IS-Twin/Face-   作:reizen

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こちらではお久しぶりです。
ようやく書き上げれたぜ。


第25話 抜かりない

 謹慎が開けた俺は、放課後を早速ISの練習時間に当てた。本当は打鉄を改造したいけれど、アイディアがまとまっていないのでそれは後にしよう。

 

「なんとなくわかるでしょ? 感覚よ感覚。……はあ? 何でわかんないのよ馬鹿!」

「防御の時は右半身を斜め上前方へ5度傾けて、回避の時は後方へ20度反転ですわ」

 

 近くでは織斑に教えている代表候補生が2人いるんだが、片方は新人類とかエックスなんちゃらとかならば理解できそうな言語で、もう片方は逆に難しすぎて理解が追いついていないようだ。

 

「一夏、ちょっと相手してくれない? 白式と戦ってみたいんだ」

 

 傍からその様子を見ていると、デュノアが織斑に試合を申し込んでいた。織斑はこれ幸いとばかりにデュノアと試合するが、為す術なくやられてしまった。

 

「やはり、一夏にも射撃武装が欲しいところだな」

「だったら、篠ノ之は技術者を目指せばいいんじゃね?」

「何故だ?」

「技術者で織斑の機体の専属整備担当になったら、相談とかこつけて2人きりになれて、場所によってはできるだろ?」

 

 そう言ってやると、篠ノ之は顔を赤くし始めた。

 

「ば、馬鹿者! そんな不埒な考えでどうする!?」

「そもそも不埒なものぶら下げて、ISスーツだけでいるお前ら女の方がよっぽど異常だと思うけど」

「こ、これは正装なのだ! あくまでも! 正装だ!」

 

 顔を真っ赤にして怒る篠ノ之に、俺は内心ため息ついた。

 

「まぁ、実際これだけ露出が多い格好でうろつかれたら、男は嫌でも意識はするんだけどな」

「……舞崎でも意識するのか?」

「じゃあ聞くけど、お前は犬が交尾していても興奮するか?」

「………………舞崎にとって、女とはそういう風に見えるんだな」

「というか、逆にあまり感じなくなったな。一時期離れていた時に凄いのを見てたから」

 

 いや、ホント。あそこまで可愛いのは中々いないと思う。最初はぎこちなかったけど、3日目くらいから甘えてくる姿とか、写真を撮っておけば良かったと本気で思った。せっかく、せっかくIS学園で一緒にいられると思ったのに。

 

「…………ホント、女の半数が死滅してくれればいいのに」

「物騒なことを言わないでくれ」

 

 ……っと、気が付けば織斑とデュノアがピットの方に移動していた。俺も面白そうだから話に入ることにしよう。

 

「ええとね、一夏がオルコットさんや凰さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握していないからだよ」

「そ、そうなのか? 一応わかっているつもりだったんだが……」

「うーん、知識と知っているだけって感じかな。さっき僕と戦った時もほとんど間合いを詰められてなかったよね?」

「ま、元々織斑は動きが単調な上に武装がブレード1本じゃあ、火器豊富なラファール・リヴァイヴにゃ逆立ちしたって勝てるわけないしな」

「じゃあ、シャルルと一度戦ってみろよ。シャルルは手ごわいぞ」

「別にいいけど。さて、やるかデュノア。ISを解除しろ」

「何でだよ!?」

 

 デュノアではなく織斑に突っ込まれた。いや、俺は―――

 

「別に相手は男なんだから殴っても問題ないだろ。まぁ、女だろうと気に入らなければ殴るけど」

「いや、女を殴っちゃダメだろ」

「悪いが俺は男女を差別しない性差廃絶主義だ。それに今は女の方が強いんだろう? だったら問題ない」

「大アリだ!」

 

 あー、もう。煩いな。

 

「いいか織斑。今の世界情勢じゃ「従順」「美少女」「性格神」じゃなければ女とは言わない。確かに生物学的上で「女」と言っている奴らは総じて子供を産めるが、すべてメスと言っても過言ではない。もしくはペットだ」

「いや、それはいろいろとおかしすぎるだろ!?」

「……違うな。正しくは「子供を産む生物」か」

「もはや言いすぎだ!!」

 

 なんだこいつ。情緒不安定か? もしかしたらしばらく女と一緒に過ごしてきたから、違う意味で疲れているのかもしれない。

 

「いい加減にしろよ静流。いくらなんでも批判しすぎだ」

「強いと謳っておきながら大した実力もない奴らなどまともに同族して扱う気になれない。なるのは立場を弁えれるか、男をある程度認めることができる奴らだ。ましてや兵器を使って上だとほざく奴など論外だ」

 

 篠ノ之はそれができるから、今も友として受け入れている。もし暴走しようものなら容赦なく潰すがな。

 

「まぁいい。仕方がないからISで相手してやる。いくら生身で強くても所詮はISで弱ければ話にならないからな」

「……だったらさっきの問答はいらないだろ」

「それもそうだな。さてデュノア、覚悟はいいか?」

「僕だって負けるつもりはないよ」

 

 俺は打鉄を展開して、完全展開したラファール・リヴァイヴと対峙する……ん? 「カスタムⅡ」?

