IS-Twin/Face-   作:reizen

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第27話 同類との再会

 放課後になり、勉強を中断した俺はランニングしていた。やっぱり最適な場所は部屋に限られるな。昼飯とかも自分のタイミングで用意できることがやっぱり大きい。

 なんて、普段では考えられないことを頭に浮かべていると、女子が目の前を通って行った。

 

(……ったく、危ない……は?)

 

 1人だったら考え事か嫌がらせか、もしくは進路などで考えているかぐらいだとなんとなく思えるが、それがほとんど全員で、その中に織斑とデュノア、珍しく篠ノ之も混じっていれば何があるのかと思ってしまうだろう。

 どうやら全員が第三アリーナに向かってるらしい。俺は適当に女の肩を掴んで問いただすと、どうやらボーデヴィッヒが凰とオルコット相手に戦っているようだ。

 俺はすぐさま第三アリーナに向かうと、確かに珍しい組み合わせで戦っていた。

 

(以前よりかは連携が取れているが、ボーデヴィッヒの方が優勢か)

 

 俺からすればどちらも弱いが、この学園の基準からすれば強い部類に入るオルコットと凰。そのコンビに圧倒できるということはかなりの実力者なんだろうということは理解できるが、所詮はISだしなぁ。世界最強の兵器と言っても、バリアに守られている戦いなんぞ何が良いというのやら。

 

(……そろそろ終わるか)

 

 機体性能の差も相まってボーデヴィッヒの勝利だと思った俺はオルコットの不意打ちに驚きながらも笑った。だが、しばらくして煙が晴れると無傷だったらしいボーデヴィッヒが姿を現した。

 

「終わりか? ならば、私の番だ」

 

 瞬時加速で2人に接近したボーデヴィッヒはワイヤーブレードで2人を捕えて武器も展開せずに拳のみで攻撃する。……というよりも一方的な暴虐だな、あれは。

 

(……まぁ、少しはマシか)

 

 俺は打鉄と同時に銃を展開してワイヤーブレードを切断した。今更ながらこの手の芸が生きるというのはかなり複雑な心境である。

 

「そこまでだ、ボーデヴィッヒ」

「ふん。見学はもう終わりか?」

「まぁな。っていうか他人の戦いなんて見学するのは好きじゃあねえんだよ。クソ詰まらねえしな」

 

 別にプロを否定するつもりはないが、プロ野球を見ていてもつまらない質だ。そんなことをするなら自分でプレーした方が何倍もおもしろい。そういう人間なのだ。

 

「だからまぁ、簡潔に言うと選手交代って奴だ」

「……そうか。それは好都合だ!!」

 

 ボーデヴィッヒは瞬時加速で接近してきて何かを振り下ろしてきた。それを回避して蹴り飛ばす。

 

「おいおい。せめて後ろの2人ぐらいは逃がしてやれよ」

「必要ないな。所詮、この世界は雑魚から消えていくものだ!」

「じゃあ、テメェからだろ!!」

 

 するとまた動きが止まる。そしてボーデヴィッヒの手首辺りから出ているビームサーベルみたいなものに攻撃されて絶対防御が働いてシールドエネルギーが大きく減った。

 

「やはり敵ではないなっ! この停止結界の前では生身で強い貴様とて有象無象に成り下がる!」

 

 それは事実だった。回避しようにも体が全く動かなくなり、接近戦で痛めつけられる。俺が接近戦を得意とすることは理解しているのだろう。対して俺は奴の言った「停止結界」というものについて何も知らない。

 

「………全く。面倒な隠し玉だな」

 

 銃でボーデヴィッヒを撃つと、向こうは手を出して銃弾を制止させた。

 

「そんなものが効くか!」

「止まるのかよ。………ったく」

 

 反転してまだ中にいるアホ2人を掴んでピットの方に放り投げる。そして咄嗟に身体を捻って砲弾を回避した。

 

「馬鹿が。雑魚など放っておけばいいもの!!」

「なんたって俺は優しいからな。まぁ、単に俺の戦い方に巻き込んで余計な非難を避けるためってのもあるが」

「その甘さが、命取りだ!!」

 

 瞬時加速で接近してくるボーデヴィッヒ。俺はそれを上に回避して実弾が装填されている銃を展開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、一夏たちはセシリアらが放られた場所へと移動していた。シャルルの案で、一先ず助けられた2人を介抱しようという話になったからだ。静流は狙ってそこに投げたのか、一夏たちがいた場所から近いピットに向かって投げられていたため、すぐに駆け付けることができた。

 

「鈴! セシリア!」

「―――大丈夫。打ち所が良かったから。でも今はあまり騒がないことをお勧めするよ。まぁ、君の仲間が死んだところで僕らには大したダメージがないけどね」

 

 一夏は驚き、箒はすぐに警戒する。

 

「誰ですか? IS学園は関係者以外は立ち入り禁止ですが」

 

 シャルルがそう言うと、鈴音から手を離したその人物は3人に向けて言った。

 

