桜と海と、艦娘と   作:万年デルタ

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戦闘シーンがうまく思いつきません!
もっと勉強いたします。

今回は天龍視点。
敵の魚雷群が襲いかかります。



2-4c 敵西方艦隊を叩け!中編B 【敵魚雷、殺到】

「第1梯団、回頭開始ッ!」

 

「おっしゃあ、始まったぜ。

阿武隈のヤツが一番かよ、

オレの獲物もとっとけよな!」

 

天龍は久々の海戦に興奮した。

自衛艦時代には味わえなかった

高揚とスリルが心臓を加速させる。

 

ウイングから入ってくる風は

硝煙の匂いを艦橋内へともたらす。

 

金剛を始めとした主力艦のものか、

それとも突入を開始した阿武隈たちの

ものが風に流されたのかはわからない。

 

「硝煙の匂いが最高だなぁオイ!」

 

「天龍姉さん燃えてますね…」

 

「ッたりめーだろ?!

あぁ~出番が待ちきれないぜ!」

 

妖精が天龍に問う。

 

天龍は水雷戦隊の順番では最後。

つまり阿武隈、川内たちの次。

出番が来る前に獲物が

いなくなってしまう可能性もある。

 

 

なお艦隊についてだが

艦娘の編成は以下の通りである。

 

☆☆☆☆

 

陣形 『単縦陣』

 

金剛   先頭主力艦部隊

利根  (砲撃は消極的に実施)

愛宕   

 

阿武隈  第1梯団

黒潮

親潮

高波

 

鹿島   砲撃専門

     (撹拌を担当)

川内   第2梯団

照月

白雪

村雨

 

天龍※ 【第3梯団】

朝潮

満潮

島風

 

霧島   後方主力艦部隊

筑摩   (警戒・予備戦力)

妙高

 

 

なお、空母の飛鷹と千代田は

護衛艦と合流、退避済み。

 

☆☆☆☆

 

「…現状はどんなだ?」

 

「まだ情報は入ってきてないようです」

 

通信妖精の返事を半分聞いたところで

艦橋に置かれた端末に飛び付く。

 

軍事シュミレーションのように

敵艦へと魚雷が突き進む。

画面上の魚雷を表す印が

敵艦に重なると同時に前方に目を向ける。

 

西之島をバックにした敵艦に

その艦橋の何倍もの水柱が上がる。

 

『提督っ、命中しましたー!』

 

『よくやったぞアブゥ!』

 

魚雷命中第一号は阿武隈らしい。

 

「チッ、『突撃一番』は取られたか…」

 

「天龍姉さん、

その発言はヤバいっすよ…」

 

「あん、なんでだ?」

 

天龍の発言に真っ当な苦言を

言った妖精だったが、その理由が

よくわかっていない天龍。

 

「提督に『突撃一番』を

プレゼントしてやりたかったのによぉ」

 

「「…ブッ!!」」

 

「…なんで吹き出してんだお前ら?」

 

『高波、魚雷不発かも、ですぅ~!』

 

そんな『天龍』の艦橋に

高波の悲痛な報告が飛び込んだ。

 

彼女の魚雷は命中したものの

残念ながら不発だったようで

最後の方は泣き声と化している。

 

『こ"め"ん"な"さ"い"ぃ~!!』

 

『わあったから泣くな高波ッ!

せめて送話のスイッチを切ろうな?!』

 

そのまま数十秒ほど

スピーカーから『高波』の

艦橋内の喧騒が流され続けた。

 

「「……うわぁ」」

 

((どこも大変だなぁ…))

 

聞いている方も

なんともいえない気持ちになる。

 

高波の妖精がそれに気付いて

すぐに送話モードを断としたが、

その数十秒で艦隊の状況は

一変してしまっていた。

 

……

 

『こちら川内ッ!

魚雷の信管の調整をミスって

航走(はし)ってすぐに早爆させちゃいました!

提督ゴメン、全部お釈迦ァ…』

 

『司令官、白雪です!

魚雷発射管に故障、

すみません、発射できません!』

 

第2梯団の川内と白雪の

悲痛な叫び声が入ってくる。

 

提督は咄嗟に指示を出す。

 

『…了解した!

川内は砲撃をしつつ

白雪の側面に回ってカバーしろ!

敵の魚雷を見つけたら機銃を

ぶっ放して破壊するんだ!

壁になれと言ってるようなもんだが

あくまでカバーだ、それで川内が

被弾したら意味は無いぞッ!

