IS-Twin/Face-   作:reizen

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第0-4話 Black haze~黒い霧~

 唐突だった。

 唐突に、日本にテロが起こった。だがそれは実際、外国からの入国者が起こしたものではなく、たった一人の少年とそれを殺そうとせんがために行動しているある組織が起こしたことであり、ある意味偶発的なことだろう。

 幸いなことに負傷者は出たがまだ死者は出ていない。少なくとも、政府が認知している範囲ではだ。

 

(全く。何の後ろ盾がない男性操縦者が現れただけでこの騒ぎか)

 

 日本総理大臣である阿村はため息を吐きながら、私兵による捜索の結果を待つ。

 目の前には一人の老人がおり、さっきから大声で話をしていた。

 

「わかりました。では、そのように」

 

 そう言って老人は電話を切り、通信端末をしまった。

 

「お待たせしました、総理」

「全くだ。君は礼儀というものを知らないのかね」

 

 さげすむような目でその老人を見る阿村だったが、次第にそれは虚勢へと変わっていく。

 

「申し訳ございません。生憎、私はあなた程度の存在など気に留めるつもりはありませんので」

「………貴様をIS学園の理事長を任命したのは私だぞ」

「おやおやぁ? 確かあの時はあなたが泣きついてきたのでは?」

「………そんなことはなかった」

「まぁ、特別にそういうことにしておきましょう」

 

 自分よりも下であるはずの老人に対して怒りを見せる阿村だが、自分から攻撃を仕掛けようという馬鹿な真似はしなかった。それもそうだろう。彼は幼い頃にあらゆる武道を身に着けたとしても、目の前にいる老人は初段や二段になったぐらいで勝てるような存在ではない。

 

「で、私を呼んだのは一体……っていうのはよしましょうか。今あなたが動員させている件に一切手を出すなということですか?」

「理解が早いな」

「実はあなたに呼び出される前に、別の方から頼まれていたのでね。新たに現れた男性IS操縦者を頼む、と」

 

 それを聞いた阿村は驚きを顕わにする。

 今回の襲撃事件、やらせたのは他でもないこの阿村であり、「死なない程度までなら痛めつけることを許可する」と言う条件で女権団に自衛隊のISも貸し出して確保に動かせたのだ。

 

「なら、今すぐその者たちを下がらせろ。命令だ」

「生憎、出したのは世界最強と生徒会長の二人なのでね。少々説得に骨が折れます」

「………」

 

 阿村は自然と目の前にいる老人を睨んでいた。

 

「まぁ、そう睨みなさんな。闇を背負うても私とて人間。無闇に人を殺すのは好きではないのですよ。それが何の罪も持たない子供なら、なおさらね」

「………罪か。女にしてみれば、あの男は罪を背負っているようなものだろう」

「だから、そのガス抜きとしてあの少年を使ったと。まったく、これだからあなたは困る」

 

 そう言いながら笑うその老人の言葉に、阿村は眉を動かした。

 

「所詮、一個人など替えが利く」

「………では、ゲームをしませんか?」

「何?」

 

 唐突の老人の申し出に阿村はもう一度眉を動かす。老人はどこか楽しげに話を続けた。

 

「簡単なものですよ。二人目の男性IS操縦者を誰が手に入れるか、予想するのですよ。私が用意したIS学園の人間が手に入れるのか、あなたが用意した駒が手に入れるか……もしくは、私たちではない、第三者が手に入れるか」

 

 そう言った老人の顔には邪悪な笑みが浮かんでおり、それを阿村が見た瞬間、外が明るくなった後にしばらくして彼らの耳に爆音が届いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静流や彼を狙う女たちがいた場所で爆発が起こった。

 そのせいか、周りが吹き飛んでいて、原型が留めていない。

 

(少しやりすぎたかしら)

 

 それを行った存在は落下しながら惨状を見てそう思い、ほんの少しだけ反省する。

 だがそれもすぐに終わり、彼女は辺りを観察して目当ての人物を見つけてゆっくりと近づいた。そして着地すると同時に纏っていたISを解除し、その人物の胸に手を当てて脈拍を調べる。

 

(あら、良い胸筋……じゃなくて、どうやら生きてはいるみたいね)

「…………ん」

 

 目当ての人物は気が付いたのか、体を軽く震わせながら目を開ける。

 

