最近、オリジナル小説のアイデアとか、そもそも執筆時間がなかったりと書く時間が限られて困ります(´;ω;`)
(さて………どうするか)
シャルル・デュノアが男装していただけという弱みは握ったが、問題はこれをどういう風に公開すればいいか、だ。………いや、これって直接会社に乗り込めばいいんじゃね?
この状況で簡単に武藤さん辺りにばらしたところで、俺にメリットはない。ただ敵を追い出せるってだけだ。それじゃあ意味がない。
そう思いながら気分転換も兼ねて食事するために部屋を出る。しばらくは向こうも慰め合って恋愛関係に発展するかだろう。
(………このまま会社に送りつける……いや、同じだ。もっと利益があることをしないと……)
例えば、周りよりもアドバンテージになるようなことだ。何か……何かないだろうか……。
「ん? どうした舞崎。何か迷い事か?」
「篠ノ之か……ところで何だそれは」
「ああ、これは実家にいる叔母さんに送ってもらった真剣だ。銘は「緋宵」。かの名匠・
「へー………」
刀って、全部一緒じゃねえの? いや、重さとかって差はあるかもしれないけどさ。
「舞崎はそういうことに興味ないのか?」
「まぁな。俺のメインは銃と格闘だし、剣持っても破壊する方向で戦うからなぁ」
こう言ってはなんだが、サーベルとかのただのロングソードとかはゲームとかでは使うが、個人的には一気に敵をぶっ壊せる方が好きだ。
「そ、そうか………」
「まぁ、こういうのはどこまで行っても価値観が合致するかだろうからなぁ。でも柔よく剛を制すってわけじゃないが、トリッキーな戦いをしている奴は知ってるな」
「………舞崎の戦いもかなり癖があると……って、何をしている!?」
突然何かに気付いたような反応をする篠ノ之。見ると、織斑がオルコットにエスコートされる形で一緒にいた。
「あら、箒さん。これからわたくしたち一緒に夕食ですの」
「そ、それと腕を組むのとどう関係がある!?」
「あら、殿方がレディをエスコートするのは当然の事です」
というか織斑、こいつさっきまでデュノアと一緒にだったんじゃないのか? いない間にバレたらこっちが困るんだが。
「そ、それならわたくしも同席しよう。今日の夕食は少々物足りなかったのでな」
「あらあら箒さん、1日4食は体重を加速させますわよ」
「ふん。その心配は無用だ。先程実家からこれを送ってもらった。今日も後で居合の修練をするから何も問題はない」
自信満々にそう言う篠ノ之。居合いでカロリーがそんなに消費されるのか少々疑問だが、その疑問は俺が剣術とか一切やったことがないからだろうか。………まぁ、銃で撃つ姿がかっこいいと思った俺が言うのもなんだがな。
「騒ぐのはいいけどさ、どうせ平行線なんだしさっさと行こうぜ。こんなところに油を売って食堂が閉まっていたなんてオチは嫌だしな」
「それもそうだな。ほら、行こうぜ」
織斑の声で篠ノ之は織斑の腕を取った。
「箒さん、何をしてらっしゃるのかしら?」
「男がレディをエスコートするのが当然なのだろう?」
「2人共、歩きずらいんだけど」
2人に織斑は抓られたが、それは自業自得だな。フォローする気にもなれない。……まぁ、最初からないけど。
全く。どうしてこうなったのやら。
―――学年別トーナメントで優勝すれば、男子と交際することができる
いつの間にか男子ひとくくりにされているが、それはいい。来たら精神を折るまでだ。じゃなくてだな。
俺は内心、目の前にいる女剣士……もとい、篠ノ之に呆れていた。
「篠ノ之………」
「い、言われなくてもわかっている! ………しかしだな―――」
「いや、そうじゃない。そうじゃないんだ。もう1度確認するが、お前は「学園別トーナメントで優勝したら付き合ってもらう」って織斑に言ったんだな?」
「……そうだ」
体をもじもじさせながら答える篠ノ之に俺はため息を吐いた。
「………詰めが甘いな。まぁ、お前にしては善戦した方だと言うべきか。だがよくそんなことを言おうと思ったな」
「……そうでもしないと勝てない気がしてな」
「後、せめて恋愛的な話だと言うことをストレートに言えば完璧だったかもしれないけどな」
「……」
とはいえ、流石に篠ノ之の性格的には無理があるか。
