IS-Twin/Face-   作:reizen

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次は正午に投稿します。


第0-3話 Further calamity~さらなる災難~

 家に帰った僕は早速願書にすべて記入し、荷物の整理に取り掛かる。

 

(……たぶん何度か帰れるけど、その時は外食か何かを買うかな)

 

 後は高校のバイト先を見つけないといけない。IS関係の仕事に就く人はそれなりに高給取りだと聞くけれど、流石に高校生は違うだろう。だからと言ってこれまで生活費とかバイト代を使ってコツコツと溜めて来たへそくりを使うのも気が引ける。

 

(そう言えば、学食とかってどうなるんだっけ?)

 

 後で入学願書と一緒に入っていたパンフレットに目を通さないと。説明書を読んで組み立てる派だからね。

 

(でもIS学園かぁ………)

 

 そう言えば篠田さんもIS学園に行くんだよね。そうなったら今度はフォローしてもらおうかな。恩着せがましいのは理解しているけど、ほとんど女だし大きなおっぱいで受け止めてって感じに。

 

(………そう言えば、もう一人男子がいたけど……)

 

 ああいうイケメンとはお近づきになりたくないから却下だな。となれば一人で過ごすしかない。小学校時代に逆戻りか。

 

(いや、落ち着け)

 

 中学校時代で僕はそれなりの付き合いを築くことができた。なら、それを活かしてそれなりの関係(友人前後)を作ればいいだけの話。………まぁ、そう簡単に行くわけないんだけど。

 

(さて、馬鹿なことを考えるのは止めて、荷造りの続きだ)

 

 しかしおかしいな。さっきからテレビを点けた状態で放置しているのに、何故か僕のことがニュースに流れない。放送されてもおかしくはない事なのに何でだろう?

 そう思っていると、もう6時半だというのに珍しくドアのチャイムが鳴った。

 

(何だろう。こんな時間に)

 

 妙に嫌な予感がしたこともあって、僕は財布とスマホを携帯する。いつでも動けるような服装にしているから、後は靴を履くだけだ。

 あまり待たせるのも悪いから、靴を素早く履いてチェーンがかかっていることを確認してドアを開ける。

 

「…何でしょう?」

「舞崎静流さんですね。本日午後1時半前後、あなたに暴行を加えられたという報告があり、あなたを逮捕しに―――」

 

 ———バンッ

 

 僕は慌ててドアを閉める。逮捕もそうだけど、僕が今見たのはそれだけじゃない。何故かさっきの人は銃を持っていた。

 

「逮捕の前に日本政府のIS管理局に所属する武藤さんって人に問い合わせてくださいよ!」

 

 鍵を閉めてそう叫ぶが、さっきの態度が気に食わなかったのか、ドアを殴り始めた。

 

『貴様、その態度は何だ! 大人しく出てこい!』

 

 一瞬で取り立てに変わった女たちを無視して、僕はベランダの方へと走った。

 僕が住んでいるのは駅から少し離れた2階式アパートで、そこの2階に住んでいる。そのベランダから飛び降りた僕は着地すると同時にそこから逃げた。どうやら周りに控えていたらしい女たちは唖然としているようで、何のアクションも見せない。

 

「逃がすな! 追え!」

「この異端者め!」

 

 と思ったらすぐに復帰したらしい。切り替えが早いとこういう時に困る。

 

 ———ドゥルルゥウウウンッ!!

 

 何か激しい音がしたと思って振り向くと、大型バイクが近づいてきた。二人乗りしているらしく、後ろには鉄パイプを持った男が乗っていた。後部座席の奴はフルフェイスではない。

 

「死ねや!!」

「———ッ」

 

 接近して来る鉄パイプが僕の頭部へと迫った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、結局あなたは動かせなかったの?」

「ああ。まぁな」

 

 静流が襲撃されている頃、晴文は実家へ帰っていた。今日はあの騒ぎでさらなる混乱が予想されるため、住居から逃げて来たのである。

 

「でもすごいわね。夏休みにでもここに来たら彼女を連れて来るんじゃないかしら?」

「それはないだろうな」

 

 そう言って晴文は読んでいた小説を閉じる。

 

