IS-Twin/Face-   作:reizen

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クリスマス記念としての投稿です。
次回は1月1日を予定しています。


第0-2話 In Battle round~戦闘突入~

 ———キュインッ

 

 何かにぶつかってどこかに飛んだと思う音を聞きながら、僕は女性の顔面に拳を叩き込んだ。

 

「よくっも、私の顔に―――」

 

 そして飛び蹴りで首に攻撃する。バランスを崩して銃を手放したのでそれを回収して深緑色のISにもう一度触れた。

 

「冗談じゃないよ。どうして動かしただけでこんな目に合わなくちゃならないんだ」

 

 さっきとは違ってステータスなどが開き、この機体名が「ラファール・リヴァイヴ」だということを知った。どうやらIS学園から貸し出されているらしい。

 そんなことは今重要じゃない。ここから逃げないと。

 その思いで僕は走り出そうとするが、バランスを取れずにこけてしまった。

 

(ふぅ。なんとかドアは弁償しなくてもいいみたいだ)

 

 そんな安心はすぐに捨て、僕は今度は壇上とは反対側にある出入り口に向かうけど、詰まっちゃう!?

 

「ああもう! 羽! 装甲! 閉じて!」

 

 すると四肢以外は消えてくれて、通りやすくなったのでそのまま外に出た。

 そしてもう一度展開しようとすると、待機していたのかまた別の機体が現れた。

 

「逃がさないわよ! 犯罪者!」

「むしろこっちは被害者だよ!」

「ISを奪って逃走したじゃない!」

「仕方ないじゃないか! こっちは殺されかけたんだから、逃げなきゃ!!」

 

 何で15歳で人生に幕を下ろさなければならないの!? 交通事故とかじゃない限りそんなものは認めない!!

 でもこのままだと間違いなく逃げられない。僕はもう一度叫んだ。

 

「全装甲、顕現!」

 

 すると元の形に戻ってくれたのでこのままどこかに逃走しようとするが、向こうは熟練者のようで既に僕の右側にいた。

 

「はぁああああッ!!」

 

 抜刀からの一閃のつもりらしい。鞘から刀を抜く時の形を取っていたので、僕はそのままタックルする。

 

「ちょっ―――」

 

 学校の校舎の一部が破壊されたけど、少子高齢化時代において僕ら子供の生存が何よりも大切だと思うから許してほしい。もっと言えば、僕は被害者です。

 

(でも、逃げるって言ってもどこに………)

 

 嫌だけどIS学園しかないかもしれない。そこならば生存確率は高くなる。

 僕はISにマップを表示させ、IS学園までのルートを表示させる。

 

「逃がさないわよ!!」

 

 行こうとした瞬間、僕の後ろからさっきのISが現れて飛びかかってきた。

 

(ロボなら、ホバーで動けるはず―――)

 

 そう思って僕は足元をに意識を集中させる。脚部装甲の一部が開き、僕はそのまま移動した。

 

「逃がすか!!」

 

 ―――ガッ!!

 

 何かが引っかかってバランスを崩して倒れてしまう。

 

「何をするんだよ!?」

「大人しくしなさい。これは命令よ!」

「そんなことを聞くわけないでしょ!」

 

 どうやら脚部装甲にワイヤーが絡んだらしい。僕はそれを外そうとするが、複雑に絡んでいて中々外せない。

 

「まだ抗うのね。なら、これで痛めつけてあげるわ」

 

 そう言って女性は鞭を虚空から出してそれで攻撃して来る。

 僕は飛んでくる鞭の先端を掴んで止めようとするが、不規則に動いているので中々掴められない。そんな時だった。

 

『———逃げるな!!』

 

 耳に―――違う。これはスピーカー?