実際、今のように体はともかく精神的には堅物な彼女には駆け引きなど難しいだろう。
「で、話を戻すが、まさかお前は俺に勝つ気なのか?」
「………え?」
予想外だったのか、驚いて風に俺を見る篠ノ之。俺は髪の毛をかいて答えてやる。
「悪いが俺は戦闘に関してはお前よりも場数を踏んでいる。どんな奴だろうと手を抜くつもりはないし、何よりも俺は女を恨んでいる。今度のトーナメントだって全員を再起不能に追い込むつもりだ」
「………」
まぁ、普通ならそういう反応を取るよな。
だがこれは俺の本音だ。今更変えるつもりはない。
「それと、1つ忠告しておく」
「何だ?」
「知っていると思うが、トンファーはまだ使い慣れていない。織斑千冬と戦ったあの時が俺の全力だと勘違いするなよ」
そう言って俺は教室に戻ろうとすると、砲弾を放った問題児の声が聞こえてきた。
「何故こんなところで教師などをしておられるのですか!?」
どうやら近くに織斑先生とボーデヴィッヒがいるようだ。2人はこっちに気付いていないようだが……たぶんあの担任は俺らのことには気付いているようだな。
「……どうした?」
「さあな。ともかく今は黙ってろ」
そう小さな声で指示すると、篠ノ之は頷いた。
「何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ」
「このような極東の地で何の役目があるというのですか!!」
………ヨーロッパ人ってさ、極東を否定する風習でもあんのか?
別に愛国心とかないけど、素直に気になった俺は吐き出しそうになった言葉を飲み込む。
「お願いです、教官。我がドイツで再びご指導を。ここではあなたの能力は半分も生かされません」
「ほう」
「大体、この学園の生徒など教官が教えるに足る人間ではありません」
「何故だ?」
「意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションかなにかと勘違いしている。そのような程度の低い者たちに教官が時間が割かれるなど、間違っています」
―――ほう
織斑先生から殺気が放たれる。が、その前に俺が出た。
「そこまでにして―――」
「チビの割には随分と賢いじゃねえか。見た目相応の思考ではないようで何よりだが、1つ間違っていることがある」
「……貴様、いつの間に。それよりも今の話を聞いていたのか?」
「まーな。で、今の話を聞く限り、テメェは俺もその「意識が低い者たち」に含んでいるようだな」
そう言いながら俺は自然に奴に近付いていく。
「そうだ。事実だろう? 貴様も―――」
どうやらこの頭にしっかりと刻んでやらないといけないようだな。
俺はボーデヴィッヒの頭部を掴んで握った。
「流石は女だ。揃いも揃って随分とバカげた頭をしている。図に乗るなよ、女風情が」
「き、きさま……なにを……」
「待て舞崎! それ以上は―――」
「どいつもこいつも調子に乗りやがって。俺が女と同等だと? 反吐が出―――」
咄嗟に腕を引くが、どうやら遅かったようだ。親指がかすっていて血が出ている。
「舞崎!?」
「……2人共、そこまでだ。これ以上は―――」
俺は構わずトンファーを展開し、血が付いたナイフを持つボーデヴィッヒを攻撃する。
それをボーデヴィッヒはナイフを左に持ち替えて受け止めるとISを展開して俺を止めた。何故か驚いているが、止まっているのは右側だけ。すぐさま左のトンファーを投げる。ブーメランの代わりだが、それを察したのかボーデヴィッヒはすぐさま後ろを向くと俺の右側も自由になった。
部分展開をしているようだが、その場合は展開している部分は防御が発動する。だから俺はボーデヴィッヒの身体に蹴りを入れる―――つもりだったのか、ボーデヴィッヒを庇ったのか織斑先生を蹴っていた。
「教官!」
「千冬さん!」
「……私は無事だ。それよりも時雨、お前はすぐに保健室に行って指を止血しろ」
「……うわ。意外に出てるな」
かすっただけ、だと思ったがどうやら少し深かったようだ。
俺はすぐに患部を抑えて保健室に向かった。
■■■
千冬はラウラに向き直る。するとラウラは恐る恐るといった感じに千冬を見る。
「やってくれたな、馬鹿者。ISを校舎内で展開するなど、何を馬鹿な―――」