「気が付いたかしら?」

「……………」

「意識がはっきりしていないようね。悪いけどこのまま連れて行かせてもらうわね」

「———待ちなさい」

 

 金髪の女性が手を伸ばそうと、それを遮る声がした。女性はそちらの方を向いたが、彼女の瞳は声をかけた人物を完全に見下していた。

 

「何故、私たちに攻撃したの? あなたは女でしょう?」

「生憎、私は今の世界が壊れようがどうでもいいの」

「なんですって?」

 

 金髪の女性は再びISを展開し、話しかけて来た人物に対して攻撃した。

 

「………あ……()?」

 

 目当ての人物―――静流の意識が完全に戻ったようだが、どうやら万全の状態とはいかないようだ。

 金髪の女性は部分的にISの装甲を解除し、静流の頭をそっと撫でる。

 

「あなたを迎えに来たわ」

「……む…かえ?」

「そう。この腐敗した世界を終わらせるために」

 

 そう言って女性は静流を抱えようとしたところで、女性は何かを感じて自機に装備されている尻尾を上げる。

 

 ———キュインッ!!

 

 その尻尾で火花が散る。すると近くで突風が起こり、それを感知した女性は尻尾を振るう。

 

 ———キンッ!!

 

 するとISを装備した別の女性―――打鉄特式を装備した織斑千冬が現れ、金髪の女性を斬ろうとしたが、それを防がれる。

 

「近くにISの反応があったから来ているとは思ったけど、まさかあなたが出て来るなんてね」

「更識! 少年の確保しろ!」

「了解!」

 

 千冬の後ろからミステリアス・レイディを纏った更識楯無が現れ、静流の元へと移動するが急停止して下がった。

 

「どうした?」

「彼の周りに金色のバリアが張られています。あれでは迂闊には―――」

「そういうことよ。彼は私が連れて行くわ」

 

 そう言った金髪の女性は振り向く。そこには未だ意識がはっきりしない静流が呆然としている。

 

「行きましょう、坊や」

「…………」

「大丈夫よ。あなたがこれから行く場所は、女尊男卑も男尊女卑もない場所。あなたはそこで、少しは働かないといけないけど、困るのはそれくらいかしら?」

「…………」

 

 その時、彼は何を考えたのだろうか。静流は手を伸ばし始める。

 

「待って! 彼女に従っちゃだめ!」

 

 楯無は静流に向かってそう言うが、金髪の女性は笑みを浮かべて彼の手を取ろうとしたが―――

 

「———ありがとう」

 

 金髪の女性が伸ばした手を取った静流は体を上げて立ち上がり、そのまま呆然とする三人を残して去って行った。

 

「え? ちょっ―――」

 

 まさかの行動に全員に驚くも、金髪の女性がすぐに静流を追った。

 

「逃がすか。更識!」

「言われなくても!」

 

 金髪の女性の前に水の壁が現れるが、そのISの周囲に金色のバリアが張られ、数秒停止させるも壁を抜ける。

 だがその数秒あれば、千冬は周り込める。

 金属音が鳴り響く。金髪の女性の後ろから銃弾が飛び、金色の装甲に届くかと思ったが、高熱のバリアに阻まれて溶けてしまった。

 

「更識は私の援護を。真耶は少年の保護に向かってくれ」

「「了解」しました」

 

 遠方からついさっき静流が使用していたラファール・リヴァイヴが静流が逃げた方へと飛ぶ。

 

「スコール・ミューゼル。貴様を捕えさせてもらう」

「やれるものならやってみなさい、ブリュンヒルデ」

 

 二つの機体が交差し、周辺に再び爆発が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一体何をやっているんだろう、僕は。

 意味がわからない人たちにいきなり襲われて、ハルさんに助けられたと思ったらISの妨害に遭うし、挙句今度は集団で攻撃されるし。

 

(本当に、何なんだよ)

 

 さっきの金色のも、そして他のも、絶対に僕を殺そうとしてきた人たちだ。そんな人たちに付いて行ったらどうなるかなんて火を見るより明らかだ。

 

「ともかく、どこかに隠れないと……」

 

 いや、隠れたところでなんとかなるの? 相手はISを持っているんだよ?

 

(だったら、ISに乗るしかないのか……?)

