桜と海と、艦娘と   作:万年デルタ

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17春のイベントにハマってしまいました!
10人の新規艦娘と出会うことができ、
生活リズムも見事反転…。

物語も納得のいく内容が
なかなか書けずスランプでしょうか…。
気晴らしに書いた日常話だけが
溜まっていくのも悲しいです。
さっさと物語を進めたいのです!



2-4b 敵西方艦隊を叩け!中編A 【砲撃開始】

『金剛』艦橋

 

 

「さて、金剛も早く寝ろよ?

朝は日出から戦闘をおっぱじめるからな」

 

「テートクが折角

ワタシに乗艦してくれたのにぃ~…」

 

 

現在2030過ぎ。

士官室にて金剛の提案を聞いた後、

俺は紅茶を飲みつつ艦橋でのんびりと

明日の作戦を思い描いていた。

 

護衛艦や軽巡、駆逐艦に

交代で対潜警戒を実施させながら、

艦隊はノンストップでぐるぐると

同じ海面を回っていた。

 

夜ぐらい漂泊していたいが、

敵潜水艦の襲撃を回避できるよう

船足は止めずにいる。

 

 

「提督とステキな夜を

ゆっくり過ごしたいデース!」

 

「時と場所は弁えないのか…」

 

「戦闘はちゃんとするから

問題ナッスィーン!…デス」

 

「なんか歯切れが悪いけどまあいいか…」

 

 

((またイチャイチャしてるよ…))

 

妖精たちが一斉にため息を吐く。

真面目に働く彼らには悪いが、

少しだけ艦橋に居させてもらおう。

 

 

……

 

 

「テイトクは火遊びが多過ぎデース!」

 

「いや、別に『火遊び』までは

やってないし単純にセクハラだけを

しているのだよ、金剛クン」

 

「セクハラはいいんデスカ…」

 

「いいんdeath」

 

だってみんなかわいいんだもん。

 

でもお触りは控えてるよ?!

頭をナデナデしたりたまーに

抱き締めするけど、露骨に揉んだり

権威を振りかざして無理矢理…とかは

してないからね、本当だよ!!

 

「テイトクは格好いいデスけど

プレイボーイみたいでなんだか

チャラ男と思っている艦娘も

いるって知っていマシタカ?」

 

「ウッソ、マジで?!」

 

妖精((そりゃそーでしょ…))

 

「せめて誰か一人に

すればいいのデス、つまり

ワタシだけにテイトクのラブを…」

 

「金剛も可愛くていいんだけどさ、

それだと他の娘が可哀想じゃん?

全員を等しく愛するのは厳しい

かもしれないけど、俺はセクハラを

死ぬまでし続けてやるぜ」

 

「なんだか良い事を

言ってる気がシマスが

内容はすごく最低デース…」

 

我ながら酷い事を言ってるな。

でも本当なんだからそこは譲らん。

 

「金剛の事も好きだし

霧島も同じぐらい好きだよ。

本当に嫌なら、その娘には

セクハラをしないようにする」

 

「そういうんじゃなくて~、

女の子というのは自分1人を

選んで欲しいんデスよ!」

 

「えぇ~…それだと

他の娘が可哀想じゃん、じゃん?」

 

「Hmm…

た、確かにそうデスけど~」

 

妖精((知らんがな…))

 

 

……

 

 

どうでもいい日常会話であったが

寝る前の有意義な時間を過ごせた。

 

横でイライラしながら聞いていた

妖精たちにも申し訳なかったな…。

 

金剛が自室に戻ってから、

彼らにはアイスを奢ってあげた。

 

海上自衛隊では、アイスとジュースは

先輩からのお願い(強制)依頼(命令)の報酬である。

アイスやジュース一つでとんでもない

仕事をやらされたりする。

 

明らかに労力と見合わないのだが、

もらったら喜んでしまうのも

人間の哀しい性でもある。

 

だいたいは先輩からの強制だったり

絶対断れない業務だから、

実質アイスなんかじゃ足りないけどな。

 

「「提督あざーっす!!」」

 

俺自ら妖精たちに

アイスを配って回る。

ビニール袋からアイスを出す姿は

コンビニから帰ったパシリ君そのもの。

 

