IS-Twin/Face-   作:reizen

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昨日も投稿しているので、もし27話を見ていない方はご注意ください。


第28話 開幕! 学年別トーナメント!

 あの騒々しい展開から半月ほど経ち、とうとう6月の最終週を迎えた。

 その月曜日を迎え、IS学園は活気づいていた。

 

(………本当に増えてやがる)

 

 織斑先生のおかげでオーバーホールされた打鉄のステータスを確認しながら学園内のフォルダに存在する武装を確認していると、前から聞いていた通りに武装の種類が増えていた。倉持技研からIS学園でテストしてほしいという体で俺に合いそうな奴を送ってくれたらしい。……正直、助かった。

 

「しかし、すごいなこりゃ……」

「3年にはスカウト、2年には1年間の成果の確認にそれぞれ人が来ているからね。1年には今のところ関係ないだろうけど、トーナメント上位入賞者には早速チェックが入ると思うよ」

「ふーん、ご苦労なことだな」

「珍しく意見があったな。こんなところで女を漁る暇があるなら俺に合った機体の作成をとっとと始めろっての。税金の無駄遣いだ」

「「……………」」

 

 冗談を含めて言ってみたが、どうやら奴らには刺激が強すぎたみたいだ。

 

「冗談だ。流石においそれと機体を用意できないことぐらいは理解している」

「………でも、確かにおかしいよね。舞崎君ぐらいの実力者なら専用機は用意されてもおかしくないはずなのに……」

「所属かどこかで揉めてるんだろ。なぁ織斑、お前の姉貴の友達に天才がいるだろ? そいつに特別製のISを作成するように言ってくれ」

「そんなの頼めるわけないだろ」

 

 だろうな。というか絶賛行方不明中の科学者においそれと連絡できるわけないだろうし、何よりも元からISを作ってもらう気はない。

 

「静流、絶対に箒にそんなことを言うなよ」

「言うか。っていうかそもそもISを使用すること自体が逃避だと思っている俺がそんなことを頼むわけがないだろ」

「………そのことなんだけど、あの時いた君の友人は強いの?」

 

 …ああ、そう言えば早坂に会ってたんだっけ?

 

「そうだな。条件を加味しなければチームで2位。加味すれば3位だな。諜報に長けているが、何よりも奴の武器は装備開発力だ」

「装備開発力って?」

「エアガンやスタンガンの改造。他には鉄バットにセンサーを内蔵して体力を知る機能を付けたりとかな。3年前の時には戦闘よりもそっちの方が光っていたがな」

 

 実際、団体戦となると指揮は奴に任せていたしな。

 立ち上がってウォーミングアップをしに行こうと移動すると、急にドアが開いた。

 

「失礼。こちらに舞崎静流がいると聞いてやって来たが―――」

「武藤さん!?」

 

 まさか来るとは思わなかったので心から驚いている。

 

「大体1か月ぶりか。停学を食らったそうだな」

「俺としては退学でも良かったんですけどね」

「あまりそう言うな。確かにIS学園は特殊だが同情はするがな」

 

 俺たちが談笑していると、織斑とデュノアは意外そうな顔でこっちを見ていた。

 

「すまない。挨拶が遅れたな。私は日本政府に所属する武藤正勝だ。織斑君も久しぶりだな。…そして君がシャルル・デュノア君、だったな?」

「お、お久しぶりです」

「シャルル・デュノアです。日本の政府の方がどうしてここに……」

「………ちょっと仕事でな」

 

 あ、これはあの国家代表関係か。そう言えば俺が襲われた時も無理やりねじ込まれて一緒に行動する羽目になったと嘆いていたな。

 

「それで舞崎君とはどういう関係なんですか?」

「彼がISを動かした時に少しな。それ以降はちょくちょくと会っている」

 

 信じられないと目で訴えてくる織斑に言ってやった。

 

「武藤さんは生身で俺よりも強いからな。それにコネもあるからトレーニング施設にも自由に出入りできる」

「おいおい。私は便利屋か?」

「でもここにいたらそういう所に出入りしないと本気で身体が鈍るんですよ。特に織斑千冬は忙しすぎて時間取れないし、他に強い奴はいないし、ISはISですぐに部位が損傷しますし」

 

 愚痴を溢すと苦笑いをする武藤さん。すると彼は何かに気付いて画面を指した。

 

「ところで、画面が切り替わっているけど確認しなくていいのかい?」

 

 言われて俺たちはすぐにディスプレイの近くに移動して内容を確認する。織斑とデュノアはまた信じられないような目で俺を見てきた。

 

(まぁ、驚きはするはな)

 

『学年別トーナメント 第1試合

 

 舞崎静流 ラウラ・ボーデヴィッヒ VS 織斑一夏 シャルル・デュノア』

 