 すると空中に何かが映る。そこには週に5日以上は顔を見ている従兄の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静流が貸し出されたIS「ラファール・リヴァイヴ」で逃げ出した時、まだ教室で思い出の話をしていた女子たちは写真を撮ったりしていた。中には男子も混じっており、女尊男卑となり、女が男を奴隷のように扱き使う今ではある意味珍しい光景となっている。

 その様子をたった一人で見ていた篠田箒は、羨ましいと思っていた。

 

 彼女の名前、「篠田」は偽名である。本名は「篠ノ之(しののの)(ほうき)」と言い、世界を変え、一部では「天災」と称される篠ノ之(しののの)(たばね)の妹である彼女は小学4年生の三学期が終了する直前の剣道の大会当日に政府によって引っ越しを余儀なくされた。彼女は姉の居場所を探るための情報源として、そして人質として常に政府に監視されていた。小学校卒業までは両親と共にいたが、中学入学と同時には一人暮らしをさせられ、それでも何度も転校させられたのである。

 

(まさか、一年も同じ学校にいられるとは思わなかった)

 

 長くても3か月。酷い時は2週間で転校することが彼女にとって1年も同じ場所に留まるなど本当に珍しいことだった。だがそれは一重に本来なら隣にいるはずの男子生徒―――舞崎静流のおかげだろう。

 彼はある意味、彼女にとって二人目のヒーローと言える存在だった。一人目はいつの間にか剣道で強くなっていることで、そして二人目は環境を整えてくれた。その方法は箒が嫌いな姑息な手が多かったが、いつの間にかそれすらも受けいれていた。

 

(……本当に、感謝する)

 

 気が付けば何か水のようなものが自分の手の甲に落ち、それが自分の涙だと知った彼女はすぐに自分の目元をぬぐった。

 

「篠田さん、一緒に写真を―――って、どうしたの!?」

 

 どうやら泣かれているのを見られたらしい箒は慌てて誤魔化そうとするが、4月に来たが3年になって転校してくる存在が珍しかったのか、それとも話し方が珍しかったのかある意味注目の的だった彼女が泣いているというニュースはクラス内にすぐに広がり、全員がそっちを向く。

 

「い、いや、違う、これは―――」

「わかってる。わかってるよ」

 

 一人の女生徒がそう言って箒の肩を叩き、

 

「舞崎君に帰って来てほしいんだよね?」

「それこそ違う!」

 

 だが周りは誰一人そうだと確信しているのか、誰も箒に耳を貸さずニヤニヤした。

 

「わ、私は別に、舞崎に対してそういう感情を持っているわけじゃなく―――」

「まぁでもわからなくもないけどねぇ。数学教員の音田に文句言われた時もすごかったし」

「「先生。確かに彼女の話し方は周りと違います。これは新しい話し方であなたのような方にはご理解できないかもしれません。ですがそれは彼女が悪いのではなく、古きものに固執して受け入れられないあなたの方に非があると思います。もう少し「萌え」について学んでみてはいかがでしょう? それができないあなたはいずれ生徒たちに舐められ、学級崩壊はもちろんの事、それが周りに伝染し、齢50にして無職。奥様には逃げられ、子供には呆れられ、家にいては責められる毎日を送りたいのですか? それが嫌ならまずは魔法少女から手を付けることをお勧めします」。って、凄かったよね」

「ああ、後「それとも彼女には下ネタ用語で弄られたいですか? おそらくそれは違和感がなくなっていまうのであまりお勧めしません。もうあなたも50ですし、今更自分の娘どころか孫ぐらいの年齢の中学生に発情するのは流石にまずいでしょう? いくら彼女の胸が大きいからって欲情はダメです。するならソープで、もしくは風俗でお願いします。ま、最近は女尊男卑なので一昔前に比べたら割高でしょうから教員の安月給じゃ無理でしょうが」ってのもな。一体何でああもスラスラと罵倒できるのか知ってみたいものだ」

「……いや、私は……」

 

 顔を赤くしながら箒は「違う」と否定しようとするのを見て、別の生徒が言った。

 

「でもホントびっくりしたよね。最初は「すごく怖い」って聞いてたし、上級生には何度も絡まれていたからヤンキーかなって思ったよ」

「………そうなのか?」

「実際、結構静かだったよ。でも話しかけたら意外に話すタイプで驚いたよ。ほら、ウイングなんとかって」

「ああ。あれは俺も見たけど面白かったぜ。特に自爆して死んだはずの奴が―――」

 

 それから別の話が始まるが、箒は一人で別のことを考えていた。

 

「でも小学校の時は酷かったよ。ほら、彼って両親いなくてお祖母ちゃんが参観に来たときに周りがはやし立てたからさ」

「その影響か、上級生に目を付けられて潰しちゃったんでしょ? 確か、机で思いっきり頭を殴ったって聞いたけど」

 

 ふと、周りが気付き慌てて箒に対して弁解した。

 