「あら、どうして?」

「叔母さんは元々、女尊男卑思考を持っていた。そんな人に謂れもない理由で虐待され続けたら、普通なら女嫌いになるけどそんなことになったことはない。小学校の時も何度かそういう女と一緒にいたみたいだが、決して嫌々従っていたわけではないみたいだし……というかむしろ、憐れんでいたからな」

「………ああ、言われてみればそうねぇ」

 

 そのことを思い出した晴文の母。彼女も静流の叔母と言う立場なため何度か静流と会ったことはあるが、女と言う理由で特に何か冷たい態度を取られた記憶がない。

 

「むしろ普通に接しられていたっていうか……あまり会ったことがなかったから事件後すぐはそこまで打ち解けていた気はしなかったけど、徐々にそんなこともなくなったし」

「その代わりなのか人一倍……いや、4、5倍ぐらいでISを憎んでいるからな。ISの話題になると物凄く不機嫌になる―――」

 

 ———ピピピピピッ!! ピピピピピッ!!

 

 急に室内にそんな音が鳴り響く。晴文は眉を顰めつつ自身の通信端末とは違うもう一つの端末を手に取る。

 

「あら、それは一体―――」

「久々に帰って来てなんだが、ちょっと出てくる」

「え? ちょっと晴文―――」

 

 月は三月だがまだ少し寒いため、晴文はジャンバーを着て、靴を履いて車のキーを置く。

 

「ちょっと晴文、こんな時間に一体どこへ―――」

「異常事態が起こった。静流を回収して来る」

「……そ、それはいいけど……」

 

 外に出た晴文はドアの前で立ち止まる。

 

「……悪いんだけどさ、母さん。もしかしたら俺、生きて帰って来れないから……その時は二階にあるボイスレコーダーをある人物に直接渡してくれ」

「え? それってどういう―――」

 

 それだけ言い残した晴文は車に乗り、飛び出すように出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「———え? 事故?」

「そんな、何でこんな時間に!?」

 

 後ろの方から野次馬が聞こえる。いくら鍛えているって言っても奪ったバイクを道路に横に滑らせながら停止させて通行止めにするのは命を削った。

 でもそれをする必要が今の僕にあった。ごめんね、人の命がかかっているから取引先に迷惑かけても女たちに文句を言ってほしい。

 

「まだここにいるはずだ。探せ!」

 

 近くではそんなことを言う女が聞こえる。どうやらリーダーのようだが人質に取ったところで僕にはどうすることもできない。

 

(次は自転車か何かを奪うしかないかな……)

 

 完全に犯罪者の思考だけど、緊急事態だから見逃してもらえるはずだ。職務怠慢をしすぎたな、政治家共。

 そんなことを考えていると、

 

「———見つけたぞ!!」

 

 考え事をし過ぎたためか、僕の姿を見つけたらしい。

 僕はすぐにそこから逃げ、信号で止まっている車を見つけた。しかも交差する信号は今は黄色。

 

(今だ!)

 

 乗用車の屋根に飛び乗る。すると車は発進し、そのまま左に曲がって進んでくれた。

 

「追える者は今すぐ追え! 逃がすな!」

 

 そんな不吉なことが聞こえてくるけど、その時には進路を変えれば大丈夫だ。

 

(………何で僕、15歳でこんな危ないことをしているんだろう?)

 