 

白雪は魚雷の暴発を防ぎつつ

砲撃と煙幕でやり過ごせ!

反撃を喰らったらエラいことになる、

全速で離脱して処置に取り掛かれ!』

 

『『了解ッ!!』』

 

功を焦り過ぎた川内と、

魚雷発射ができなかった白雪。

提督の声は激しいものの、

怒りの感情は篭っておらず

彼女らを心配しているのがわかる。

 

「…おい、オメーらは

あいつらみたいなヘマすんなよ?」

 

配下の駆逐艦に

同じ轍は踏ませまいと

天龍は厳しく指示する。

 

『こちら朝潮ですッ!

信管調整と発射管の最終チェックは

良好です、お任せくださいッ!』

 

『川内さんたちの分も

お見舞いしてあげるわッ!』

 

『発射管もばっちりー!

酸素魚雷、スタンバイしてるよー!』

 

朝潮、満潮、島風は

僅かな時間で発射管の再チェックを

実施し、不備が無いことを届ける。

 

 

####

 

前を進む川内たち第2梯団の

砲雷撃が終了し、天龍たち

第3梯団も間も無く回頭する予定だ。

 

魚雷を発射するという時であるが

思い出して欲しいことがある。

 

第3梯団、いわば最後。

前にいた梯団の発射した魚雷は

敵に間も無く命中する。

 

…ということは、

 

【敵の魚雷も】此方に向かっている。

 

戦闘で熱くなるのは仕方ない。

しかし、この時ばかりは

提督を始め艦娘たちは冷静さに

欠けていたと言わざるを得なかった…。

 

####

 

 

「天龍、回頭するぜッ!」

 

回頭点である敵前10kmに差し掛かり

取舵を取ろうとした時だった。

 

「天龍姉さん、魚雷ですッ!!」

 

見張妖精の報告が響く。

 

「雷跡…2!!

右艦首、いや、左艦首もだッ!

凡そ5ーッ!間も無く直撃するッ!!」

 

「クソッ…深海ナントカ共がッ、

舐めたマネしてくれるじゃねぇか…!

宜候、このまま突っ切る。

主砲と機銃は前方からの魚雷を

迎撃しろ、とにかく撃ちまくれ!」

 

回頭したら被雷すると考えた天龍。

咄嗟に直進することを選択し、

それを後続にも伝える。

 

「駆逐共はオレのケツに

ピッタリ付いて来いよ!

そうすりゃ魚雷は当たらねぇッ!

 

それにオレたちの後ろには

霧島の姉御や妙高たちもいる。

この向かってくる魚雷群を

やり過ごしたら、テキトーに

回頭して雷撃して退散すっぞ!!」

 

『天龍、俺だ!

魚雷は避けられそうか?

無茶すんなよ?!』

 

提督が心配して聞いてくる。

 

「丁度敵さんが振舞った

遅めなウェルカムドリンクが

オレたちに届き始めたところだ!

心配すんな、様子を見て

雷撃したら離脱すっからさ!」

 

これは事実だ。

天龍とて無駄に肉薄してまで

危険を冒すつもりは微塵も無い。

それに後続の艦娘をも

危険に晒すことなど以ての外。

 

(しっかしビリになって

とんだ目に会っちまったな…)

 

 

意外かもしれないが、

海戦のみならず、陸戦や空戦において

斬り込みをする【先頭】こそが

一番安全だと言われている。

 

空挺部隊も同じで、1番機から

敵の迎撃態勢が整う前に降下できる。

空戦においても、敵爆撃機の砲火は

激しいが、すぐに自分の後方を

続行する味方機を狙うため

初撃さえ躱せばどうということはない。

海戦、特にこのような砲雷撃戦では

その傾向は顕著になる。

 

丁字戦法かつ隊列の後方となると、

その悪い所がまとまって表れる。

 

具体的には、

前方にいた味方を狙った魚雷が、

今自分がいる地点目指して

向かってくるということ。

 

これが【丁字戦法】の欠点。

一言で言えば…

 

 

※※※※

深海棲艦サイド

 

 

雷チ「これで敵は『袋の鼠』ですね、

あとは此方に直進してきたら

必中の魚雷を叩き込む…。

ここからは私の出番よッ!」

 

チ級が意気込む。

 

軽ホ「あら、チーちゃん

意外とお茶目な所もあるのね~♪」

 

雷チ「…だからそこで

茶々を入れないでください」

 