「待って! 違うの! 別に嫌われさせようとしているってわけじゃなくて、その―――」

「いや、大丈夫だ。私も、今の舞崎がどんな人物かということは把握している。ただ、そんな過去があったとは驚いているだけだ」

 

 素直にそう説明する箒に対して周りはホッと胸をなでおろす。その時だった。

 

 ———ァン

 

 どこかから乾いた音が聞こえた箒。しかしそれは彼女だけでなく他の生徒たちも同様で全員が興味を持って外に出る。

 すると外にはフランス製の第二世代型IS「ラファール・リヴァイヴ」を纏った静流の姿があった。

 

「え? ちょっ、何で―――」

「舞崎君がISを動かしてる?!」

 

 その言葉で全員が窓側に寄って静流の姿に注目するが、箒は一人別の場所を見ていた。

 

(どうして晴文さんがあんなところにいるんだ!?)

 

 静流の従兄で箒が通うジムのインストラクターをしている男性の姿を見つけた箒はそっちに注目する。

 

「ちょっと待ってよ! ここはどう考えても逃げるところでしょ!?」

 

 急にそう返す静流を見て箒は一人そこから晴文の所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、静流は急に現れた晴文に「逃げるな」と言われて焦っていた。

 

「ちょっと待ってよ! ここはどう考えても逃げるところでしょ!?」

『いや、戦え。ここはもう戦うしかない』

「どうして!?」

『これから戦うが続くからだ』

 

 晴文ははっきりとそう言い、さらに言葉を続ける。

 

『いいか、静流。ISを動かした以上、これからお前は命を狙われる。今のように―――』

「ごちゃごちゃ言ってんじゃないわよ!」

 

 そう言って女は鞭を振るって晴文の近くを攻撃した。

 

「兄さん!」

「大人しくしなさい!」

 

 今度は静流に向けて鞭を振るう女。だが静流は先端を掴み、そのまま晴文に近づいた。

 

「兄さん! 大丈夫!?」

『……久々に聞いたな、その呼び方……』

「今はそんなことを言ってる場合じゃないでしょ!?」

 

 静流は鞭の先端を離して晴文を抱える。すると後ろから再び鞭が飛んできた。

 

「この、言う事を―――」

「———止めろ!!」

 

 唐突に聞こえた叫び声に女は反応を示す。

 

「今度は何なんなの………あ、あなたは!?」

「貴様、いい加減にしろ! 一体舞崎が何をしたというのだ!? どうやらISを動かしたようだが、ただそれだけだろう! ましてやISを持たない人に攻撃するなど!?」

 

 まるで示し合わせたかのように、ボールが、そして机が飛び交い始めた。それを知った教員たちは止めに現れるが、生徒たちの一部がそれを止めにかかる。

 

『……すごいな。ここの生徒は』

「ホント、兄さんの真似して煽った僕に付いてきただけのことはあるよ」

 

 呆れ半分、嬉しさ半分と言った具合で静流はそう言うと、晴文は静流に行った。

 

『どうしてこんなことになったのか知らない。けどな……ここは動け。無力なのにそれでもお前を助けようとする奴らに応えてやれ』

「……でも、ISは兵器だ」

 

 悲しそうにそう言った静流にため息を零して提案した。

 

『……だったら、不殺だ』

「…不殺?」

『ああ。殺さないように攻撃しろ。舞崎静流が中学で見せた輝きを何も知らない奴に見せてやれ! お前はお前を、そしてお前らしく不殺を貫けばいい。それにな、ISってのには絶対防御があるんだ。衝撃はあれど、死にはしない……だから―――貫け、自分を。あの女を倒すためじゃない。周りに応えるためにだ!』

 

 先程の悲しい顔はどこに行ったのか。喝を入れられ笑顔になった静流は頷き、後ろを振り抜いた。

 視線の先には業を煮やした女が今にも鞭で周りを攻撃しているところだった。

 

「さっきからごちゃごちゃと、殺されないからって調子乗ってんじゃないわよ!」

 

 そう叫んで今にも振り回そうとする女に対して、静流は突っ込んだ。

 

「不意打ちなんか食らうわけ―――」

 

 静流をかわしながら馬鹿にしつつそう言う女性だが途中で言葉を切る。それもそのはず。静流はダイレクトに胸を掴んで後ろに周ったからである。

 

「この、どこ触って―――」

「狙い通りだ」

 