そこで千冬は、ラウラが自分を見ていないことに気付いた。
「おい、ボーデヴィッヒ」
ラウラの肩を掴んだ千冬。するとラウラは何かに怯えるように頭を抱えてしゃがんだ。
「……ラウラ」
「!? じ、自分は一体……」
「……大丈夫か?」
思わずそう尋ねてしまう。
千冬は少し前、とある事件がきっかけで一夏を日本に置いたまま日本を離れ、ドイツ軍で教官をしていた。本来なら日本の代表が他国の人間を強くする行為などあってはならないが、彼女の場合は篠ノ之束と交友を持っていることもあり、そう言った自由も認められていた。そこでラウラと出会ったが、当時のラウラよりも今はかなり酷い。
(……そんな馬鹿な。ラウラは現役軍人だぞ!? それをこうも簡単に怯えさせるなど、あり得るわけが………)
―――ズキッ
千冬は急に腹部に衝撃が走ったことですぐに座り込む。
「千冬さん!」
箒は慌てて駆け寄る。
「……きょ、教官………」
「お前の処分は……後で伝える……今は教室に戻っていろ。……箒、お前はボーデヴィッヒと一緒に戻れ」
「……わかりました。…一夏にも、黙っておきます」
そう言って箒はラウラを連れて教室に戻る。
千冬はその場で少し休み、立ち上がって教室に向かった。
(……油断した? いや、おそらく今のは舞崎がラウラを………まさか)
―――あの時は、手加減していたのか?
千冬は今、知りかけていた。
確かに4月の千冬との戦いは決して手を抜いていたわけではないが、だからと言って本気ではなかったことに。
彼女―――ラウラ・ボーデヴィッヒには4つの目的があった。その内2つは上から言われたということもあって乗り気ではなかったが、最後の2つに関しては別だ。
そして今、本来なら隣に座っているはずの生徒がいないこともあって、内心安堵していた。
(………何故、私は安堵している……?)
その答えは半分出ている。しかし認めたくなかった。
(…………こんなところで、立ち止まっていられないんだ)
織斑千冬を再びドイツの教官に戻す。そして、その弱点であり足を引っ張る存在である織斑一夏を抹殺する。
だがそれよりも、何よりもまずするべきことができた。できてしまった。
(………舞崎静流を、殺す……)
―――だが、できるのか?
ラウラは当初、ISを使って倒すつもりはなかった。ISを展開したことに後から驚いたほどだ。
これまでISを使って暴動を鎮圧してきたこともある。制圧してきたこともある。つまり、ISを使うことに関しての裏側を見てきていたのだ。なのに、自分は今まで一般人だった男にあっさりとISを展開し、使用してしまった。生身の人間相手に。それだけじゃない。自分は、身の危険を感じてしまった。捕まったことで女の捕虜にありがちなこと―――いや、それ以上の殺意に逃れたい一心でだ。
(………勝たなければ……)
もう、当初の目的なんて彼女は忘れていた。
ただ、あるのは舞崎静流に対する恐怖。織斑一夏など比べものにならないほど―――それだけじゃない。おそらくこの学園内のどの人間よりも強い存在を倒そうという目標。
聞き出し、相部屋の権利を譲る。そんなことはもう、彼女の頭に存在しない。あるのはただ、静流に対する殺意のみだ。
■■■
まさか、縫うことになるとは思わなかった。
おそるべしサバイバルナイフ。しばらくトレーニングはお預けかもしれないな。とりあえず、足の重りを10㎏に増やすとするか。そうすれば多少はマシだろうし。
(……仕方ない。IS操縦は控えるか)
そう思った俺は教室に戻ると、ボーデヴィッヒと視線が合った。
何故か俺を睨んでくるが、もしかしてさっきのことが応えたのかもしれない。俺は無視して自分の席に座ると、ボーデヴィッヒの隣に座る偽男子がポツリと言った。
「……何でこの席、殺伐としているんだろ」
いや、こいつが悪いし。自業自得だし。
と、妙に子どもっぽい言い訳を内心して授業の用意をすると、あまりにも視線がウザかったので荷物を持って席を立つ。
「待って。どこに行くの?」
「別にどこだっていいだろ」
偽男の言葉を適当に返して俺は教室を出た。
というか、勉強ぐらい静かに……じゃなくて、大人しくさせろよ! この怪我のせいで、まともなことってあんまりできないんだからなぁ!!