「僕はその関係者だよ。年は君たちとそう変わらない……いや、同い年か」

「あり得ません」

「あり得るんだなぁ、これが。ほら、これが証明書」

 

 そう言って未だに名乗らない謎の人物は何かを放った。

 それを器用に受け取ったシャルルはそれがIS学園から発行されたIS学園の入場許可証だと確認する。

 

「ごめんなさい。まさか本当に許可されているなんて」

「まぁ、警戒することは良いことだよ。じゃあ、返してもらうね」

 

 するとシャルルの手から何かに奪われるようにカードが無くなる。

 

「安心してよ。僕は君たちの機体には興味がないから。白式のデータは既にあるし、ラファール・リヴァイヴのデータもとっくの昔に収集済み。というか僕も男の子だから弱い人には興味ないんだよねぇ」

「何?」

「僕が興味あるのは、僕が欲しい女とそこで戦っている舞崎静流を含めたごく一部。君たちは名前は知ってるけどまだ僕が興味を持つ範疇じゃないかな。だって僕、篠ノ之束は凄いとは思うけどそれだけだしね」

「……それは、言い過ぎ」

 

 一緒にいた少女に言われて舌を出す存在X。

 

(……まるで姉さんみたいだな)

 

 箒は同じような感性を持つ姉のことを思い出す。箒の姉である篠ノ之束もごく一部の人間を除いて他人に関心を示さない人間だからだ。

 

「そこで僕の存在に疑問を抱く前に、この雑魚2人を保健室にでも運ぶのが先決じゃない?」

「雑魚って…2人は強いぞ」

「そう感じるのは君が弱すぎるからだよ。いや、君もまた、ISという力に溺れている人間だからか。馬鹿だねぇ。ISの力に頼ったところで真の強者になれないってのに」

「何を言って―――」

 

 突如、爆音が一夏たちを襲う。気になった3人は中を見ると静流が膝を付いていた。

 

「……静流」

 

 一夏は立ち上がってISを展開しようとすると、空気が抜けた音がした。

 

「織斑、篠ノ之とデュノアの3人でその2人を運べ」

「千冬姉!?」

「学校では織斑先生だ」

 

 呆れながらそう言うと、未だに名乗らない存在Xが千冬に言った。

 

「織斑千冬、まさか行く気ですか?」

「そうだが、貴様は誰だ?」

「通りすがりの研究員ですよ。じゃあ、無謀なあなたに忠告しておきます。介入は逆効果ですよ。むしろ2次災害を呼ぶだけです」

「………ありがたく受け取っておくが、生憎私はこの方法しか知らないのでな」

「じゃあ、ISは付けることはお勧めします。そうじゃないとあなたという死体が増えるだけです。もしくは上級生ですかね」

 

 だが千冬は近接ブレード《葵》を持った状態で下に降りておよそ人間の動きとは思えない程の早さで駆ける。その様子を見た存在Xは言った。

 

「織斑一夏君、君たち姉弟ってもしかして物凄く馬鹿なの?」

「そんなわけないだろ!?」

「でもさ―――」

 

 一夏は誘導されるまま外に目線を向けると、千冬が静流に投げ飛ばされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………まさか、ここまで相性が悪いとはな)

 

 内心、相手の技術力に賞賛を送りながら自分の力不足を嘆く静流。それもそのはず、静流の戦闘スタイルは肉弾戦であり、牽制に爆弾やナイフを投げてはいるが通じないのだ。

 

(…だがまぁ、これくらいの逆境はいつも潰して来た。こんなところで諦めてたまるかよ)

 

 しかし、未だ静流は停止結界を突破する方法を見出していない。どうしようかと悩んでいたところに千冬が現れた。

 

「両者そこまでだ! 直ちに試合を中止しろ!」

 

 ―――あ?

 

 千冬が現れていたことに驚いたが、何よりも静流は千冬が言ったことに驚いていた。

 

「勝手に湧いたかと思ったら何言ってんだ、アンタは」

「そのままの意味だ。これ以上の試合の続行は認めない」

「はぁ!?」

「交代の時間だ。この続きは学年別トーナメントで着けろ」

「ふざけんな! そんなものこそ後だろうが!」

「―――ちょうど良かったではないか」

 

 ラウラの勝ち誇ったような言葉が静流の耳に届いた。

 

「んだと?」

「貴様の劣勢は明らかだ。それがこのような形で決着が着くなら貴様も本望だろう。何せ黒星が付かないのだからな」

 

 その言葉が引き金になったのか、静流は千冬を掴んで後ろに放った。

 

「貴様、教官に何を―――」

 

 その光景を見たラウラは責めようとするが、跳び蹴りが放たれてしまいまともに食らう。

 綺麗に入ったが故にラウラは意識を手放しそうになったが、静流の絶叫と共に殴られて上に飛ばされた。

 

「ざけんじゃ――ねえ!!」

 