 

「デュノアのラファールは改修機か?」

「うん。僕は男だから、信頼性のある機体を僕の戦いに合せて調整したんだよ」

「なるほどな。ならば先に装甲の発注を済ませておけ。神に祈る時間ついでにその分もやる」

「必要ないよ」

 

 挑発のつもりか、嘲笑うような顔をするデュノア。……おっと、その前に。

 

「悪いがデュノアの公開処刑をするので場所を開けてくれ! 巻き込まれたいならば構わないがな!」

「公開処刑って何!? 僕何をされるの!?」

「………言うと思っているのか?」

 

 言ったらそのフラグが壊れそうだから自重するんだがな。

 

「―――その前に、私の用事を済まさせてもらおう」

 

 別の方向からそんな声が聞こえた。この声はラウラ・ボーデヴィッヒか。

 

「……いきなり出てきて何の用だ?」

「織斑一夏、そして舞崎静流だったな。貴様らも専用機を持っているならば私と戦え」

「嫌だ。理由がねえよ」

「順番ぐらい守れ。先にミンチになるのはデュノアだ」

「……僕がミンチになるのは決定事項なんだ……」

 

 デュノアの呟きを無視しておく。

 

「貴様にはなくても私にはある」

「だから順番は守れと―――」

「貴様がいなければ教官が大会2連覇の偉業を成し得ただろうことは容易に想像できる。だから私は貴様を、貴様の存在を認めない。そして舞崎、貴様は教官と同室だそうだな? 部屋を変わるというのなら特別に見逃してやる」

 

 ……教官っていうのは………織斑千冬のことか。どうやらあの女を慕っているみたいだが、部屋を汚くすることに長けている奴のどこがいいのかわからない。

 

「また今度な」

「ふん。ならば―――戦わざる得ないようにしてやる」

 

 そう言ってボーデヴィッヒは右肩に装備されているレールカノンを起動させ、織斑に向けた。

 

「一夏!」

 

 少し離れているデュノアはすぐに織斑のところに向かう。だが俺は織斑とボーデヴィッヒの間に割って入るだけにした。

 

 ―――ガッ!!

 

 撃ち出された砲弾を受け止めることには成功したが、今のでマニピュレーターがいくつかイカれた。

 

「静流!?」

「貴様、どういうつもりだ? まさか教官にその男を任せられたとでも言うのか!?」

「………冗談じゃない。俺は例え織斑が死んでも「ざまぁ」と心から笑えるさ」

「酷いなそれは!?」

「だが、悪いがまともに避難も終わっていない状況で発砲する奴を潰すのが俺の趣味であり誓いでな………死にたいか、クソチビ」

「その言葉、そっくり返してやるぞ。貴様も返答次第では潰すつもりだったからな」

「おお。怖い怖い」

 

 俺はあえておどけてやる。馬鹿にしていると感じたのかボーデヴィッヒは俺を殺そうと接近する。

 

『―――そこの生徒! 何をやっている!?』

 

 唐突にスピーカーから声が飛んだ。

 

「……ちっ。今日は引こう」

「何だ。お前のことだから愛する教官とやらを取り返すために俺を消すのかと思ったぜ」

「絶対防御が邪魔するのでな。ISがない時にするとしよう」

 

 そう言って去っていくボーデヴィッヒ。……おい軍人。一般人を殺す宣言していいのかよ。

 内心で突っ込んでいると後ろから織斑とデュノアが近付いてきた。

 

「大丈夫か、静流?」

「ああ。だが要反省だな。今度の奴は砲弾も受け止めることができる奴に変えておかないと」

「…………あのね、舞崎君。普通、砲弾は回避する物だと思うけど……」

 

 怖い何かを見るような目で俺を見るデュノア。まぁ、確かに回避した方が安全だが、あそこで受け止めていなければより被害が大きくなっていただろう。たぶん信じてくれないが、実は少し計算が入っている。

 

「まぁいいや。俺はもう少しやっていくけどお前らはどうする?」

「僕は一夏に銃を教えるよ。体験したら少しはマシになるだろうし」

「別に良いけど、あんまり仲良くなりすぎるなよ。掘られるぞ」

「「え!?」」

 

 その意味をどう解釈したのか、篠ノ之とデュノアは顔を赤らめる。織斑は「何を?」と言っているからどうやらわかっていないらしい。

 どうなるか内心楽しみながら、俺はある目的のために一足先に部屋に……と、その前に先に整備室だな。

 そう思いながら中に入り、俺はさっさと終わらせることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今戻ったぞ」

「アンタはどこの亭主だ」

 

 そう突っ込みながら、帰って来た織斑先生に「おかえり」と返す。

 