 そう言って静流は後ろを向いた女の顔を殴った。

 

「よ、よくも私の顔を―――」

「悪いね。僕の好みだったら今すぐ首輪をして是非とも持って帰って調教と言いたいけど、君は僕のタイプじゃない。お引き取り願おう」

「何がよ?!」

 

 だがその口調は周りが待っていたことであり、観客となった生徒たちはフィーバーを起こした。

 

「待ってました、静流節!」

「やれ! 我らの裏委員長!」

 

 次々と声援を送る男たち。女も「ぶちのめせ、あなたの本気!」などと叫んでおり、ほぼ全員が静流のことを応援し始める。

 

「ああ、たかが胸を触られたぐらいであまり騒ぎ立てない方がいい。それだとまるであなたが良い歳して「処女」だという事がばれてしまう。そして僕と対峙してそう簡単に勝てるなんて思わないように」

「ふざけてんじゃないわよ!!」

 

 女はパイルバンカー《灰色の鱗殻(グレー・スケール)》を展開して静流に食らわせようとしたが、静流はその姿を見た瞬間、女の腕を外へと弾いた。

 

「確かにそれは危険だ。だけど―――」

 

 そこからの展開はまさしく早業だった。

 女の腕を首少し下に近づける。すると杭の先端が自然と女の喉を向き、喉を打つ。女も流石に効いたようで悶絶した。

 

「これは僕が好きな武器の一つでね。そう簡単に落ちる気はない」

「……よ……よく―――」

「ではここから僕も手伝おう」

 

 そう言って静流は女を押し倒して馬乗りになり、唯一装備されていた《ブラッド・スライサー》を展開し、それを女の首に突き立てる。

 すると見る見るうちに女が装備する武者のようなISに備わっているシールドエネルギーがなくなっていき、静流が使用しているラファール・リヴァイヴに警告が発せられた。だが静流はそれらを一切無視して立てた状態になった。安全を保護するためか打鉄のシールドエネルギーがなくなると同時にラファール・リヴァイヴも動かなくなり、静流を輩出して転がした。

 

「と、わわっ……酷いなぁ、も―――」

 

 勝てたことに油断した静流はその場に立った。。女性はその隙を逃さず、ナイフを出して静流を攻撃しようとするが、それよりも早く静流はカウンターのハイキックを叩き込んだ。

 

「な、なんで……」

 

 驚きながらも蹴られたことが大きくバランスを崩して倒れる女。静流は女が持っていたナイフを取り上げて、さらにISを放置した状態で教室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室に戻った僕を待っていたのは隔離という非情だった。

 すぐに先生たちに空き部屋に連れて行かれた僕は装備そのままで座っている。なんとか勝てたけど、妙に非現実的な感覚がする。

 だからだろう。さっきから疲労がどっと来ている。

 

(………何で僕は卒業式の日にあんなことをしたんだろう)

 

 普通に考えておかしすぎる。いや、平然と戦った僕が言うのもなんだけどさ。

 そんなことを考えていると、扉が開いて黒いスーツを着た人たちが入ってくる。

 

「ぎゃあああああ!!」

「おい待て!」

 

 ヤバいと僕の第六感が告げている。たぶんこの人たち、僕をこのまま連れて行くつもりだろう。そうなったら無力の僕は否応なく解剖され、無残な姿になるだろう。

 

「嫌だああああ!! まだ15で彼女もできたことなくて童貞で死ぬのは嫌だぁああああ!!」

「待て! 我々はそのために君に会いに来たわけではない!」

「信じるもんか!!」

「いや、そこは信じろ! 我々は君を解剖するつもりはない!」

「……………」

 

 いやいや、冷静になれ。普通に考えてそれはない。だって僕はISを動かしてしまったんだ。それで「ありえません」とか都合が良すぎる。

 

「今回はこちらにも非があった。今後は慎重に人員を選んで対処させてもらう」

「………………」

 

 落ち着け。机は既に装備している。後は次弾となる椅子の近くに移動して構えると、今度は別の―――いや、カテゴリ上は一般人に分類されるであろう人が入ってきた。

 

「………に…ハルさん?」

「ったく。何で俺がお前らの仕事を手伝わなきゃいけないんだよ」

「仕方ないだろう。お前の身内なんだから少しは手伝え」

 

