桜と海と、艦娘と   作:万年デルタ

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…前話については申し訳ありません。
主人公の人生の大きなターニングポイントを
書こうと思ったのですが、最初の案が
あまりに華々しかったため、あえて泥沼な
書き方、展開にさせてもらいました。



さて
新たな信念を持った主人公。
これからどんな事件に巻き込まれていくのか。


明日からフネで待機。
その前にちょっとだけ見る、
ちょっとヘンテコな夢。



今回はそんなふんわりした
ムードでお届けします。





0-4A 夢の中で輝いて 前編

 横須賀市内 菊池下宿 2030i

 

 

 

 

 

 

ゲブーーーゥ!!

 

 

 

 

 

 

 

汚ったねぇな…

 

 

 

いきなりすまんな、食後でつい、な?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あー、食った食った。

 

 

 

我ながら肉じゃがは得意料理だな。

スーパーでいい値段で肉が売っててよかった。

 

 

 

 

 

 

 

書店を後にした俺は、夕食の具材を買ってから

下宿で少し遅めの夕食を食べていた。

 

 

 

 

 

 

 

糸こんにゃくで腹が膨らむ。

貧乏メシ最高です。

 

 

こんにゃくは弱者の味方だな!

 

 

 

 

 

明日の準備は万端!

メシも食った!

 

 

後は風呂だけー!

 

 

 

 

 

「♪めっしめっし、ふっろふっろ後は寝るだけー!」

 

 

 

 

陸自や空自の基地で流れる『課業止め』のラッパを

変な歌詞を付けて歌いながら、

俺は風呂場に向かう。

 

 

 

 

 

 

シャワワー!

 

 

 

 

身体の汚れを落としてから湯船に浸かる。

 

 

 

ザバァーン!

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜、生き返るわぁ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

やっぱフロはいいなぁ〜…狭いけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂は広い方がいいんだが所詮下宿だしな。

1Kで風呂トイレ別で格安だったんだから文句は

言えんな。立地も悪くないし。

 

 

 

 

 

風呂から上がった俺は、いつも飲んでいる

ブランデー入りの紅茶を作る。

 

 

 

えっ、明日からフネで待機なのにアルコールを

飲んで大丈夫かって?

 

 

 

 

明日から酒は飲めないし、いいじゃあないか。

こんなの酒を飲んだに当たらんよなぁ?

 

 

 

 

これはワインボンボンとか甘酒みたいなもんだろ。

飲酒にはならないって。

 

 

 

 

 

 

それに飲んだら自転車も乗らないし、

健全な自衛官だろう。

 

 

 

 

 

 

 

ちょくちょく飲酒した自衛官が不祥事を

起こしたというニュースもあるし、

俺はこれでも気を付けているんだせ。

 

 

 

 

 

 

 

体がほんのりと温まり、俺は歯を磨いて

さっさと布団に潜り込む。

 

 

 

 

 

 

「ふぁーーあ!朝は目覚ましを0500にセット」

 

 

 

 

スマホと目覚まし時計、予備で腕時計の、

アラームもセットする。

 

 

 

 

 

 

 

自慢じゃないが俺はどこでも、すぐ寝れるタチだ。

 

 

 

のび太くん程ではないがすぐ熟睡するし、

朝までほとんど目を覚ますことはない。

 

 

 

 

 

「明日から…フネで待機…ダルいぃ…」

 

 

 

 

あっ、もう落ちるな。

 

感覚でわかる。

 

 

 

 

 

冷蔵庫は空っぽにしたよな?

 

賞味期限近いものは無いよな?

 

 

 

 

頭の中で最終確認をしながら、俺は

夢の中へと旅立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

う〜ん…赤城ぃ、もう食べれないよぉ…

 

 

神通ぅ…良いでは無いか良いでは無いかぁ…

 

 

綾波ぃ…お前は可愛いなぁ、癒されるぜぇ…

 

 

 

 

 

 

俺は艦娘たちと戯れる夢を見ていた。

 

 

 

 

 

 

…それも幹部の制服を着て。

階級は、何故か2等海尉…

 

 

 

 

 

『提督』だから、服装も提督風にってことか?