 

 でも、昼の時はたまたまみんなの援護があって、突っ込んで上を取ることができたからで、僕の実力じゃない。……そりゃあ、ホバー機能を使えたけど偶然でしかない。

 その時だった。

 

「———見つけたわ!」

 

 遠くからそんな声が聞こえた。すると近くが爆発し、僕の近くにある何かが吹き飛ぶ。

 

「よくもやってくれたわね。あなた」

「僕は何もしていないんだけど!?」

 

 大体、僕はあんな機体を持っていない。金色を持つならシラ○イ装備かオ○ワシ装備のア○ツキか百○と相場が決まっている。

 

「よく言うわ、あんな女を近くに待機させるなんて―――」

「だから僕じゃないって言ってるでしょ!?」

 

 ふざけるのも大概にしてよ、まったく。

 内心ため息を吐いていると、その女はため息を吐いて鞭を出した。

 

「まぁいいわ。どっちにしろあなたは死んで……いや、連れてこいって命令されているのよね」

 

 この人、絶対殺す気だ。

 やっぱりおかしいよ、この世界は。何でこんな思考がおかしい奴が平然と外を出歩いているのだろうか。

 そんなことを思っていると、鞭が僕に接近してきた。

 

(太いから、掴めない)

 

 そう思って僕は回避する。

 

「ISの攻撃を避けた!?」

 

 それくらいなら、僕でも避けれるさ。

 なんたって僕は、小学校時代に下手すればター○系を超える程の黒歴史を築いてしまっているんだから。それに―――僕はこれまで伊達に噴抜けて生きて来たわけではない。

 

「この―――」

 

 近場の壁を見つけた僕はそこから逃げ出す。すると何かが僕の上を通り過ぎた。

 

「——————」

 

 何かを言っているのはわかる。でも僕の耳には届かない。

 わかってしまったんだ。ようやく理解してしまったんだ。この状況は、一体どういうことなのかを。

 今、二人は争っている。でもこれはおそらく僕を捕まえ、解剖する場所を争っているだけなんだろう。

 

(………どうして僕は……)

 

 どうしてこんなことになったんだろう。

 僕は何をしたんだろう。

 ISを動かした? でもそんなこと、僕が知っていたわけではない。それにどうして僕がこんな目に遭わなければならない。

 

(……とにかく逃げよう)

 

 近くにいたら僕は本当に死んでしまう。そう思ったから、僕はそこから逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間的には一般市民が仕事を終えて帰る時間だが、ISを運んでいる彼らの就業終了時間はもう少しかかる。

 専門トレーラーの護送を行っていた武藤正勝は爆発が起こった地域の近くを通っていた。

 

「しかし、酷い状態だな」

 

 市民は既に退避しているようで、人っ子一人いない。その状況を眺めながら、正勝は逃げたらしく空いている道路を走っていると、隣に座る女性がそっと彼の肩に触れた。

 

「何のつもりだ、戸高(とだか)(みつる)代表」

「酷いです。二人きりなんですから、少しくらいフランクに接してくれてもいいでしょうに」

「この状況で何を言っているんですか、あなたは」

 

 満の言葉にため息を吐く正勝。年齢は正勝の方が上だが、それでも敬語を使っているのは彼女が国家代表だからである。

 

「仕方ありません。パターンを変えましょう」

「それよりもまず、この状況でそれを考えるのを止めてください。不謹慎です」

「ですが、私たちは何度も会えないんです。未だに携帯番号も教えてくれないし、会って約束しようとしても「用があるから」という理由で全然会ってくれないし……今日も運命と思ったから、こうして………」

 

 正勝の脳内に「急にシフトを変わってほしい」という連絡があったことを思い出す。思えば本来このルートを通る人物は相手が彼女と知っていたから交代を申請してきたと思った正勝は、今度会ったら一通りボコった後に何かを奢らせようと思った。

 

「ん? あれは……」

 

 ふと、満が外を見ると何かがこちらに向かっているのが見えた。正勝は周りにいないことを確認してからハザードランプを点け、右サイドに止める。

 

「……彼は―――」

「知っているのですか?」

「はい。少し……」

 

 サイドブレーキを入れた正勝は車から降りて向かってくる人物―――静流に声をかける。

 

「舞崎君、どうして外に―――」

「…………どうして……」

 

 正勝の姿を見つけた静流は近づき、襟首をつかんで車に叩きつけた。

 

「あなたたちのせいだ…………あなたたち政府が、女性優遇制度を設けたからこんなことになったんだ!」

「ま、待て! 一体どうしたというんだ!?」

 