 母親を倒した時からだろうか、僕はことごとく道を踏み外している気がする。授業参観の日にお祖母ちゃんが来たことで周りから囃され、親に捨てられたことがばれて囃されたから「そんなことで何でそんなにテンションが高いの? 頭がおかしいから病院でも行ったら?」って言ったら喧嘩になって、そしたら上級生に目を付けられて「弟が殴られたから」という理由で殴られて、僕を扱き使うって言い残したけど正直大人しく殴られたからもういいじゃんって思ったから無視していたら、「下級生の癖に生意気な」って言って殴ってきたから仕返しに一撃で倒れるって言うことで椅子で壁に押し付けて身動きを取れない状態で今まで分を返しただけなのに、お祖母ちゃんは呼ばれるし「そっちの教育が悪い」だの「親なしが原因」だの好き勝手言うから、「成績ですら僕に負け、挙句喧嘩に負けて兄を呼んで一度は倒したからって油断するように教育したあなたが原因なのでは?」って言ったら逆に切れるし、それが原因でクラスメイトのお嬢様に目を付けられて荷物持ちから始まって、とうとう執事扱いされて僕の都合も無視しはじめるからやんわり断って帰ったら虐めの標的にされて、その原因だったお嬢様に対して直談判したら惚けるし、今度は証拠を集めて提示したら「男のくせに生意気」と既にそう言うのに染まっている奴らからさらに過激な虐めに発展したけど誰も助けてくれなくて、そんなことになっている中に誰かが「ISが最強」という話になったから、その反論としてM○やA○の方が兵器としての価値は上だということ教えたら、集団で文句を言われて「ISに乗れない弱者が!!」って言うから「兵器に乗って人殺しするつもり?」って返したら、切れて周りに物を投げるように言って、周りはその言う通りに投げてきて、椅子がもろに飛んできたから蹴り返したらお嬢様の横を通り過ぎて、それが原因でお漏らし云々でとうとう転校をしていったし、今度は悪い中学生からつるむように言われたから無視したら、乗り込んでくるけど元々教師なんて使えないとしか思えなくなっていたから一人で処理したら距離を置かれるし、中学生になっても悪い奴が近づいてくるし、そして今度は鉄パイプで殴られそうになるし! 回避したらそのまま木に引っかかってバランス崩して倒れてたけどさ。ケガしても流石に最後は関係ないです。

 

(ともかく、なんとしても逃げないと………)

 

 やっぱりあの時、IS学園に行けばよかったと今になって思う。そんな時だった。

 

「もう逃がさないぞ、異端者!」

 

 後ろから、それなりに大きい車から何人かが上に立っている。

 

「狙撃手は我々のサポートを! 行くわよ!」

 

 三人ほどが鉄パイプやらバットやらを持ち出して現れる。リーダー格が車の屋根に飛び乗って迫ってくる。

 僕は周辺を見渡し、徐々にスピードを緩める車群を、そして交差点を曲がろうとする一番右端の道路に並ぶ車を見て、すぐにそっちに向かった。

 

「待て! 逃げるな!」

 

 その言葉を当然無視した僕は、前へ前へと進んでいく。そして最前列の車に着いたとき、指定方向信号は消えていたようで停止してしまった。

 

「どうやら貴様も年貢の納め時が来たようだな!」

「…………」

 

 ギャラリーがこちらに注目し始める。まぁ、さっきから意味がわからない車上戦を始めようとするのだから注目が集まるのも当然だろう。

 

「怖くて話せないか。まぁいい。今すぐ楽にしてやる!」

 

 まだ近づいていないのにそんなことを言う女性。僕は隠し持っている物に手を伸ばそうとすると、それを遮るように車のクラクションが鳴り響いた。

 

「何だ!?」

 

 普通なら、クラクションは危険を回避するために慣らすものだ。それが何度も鳴らされるため、僕は注目した。そしてその方向には見覚えがある車がある。

 

「………僕を舐めるなよ」

「!? 何を―――」

 

 僕は後ろを向いて僕らから見て横を走る車に向かって跳んだ。

 

 

 

 すべての車道が右折部を含め3車線ある交差点で、たぶん僕は今日伝説を起こす。

 

 

 

 全員が驚いて僕に注目を集める。そして僕は通り過ぎようとする一台の車の上に着地すると同時に再び跳躍。そして僕を回収しに来たハルさんの銀色の車が通る。そして体を丸くしてそのまま着地した僕は転がる。

 

 ———危ない!

 

 誰かがそう言ったのが耳に届いた時、僕は屋根から落ちそうになった。しかし右腕は伸ばしていて、そのまま力任せに落ちる体を助手席側の窓に突っ込ませ、中に入った。

 

「お見事」

「鍛えた体は伊達じゃない、てね」

 

 ガン○ムネタを交えて答えた僕は、手を挙げていたハルさんの手を右手の甲で叩き、シートベルトを装着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕らを乗せた車は現在、市街地から離れてつづら折りの山道を走っている。

 

「……何でこんなところを走っているの?」

「この先に俺の知り合いが所長をしているISの研究所がある。嫌だろうが、そこからISで一通り訓練を付けてもらうように頼んでみるさ」

「……………」

 

 ISの訓練か。そんなのはもちろん嫌に決まっている。でも僕は、悲しいけどISを使える男になってしまったんだよね。だったらこれ以上、巻き込まれても大丈夫なように戦う術を身に着けるべきか。

