桜と海と、艦娘と   作:万年デルタ

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夢の中の話って便利ですよね、
都合の良い解釈出来るし、変な事も
夢で許される(はず…)。



さて、『村雨』と運命の出会いを
果たした主人公。


これはただの夢なのか、それとも…





0-4B 夢の中で輝いて 後編

 夢の中 むらさめ士官室 XXXXi

 

 

 

 

 

 

 

士官室に入った俺たちは一緒に

お茶の準備をしながら話をする。

 

 

 

 

 

 

2人とも紅茶で、村雨はミルクティー。

ちょっとお洒落なチョイス。

 

 

 

 

 

 

 

きっと『金剛』なら

 

「インスタントのティー

なんてナンセンスデース!!」

 

 

と怒るかもしれないけれど、

フネに本格的なセットは必要無いからいいのさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(Boo…!ワタシの次のサプライには、

本番ブリテンのティーセットを

リクエストするネー!)

 

 

 

 

 

 

 

なんか変な帰国子女の声が頭の中に

直接響いたような…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ともあれ準備を終え席に着いた俺は、

本題とも言える質問を村雨に投げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで急に現れたの?

やっぱ深海棲艦みたいなやつが現れたから?」

 

 

 

 

 

 

 

 

話を聞きながらミルクティーを飲んでいた村雨は、

コトリとカップを置くときょとんと

した様子で答えた。

 

 

 

 

 

 

 

「え?駆逐艦の時からよずっといたわよ?

 

艦娘がいつ誕生したか見解はいくつもあるけれど、

私は竣工してからかしら。

 

進水したり命名されたのはあったかなぐらいの

認識で全然覚えていないの。

 

だから竣工日が誕生日って言えると思う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…hai?

 

 

 

 

 

 

「…今なんとおっしゃいましたかねぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

「だから駆逐艦として竣工してからずっとよ。

生まれた時からこの身体、沈むまでは

ハッキリおぼえているわ」

 

 

 

 

 

 

「マジかよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

『艦娘』としての魂は護衛艦として生まれ

変わってからもあるようで、『村雨』は

途切れ途切れだが今で2代目らしい。

 

 

 

 

 

 

気が付いたら護衛艦で廃艦、

また護衛艦で今に至るそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「他に艦娘っていないの?村雨だけが特別なの?」

 

 

 

 

「え、いるわよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなあっさり言っちゃう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間が気付いていないだけで、実際には

港のそこら中にいるし、出歩いているのよ」

 

 

 

 

 

 

 

横須賀を始めとした軍港が、上陸した艦娘たちで

溢れている光景…たまんねぇなオイ!

 

 

 

 

 

 

 

ただし大湊、オメーはダメだ。

あそこは基地の周りに遊ぶ所が無いからな。

 

 

 

 

最低でも隣町のむつ市の田名部(たなぶ)

ってところまで行かんと何もない。

 

 

 

 

 

『むつ市』とか第3砲塔が危なさそうな

地名なんですが、それは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にしても軍港が艦娘で溢れるとか

どこの女子校の遠足・修学旅行だっての。

 

 

 

 

俺は一向に構わんが!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全く気付かなかったな、艦娘が見える

ゴーグルとか開発してくれよ技術研究本部、

違った、今は防衛装備庁か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺みたいな下っ端にはわからんが、

日夜凄いものを開発しているらしい組織。

 

 

 

 

 

 

 

よく艦これのSSで艦娘を兵器として開発したり、

目を背けるような非人道な実験をしていたりと

マッドサイエンス共の巣窟みたいな描写で

表現されたりするが、フツーの組織だから!

 

 

 

 

 

全然怖いところじゃないから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…でも10万円ぐらいで、飛行可能な球体偵察機

作っちゃうような、世界に誇るHENTAI組織

なのは確かだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな俺を放っておいて村雨は続ける。

 

 

 

 

 

 

「護衛艦で言えば『ゆうだち』もそうよ!

もちろん『はるさめ』や『さみだれ』も。

 

 

横須賀だったら、

 

同じ1護隊の『いかづち』ちゃん。

 

 

『いずも』だって、名前は違うけど

元軽空母の『飛鷹』さんなのよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わーお、最新式の『いずも』もか!

 

 

 

 

確かに飛鷹は客船として『出雲丸』って

命名されてたし、そう考えると

妥当といえば妥当か。

 

 

 

 

 

 

 

てことは『かが』は『加賀』さんなのは

確定的に明らかなわけで…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「護衛艦以外なら『ひびき』ちゃんとか、

『ちよだ』さんもいるよ!

 

 

潜水艦に『みちしお』ちゃんと

『そうりゅう』さんとかもいるけど、

 

 

「海中はもう嫌、鬱になりそうよ!…でち」

 

とか、

 

「長期出港で艦内がひどい臭い、

空母の頃は艦内はこんなに臭わなかった」

 

ってちょっと鬱になってたわよ」

 

 

 

 

 

艦娘すげぇ、というか海上自衛隊すげーなオイ。

『自衛艦これ』出来るやんけ。

 

 

 

 

 

 

 

にしても現潜水艦組は大変だな。

海中とか、沈んだ記憶が思い出されるだろうに。

 

 

 

 

 

 

 

 

にしても皆、考えてみてくれ!

