IS-Twin/Face-   作:reizen

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第15話 立場逆転

 あの後、複数人の人に止められた()らは戦いを止め、そして僕がしてきたことを知られた時は何故か凄く怒られた。いや、今も怒られている。

 

「確かに、お前の気持ちは理解しないわけでもないが、やりすぎだ。無力化するのに骨や指を折る必要はない」

「じゃあ、どうすればよかったのさ」

 

 敬語は捨てて話をする。目の前の相手には不要と判断した。

 

「相手は規制されているのに関わらずISという力を行使した。そんな危険人物をただ縛って放置だなんてとてもできないよ。ただでさえ、以前のことがあったんだから俺がしたのは当然の事とも言える。それとも何? アンタは俺に黙って死ねと? 男なんだから女に従えと? 冗談じゃない。どうして俺がISを使わなければ男に喧嘩も売れない雑魚に媚びを売らなければならないんだよ」

「………だからと言って、お前は喧嘩を売られたら相手に暴力を振るい続けるのか?」

「時と場合によってはね」

 

 まぁ、今回のは物凄くムカついたから仕方ない。むしろ結局1人しか腕を飛ばせなかったからな。

 

「もう帰っていいですか? 凄く疲れたので今すぐ寝たいんですよ」

 

 何せあの場で事情聴取を受けた後にIS学園でもう一度事情聴取と来た。正直そろそろ眠い。

 

「………良いだろう。今回の事の顛末は一応は聞かせてもらっているからな。しかし、あの時に使用したISを明日に調べるということは忘れるな。場所は追って通告する。それと鍵だ。部屋は以前の場所を掃除はされているが、配置は変わっていないはずだ」

「そうですか。わかりました」

 

 鍵を受け取った俺は部屋を出てそのまま向かう。

 途中、何人かとすれ違って本気で驚かれた気がしたけど、反応する気分じゃないから全員スルーして部屋に入り、荷物をそのまま先にシャワーを浴びる。終わったら携帯電話を充電してベッドに入った。

 

 凄く、手持無沙汰に感じた。

 

(……ずっと、腕の中にいたんだっけ)

 

 最初はそっぽを向いた形で、でもそれは2日目からはお互い向き合って一緒に寝ていた。買ったパジャマが意外にマッチしていて、凄く可愛かった。

 目的もわかっていた。俺の遺伝子情報を手に入れるために来たってことぐらい察していた。でも、それでも俺は一緒にいることが嫌じゃなかった。知らないことを教えてくれた。IS操縦のコツも教えてくれた。だからあの施設でISを動かした時もかなりうまくできていた。

 

 ―――疲れたのは、あくまで名目だった

 

 あの場所で、今にも泣きそうだった。

 

「………クロエ」

 

 もう彼女はいない。そのことを噛みしめながら俺は枕を涙で濡らした。どうにもならないと後悔しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋を引っ越すことになった。

 荷物を纏めて台車に乗せて移動する。既に授業は始まっているけど、あんなことがあったのと急な引っ越しのためにもう1日休みをもらえた。荷物が学園に来たときよりも増えているのは、施設にあった俺とクロエの分も引き取ったからである。

 

「ここが、今日からお前が暮らす部屋だ」

「…………本気、ですか?」

 

 俺は改めて尋ねると織斑先生は「仕方ないだろう」とため息を吐く。

 

「確かに問題ではある。だが、私ぐらいしかいざという時に対処ができないからな」

「………あの機体で暴走なんてされたら、素人にしか相手をできないオルコットさんには無理ですしね」

「いや、そういうわけではないだろうが………」

 

 本人がいないところで嫌味を言う。織斑先生は困った顔をするが、俺は何度でも過去を掘り返してやるつもりだ。

 

「でも、実際難しいからあなたの部屋に住むことになるんでしょう?」

「…………それもあるが、今日から更識がモンド・グロッソの強化合宿のために不在になるんだ」

 