まぁ夢だからな、俺の頭が都合良く変換して

るのか、便利な頭してんなオイ。

 

 

 

 

それならせめて海佐クラスにしてくれよ。

2尉とか微妙だろうに…

 

 

 

 

 

 

俺は提督となっているようで、みんな俺を

「提督」とか「司令官」と呼んでくれている。

 

 

 

ぐふふ、俺って幸せだなあ。

 

 

 

 

このまま行けるとこまでイッちゃおうかなぁ…

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

…んー

 

 

 

 

 

 

…ん?

 

 

…んん?!

 

 

 

 

ガバァッ!!

 

 

 

 

「ど、どういうこっちゃー!!」

 

 

 

 

 

 

あ…ありのまま今起こったことを話すぜ!

 

 

 

 

「夢の中で俺は提督になり艦娘たちとイチャついて

いたと思ったら、いつの間にか『むらさめ』の

飛行甲板に布団の中で寝ていた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どういうこっちゃねん」

 

 

 

 

 

 

 

どうやらここは海の上、それも俺の乗っている

『むらさめ』の飛行甲板のど真ん中。

 

 

 

 

 

ご丁寧なことに布団までちゃっかり敷いてある。

 

 

 

 

 

 

「これは夢なんかな…?」

 

 

 

 

ベタではあるが、頬をギュッとしてみる。

 

 

 

 

 

 

 

……痛く無い、夢だな。

 

 

 

 

 

どうやらさっき見ていた夢の次は、職場の

夢を見てしまっているらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういやなんでむらさめの飛行甲板って

すぐにわかったんだろう?

 

 

 

 

格納庫周りを見渡せば、我がむらさめとわかるが

何故寝起き?から状況が把握できたんだ?

 

 

 

 

 

 

 

てかさっきは幹部の制服だったのに、

 

今は寝る時に着たジャージになってるし…

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ俺の夢だしな、不思議なことは無いか」

 

 

 

 

 

とりあえず布団を整え、フネに乗員がいないか

探してみることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ペタペタペタ…

 

 

 

 

 

俺は艦内をスリッパで歩く。

 

 

 

 

 

今履いているスリッパだが、

なぜが布団の横に置いてあった。

 

 

 

 

 

「自分の夢とはいえ、都合が良過ぎるだろ…」

 

 

 

 

 

 

そう思いながらも通路をペタペタ進んでいく。

 

 

 

 

 

 

ちなみに頬をつねっても痛くはなかったが、

何故か歩くと足の感覚はある。

 

 

 

 

 

手をニギニギしても腕も感覚があるし…

 

 

 

 

 

 

夢ってこういうもんなんかねぇ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしても、誰もいないな」

 

 

 

 

職場である電信室や居住区を回ってみたが、

人がいる気配は全くしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

士官室や艦長室も恐る恐る覗いて見たのだが、

だーんれもいねーでやんの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機関部はどうせいないし、あと行くべき場所と

いえば”あそこ”しかないなあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カツンカツンカツン…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督入られます、気を付けっ!」

 

 

 

 

「うむ、苦しゅうないぞ」

 

 

 

「かかれっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って何やってんだよ、アホらしい…」

 

 

 

 

 

 

”あそこ”とは艦橋であった。

 

 

 

 

 

 

ちょっと提督ぶってみたけど、なんか違うし。

 

 

 

 

苦しゅうないぞとか、どっかの殿様じゃねーか。

 

さっきの神通とのイチャつきの影響が残ってる?

 

 

 

 

 

 

 

 

ともあれざっと艦橋を見渡し、ゆっくりと歩み始める。

 

ふむ、艦橋にも誰もいないようだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

艦橋なんて、通信でもあんまりこないからな。

 

 

 

 

 

 

 

艦橋交話員の配置があるときは海曹の人が

上がるが、基本通信士がいるからあまり通信員を

艦橋に上げることが無いからな。

 

 

 

 

俺たち通信員の上には通信士っていう幹部の

人がいて、通信業務を監督している。

 

 

 

訓練の時に交話機の前に陣取って、交信を

してもらったりしている。

 

 

 

ついでに海外の海軍と共同訓練する時に、

英語で電話がかかってくるんだがその時も

通信士に丸投げしてるな。

 

 

 

だって英語わかんないし…

 

 

 

 

 

通信士も

 

 

 

『私だって英語得意なわけじゃ無いんですよー!』

 

 

と、涙目になりながら英語であたふた

しゃべってたなあー。

 

 

 

むらさめの通信士は2尉の若い人だ。

 

 

 

 

歳は俺より3、4つ上だがさすが大卒、

なんとか言って仕事はちゃんとする人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「通信士ももう少しどっしり構えてくれれば

いいんだけどねぇ」

 

 

 

 

「そうなんだよなー。もうちっと自信を持って

欲しいよな」

 

 

 

 

 

 

 

全く、若手の幹部ってのは遠慮し過ぎるというか…

 

 

 

 

今の人が言ったようにだな、もっと……うん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今誰かの声がしなかったか?