 正勝が声をかけるが、静流の意識は既に別の―――後ろに向いていた。正勝を離した静流はさっきまで正勝が運転していたトラックの後ろに周る。

 

「おっと、この先に触れてはいけないぞ」

 

 先回りしていた満は言い聞かせるように静流に言うが、ここで静流は予想外の行動に出る。

 

「———!?」

 

 いきなり満を殴ろうとする静流。だが拳は空振りした。

 

「大丈夫か」

「は、はい―――」

 

 正勝が満を引っ張って回避させたのである。

 その隙に静流は囲いがされている荷台の上に移動し、多い被せられているシートの一部を所持していたナイフで斬り裂いて荷台の中に入る。

 

「止めろ舞崎君! ここでそれを動かしたら、君は厳重に―――」

「だったら全員、二度としゃべれないようにしてやるだけだ!」

 

 そう返した静流は横たわるように置かれている二機のIS……日本製の打鉄とフランス製のラファール・リヴァイヴの内、ラファール・リヴァイヴの方に触れた。

 

 ——ACCESS――

 

 機械音が周囲に響き、正勝と満は中でISが起動されたことを理解する。同時に、静流は信じられない光景を見ることになった。

 

(……何?)

 

 ラファール・リヴァイヴから黒い液体のようなものが打鉄の方へと流れ、ドロリ、と装甲が溶け始めたのである。

 だが静流はもう気にしていないのか、ただただ変化があるラファール・リヴァイヴを―――いや、かつてそうだったそれを見ていた。

 

「……行くよ」

 

 するとロープが切れ、天井代わりとなっていた天幕が剥がれ落ちる。同時に静流が宙に浮き、ISを纏った姿で現れた。

 

(ISなのか、アレは……)

 

 正勝が疑問に思うも無理がなかった。何故なら静流の周りにあるのは金属の装甲ではなく、黒い靄のようなもので原型が留められていないのである。

 そんな疑問を感じつつも、正勝はバイザーで顔の上半分を隠している静流に声をかけた。

 

「舞崎君、君は―――」

「あなたは下がって」

 

 静流の前に満がそう言いつつ躍り出て、静流に銃を向けた。

 

「悪いね。止まってもらえるかい?」

「…………雌豚風情が……僕に指図するな!!」

 

 すると静流の周りに球体が現れ、そこからレーザーが発射された。

 

「ビット!? どうして彼が―――」

「わからない。ともかく何とかして彼を抑えてくれ!」

「!? わかりました!」

 

 正勝は敬語で話すのを忘れていたが、満は目ざとくそれに気づき、テンションを上げて回避した。すると満の耳に正勝の声が届く。

 

「戸高代表、今すぐ彼から距離を取れ!」

「え―――!?」

 

 途端に満が使用する打鉄射型(いがた)のハイパーセンサーが警告音が鳴り響く。

 

「高エネルギー反応………まさか―――」

 

 満は静流に―――いや、静流の胸部に視線を向ける。そこにはエネルギーが収束されており、今にも発射できるほどだ。そこで彼女の脳内に映ったのは、トラックの近くにいる正勝である。

 満はすぐに正勝を回収し、トラックから離れる。そして―――

 

「………すべて消え去れ……お前らなんかぁああああああ!!!」

 

 エネルギーが放出され、直進する。その道にある建物は何かも食らい尽くし、破壊していく。

 そしてその先には―――真耶と静流を狙う女性がいた。

 

「え?」

「何―――」

 

 二人はその放流に巻き込まれ、光線はさらに突き進む。そしてそれは―――あの三人がいる場所にも及んだ。

 

「離脱しろ!」

 

 千冬の指示に楯無は従って回避する。スコールと呼ばれた金髪の女性も回避し、その光線がなくなるのを千冬と楯無と共に見ていた。

 

「……なんなの、これ」

 

 思わず楯無は呟いたが、それに答える……いや、答えられる者はいない。

 すると三人のハイパーセンサーに警告が発せられる。

 

【付近にて所属不明機を確認。こちらをロックしています】

 

 その表示に千冬は舌打ちをすると、あるシグナルを見つける。

 

「……あれは…真耶か!?」

「え? 山田先生!?」

 

 驚いた楯無は下を見ると、地上ではボロボロになったラファール・リヴァイヴを纏う真耶の姿があった。

 

「真耶、しっかりしろ!」

「……せ、先輩………」

 