彼らは仕事中であり

持ち場を離れることは許されない。

 

人数分の個数はもちろん、

人気の銘柄を多くして

選択の幅も広げてあげる。

 

『ゴリゴリくん』を始め

『ワーゲンキャッツ』もあり、

各々が食べたいものを選ぶ。

 

当直(ワッチ)中すまんかったな、

かなり安いけどアイスでも食べて

明日の作戦に向けて休んでちょー」

 

それでも有ると無いとでは

モチベーションが全然違う。

こうしたちょっとした気遣いは

下積みを経験した俺の教訓だ。

 

「それじゃ俺は休ませてもらうね。

悪いけど朝は0500に早起こしで頼んます」

 

「了解しました!」

 

哨戒長に早起しを頼み、

そそくさと自室に戻る。

 

そういや風呂入ってねーや。

サッと入って寝るとするか…。

 

 

※※※※

 

0530i

 

 

「…改めて示達しておくぞ!」

 

 

間も無く日出(にっしゅつ)

海上自衛隊では『ひので』ではなく

『にっしゅつ』と読むのだ。

陸さんと空さんは『ひので』と読む。

なんで違うのかは知らん。

 

艦娘に対して掃討戦の詳細を

うるさく言い聞かせる。

 

 

「偵察衛星と哨戒機の報告では

敵の兵力は30隻に減っている。

減った10隻についてだが

夜のうちに沈んだと思われる。

 

懸念していた潜水艦であるが

哨戒機の奮闘により

壊滅することに成功した!

まだ残っている可能性は

否定出来ないものの、

戦闘中も継続して

哨戒してくれるそうだ。

 

敵の編成は軽巡クラス6、

駆逐艦24が確認されている。

最新情報では敵の陣形は

一言で言えば密集陣形、

簡単に言えばごちゃごちゃ、

ぶっちゃけテキトーだ」

 

『提督が適当じゃねぇか…』

 

『もう少し引き締めてもらわないと…』

 

天龍と妙高が文句を言う。

 

「だまらっしゃ。

でだ、こちらの陣形は『単縦陣』で行く」

 

『へぇ…』

 

『単縦陣、ですか…』

 

満潮と高波が言葉を発した。

意外、とでも思ったのだろうか。

 

「金剛を先頭に針路270度で近接、

なお砲撃は最小限実施に留める。

敵前10キロで針路180度、

つまり南に変針して航過。

そこからは…」

 

『『…ッ!!』』

 

「もうわかっただろ?

丁字戦法からの雷撃だ、

つまり軽巡や駆逐艦の出番だ」

 

 

主力艦による砲撃や、護衛艦・哨戒機

のミサイル攻撃は今回殆どしない。

弾薬の残りが少ないからだ。

 

威嚇射撃程度に撃ちつつ、

回頭した水雷戦隊が攻撃のメイン

となって打撃を与えるのだ。

これまでのような脇役ではない、

主役として敵を屠るのだ。

 

 

「この提案は金剛からなんだが…」

 

 

昨夜彼女はある提案をした。

簡単に言うなれば

【レベリング】と【ガス抜き】、

軽巡以下の艦娘は血気盛んだが

その装備を持て余しているから、

それを上手いこと使わねば

彼女らの為にもならないとのこと。

 

先程述べた通り戦艦等の弾薬も

あまり使いまくることはできない。

対空と対潜ばかりで、砲雷撃戦を

待ち望む彼女らに活躍の場を

提供してやろうという趣旨だ。

 

危険を冒すことにはなるが、

その露払いとして文字通り体を張って

弾除けに戦艦と重巡を使ってやろう

じゃないか、金剛は語った。

 

 

「…という訳だ。

金剛や利根たちも装甲はあるとはいえ

無傷とはいかんかもしれん、

敵の反撃が激しければ中止も考えて

いるが問題なければ続行する。

 

なお敵艦隊の両側面には

護衛艦が展開して対潜警戒を行う。

無論、安全な距離を取るとは思うが

絶対という言葉は存在しない。

各艦はそれの救援に向かう場合も

考慮して戦闘に臨むこと。

 

だが側面警戒をしてくれるということは

護衛艦による反撃の即応性は

低くなるということだ。

要は遠くで警戒するから

戦闘にはすぐに参加できないという

ことだからそこは覚えておくこと!