 しかし俺にとっては幸運でしかない。タッグ方式だと言ってもゲームと違ってフレンドリファイアができるのだから、全員まとめて潰すことはできるはずだ。

 そのことを考えながら、俺はさらに打鉄の設定を弄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し時間が経ち、今俺は殺伐とした雰囲気が漂うCピットにいる。

 

「まさか貴様と組むことになるとはな」

「精々足を引っ張るなよ」

「馬鹿言え。それはこちらのセリフだ」

 

 どう考えても俺のセリフだと思うんだがな。

 

「言っておくが、織斑一夏は私の獲物だ」

「何指図してんだ雑魚が。あのアホに絶望を与えるのは俺の役目だ」

「あ?」

「何だ?」

 

 というか、雑魚風情が俺の戦い方に指図してんじゃねえよ。

 

「―――朝っぱらから何をしているんだ、お前らは」

「きょ、教官!? おはようございます!」

「ああ、おはよう。それと「織斑先生」だ……お前ら、試合前だぞ。少しは気を引き締めろ」

「そう言われてもなぁ。決勝まで勝ち残ったらアンタと戦えるっていうなら頑張るけどさ。こんな出来レースを真面目にやるのはアンタの弟ぐらいだぞ」

「貴様! 教官に対して失礼すぎるぞ!!」

「大体いつもこんな感じだけど?」

 

 そもそもこの女に体裁を取り繕う必要なんてない。

 

「貴様!!」

「ボーデヴィッヒ。そこまでにしておけ。これ以上は私たちの問題だ」

「ですが!!」

「………まぁ、言動から誤解されることは多いが、こいつはかなりの努力家だ。謹慎中に勝手に外に出てトレーニングしたり、総合格闘部などに喧嘩を売ったりと自分の成長に関して評価を落とすことを厭わないがな」

「……こんなクソ校に評価されても困るんだが?」

 

 まぁいいや。そろそろ時間だし先に行くか。

 打鉄を展開して先に出ると、向こうも出てき始めていた。

 

(さてと、精々抗ってくれよ)

 

 なにせ最初の専用機持ちコンビだ。これを突破すれば早坂のお気に入り以外は専用機持ちはいないしな。結局あのコンビは試合に出れなかったようだし、何より向こうは片方がこっちと同じ訓練機だからハンデだろうしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1戦目で当たるとはな。待つ手間が省けたというものだ」

「そりゃあ何よりだ。こっちも同じ気持ちだぜ」

 

 一夏とラウラがそう言い合うと、ほとんど同じタイミングでカウントダウンが始まり、「0」になると同時に一夏が飛び出した。

 

「おおおっ!」

「ふん……」

 

 ラウラが右手を突き出してAICを発動させて一夏を捕まえた。

 

「開幕直後の先制攻撃か。わかりやすいな」

「そりゃどうも。以心伝心で何より―――」

 

 一夏は驚きを露わにした。何故ならラウラの後ろから静流が巨大なメイスを振りながら現れたからだ。

 

「一夏!」

「遅い!」

 

 ラウラはすぐにAICを解除して離脱しようとするが、それよりも早く静流はラウラごと一夏を殴り飛ばした。

 だが静流はそこで動きを止めずにすぐさま武装を展開、引き金を引くと同時に銃口から連続してレーザーが射出された。

 

「何でレーザー兵器が!?」

「これが訓練機の特権って奴だ!」

 

 そう叫びながら静流はレーザーを連射させた。

 専用機は性能が訓練機とは違って底上げされているが、その反面武装は各国の物を使用することが義務付けられている。IS学園に所属する専用機持ちのほとんどが機体及び武装のテストを行い、且つ他国に情報を開示させないために派遣されている場合がほとんどだからだ。

 だが学園に直接送られた武装は全校生徒に開示されることが多く、静流はそこから武装を移動させて使用しているのだ。

 

「貴様ァッ!!」

「テメェの不可思議なバリアの弱点はとっくの昔にわかってんだよ!」

 

 迫ってくるラウラに対して素早くレーザーの出力を上げて迎え撃つ静流。その時2人に連絡が入った。

 

『何をしている! この試合はタッグマッチだぞ!!』

「うるせえババア! 引っ込んでろ!」

「貴様! 教官に何たる口の利き方をしている!?」

「生憎俺は4歳以上は守備範囲外なんだよ!」

 

 その言葉にどこかの誰かが傷ついたらしいが、それを全く知らない静流は容赦なくラウラに攻撃した。

 

「シャルル、大丈夫か!?」

「僕はね。それよりもどうする? あの状況はチャンスだと思うけど」

 

 元々、2人は学年最強筆頭の2人が相手と知った時にかなりショックを受けていた。それもそのはず。同じ専用機持ちでありコンビを組んでいた鈴音とセシリアを倒したラウラに、そのラウラに気持ちを切り替えただけで圧倒的な勝利をした静流が相手なのだから。唯一の救いはどちらもお互いの事をよく思っていないことだろう。そこに唯一勝機があると見た2人は最初から同士討ちしてくれることを願っていた。

