IS-Twin/Face-   作:reizen

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第24話 これでも家事全般大丈夫

「テメェはグラウンドでも走っていろ。さて、つまらん奴は放っておいて、次はお前だ」

「ちょっと、何でティナを殴ったのよ!?」

「女を殴るなんてサイテーよ!!」

 

 ………とりあえず、黙らせるか。

 俺は先に叫んだのを蹴り飛ばし、2人目を殴り飛ばした。

 

「何か勘違いしているようだが、ゴミ共」

 

 やれやれ。だから女というのは困る。

 

「今、俺たちが使っているのはISという兵器だ。一歩間違えれば死ぬ可能性もある代物を前に、あまつさえ指導員である俺に刃向かうとはな。身の程を知れ」

 

 俺はトンファーを出して女たちに殴りかかろうとしたところで場所を変えて後ろからの攻撃を受け止める。

 

「何の用だ?」

「やり過ぎだ。これ以上は見過ごせん」

「じゃあ、指導員を交代してくれ。あの豚3匹は蛆虫でありながら俺に逆らったゴミ共だ。これ以上の躾ができないのならば、アンタが担当しろ」

「…………はぁ。わかった。貴様は―――」

「俺は今日のテストに出るんでな。その勉強でもするさ」

 

 そう言ってウエストポーチから教科書を出して読むことにした。

 

「死ね! この腐れ男が!!」

 

 後ろから怒号が飛んできて、どこから持ち出したのかナイフを出している。俺はそれを瞬時に見抜いたので、後ろ回し蹴りを首に食らわせた。本来ならそのまま下に叩きつけるべきなんだが、この腐れ女を殺して俺に前科がつくのは面白くないので、首を痛める程度で済ませてやる。

 

「…………無駄に反抗して俺の勉強時間を奪うだけでなく、雑魚の分際で俺を殺そうとするとはな」

 

 もっとも、それだけで終わらせる気はないが。

 

「良いことを教えてやる。俺が2組のクラス代表をボコったのは下らん痴話喧嘩にISを持ち出したから無効化しただけに過ぎない。そして貴様は兵器を前にしているのに女尊男卑を見せた余裕から遊びでやっていると判断した。だから殴ったが………文句あるか?」

「あるわよ! アタシの美しい顔が台無し―――」

「テメェはただ無駄な脂肪をぶら下げている豚だろ」

 

 金髪女の動きが固まった。

 

「まだ何もわかっていないみたいだな。このまま成り代わる兵器が出ない場合、IS操縦者はこの前の騒動のようにいずれ前線に出て戦う運命にある。そこで自分以上の力量を持った相手と戦ったら捕虜として捕まるに決まっているだろう? そこで女がどうなるか、言わなくてもわかるな?」

「そ、それは………」

「まさか、女性が優遇されているからそんなことがないと本気で思っているのか? 頭が湧いているとしか思えないな。あの変態引きオタニートが聞けば「これだから非オタは屑なんだよ」と言うだろうな」

「いや、アンタの交友関係おかしくない?」

 

 冷静に突っ込まれたが、仕方ないだろう。あいつに勧められた奴はすべて見たり遊んだりしたんだから。……まぁ、日頃から組み立てるようなアホとは違ってそこまでハマらなかったが。

 

「ともかくだ。覚悟もない、遊びでやっている屑が俺の時間を奪ってんじゃねえって言いたいんだが……死ぬか?」

 

 俺はトンファーをガンモードにして銃口を向けた。

 

「……撃てるもんなら、撃ってみ―――」

 

 ―――ガンッ!!