 何故かハルさんは政府の人と仲良く話している。どうやら知り合いらしいけど、まさか政府に関係者がいるなんて思わなかった。

 

「改めて挨拶させてもらおう。私は別地域の担当で日本政府IS管理局に所属する武藤(むとう)正勝(まさかつ)だ。彼とは高校時代まで付き合っていた仲だ」

「え? 二人ってそういう関係―――」

「友人だ。友人」

 

 なんだ。てっきり「B」から始まる禁断の関係だと思っていた。

 

「今回の件は本当に済まない。彼女も同じ管理局の人間なのだが、どうやら女権団にも所属していたようだ。今回のことは厳しく処罰させてもらう」

「……………」

「ああ、言っておくけどこいつは昔から「厳格」と言う言葉が似合う奴だから、その女も正しく処罰されるはずさ」

 

 ハルさんがそう言うのでとりあえず信じておくことにする。

 

「で、政府の役員さんが僕に何の用ですか?」

「今日はこれを渡しに来た」

 

 そう言って僕に何かの封筒を渡す。表には「IS学園」と言う文字、そして校章が入れられていた。

 

「………やっぱりそれしかないか?」

「ああ。それ以外となると実験場に送られてしまうだろう。そうなると、私でも対処できない」

「………………」

「…不服か?」

 

 僕の様子がおかしいと思ったのか、武藤さんがそう声をかけてきた。

 

「君の気持ちはわからなくもない。この女尊男卑の時代でその象徴のような学校に行けと言っているのだからな。君の気持ちはよくわか―――」

「あなたに僕の気持ちがわかる、ですか。随分と軽く見られましたね」

 

 ———役人風情が偉そうに

 

 内心舌打ちしながら、僕はそう言った。

 

「……君―――」

「悪い武藤。静流はちょっと難しいタイプなんだ。特にその……」

「ああ、悪い。私も軽率過ぎた」

 

 あまり語らないと思っての判断か、ハルさんは敢えて言葉を濁したが武藤さんも何かを理解したようだ。

 

「…………わかりました。本当は別のことをしたかったんですが、仕方なく、本当に仕方なくIS学園に行くことにします」

「………ありがとう」

「……………」

 

 何でお礼を言われたのかわからないけど、僕はとりあえず帰る用意をする。どうやらハルさんが車で来ちゃっているらしく、それで帰ることになった。

 

「………やっぱり嫌か?」

「もちろん」

 

 帰り道にそんなことを言われた僕はすぐに頷く。当たり前だ。僕にとってISは敵でしかない。

 

 

 

 僕は今から6年前、母を殺しかけたことがあった。その母は典型的な女尊男卑主義者であり、僕や父はそれを理由にいつも色々文句を言われていた。父がいないときにはいつもたばこを押し付けられ、今でも腕にはそのやけど痕が残されている。そんな時、何をどうしたのか母は包丁を手にした。その日は父が出張でいない日曜日で、僕は時間が早いことに疑問を感じたが、先に料理を作ると思ったから別に何とも思わなった。でもそれは思い違いであり、母は急に僕を刺そうとしたのである。その時、僕はちょうど使っていたミニカーをぶつけ、包丁を奪って肩を切った。痛さに悶絶する母を見て僕は怖くなり、急いで救急車を呼んだ。 そして出張先で事情を聞いた父に殴られ、捨てられた。僕を置いて二人はいなくなっていて、僕は父方の祖父母の下で暮らすことになった。今一人暮らしをしているのは、父親の思い出がたくさん詰まった部屋にいるのは中々苦しい物であり、僕は早期自立による生活力を高めることを理由に家を出たのである。………長期休業の時はそこまで離れていないこともあって普通に帰っているけどね。

 

 安易な発想かもしれないが、ISは女を変えた。だから敵である。

 

「………でもな、そうでもしないとお前は死んでしまう。だから俺は―――」

「わかってる。どうせだったら彼女の一人でも見つけてくるよ」

 

 そう言って僕は元気づけた。でもわかってる。それは自分のことで周りを巻き込むということを。だから安易にそんな存在を作るつもりはなかった。

 

 

 

 

 でも僕はわかっていなかった。ISが敵ではなく、女と言う生き物が敵であることを。




さて、次回は一体どうなるか。

……どうでもいい話ですが、実はこの話だけで8000文字超えています。初めてだったのでびっくり。

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