 わずかに意識があるのか、真耶は千冬に声をかける。

 

「一体誰がこんなことを―――」

「全く、何なんだ!!」

 

 すると近くにいたのか、静流を襲っていた打鉄を装備した女性が立ち上がる。

 

「貴様―――」

「待ってよ! 私は違うわ! こっちだって何がなんだか―――」

「———どうやらその原因が来たようよ」

 

 睨みつける千冬に対して女性は弁明している時、それを遮るようにスコールがその原因に目を向けながら言った。

 そこには先程の黒い靄のような物を使う静流の姿があり、一直線に打鉄の所に向かう。

 

「な、なん―――」

 

 打鉄の女性は間一髪で回避する。だが静流が着地したところから黒い何かが伸び、女性の首に巻き付いた。

 

「この、きさまぁッ!!」

「叫んでいるだけか?」

 

 静流は打鉄に接近して、拳を叩き込む。だが女性はシールドで防ぐが、木っ端みじんに吹き飛んだ。

 

「ただの拳如きで―――」

 

 アサルトライフル《焔備(ほむらび)》を展開して静流に向けて撃つ女性。だが静流は既にそこにおらず、《焔備》が爆発した。

 

「な、何―――」

 

 ———ドンッ!!

 

 突如、伸びるように静流の手からメイスが現れて女性の首に激突した。

 

「アンタたちが悪いんだ」

 

 そう言いながら静流は回転して遠心力を付けた状態で女性の側頭部を攻撃した。

 

「アンタたちが、こんなことをするから―――」

 

 上に飛んだ飛んだ静流はメイスを女性の頭部に叩きつけ、シールドエネルギーが切れて機体が停止した。

 

「待て」

 

 着地した静流に千冬は声をかける。すると不愉快そうな顔をした静流は千冬に向かって言った。

 

「ああ、そういえばアンタも女だったな」

「何―――」

 

 メイスを構えた静流は千冬に対して攻撃を仕掛ける。だが千冬とて元は世界最強であり、今でも彼女自身が真の最強として称えられるほどの実力者だ。ついさっきISを動かせた静流は敵ではない。

 

「ふんっ―――!!」

 

 近接ブレード《葵》を一閃する千冬。メイスを切断して静流を気絶させるために接近した。

 

「すまないが、強行手段を取らせてもらう」

 

 《葵》の峰の部分で静流を攻撃しようとする千冬。だがその間をスコールが割って入り、防いだ。

 

「悪いわねぇ、織斑千冬。彼は私がもらうの」

「何を―――」

「………おい」

 

 静流から重苦しい声が漏れ、二人はそっちを向いた。

 

「ごちゃごちゃうるせえんだよ、家畜共」

 

 再び静流の胸部装甲に光が収束され、光線を放った。

 だが千冬も、そしてスコールも回避し、その光線は彼方へと飛んでいく。

 

「今のは、さっきの―――」

「おそらく二人を攻撃したのは彼ね。一体あんなものをどこで―――」

 

 スコールが推測するが、静流は一切その隙を与えなかった。

 すぐさま左手にライフルを展開し、ビームを撃つ。だが彼女の機体の周囲に展開されるプロミネンス・コートが防いだ。

 

「無駄よ。その程度の攻撃は通らない」

「だったら―――」

 

 静流はライフルを消してそのまま突っ込んでプロミネンス・コートに触れた。

 本来ならば触れた瞬間、装甲は焦げてシールドエネルギーが減っていくのだが、むしろそれはスコールの機体―――ゴールデン・ドーンに起こったのである。

 それに否定して、静流の機体の背部ウイングスラスターから光の翼が現れて大きくなる。

 

「死ね!」

 

 今度は近接ブレードを展開し、スコールの心臓部めがけて突き刺す。

 だがスコールはすぐさま後退。距離を開けるが―――それに追随するように静流が動く。

 すると二人の間に間欠泉が噴き、静流が怯んだ隙にスコールは撤退する。

 

「………ああ、そういえば」

 

 静流の機体の胸部の装甲が開き、エネルギーが充填され始める。

 それを見た千冬は楯無に真耶を持たせて撤退させた。

 

「テメェらを殺すの、忘れてたよ」

 

 そう言って静流は先程撃った熱線を千冬たちがいる場所に向けて発射した。

 それにより、近くのビルや車などが消し飛んだ。


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