 

「もちろん行くぜ! シャルル、援護を」

「わかった!」

 

 一夏が先行し、シャルルがそれに続く。狙いはラウラだった。

 決して過小評価をしているわけではないが、2人はAICを脅威と取ったのである。

 

「うぉおおおお!!」

「チィッ!」

 

 ラウラはAICを起動させて零落白夜を発動させながら突っ込む一夏を停止させる。だがその後ろから進行方向をズラしてシャルルが現れて撃ったことでラウラは解除して離脱を選んだ。

 

「! まさか―――」

「ボサッとしてんじゃねえよ」

 

 何かに気付いた一夏だが、それよりも先に静流が蹴り飛ばした。

 

「一夏!」

 

 追撃でガトリングガンを撃つ静流の弾丸の雨から一夏を庇うシャルル。

 

「悪いシャルル!」

「大丈夫! それよりもボーデヴィッヒさんを!」

「わかった!」

 

 すぐさまそこから離脱してラウラに向かう一夏。静流はシャルルにも攻撃しながらラウラ、そして一夏に向かってレーザーを発射する。だが一夏は回避してラウラには直撃した。

 AICはあらゆる動きを停止させる機能を持つ。だがレーザーなどの光線には操縦者の力量も含め防ぐことが難しいため、ラウラは回避することに徹しているのだ。しかし今回の場合は一夏の接近とレーザーの攻撃が同時に来たため反応が遅れたのである。

 

「貴様らッ! 謀ったな!!」

 

 そう叫びながら瞬時加速で接近し、一夏を吹き飛ばしたラウラ。そしてさらに接近してシャルルを、そして静流を攻撃しようとした―――が、

 

「馬鹿言ってんじゃねえよ」

 

 少し早く瞬時加速した静流が先に攻撃していた。

 重い衝撃がラウラの腹部に直撃する。

 

「グガァツ!?!」

 

 とても女の子が出していい声を上げたラウラはそのまま吹き飛ばされた。

 

「どうやらお前は認識できていないからなぁ。立場をわからせてやる―――ぜ!!」

 

 さらに瞬時加速で接近した静流は先程攻撃に使ったものをまたラウラの腹部に添えず、一度消してアッパーで殴ってから再度展開して攻撃した。

 

「あれは《灰色の鱗殻(グレー・スケール)》……じゃない!?」

 

 顔を青くするシャルル。そこから少し離れた場所では誤った使い方をした同類に対して顔を引き攣らせている少年がいたらしい。

 その少年に調整している機体の操縦者が声をかけた。

 

「……あれ、何?」

「《マグナムバンカー》。本来なら銃型なんだけど、サブオプションとしてパイルバンカーとしても使えるようにしていたんだ。女の子じゃ流石に無理だと思って封印してたけどね」

「………余計なこと、しすぎ」

 

 そんな会話がされている頃、静流は全弾撃ち尽くしたことで動かなくなったラウラから離れてレンチとチェーンソーが融合している武器《チェインシザー》を展開した。

 

「し、静流、お前……」

「安心しろ。こいつが前にしていたようなことまではしてない」

「だからって………」

「そんなことよりもだ、気張れよ? ここから先は数の有利なんて関係ない。俺という強者の蹂躙が始まるんだ。精々抗え、ゴミ共」

 

 静流がそう宣言した時だった。

 ラウラの悲鳴が辺りに響き、シュヴァルツェア・レーゲンが形を変えていく。

 

「え?」

「一体何が……?」

 

 突然の変貌に驚きを露わにする一夏とシャルル。だがそんなことは静流には関係ないのか2人に攻撃を仕掛けた。

 

「ちょっ!?」

「待ってくれ静流! 今それどころじゃねえ!!」

「降参宣言か?」

「違う!」

「だったら戦え。それがここのルールだろ」

 

 瞬間、静流の後ろに何かが現れブレードを振り下ろした。

 

「静流!?」

 

 《チェインシザー》の柄が斬られる。だが、そこに静流の姿はない。

 

「一夏! 上!」

 

 いち早く気付いたシャルルの言葉に従った一夏。そこには短剣を両手に1本ずつ展開した静流の姿があった。

 静流は同時に両腕を振り下ろして攻撃する。そこまでの早さについていけなかったのか、謎の機体は地面に倒れる。

 

「……すげぇ」

 

 一夏は思わずそんな声を漏らす。

 とても信じられなかったのだ。ISは360度の視界をハイパーセンサーで映してはいるが、操縦者は視界外の情報を得ることは難しい。だが静流は後ろから迫ってきた敵の攻撃を回避して逆に攻撃したのだ。

 

「何だ? 新キャラか?」

 

 思わずそう口走る静流。謹慎中、彼はずっとゲームをしていたのでその癖が出てきているのだ。

 立ち上がる謎の機体。その姿はとても現役時代の織斑千冬に似ていた。


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