 

 耳元に銃弾がかするかかすらないかの場所に撃ってやると、目の前にいる奴は公衆の面前で漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっと解放された。

 あの後、俺の大立ち回りは流石にマズかったのか、反省文を言い渡された。そして明日から謹慎である。

 とりあえず昼飯にしようと思って屋上に来た。いざとなればそこから飛び降りてショートカットもできるからだ。(※良い子も悪い子も決して真似しないように)

 で、なんとなく屋上に来たら、織斑と篠ノ之が「はい、あーん」をしていた。

 

「あ、これってもしかして日本ではカップルがするっていう「はい、あーん」っていうものかな? 仲睦まじいね」

 

 デュノア、お前空気読めよ。

 

「だ、誰が! 何でこいつらが仲良いのよ!?」

「そ、そうですわ! やり直しを要求します!」

「行為にやり直すも何もないだろ」

 

 思わず言ってしまった。

 

「お、戻って来たか」

「アンタねぇ、限度ってもんを知らないの? うちのクラスはアンタを殺そうって目の敵にしてるわよ」

「そっか。徒党を組んで俺が満足するならばいいんだがな」

 

 だがそれは無理な話だろう。所詮女はそんなものだ。

 

「いや、満足するって……」

「何だったら、お前から俺の情報を流しておいてくれ。あ、俺は向こうがISを使わなければこっちも使う気はないから。ただし、どっちにしても精神崩壊をさせるぐらいはするがな。なぁ、オルコット」

「………そ、そうですわね」

 

 当時のことを思い出したのか、顔を青くするオルコット。そんな奴の手にはサンドイッチが入ったバスケットが握られている。

 

「お嬢様だから料理は無理だと思っていたが、意外にできるんだな」

「ええ。料理は淑女のたしなみですから。舞崎さんもおひとつどうでしょう?」

「そうだな。お手並み拝見ということでもらうか」

「「あっ」」

 

 そう言って俺はバスケットからサンドイッチを手に取ると、それを口に運ぶ。ふむふむ。この味は…………そうか。なるほど。

 俺は呑み込んで、オルコットに尋ねた。

 

「オルコット、このサンドイッチはちゃんと味見をしたか?」

「していませんわ。だって、一夏さんにたくさん食べてもらおうと思って―――」

 

 すぐさまオルコットの口に拳を突っ込み、サンドイッチを適当に掴んで口の中に無理やり入れて咀嚼。近くにあった蓋が開いた紅茶のペットボトルを無理やりぶち込む。うむ、白目を剥いて倒れているな。

 

「ちょ、静流!? 流石にそれはやり過ぎだろ!?」

「まぁ待て。こういう時は……セイっ!」

 

 腹部を刺激して無理やり食わせたサンドイッチを吐き出させる。(※本当に真似をしてはいけません)出したのはもちろん、ビニール袋に入れてオルコットの隣に添えた。

 

「……はぁ……はぁ……死ぬかと思いましたわ」

「良い夢、見れたか?」

「ええ。無くなった両親に会ったような……じゃありませんわ! よくもこんな仕打ちをしてくれましたわ―――」

 

 もう一度無理やりサンドイッチを入れた。今度は紅茶をぶち込まない。また気を失ったので目覚ましビンタで起こしてやる。

 

「……ここ……は……」

「驚いたか? テメェはこんな殺戮兵器を織斑に食わせていたんだ。よくそれで好かれようと思えたな。人としてあり得ないとしか言いようがない。ましてや味見をしないなど、料理人にあるまじき行為だ。テメェは一体どうやってこれを作った?」

「それは、黄色が足りなかったので砂糖とマスタードを―――」

 

 俺はバスケットをひったくっていつでも使えるようにライターを取り出してすべて焼却処分にした。

 

「そんな! わたくしの手料理が!?」

「料理に調和が実現されていないものなど、料理と言わない。すべてゴミだ」

 

 とはいえ、流石に1つだけ残している。というのも―――そろそろ来るからだ。

 

「貴様らぁ!! 一体何をしているんだ!?」

 

 テンションが趣味がトライアスロンという筋肉ダルマっぽいのは気のせいだろうか? いや、性別以外は大して変わらないか。

 

「ちょうどいいところに来ましたね、織斑先生。まずはこれをどうぞ」

「ん? これはサンドイッチか? いや待て。学園内で焚火など持っての外だ!!」

「その前にこれを食べてください。理由はすべてこれを食べてからです」

「………」

 