 

 

 

 

 

 

 

 

よく見たら、右舷にある艦長の座る席に誰かいる。

 

 

 

 

 

 

 

「へっ、ど、どちら様ですか?」

 

 

 

 

 

 

俺が声を裏返しながら尋ねると、その人物は

勢い良く椅子から降りて俺の方に正対した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいはーい!白露型駆逐艦…じゃなかった

むらさめ型護衛艦『むらさめ』だよ!

菊池士長、よろしくね!」

 

 

 

 

 

「うおっ!?村雨ちゃんじゃねーか!!

てかなんで俺の名前知ってるの?」

 

 

 

 

 

「そりゃ私は『むらさめ』だもん、知ってるよ。

通信の菊池士長。巨乳好きで、

嫌いな物はセロリでしょ?」

 

 

 

「わわーわー!!わかったから、俺のこと

知ってるのはわかったって!!」

 

 

 

 

「ふっふっふー!白露型駆逐艦の力、

侮れないでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どういうこっちゃ!

 

村雨が現実にいるぞ?!艦娘の、村雨ちゃんがっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フゥ〜…落ち着け、俺。

 

これは夢だ、俺の夢だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忘れていたが、俺が思った通りに

夢は動いてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり、村雨脱げって思えば脱いでくれるハズ!

 

やるぜっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「村雨っ!!」

 

 

 

 

「えっ、なになに?私に相談かしら♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さぁ村雨、脱ぐのだっ!君のスケベボディーを

俺にさらけ出すのだぁー!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じぃーー!

 

 

 

 

 

「ちょっ、まっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?こうかはいまひとつのようだ。

 

 

 

 

 

 

 

(まだ念が甘いようだな、

さぁセクシーポーズを取るのだぁ!!)

 

 

 

 

 

ジィーーー!!

 

 

 

 

 

「本当に困るんですけどぉー…、うぁあん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故だっ?!

 

 

おい、俺の夢だろ!何故脱がんっ!!

 

 

 

 

 

 

 

「そんな目で見られちゃうと村雨、

どうかなりそうー…」

 

 

 

「あーゴメンゴメン、艦娘と会えるとは思えなくて少し動揺しちゃってさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…むぅ作戦中止、エロはいかんのか?エロは?

 

 

しょうがない、健全に行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「驚かせちゃったね。こんなところで

立ち話もなんだし、士官室でも行って

お茶でもどうかな?」

 

 

 

「ほんと?おぉ〜、グッド〜!」

 

 

 

「おっし、そうと決まれば行こうか。

あと俺のことは『提督』って呼んでよ、その方が

お互いしっくりくると思うし」

 

 

 

 

「じゃあ提督って呼ばせてもらおうかしら!

よろしくね、て・い・と・く!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おおぅ、轟沈確定。

俺の心はいま轟沈したぜ。

 

 

 

 

 

 

夢の中とはいえ、お茶デート誘っちまったぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラッタル急だからね、気を付けてね」

 

 

 

「あらあら、優しい人なのね。ありがと!」

 

 

 

 

俺は夢の中と知りつつも、ウキウキしながら

村雨と士官室に向かうのであった。

 

 

 

 

 




夢の中でですが、やっと艦娘登場。


「おいゴルァ!俺の村雨に何しとんじゃ!
許可取ってんのか!」

すいません、主人公のキャラなもので
そこは許してください。




「夢かよ!」

まあまあ、そう焦らずに。
その内現実にも出てくる予定ですから。

もうちっとだけ前菜話が続くんじゃ。






次回は後編
どうせまた夢の中の話です。



主人公は書店で感じた事を村雨に相談する。


そんな主人公を優しく諭す村雨。



夢なのをいいことに、主人公はあるお願いを
村雨にするのだが…



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