軽ホ「更に言えば私たちの方が

『窮鼠猫を噛む』なのよね~」

 

深海棲艦はこの時を待っていた。

艦娘の砲撃、雷撃に耐え

必殺の魚雷斉射機会をだ。

 

 

………

 

 

深海棲艦の考えた戦法は

次の通りらしい。

 

①最後尾の敵水雷戦隊(天龍たち)の

左舷方向に囮の魚雷を撃つ。

 

②敵に取舵(左に)回頭をさせず、

此方へ誘引して敵の砲撃を妨害する。

 

③あわよくば乱戦に持ち込み

この水雷戦隊を壊滅させ、

補助艦を減らし、人間側の

継戦能力を少しでも削る。

 

 

人間側が艦娘のみで

攻勢を仕掛けてきたため、

深海棲艦としては好都合であった。

 

梯団の後方にいる敵戦艦と

重巡(霧島、筑摩、妙高)にも

魚雷を命中させることができれば、

撃破は不可能であっても

敵の目的であるマーカス奪還を

断念させることも期待できる。

 

 

自衛隊の弾薬(特にミサイル)の

備蓄状況は、艦娘をして敵に

肉薄せしめるほどであった。

 

金剛が提督に提案した『ガス抜き』も

艦娘を前面に出す作戦の

オマケに過ぎず、悲しいかな

戦争を想定していない

日本という国が自らの首を絞める

戦術を採用する理由の一つになった。

 

………

 

「霧島の姉御ッ、

そっちに魚雷が向かうから

当たんねぇようにしてくれよ?!」

 

「了解よっ!

…だからその『姉御』はやめてね?」

 

天龍が霧島を姉御と呼ぶのは

特に意味も由来も無いらしい。

試しに呼んでみたらしっくりきて、

以来そう呼ぶようにしたらしい。

 

天龍たちは速力を落とし、

砲撃を行いつつ直進する。

 

見兼ねた提督が付近の護衛艦や

哨戒機に支援を要請するも、

彼我の距離が近過ぎたり

空対艦ミサイルの未搭載などの

要因が重なっていずれも不可。

 

ここに至り後方主力である

霧島以下3隻に全力射撃を許可する。

 

『後方主力部隊は

天龍たちの援護に当たれ!

 

外側の護衛艦による支援は

誤射の可能性があって出来ん。

既に回頭を終えた艦娘で

再突入を図るぞッ!』

 

しかし、おいそれとフネは曲がらない。

駆逐艦はまだしも、戦艦クラスは

舵が効き始めるまで数十秒掛かる。

 

転舵出来る艦娘から逐次…、

などとしてしまっては

かつての旧日本軍が犯した

『逐次投入の愚』を繰り返す。

それを痛感している提督は

苛立ちながらも艦隊陣形の

再編成を行い、急がせる。

 

「クソッ、また魚雷だっ!」

 

既に敵との距離は7千を切っていた。

敵の砲撃は未だ命中しないものの、

付近に着弾し水柱を上げている。

 

後ろにいる霧島たちの援護射撃だが、

敵との間に天龍たちがいるため

観測機による間接照準を強いられ

思った程の効果は無い。

 

「あいつらは

オレたちをこのまま近付けて

至近距離で仕留めるつもりだな…」

 

天龍は敵の狙いを

一番早くから見抜いていた。

だが、逃げようが無かった。

 

いっそのこと後進で

下がろうかとも考えたが、

その瞬間敵は捨て身で

突っ込んで来るであろうと悟った。

 

現在の速力は舵の効きが

鈍くならないギリギリの低速だ。

ゆっくり進みつつ砲撃を行なって、

事態が変わるのを待っている。

 

敵の魚雷が脇をすり抜ける瞬間、

精神力を奪っている感覚に陥る。

それは後続の艦娘も同じだ。

 

魚雷が途切れた僅かなタイミングで

転舵しようとしたものの、

それを見抜いたかのように

回頭方向に砲撃が集中する。

 

(チッ…!)

 

「戻ぉーせぇ!」

 

すぐに回頭を止め、

元のコース上へとフネをのせる。

 

 

このまま敵艦隊の目の前に

向かっていくしか無いのだろうか?

 

 

敵の艦影が水平線に浮かぶ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




仕事にゆとりができ
時間が確保できたとしても、
即ち執筆の構想を膨らませる
…とはいかないようです。

忙しい時の方がアイデアが
浮かんでいた気がします。
人生とはなかなか大変ですねぇ…。

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