スク水の『蒼龍』か…ふむ、アリだな!

 

 

 

 

 

俺提督になれるならマジで『自衛艦これ』

しようかな、やべーぜ!鼻血全開だぜ!?

 

 

 

 

 

俺全艦娘とケッコンとかになったら、

鼻血出して出血多量で死ぬかもしれん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…いや、死なないけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村雨は『沈没』後は数時間くらい

海の中にいたけど、船体に海水が

入ってからは記憶が無いらしい。

 

 

 

 

 

 

気が付いたら護衛艦になってて、廃艦。

 

 

 

 

そしてこの2代目の護衛艦『むらさめ』。

他の自衛艦でも同様の模様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがそれは人間には認識されていなかった。

 

 

 

 

 

 

「ぶっちゃけて聞くけど、艦娘がフネにいる

必要ないんじゃない?

戦ってるのは兵隊なわけだし。

 

そこにいるだけなら、

いなくてもいいんじゃないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

「そんなことないわよ。

私が、艦娘がいないとフネって動かないもん。

 

確かに実際に操作するのは兵隊さんだけど、

それを頭の中で認識して、伝達したりちょっと

修正して反映させなきゃいけないの。

 

もちろん全部の艦船や船舶に魂が宿るわけ

じゃないけど、みんながやっている『艦これ』に

出てくる艦娘は実際にいたし、戦場を

駆け巡っていたのよ〜!」

 

 

 

 

 

村雨がえっへんと胸を張る。

…うん、見事な”張り”だ。

これで駆逐艦とは思えん、指輪渡そう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな不埒な考えはは置いておくとして、

俺はふと浮かんだ質問を村雨に尋ねる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自分が戦っていて、そこに”存在してるのに

存在してない”のはどう思った?

やっぱり悲しいなあとか寂しいって

感じたりしたの?」

 

 

 

 

「少し寂しいって思ったこともあるけど、

私はそういう存在なんだって割り切ってるかな。

 

兵隊さんが大砲を発射するのも私がいなかったら

発射出来ないし、エンジンをまわすのだってそう。

 

意外かもしれないけれど、艦娘の存在は

かなり大きいのよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

わーお、艦娘さんマジすげぇっす。

 

 

 

軍艦って科学技術の塊だと思っていたが、

結構オカルトチックなところもあるんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一通り質問が済んだところで、

俺は書店で感じたことを村雨に聞く。

 

 

 

 

 

 

 

「戦争中にさ、上の無茶な命令や作戦で

大変な目に遭ったとおもうけど、

文句とかあるよね。

 

それは今も根本は変わってないんだけど、

あまりに酷いと俺は思うんだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは皆感じていると思う。でも私たちは

兵器、文句が有ってもどうしようも無いの。

命令されたことを努力して実行するのが

生き残る最良の手段、そう考えているわ」

 

 

 

 

 

 

 

「そういった命令を出すやつにはクズも

いるでしょ。そいつらについてはやっぱり

ふざけんなって感じたりする?」

 

 

 

 

 

 

「感じないわけじゃ無いけど、考えるだけ

無意味だしそれにそういったのは

艦長や提督の仕事になるんじゃ無いかと思うわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督の仕事、ねぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が提督になったらどうしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村雨を始めとした『艦娘』を沈めない戦いを

するのは当然だが、その他に事務仕事や

お偉いさんに話を付けたりと政治の方面にも

精を出さなきゃいけなくなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

艦娘を出撃させろと市ヶ谷や永田町に

怒鳴り込んだり、ブラック鎮守府にさせない

よう抗命しなくちゃいけなかったりと忙しそうだ。

 

 

 

 

 

戦いの指示だけならまだしも、

補給や修理、建造とかはどうするんだ?

 

 

 

 

 

タマは既存のものは使えるのか。

修理は艦娘が入るのか、

それとも船体のの修理をするのか?

 

 

 

 

 

建造できるとしても、資源はどうすんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

うむむ、質問がどんどん湧いてくるぞ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

湧いてきた質問を何から聞こうか悩んでいると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボヤァ〜…

 

 

 

 

 

 

ん?なんだ、視界が…歪んだような?

 

 

 

 

 

 

「きっと夢の世界と現実との境界が

切れそうになっているのかも。

 

単純に言えば、提督の夢が覚めてしまうってこと」

 

 

 

 

 

 

 

俺の様子を見ていた村雨が言う。

 

 

 

 

 

 

 

やべーよ!折角村雨と会えたのに、

会えなくなっちまうとか艦これやる意味ねーよ!

 

 

 

 

自衛官やる意味ねーよ!

夢よ覚めないでおくれぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ夢から覚めたく無いんです!