 

「………まぁ、性格はちょっとアレだが安全は保障されるはずだ。いざとなれば俺がどうにかするし、静流の専用機も開発される可能性だってあるだろうしな」

「……専用機、か」

 

 脳内にシリーズものの機体が次々と浮かび上がる。未来を見せて混乱させる機体とか、敵の陣営の男と友達になった男の機体とか、覚醒から色々とやって、理不尽な制裁を食らわせる上官を持った男の機体とか。

 

「プロヴィ○ンスの要素は外せないな」

「よりにもよってそれかよ。ドラ○ーンは腰メインにして背中には悪魔の翼を付けるか。声繋がりで」

「じゃあ、現れる時は「俺、参上!」って言わないといけないね」

「ついでにメイドにもこだわりを持つしかないな」

「しかも医者を目指さないと。最悪、ロリコンになる必要もあるのか」

 

 笑いながらそんな会話を中断していると、近くで爆発が起こる。そして土砂が崩れ始めて僕らが乗る車を襲った。

 

「敵は一体どこから―――」

 

 なんとかそれを回避したハルさん。僕は嫌な予感をして後ろを見るが、後ろには車の影はなさそうだ。

 

「今のは何!? 一体どこから―――」

「………そんなことがあるっていうのかよ」

「え!?」

 

 目の前に何かが現れる。それは今では見慣れているもので、この世界を狂わせた原因である―――

 

「……IS」

「シートベルトを外せ!」

 

 言われて僕はすぐにシートベルトを外す。え? でもシートベルトは付けないといけないんじゃ―――

 そんなことを考えていると、急にフロントガラスから見える景色が変わり、世界がくるくると回り始めた。

 

「………まさか」

 

 ———これって、僕らが回っているんじゃないだろうか?

 

 そんな疑問が過った。そしてそれを証明するかのように音がし始め、地面が上下に移動する。そして僕は、何故か車から飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗い世界―――と思ったけど、熱く感じた僕は目を開く。

 何でか痛いけど、僕はハルさんの車を探した。

 

(……声は出さない方がいいかな)

 

 僕はそう思って削られた後を辿る。何か恐怖心が過るけど、それでも僕は進んだ。

 しばらくして道が現れたので出ると、そこにはハルさんの車があった。

 周りに誰もいないことを確認した僕は車に手を伸ばす。運転席にはハルさんがいたが、どうやら気絶しているみたいだ。

 中に入って僕はハルさんを助手席に移動させ、運転席に座る。

 

(右がアクセルで、左がブレーキ。そして、このよくわからないレバーを「D」にして……)

 

 よくハルさんが運転しているのを見ていたから、やり方はわかっている。ナビで近くの病院に案内するようにして、ダッシュボードの中に入れてある小型のサイレン装置を鳴らして上に車上に置き、アクセルを思いっきり踏んで進ませる。おぼつかないハンドル操作で市街地に向かう。

 すると、急に地面が爆発した。

 

「そこの車、止まりなさい!」

 

 上からそんな声が聞こえてくる。ヘリの音はしないがブースター音がすることから、さっきからISが飛んでいるのだろう。

 僕はそれを無視して、むしろスピードを上げて市街地まで走った。

 

(さっきの声、あの女性に似ているな)

 

 僕を殺そうとした女性を思い出す。今だって印象に残っているのは殺されかけたからだろう。ともかく無視して、僕は市街地にまで急ぐが、蛇行運転を始める。僕の予想は当たったようで、上から弾丸が降ってきたかと思ったら銃弾が止んだ。

 

(……今だ!)

 

 さらにアクセルを踏んで、そしてガードレールがない所を狙って山道を走る。

 

「いい加減にしなさい! 止まれって言ってるでしょう!」

 

 ふざけるな。こっちはハルさんがヤバい状態なんだ。でもサイレンを鳴らしている以上、しばらくすれば異常に気付いてくれるはずだ。

 本来ならもっと時間がかかるだろうけど、山道をそのまま下ったから時間を短縮できたけど車はボロボロだ。そのまま市街地に入って信号を無視し、右折して交通状況を混乱させる。周りから罵倒が聞こえるけど、そんなものは一切無視だ。