 

ここまでで質問はあるか…?」

 

……無し。

 

「軽巡と駆逐艦は回頭後

順次砲撃と雷撃を敢行する。

FCSによって精度が向上して

いるからといって無駄弾はあまり

ばら撒くなよ、初弾から当てる

つもりでよく狙っていこうぜ。

 

雷撃については…俺よりも

水雷戦隊を率いていた天龍、

川内それと阿武隈が得意だろう。

細かい戦法とか戦術はお前たちに

任せる、てか俺わかんないし」

 

丸投げ…いや、一任する。

 

『しょうがねぇなぁ…、

この天龍様が水雷戦ってのを

ヤツらに教えてやるよ!』

 

『ふぁ~あ、ねむねむ…。

まっ、朝イチから砲雷撃戦ってのも

ありっちゃありだけどね~』

 

『2人とも対照的だよね…。

まっ、アタシは多少自信があるから

それなりにやれるんだけどねっ!』

 

天龍は燃えている、

流石姉貴肌といったところか。

 

川内は眠そうに答えた。

あいつ寝てないんじゃないか…?

↑正解

 

阿武隈は率直な感想を述べた。

既に実戦を経験しているからか

元気に答える様子は可愛らしい、

既に実戦を経験して自信も

ついてきたのか声にも張りがある。

前に俺がしたキスのお陰か?

↑だいたいあってる。

 

「駆逐艦については軽巡に続航して

命令に従って行動してもらう。

臨時に3つのグループに分ける。

 

黒潮、親潮、高波!

これは阿武隈に続け。

 

照月、白雪、村雨!

これは川内に続け。

 

朝潮、満潮、島風!

これは天龍に続け。

 

んーで、鹿島は魚雷発射管を

持っていないんだよな?」

 

『そうなんです!

私としても雷撃に

参加したいとは思うのですが…』

 

彼女の装備は1945年当時のもの、

初期にあった魚雷発射管はなく

対空、対潜装備のみで雷撃は無理だ。

 

「主砲だけで突っ込ませても

あまり効果は期待できないしなぁ。

そうだな…鹿島は参加してもらうけど

敵を砲撃で注意を引いて水雷戦隊への

攻撃を減らしてもらおうか」

 

『はいっ!

鹿島にお任せくださいっ、

純戦闘艦でありませんが

そのサポートはバッチリ

私がこなしちゃいますっ!!』

 

鹿島が俺の指示に

元気良く返答する。

 

鹿島を突入部隊から外そうかとも

考えたのだが、それでは彼女自身の

プライドを傷付けてしまう。

 

事前の打ち合わせ通り対潜警戒を、

というのもぶっちゃけ効果は少ない。

ソーナーの精度なら外辺を

担う護衛艦のそれの方が高い、

ならもっと適した役割があるはず。

 

『遊兵』にしてしまうくらいなら、

何らかの役割を作り出して与えた方が

戦況に少なからず活きる。

 

「よしよし、偉いぞ。

適当に仕事を押し付けたとか

思われるかもしれないけど、

その役割は凄く大事だぞ!

 

水雷戦隊の被弾率を下げて

被害を軽減できるけど、自分にも

敵弾が飛んでくるからそれを

回避しなきゃいけないからな。

その辺をよく理解しておかないと

作戦がなりたたないからな」

 

鹿島をどこに配置するか悩みつつも、

攻撃前の打ち合わせは終了した。

 

……

 

 

「敵、我が艦隊の射程圏内!」

 

電測妖精が報告する。

射程圏内というのは、言うまでもなく

戦艦や重巡の主砲の射程である。

護衛艦の対艦ミサイルのそれはとっくだ。

 

「まだだ、まだ撃つなよ…」

 

大型艦による攻撃は消極的に行う。

あくまで敵の射程ギリギリあたりで

撃ち始めて、乱戦へと持ち込んでから

水雷戦隊による肉薄戦である。

 

『司令、本当に発射する砲弾は

【コレ】でよろしいのですか…?』

 

「バッチリだ、派手にやってくれ!」

 

「そうだヨ霧島ー!