「……何をしているんだ、お前は」

「今度の学年別トーナメントに向けてちょっと、ね」

 

 画面の中ではボーデヴィッヒの戦闘映像が流れている。……が、これはあくまでもフェイクだ。

 

「…やはりお前は勉強熱心だな」

「たぶん聞いているとは思うが、弟子が暴走しかけていた」

「ああ、知ってる。お前が奴の強行を止めてくれたらしいな。すまなかった」

「別にいいさ。世の中には命の危険もないのに平然と人を殺そうとする奴らもいるんだから、それに比べたら可愛いもんだ」

 

 実際、ボーデヴィッヒの行動は可愛いものだ。わざわざ正面から潰そうとしてくれるんだからな。……あの屑共と違って。

 

「ところで。舞崎、お前はデュノアのことをどう思っている?」

「ああ、あの金髪のことか?」

「……たくさんいるんだが?」

「冗談だ。別になんとも思っちゃいねえよ。あの程度なら大した脅威じゃないし、アンタぐらいの実力者なら捨て置いても問題はないと思うけどな」

 

 まぁ、今もなお評価は下がりつつあるけど。

 実際、俺の所に来るとしたらスカウトぐらいだろう。なにせ物理的に敵を潰せるIS操縦者なんてそういないし、心配するだけ無駄というものだ。

 

「………お前がそう言うなら別に良いがな。だが、デュノアには警戒しておけ。奴は危険だ」

「……危険度で言えばどっちかと言うとボーデヴィッヒだろ。アイツ、俺がアンタと同居していることを羨んで俺を殺すことを宣言していたぜ」

「…………今度会ったら説教だな」

「その必要はねえよ。それとも俺があんな雑魚にやられるとでも思ってんのか?」

「相手は曲がりなりにも軍人なんだが……?」

「そう言っても大したことねえよ。女の階級の何を信用できる? 精々、胸の大小で好みが分かれる程度だろ」

 

 なんて言いながら、俺が実際に聞いているのは違うものだった。

 

『特記事項第二十一項、本学園における生徒は在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする。つまり、この学園にいれば、少なくとも3年間は大丈夫だろ。それだけ時間があれば、なんとかなる方法だって見つけられる。………本当は静流にもこのことは伝えておいた方が良いかもしれないけど、必然的に千冬姉に伝わるしなぁ。そんなことになったら、シャルルは強制送還されるかもしれないし……』

『……一夏、ありがとう……』

 

 物の見事に女性を落としている織斑。流石歩く女コロリ。中々褒められない手腕である。

 そう。つまり俺はずっと、織斑の服に仕込んでおいた盗聴器から2人の会話を聞いていたのである。………まさかデュノアもあんな、ボディソープの替えがないという理由でバレるとは思わなかっただろう。あまりの間抜けっぷりに思わず大声で笑いそうになった。

 とりあえず、このデータは保存しておこう。良い脅迫のネタになる。ただし、身体で払ってほしいというのは逆にこっちの首を絞めるのがオチだ。

 

(………後は、使いどころだな)

 

 それを誤れば、これはただの無駄な会話となる。しっかり使わないと。

 

「それとだ、舞崎。お前はボーデヴィッヒのことを知っている風だったが、知り合いか?」

「そうだな。ラウラ・ボーデヴィッヒが遺伝子強化素体と書いてアドヴァンスドと読むぐらいには知っているかな」

 

 俺はすぐさまトンファーを出して迫って来た木刀を受け止める。

 

「久々の手荒い歓迎だな」

「……それをどこで聞いた? 場合によっては流石の私でも庇いきれんぞ」

「………隠していてもしょうがないから言うが、前に俺が行ってた研究所で渡されたんだよ。おそらく俺の遺伝子情報を確保するために、な。手段は言う必要があるか?」

「………大概腐ってるな」

「でもまぁ、仕方ないんじゃねえの。今のところ、ISを動かせるのって俺とアンタの弟ぐらいだし。どうにかして採取したいっていうのが全世界の本音だろ」

 

 俺は武藤さんに守られているからそこまで大きな騒ぎになっていないが、実際にそれを望む声が上がっていたらしいからな。冗談じゃない。そんなことをしたら俺は―――本気で研究所を潰しに行くだけだ。

 ほとんどの確率でないだろうが、もし俺が遺伝子データを提供して、作られたその存在が様々な実験を強制的に受けさせられて恨まれるなんてことになったら俺が嫌だしな。勝てる気がしない。

 

「………だが、できるだけあまりそう言ったことは口外するな。できるだけラウラのことは―――」

「言いふらすつもりはねえよ。俺は自分にメリットがないことはしない主義なの」

「……なら、良いんだがな」

 

 少し怪しみながら俺を見る織斑先生。俺はその視線を回避しながら、とりあえず今俺自身がどう動いて手に入れた情報で立ち回ろうかと考えていた。


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