 俺からサンドイッチを受け取った織斑先生は一口食べると、バランスを崩した。

 

「……なんだ……これは……」

「オルコット作のサンドイッチ……いや、普通の調味料を使ったはずの薬物兵器です」

 

 まぁ、化学薬品を使うどこかの天然女子高生よりかはマシだろうが、ともかく酷い味だった。味覚を殺すことに特化した最終兵器とでも言うべきだろう。ともかく酷い味なのは間違いない。

 

「故に、すぐさま焼却処分を実行しました」

「………わかった。今回だけは大目に見てやるが、あまり問題は起こすなよ。それとオルコット、貴様は料理の一切を禁じる」

「え? そんな―――」

「まず貴様は、料理というものを学習しろ」

「織斑先生も似たようなものでしょう?」

 

 ついでに一言を添えておいてやる。すると織斑先生の殺気が濃くなった。

 

「ともかく、オルコットは料理禁止だ。舞崎、後で覚えていろよ」

「上等だ。テメェを這いつくばらせてやる」

 

 さて、問題はそれをどこでやるかだ。

 

「そんな……料理で胃袋を掴ませることができないなんて……」

 

 打ちひしがれるオルコット。ザマァとしか言いようがない。

 

「………ねぇ、舞崎君っていつもこんな感じなの?」

「………いや、どっちかっていうとさっきみたいに暴力で解決するのがほとんどだ」

「………むしろ私は久々に見るな。調理実習の時にふざけていた女子を何とも言えない圧力で抑えつけていたことがあったほどだ」

「………いや、何をしたのよその女は」

 

 後ろでひそひそとそんな会話が聞こえてくる。

 

「そうだ。オルコット、作り過ぎたからこれをやるよ」

 

 そう言って俺はタッパをオルコットに渡そうとしたが、オルコットはプライドからか首を横に振る。

 

「施しなんていりませんわ」

「そうか。そうなるとさっきみたいに無理やり突っ込む「わかりました! 食べますわ!」……そうかい」

 

 一緒にスプーンも渡す。そして俺は俺で自分の分を開けた。

 

「チャーハンですわね」

「中国の料理ね。それにしてもアタシが知っているのと違う―――」

「チャーハンはやり様によっては応用が利くからな。昨日は唐揚げだったからその残りを具材にしてみた」

 

 オルコットは説明している間に一口食べている。そして勢いよく立ち上がった。

 

「な、何ですの、これは!?」

「なぁ静流、俺も一口いいか?」

「好きにすれば?」

 

 そうした方がオルコットも喜ぶし。

 すると織斑は何を思ったのか、オルコットが口を付けたスプーンで食べた。

 

「………美味しい」

「ちょっと、アタシも頂戴よ」

「勝手に食えっての。デュノアは?」

「ぼ、僕ももらおうかな」

 

 そう言って2人はそれぞれ同じスプーンで食べた……どうでもいいけど、お前ら間接キスとか気にしないのか?

 

「なにこれ、信じられない」

「…お、美味しいね。もしかして家が料理屋とか?」

「中学の頃は一人暮らしだったからな。必然的に色々とすることがあるんだよ。まぁ、チャーハンなんて初心者の料理だから誰にだって上手くできるけどな」

 

 しかし、初心者の料理と言っても奥が深いもので、こなせばこなすほど上手くなっていくのだ。まぁ、やりやすい点から見て初心者の料理ってだけなんだが。

 

「ま、負けましたわ。まさかズボラな舞崎さんにこんな差を付けられるなんて……」

「いや、舞崎は家庭科のみにおいて常にトップだったぞ?」

「「ええええええッ!?!?」」

 

 そんなに意外か? 少し傷ついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、職員室で千冬は伸びをする。今、彼女は先程終わった整備室使用許可テストの採点していた。

 

「織斑先生、採点の進捗はどうですか?」

「滞りなく。次の最後の1枚です。……これは」

 