 そもそも、どうしてこうなったのかと言うと俺が施設で暴れたことが原因だった。

 どういう経緯で手に入れたのか俺にも詳しくわかっちゃいないが、いつの間にか俺はISコアを手に入れていた。女たちから奪ったISは全部で4機。それらはすべて回収されて、いざ俺のを展開しようとこれまたいつの間にか手に入れていた指輪を念じて展開しようとしたが、何故か展開されない。どういうことだと俺と織斑先生があーだこーだと話し合っている内に指輪からクリスタルが現れ、指輪が割れてしまうという謎の現象が起こる始末。

 実はそれはISコアであり、調べてみればなんと新たなコアだったという。壊れてしまった以上は仕方ないということで急遽打鉄の予備パーツで機体を組みあげて俺の専用機とした。実はそうしたのは理由があり、織斑先生や山田先生、そして自称生徒会長のあの怪しい女に国家代表も呼び出して触れさせたのに反応しないと言う謎現象が起こったのである。当初は機体の調子が悪いのではという話があったが、組み替えて見ても同様の現象が起き、また、既存のコアを抜いてそのコアを入れても同じ。ただ、何故か俺だけは普通に使用できるので俺はデータ収集のために専用機を持つことになったのである。まさしく専用機持ちならぬ専用コア持ちとなり、いつ暴走しても対処できるように、織斑先生と一緒に暮らすようになったわけだ。

 

「まぁ、こうした方が楽に見つけることができますからね」

「……何をだ?」

「女尊男卑の女ですよ。僕らが一緒に住んでいることがわかれば、アイツらのことですから全面的に僕を責めるでしょう? その時に問答無用でどこかを潰せば裏に誰がいるか遠慮なく話すはずですし、攻撃をしてきたら誰が上かを叩き込めばいいんですから」

 

 今からそれができると思うとワクワクしてくる。

 

「…………襲撃した奴らだがな、全員が入院を余儀なくされた。中には杖が必要な奴までいたそうだが?」

「何も思いませんよ。文句なら僕ではなく、馬鹿な政策をしたアホ役員や屑豚共に言ってもらいたいですね」

 

 そうだ。オルコットも女尊男卑なんだからさっさと退場してもらおう。いつ潰そうかな。

 

「……舞崎、これ以上はもう止めろ。向こうが喧嘩を売ってきても酷い怪我を負わすな」

「何故です?」

「そんなことをしたところで無駄だからだ」

「無駄じゃありませんよ。僕の気が少しだけ晴れます」

 

 そうじゃなければ暴力なんかもしないのに。

 

「大体、最初からクラスメイトもオルコットも、そしてあなたも気に入らないんですよ。大して実力がない雑魚に素人に喧嘩を平然と売るアホ。とどめにすべての言動に注意を入れない蛆虫。こんなの、僕じゃなくても普通に怒りますけど。大体、統計から考えて500人以下しか男より強くなれない機体が使えるからって何が凄いんですかね?」

「…………舞崎」

「それに兵器を使って女が男より強いって言うなら、戦闘機に爆弾詰めて投下したら普通に男でも女に勝てることを証明できますね。それとも実際に男が女に勝てる証明をこの学園でしましょうか? むしろそっちの方が良いかもしれませんね」

 

 そう言うと織斑先生は俺を可哀想なものを見る目で見てきた。

 

「…………言いたいことはわかりますよ。でもね、こっちは大切なものも果たしたかったことも奪われたんですよ! 俺にはあるんです、ここにいる全員を、女を選別し、女尊男卑を根絶する権利がね!」

 

 クロエのように、そして篠ノ之のようにそんな思考を持たない女だっていることは理解している。けど、それが誰だかわからない。ならわかっている奴いないはすべてを黒として消した方が良いに決まっている。

 

「……言いたいことはわかった。だが、そんなことはしないでくれ」

「今は、ですが。向こうが余計なことをしてきたらその時は容赦なく潰します」

 

 そう言った僕は、さっきから気になっていた白い布を取っ払った。

 