 そしてようやく病院に着いた僕は急ブレーキをかけて病院の入口の真ん前に止まる。するとサイレンが鳴りっぱなしだからか、中から人が飛び出してきた。

 

「サイレンを消せ! 患者にとって害になることくらい知っているだろ!」

「そんなことよりも、今すぐ担架を持ってきてください! 重傷者が一人いるんです!」

「何!?」

 

 僕は運転席から降りてそう言いながら助手席に回りこみ、ドアを開けてハルさんを出す。

 すぐに担架を持って来てくれて、ハルさんを寝かせた僕はサイレンのスイッチを切った。

 

「馬鹿な暴走ごっこは気が済んだかしら、舞崎静流」

「………」

 

 上空を見ると、やっぱり僕を殺そうとして胸を揉まれた挙句倒された女性が待機していた。

 

「な、何でこんなところにISが!?」

「あの少年、一体何を―――」

 

 僕はサイレンを片付けるふりをしてある物を取り、それを起動させて分投げた。

 その隙に僕は車に乗って、すぐにそこから離脱する。

 

「もう付き合っていられないわ」

 

 一瞬、重力が感じられることがなくなったのだと思った。気が付けば僕は何かに引っ張られる感じがして、何かにぶつかる。

 シートベルトを付けていなかったから外に出されると、目の前にはISを装着している奴らがほかにも二人、そして金属バットや鉄パイプ、さらにはエアガンらしきものまである。

 

「へぇ、これが今日動かしたっていう男?」

「織斑一夏に劣るけどそれなりじゃない?」

「でもまぁ―――」

 

 ———ガンッ

 

 何かが左肩にぶつかり、衝撃が走る。

 

「生意気なのよねぇ、男がISを動かすなんてぇ」

 

 ————クスクスクスクスクスクスクス

 

 周りからそんな笑い声が聞こえてくるが、今のでかなり食らってしまったか、それとも今食らったのかはわからないが、体がまともに動かせないでいた。

 

「ああ、ごめんなさい。恨むなら、ISを動かした自分を恨みなさい」

 

 そう言った女性が何かを振り上げた―――かと思ったら爆音が耳に届き、僕はまた空を飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、IS学園では二人の操縦者がそれぞれのISのチェックを行っていた。

 

「学園長、準備ができました」

「私もです」

『わかりました。ではお二人とも、準備をお願いします』

 

 女性、少女の順番に言うと、スピーカーから少し枯れた声がそう指示する。言われて一人は準備された機体に乗り、それぞれカタパルトに向かう。

 

『今回の任務は匿名の通報の真偽を確認するためです。もし真のことならば、新たに現れた男性IS操縦者を確保してください』

「わかりました。気持ちの準備はいいか、更識」

 

 返事をした女性は少女……というよりも体形はもはや女性に近い、「更識」と呼ばれた女にそう声をかける。

 

「織斑先生こそ、久々の実戦なんですから調子に乗って大きな失敗をしないでくださいね」

「よく言う」

 

 「織斑先生」と呼ばれた女性はそう言うと先に行くためか、準備されたカタパルト発射台に脚部装甲を接続した。

 

織斑(おりむら)千冬(ちふゆ)打鉄(うちがね)特式(とくしき)、発進する!」

 

 声に合わせて電磁式カタパルトが前進し、最終地点に着く時にぶつかった衝撃で飛び出す。同時にブースターが勢いよく空気を噴きだし、上昇した。

 その頃、残った少女は機体に乗ることで見ることができる投影式ディスプレイ「ハイパーセンサー」に移る一つ上の女生徒「布仏(のほとけ)(うつほ)」と話をしていた。

 

『お嬢様、気を付けて。先に出ている山田先生が言うには、どうやら自衛隊のISは出ているみたいですが、様子が変らしいです』

「……それはますます気になっちゃうわね。ともかく………」

 

 彼女も自身の機体の脚部装甲をカタパルトに接続する。すると周囲のラインが光り、彼女の耳にアナウンスが聞こえた。

 

『進路クリア。発進どうぞ』

更識(さらしき)楯無(たてなし)、ミステリアス・レイディ、出るわよ!」

 

 カタパルトが射出され、千冬と同じ動作でそこから出撃する。

 18時35分。静流が襲われて30分を超えてIS学園から二機のISが出撃した。


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