 ラウラはすぐさま体勢を戻して攻撃しようとするが静流の姿は既にない。

 

「図に乗るなよ」

「きさ―――」

 

 ナイフで抉るように刺されたため、レールカノンが使い物にならなくなったのですぐさまパージするラウラ。

 

「どいつもこいつも勝手な事ばっか言いやがって」

 

 爆弾を投げつけ、ばら撒き、一気に破壊しながら怒鳴る静流。

 

「家畜風情が……弱者風情が!!」

 

 そして大型メイスを展開して投槍の要領で投げて瞬時加速で接近。

 

「IS使わねえと男に勝てないゴミ共が!!」

 

 停止結界―――アクティブ・イナーシャル・キャンセラーを発動してラウラは受け止めたが、それを静流は無理やり奪って叩きつけた。

 

「見下してんじゃねえ!!」

 

 さらに瞬時加速して正拳突きを叩きつけた。その時、静流の打鉄がアラームを鳴らす。

 

【右腕部装甲、並びに両脚部装甲が負荷により損傷。これ以上の戦闘の続行はお勧めしません】

「ふざけんじゃねえぞ欠陥兵器が! この程度のことでへばりやがって! これだからメス豚主導は軟弱すぎて話にならねえ!」

 

 そもそも、静流の戦いは我流の上にとても激しい動きが多いためISでの戦闘には不向きだ。アメリカには既に「ファング・クエイク」という肉弾戦向けの機体が開発されているが、それを除けば肉弾戦をできる機体は全くと言っていいほど存在していないのだ。それもそのはず、元々ISは武器を使用しての戦闘を重視されているからである。静流は銃を扱うことは人並み以上にはできるが、それでも主体は肉弾戦であり、トンファーの使用は3月末からだ。さらに言えば、静流の身体能力は千冬並でありとても普通のISでは性能を発揮することができないのだ。千冬が適性が低いながらも機体性能を引き出せるのは長年の経験からである。

 

「きっさま―――」

「るせぇ!!」

 

 腹部を思いっきり殴られたことにより、ラウラはノックダウン。ISが解除された。

 

「………クソが。完全に不完全燃焼じゃねえか」

「いやぁ、でも女の割に善戦した方じゃないかな? AICで苦戦する君を見るのは中々見物だったけどね」

 

 途端に静流の動きが止まり、ブリキ人形が発する音が聞こえてくるかのように動いて声がした方を向いた。

 

「久しぶりだね、静流」

「………何でテメェがここにいる。変態ハーレム志向」

「この後行われる機体開発の主任だからさ」

「…………」

 

 静流は自分の頬を抓ったが、痛みがあるためこの一連の出来事が夢じゃないことを理解した。

 

「そうか。腐ってると脳内では理解していたが、日本はここまで腐敗していたか」

「待って。それじゃあまるでその腐敗の中で権利を勝ち得たって本気で思ってる!?」

「そうじゃないとこの現状は理解できないっての」

「まぁ、実力の差を見せつけて追い出したのは否定しないけどさ」

 

 それを聞いた静流は大きなため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 早坂零司。俺が知る中で一番の天才と言っていい人間だ。

 だが同時に邪魔な相手には一切の手心を加えないサイコな一面も持っていて、ありとあらゆる手段で相手を封じるか潰すところがある。戦闘力的に言えばある条件下においても3番目であり、主に知略に飛んでいるタイプの人間だ。………まぁ、俺ら3人の中で低いってだけで一般水準に照らし合わせたら普通に強いんだけどな。

 そのため、矢面に立たずに俺と悠夜が討ち漏らした相手を倒していくタイプの人間だが、スタイルは銃や大砲といった射撃型。なのに移動速度は常人よりも高く、極めているって感じだ。俺が2回目でオルコットに勝てたのは何度かこいつと手合わせしていたところが大きい。

 また、こいつの思考は機械工学はもちろんだが女に対しても差が出ていて、幼馴染全員を前々から全員落とすと本気で宣言していたほどだ。昔は家族以外の女に入れ込むのか理解不能だったがな。

 

「………冷静に考えれば、お前の場合はそれが可能だしな」

「そーそー。やろうと思えば全学者が平伏すレベルでね」

「…………」

 

 こいつは一体どこで知ったのかと聞きたくなるくらい濃い謎を平然と集めてくる。知らない奴は「何を馬鹿な」と一蹴するぐらいのものをだ。

 

「そういうわけで、勝負もついたわけだし退いた退いた。あ、ついでにそのチビも持って帰ってね」

「………相変わらず扱い酷いな」

「静流の彼女ならともかく、そうじゃない存在に対して何で敬意を払わないといけないのかわからない。エリートって言っても所詮雑魚だしね」

 

 その意見には同意するが。

 仕方ないのでいつの間にか倒れているボーデヴィッヒと織斑先生を担いでピットに戻った。そして俺は学年別トーナメントまで謹慎することになった。




静流が盛大にブーメランを放っていますが、そこは気にしないでください。

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