたら、

 

「一体何をしているんですか!?」

 

 ………副担任が叫んでる。

 一体何で喚いているのかと思っていると、更衣室の中で織斑とデュノアが一緒にいる。……なるほど、何かがきっかけでバレてしまったのか。

 

「……で、さっきから何をコソコソしてんだよ」

 

 戻ってから近くの棚で織斑たちの様子を伺っているオルコットに凰、近くに篠ノ之がいる。

 

「大方、尾行でしょうね」

「………デュノアと一緒にいる織斑を見つけ、あわよくば入れ替わるつもりか?」

「そ、そんなわけないでしょ!?」

「そ、そうですわ! そんな淑女にあるまじき行為をするわけがありませんわ!」

 

 高が制裁ごときでISを持ち出す奴らの言葉を早々信じるわけがないだろ。……ところで、篠ノ之はさっきから何をしているんだ?

 

「なんて………面積が少ないんだ」

 

 ビキニを持って固まっていた。

 

「おーい、篠ノ之ー」

「な、何だ!?」

「何を固まってるんだよ。ちょうど良いんだから織斑に選んでもらえば?」

 

 ま、説教もいずれ解放されるだろうしな。なにせ外で説教していること自体が頭がおかしい行為だ。……わざわざ床に正座させているのは真面目が故だろう。

 

「そ、そんなことできるか!」

「なら、これはどうですか!? 黒ビキニです!」

「………」

 

 結局悩んだけど、ラウラのサイズだと珍しく良さそうなものがなかったのでそれにした。

 で、問題の篠ノ之なんだが……

 

「ビキニしかないだろ」

「だ、だが……それだと色々と見えてしまう……」

「いや、見せろよ。というか男を落とすのは要は見せ方なんだよ。それにだ篠ノ之、見せる見せないは結局のところ時間の問題だ。性行する時に見せないわけにはいけないだろ?」

「そ、そうだが……それとこれとは―――」

「―――騒がしいと思ったら、お前たちか」

 

 予想以上に騒がしくしていたらしい。織斑先生が織斑弟を引き連れて現れた。

 

「何を騒いでいるんだ。店に迷惑だろう」

「さっきまで正座で説教して止めなかった奴が言うセリフか、それ。ところで織斑先生、アンタ泳ぐ気か?」

「そうだが?」

 

 俺は冷静になって考える。

 今、織斑先生には2つの水着を持っている。そのどちらを買うであろうことは容易に想像できるが、どっちだ?

 

「……織斑先生、白い水着を胸元に上げてください」

「…こうか?」

 

 違和感があるな。

 織斑先生が来ているのは主に黒いスーツに白いジャージ。だが、部屋でも藍色に近いパジャマだから黒系統のイメージが強い。だが、篠ノ之は―――白の方が引き立つ。

 

「ところで織斑先生、水着はどちらに?」

「ああ。そのことでお前を探していたんだ。お前はどっちがいいと思う?」

「黒ですね。白は正直、織斑先生には似合わない……というかそろそろ25なんだから身を固めることを考えましょうよ」

「……そうだな。そろそろ貴様に対する指導方針は変えないといけないと思っていた」

「やれるものならやってみろよ」

 

 戦闘態勢に入ろうとするが、店先だということで俺たちは遠慮することにした。

 買い物も終わり、外に出た瞬間、俺は誰かにさらわれた。


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