「………おい」

「何だ?」

「この山は、何だろうな?」

 

 そう尋ねると、織斑先生は顔を逸らす。

 

「さぁな」

「………じゃあ、この下着を火種にして―――」

「ちょっと待て!」

 

 素早い動きで俺から下着を奪った織斑先生。俺はその隙に部屋のチェックを始めた。

 

「………織斑千冬」

「先生と呼べ」

「うるせえよ喪女。こんな堕落したもんでよく生きていけるな。スタイルが良くてもこれじゃあ嫁の貰い手なんてなくなるわ」

 

 ちょうどアラームが鳴る。その発信音は織斑先生からだった。

 

「時間か。私は授業に出る。舞崎は大人しくしていろよ」

「………そうだな。こんな汚物の集合体なんて相手にしている暇はないし」

「………それは言い過ぎだと思うぞ?」

 

 まったくもって言い過ぎじゃないんだな、これが。

 

「ほら行け。さっさと失せろ。あ、先に鍵」

「………性格が変わりすぎじゃないのか?」

「気にするな。俺は気にしない」

 

 俺に鍵を渡して部屋を出て行く織斑先生。俺は早速掃除を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………何だ、これは」

「そう言えば言ってなかったな。俺は中学から一人暮らしをしていたから必然的に家事スキルはそれなりに高いと自負している」

 

 風呂から出た後、帰ってきた織斑先生が部屋の状況を見て唖然としている。なにせ、集会や仕事がなかった時はいつもゲームか家事をしていたからな。これくらいのことは朝飯前だ。

 

「それと、これはスーツのクリーニング代だ」

「ちょっと待て。代えのスーツは残っているのか!?」

「全部出した。………って嘘だからそんな悲壮感漂う顔をするな。ちゃんと比較的状態が良い奴は残している」

 

 そう言うとホッとする織斑先生。

 しかしさっきまでの部屋と打って変わって綺麗すぎる。流石は俺だな………と思うほどに部屋の一角だけでなく、部屋全体が汚かった。特に風呂場なんて赤カビだらけだったからな。

 

「ちなみにビールは全部捨てたから」

「なんだと!?」

「……冗談だ。だが、ある程度は位置を移動させている。そろそろ料理をしておかないと俺の勘も鈍るだろうしな。……大体、何で料理器具が一つもないんだよ。本当は男じゃないのかと思い始めているんだが」

「ちゃんとした女だ。下着もスーツも女ものだろう」

「……そうだな。アンタの下着を見ても全然そう言った感情は芽生えなかったけどな」

 

 そう言うと何故かショックを受けた織斑先生。いや、当たり前だろ。

 

「………まったく。何をどうすればこんな奴が生まれるんだ。僕には理解できない」

「そうは言うがな、私はこれでも忙しかったんだぞ?」

「下着を適当にタンスに放り込んで、重要書類を床に落とすほどか?」

「…………事故だ」

「嘘はまともな物をつきましょう」

 

 そう言って俺はエプロンを着けて食事の用意をする。その間、織斑先生には重要書類と思われるものの書類の整理をしてもらっておく。

 

「できましたよ」

 

 食事ができたので盛り付けてから声をかける。

 

「ほう。今日は唐揚げか」

「嫌いか?」

「いいや。いただきます」

 

 唐揚げを一つ食べると、織斑先生は何故かショックを受けた顔をする。

 

「………世の中の男子はみんなこうなのか?」

「何がです?」

「一夏も……織斑もそうだが、その友人も料理ができてな」

「別にそういうわけじゃありませんよ。僕は一人暮らしでしたから自然とこうした技ができるようになっただけです。あと、ここにいる時ぐらいは肩肘張らなくても良いですよ。ここにいる時は世界的に有名な織斑千冬さんでも、ただのダメ女ですから。それとも、敢えて「千冬さん」と言った方が良いですか?」

 

 すると何故か顔を赤くする織斑先生。もしかして、そう言われる経験がないとか?