 

まだえっちな事して無いんです!

 

村雨ちゃんとイチャイチャして無いんです!!

 

このままじゃ死ねないんです!

 

 

いや、むしろ現実では死んでいいから

夢の世界にいさせてください!」

 

 

 

 

 

 

 

「…提督、さすがにそれは村雨も

色々と困るんですけど〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えっちな事についてなのか、

俺が死ぬ事に困っているのかはわからないが、

村雨を困らせてはいかんな。

 

 

 

 

 

 

だが夢が覚めてしまったら、

また会えるかも分からんしなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

せめて夢の中でヤりたいことは

やっとかんとな!

 

 

 

 

 

 

 

…おしやるぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「村雨、キス、しよう!

すきだァー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スイマセン、言っちゃいました。

 

 

 

 

 

 

 

「ええぇ〜、村雨困るんですけど〜…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願い、1回だけ!

先っちょだけ!!(意味不明)」

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん、まあ1回だけなら、ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おっし神様ありがとう!!

案外言ってみるもんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、キスしたら死ぬんだ…

 

 

 

 

 

 

いや待て、現実で死んだらこの夢の世界に

ずっといられるんじゃね?!

 

 

 

 

おい、本屋で誓った事はどーした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村雨が目を閉じ、俺は唇をゆっくりと近付ける。

 

 

 

 

あードキドキしてきた、夢の中で死にそう。

ここで死んだら夢と現実、

どっちの世界にいられるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

も、もうちょいかな?

 

 

 

 

 

 

あと2cm、あと1cm…!

 

 

 

 

 

 

 

 

ステンバーイ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おっしゃあぁぁぁ!

タッチダウン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未知との遭遇、奇跡の瞬間、

神降臨とはまさにこの事!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…おんや?

なんだか平面みたいな感触だが、

唇と唇が合わさるとこんな感じなんかな?

 

 

 

 

 

 

昔付き合っていた彼女とキスした時は

もう少し柔らかかったような気がしたが…

 

 

 

 

 

 

デ、ディープも行けるかなっ?

 

 

 

 

 

とりあえず舌を村雨の口の中に入れようと

するが、村雨は頑なに口を閉じたままだ。

 

 

 

 

 

 

口が元から空いていないかのようだ。

まるで硬い物質にキスしているかのような…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おかしいな、あまり強引な事はしたく無いが

顔に手を添えてみるか…。

 

 

 

 

 

 

 

俺は村雨の両頬に手をゆっくりと持って行き、

さらに舌を入れようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

!?

 

 

なんだこの感覚!

 

 

 

 

 

 

村雨の口が振動している!

ビクついているのか?

まるで携帯のバイブの様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ん、携帯のバイブ?

ケータイのバイブ…ケータイ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴー…ヴー…ヴー

 

 

 

ぶちゅう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちゅん、ちゅん。

 

 

カーッ!カーッ!

 

 

 

 

 

家の外から小鳥のさえずりやら、ゴミを漁りに

来たのであろうカラスの鳴き声が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

開けた目、その下方。

 

 

 

自分の口元には、振動するスマホ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えーっと、これは、つまりー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢オチかよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうやだ、死にたい…

 

 

 

 

 

 

 

俺は艦娘との初キスの味を堪能したかと

思ったら、人生初の液晶とのキスを

朝早くからしてしまったのであった。

 

 

 

 




どうせこんなオチしか思いつませんでした…


「俺の嫁に何て事を…」


そこは許してくださいとしか言えません。
主人公はちょっぴりかなりスケベなのです。

男の子はすべからく変態、事実です。





主人公と艦娘の絡みはだいたいこんな流れです。


ストーリーと主人公のギャップをいい配合で
書きたいのですが、ストーリーが無音潜行し過ぎ!


やや軽いストーリーになっている
気がしますが、この物語を進めていくに
つれて重みが出てくると思います。


今でこそややコメディが目立ちますが、
しばらくしてヘヴィな空気と血生臭い
展開が待っております…



そういったのは苦手な人はご注意。

「血生臭いドロドロな戦いを!
一心不乱に凄惨な大戦争を!!」

というモノ好きな方、しばしお待ちを。




血生臭いとはいえ『轟沈』シーンがある可能性は
かなり低いだろうと申しておきます。








次回からは現実に戻ります。


出勤してきた仲間の村上と会い、
昨夜の事について話す主人公。


どうやら夕方から出港して、海上で
警備に当たるらしいと専らの噂。



当然『村雨』は艦内に居らず、
明らかにやや落ち込む主人公。




そして謎の組織のミーティング…

その中で飛び交う、物騒な言葉、
そして『人間』『復讐』の単語…







次回、『黄昏の出撃』



「アルファ目標発砲!アイツは”敵”ですっ!!」



「何弱気になってるんですか司令。
守りたいものの為に何としても帰るんですよ!」





この世界と『深海棲艦』が出会った時、
『艦娘』は現れる…




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