 名前の欄を見る。「舞崎静流」と書かれていた。千冬は静流がこのテストを受けることを知っていたからわざと明日からの謹慎にしたが、まさかランダムで割り当てられるテストの採点でイレギュラーの生徒が当たるとは思わなかった。

 

「どうしました?」

 

 正面に座る2組の担任「エレナ・ニーラン」が千冬に声をかける。

 鈴音のこと、そして今日の朝に起きたティナ・ハミルトンの一件で何かとお世話になっており、エレナにはできるだけ2組の生徒が静流に攻撃を加えないように動いてもらっている。もっとも、それは静流を守るためではなく、2組の生徒を守るためだ。

 今、千冬に「一夏と静流、どっちが優れた人間か」と問えば、千冬は間違いなく「静流」と断言するだろう。そして静流は既にそう言われるほどの状況を知り、立ち回っている。本来なら2年の時点で整備科を選んだ生徒が5月に入る前に自動的に許可される通過儀礼だけのテストを、1年のこの時点で受けるのもその表れだ。そしてそれを理解できるほど、静流はこれまで激動の時間を過ごしてきた。

 小学生の時から母親を殺しかけたことから両親に捨てられ、父親の実家に引き取られた静流はそのことを弄られ、一夏と同じく物理的に鎮めてきた。その生い立ちや行動から最初、千冬は「一夏にそっくりだな」と内心思ったが、対処方法、内容など全く違っていたのだ。

 一夏はあくまで、内容としては軽い喧嘩として留まっていて、収まっていた。しかし静流は上級生が兄にいれば駆り出され、報復をされていたがそれすらも教室というフィールドに呼んで潰し、何人も入院させている。幸い、もう数㎝で怪我をしていたかもしれないという衝撃を、女にも食らわせている。中学の時点で青少年の世界に疎かった千冬すら聞いたことがある不良校を入学数か月でまとめ上げ、高校生すらも配下にして遠出するなどの不良行為を繰り返した。それもある日を境にパッタリと止んだが、被害者の中には有名なヤクザの組長の孫すらも半殺しに、構成員の半分を入院させたほどだ。そのことはその孫が悪かったのか組長自ら謝罪をしたという噂も聞いた。だがそれでも授業をサボることはなく、長期休暇の宿題もしっかりと終わらせ、テストでは常に上位に入っているほどだ。実際、静流自身が進学を目指す生徒と不良を分けるように校長に打診し、不良たちの進捗具合を自ら進んで見るなどの行動をしていたほどらしい。

 そんな真面目と暴れん坊(なんてレベルではない)が同居したような感じの静流が本気を出した場合、身体的に優れている女たちが通うIS学園の生徒でも敗北は必須。現に静流が一時期通っていた施設を強襲した女性たちは入院し、喧嘩を売った生徒は大怪我を負う被害が出ているのである。仮に2組の生徒が静流に攻めたとしても、むしろ混戦だからこそ死人が出るのではないかという不安が千冬にはあった。

 

 だが、中には謹慎が4日だけは少ないと言う声も教員の中では上がったが、それには理由があった。静流の場合、謹慎はほとんど意味がないのだ。出された課題を1日で終わらせ、他は授業分の勉強や開発関係の勉強を行うから、むしろ静流にとって授業に出す方が苦行である。

 

「ニーラン先生、この採点をお願いします」

 

 文章問題に差し掛かり、千冬ほどの実力者ではないが、開発関係の知識も明るいエレナに採点を頼む。しばらくして彼女は「決まりましたね」と言った。

 

「今月の合格者は、たったの2名……布仏本音、そして舞崎静流です」

 

 今月から毎月1度行われるそのテストの最初で、その2人のみが合格した。

 ちなみに、エレナが静流関係で手伝ってくれるのは、彼女自身が以前の犠牲者の1人だからである。




千冬が残業した時にありがちなこと……テーブルの上におにぎりと沢庵が置かれている

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