 

「………こんな光景を見られたら、間違いなく勘違いされるな」

「そうですか?」

「そうだ。傍から見たら今の私たちは夫婦にしか見えないぞ。特に舞崎は身長が高いからな。老け顔、と言うつもりはないがそう取られても仕方はないだろう」

 

 そう言われても正直困るんだけどな。

 そもそも、俺は織斑先生とそういう関係を持つつもりはない。

 

「下らないことを言う前に、さっさと食って風呂に入れ。というか何で寮監の部屋に風呂があるんだよ。アンタの弟が聞いたら泣くぞ」

「………否定はしないな」

 

 さっさと食べ終わった俺は食器を片付けて勉強を始める。

 

「そうだな。……しかし少し早くないか? もっとしっかりと噛め」

「ちゃんと噛んでるっての。アンタは俺のオカンか。………いや、あの女はそんなことを言わなかったな」

「そうなのか? ……そう言えば舞崎の両親は―――」

「俺を捨ててどっか行ったから興味ねえよ。考えてみれば奴らの自業自得だしな。心配もしちゃいない」

 

 昔は世の中を、そして女尊男卑になった原因であるISを恨んでいた。でも今は違う。女尊男卑はISという力を持ったことで助長した女たちの思考であり、ISは悪くない。……それどころか、今まで手を抜きすぎた。

 どれくらい勉強をしていたんだろう。気が付けば夜10時を過ぎていた。喉を乾いていたから外の自販機に買いに行く。

 織斑先生の姿はない。そういえば、さっき書類を忘れたから校舎に戻るとか言ってたな。

 鍵を閉めて廊下に出ると、消灯時間は過ぎているのにちらほらと外に出ている生徒がいた。俺の姿を見た何人かが不思議そうに見てきたが全員無視して屋上に向かう。

 

(普通の学校なら、屋上は閉鎖されているって聞いてたけどそうでもないみたいだな)

 

 そもそも、わざわざ寮の屋上に行く生徒もいないのだろう。俺は休憩も兼ねて夜風に当たって星を見る。買ってきたコーラを飲んでいると、冷たい風がくすぐったく感じた。

 

「……星が綺麗だ……」

 

 あの研究所も近くにそれほど建物がなかったこともあって綺麗だったけど、IS学園も地図で見ればそれほどではないけど、体感からしてかなり本州とは距離がある。そのこともあって綺麗だと思った。

 

(………クロエにも、見せたかったな)

 

 夜に屋上で愛を語り合う、か。そこまでの事は結局してないし、俺は彼女を連れて何をしたかったんだろう。

 

(勢いで言ってたけど、後のことは考えてなかった)

 

 おそらく、学園の前で門前払いを食らっていたかもしれない。そして守衛をボコって無理やり侵入……いや、無理か。そもそも迎えに来ていた人員が車に乗るギリギリだったし。

 

 まぁでも―――

 

 ―――キンッ

 

 咄嗟にトンファーを出して銃弾を防ぎ、左トンファーの持ち手を弄って右トンファーに接続。外部接続式のスコープを取り付けて、飛んできた銃弾から相手の位置を見る。

 

「―――とりあえず、痛い目見とけよ」

 

 光弾が飛んでいく。相手は銃が暴発して咄嗟に顔を逸らしたは良いけど手はそうではなかったので叫ぶ。

 その声で人が集まって来たので、俺は部屋に戻った。

 

 ―――例え、ここで「舞崎静流にやられた」と言われても、悪くても停学だろうから




ということで、織斑千冬と同居することになりました。
この世界では千冬は専用機を持っています。あと、モンド・グロッソってたぶんこの頃にやっていると思うんですよね。なので現国家代表の楯無は離脱。そうじゃなかったら9月から暗部が接触することっておかしいですから。いくら専用機持ちが嫉妬で教室で暴れていようとも。

原作で一夏と箒が同居しているのは、おそらく束の仕業。

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