テイトクは奇抜なアイディアを

いとも簡単に考えるヘンタイデース!」

 

「いや、それ俺をけなしてないか?」

 

「え〝っ、褒メテマス…ヨ~?」

 

『金剛お姉さま、

話し方が片言になっています。

それとヘンタイではなくて、

そこは天才の間違いです…』

 

 

トンチンカンなやり取りをしつつ、

戦艦や重巡の艦娘に【とある砲弾】を

発射してもらうことにする。

 

(深海棲艦どもにはキツめな

『朝の日出』を拝ませてやる。

戦死した隊員が見られなかった分も

たっぷりと目に焼き付けてやるっ!)

 

俺は、顔には出さなかったが

心の中では敵討ちができると喜んだ。

自分ではそんなのは無意味だと

言ったにもかかわらず、だ。

 

戦争というものは全てを壊す、

ヒトのココロもだ。

 

 

※※※※

深海棲艦サイド

 

深夜

西之島海底基地

 

 

「ホっしゃん、このままじゃ

全滅しちゃうかもしれないよ!!

マジハンパナイことになるって!!」

 

「あら~、それは大変ね~。

どうしましょうか~…」

 

深海軽巡の1人が、この海底基地に残る

深海棲艦のリーダーを務めている

ホ級フラグシップに向かって嘆く。

 

そのリーダーは、焦る彼女とは逆に

のんびりした様子で同意を示す。

 

駆C「ホっしゃん危機感ゼロ過ぎ…。

これじゃあ私が描いてる

『敵を知る~人間の文化~』

のイラスト集がおじゃんだよ、

まだ未完成が多いのにー…」

 

駆A「お前こそ危機感ゼロじゃないか!

私と同じ駆逐艦とは思えないな、

お前の様な奴がいるから駆逐艦が

侮られることをわかっているのか?」

 

近くでは駆逐艦たちが

これまた変な悩みを吐き出しながら

愚痴を言い合っていた。

 

駆B「あはっ!これはまずいねぇ…

実にまずいよ、僕たち深海棲艦も

捨て駒にされてしまったねぇ!」

 

駆A「お前もお前だ。

口では嘆いているが顔と態度は

まるで喜んでいるようじゃないか!」

 

駆B「おおっと、これは失敬。

強いお客さんと戦えると思ったら

つい顔が緩んでしまったよ、

ふふ…あはっ!」

 

真面目そうに話していた駆逐艦は

溜息を吐きながら頭を抱えた。

 

駆B「どうしたんだい、額に手をあてて…。

あまり触るとデコが広くなるぜ?」

 

駆A「お前らのせいだろうがっ!」

 

火に油を注ぐ僕っ娘の深海駆逐艦B。

 

「はいは~い、

みんなそこまでにしましょうね~」

 

 

 

リーダーの言葉に全員が静まり

その続きを聞く姿勢を取る。

 

「みんな知っての通り、

私たちに与えられた使命は

【敵の足止め】、可能なら

【この海底基地の防衛】だけれど…

後者は無理そうよね~」

 

リーダーは困った顔をしながら

他人事のように語る。

 

「残存兵力は30隻、被害の無い

フネの方が珍しいくらいの状態。

私としては撤退したいけど、

燃料も残り僅か…無理なのよね~」

 

彼女自身、昨日敵の砲撃を受け

中破を食らっており、まともな

航行さえできるか不安があった。

 

(まぁ…どうせ散るなら

敵も道連れにするのだけれど~)

 

 

……

 

深海棲艦は人間側の砲撃戦後、

翌日に予想される敵の

殲滅作戦に備えて海底の

基地へと一旦戻ることにした。

 

リーダーは海上に

各々が乗り操るフネを放置して

人型である本体(キャラ)のみ

基地に引き上げることを提案した。

 

当然ほとんどの者が反対した。

人間側の潜水艦の襲撃や

水上艦が反転してくるかもしれない、

皆がそう声を荒げたがリーダーには

ちゃんとした考えがあった。

 

「敵がどうして夜戦をしなかったか

わかる~?それは私たちの潜水艦が

怖かったからなの。

つまり敵は無理な戦闘は望んでいない、

ということは夜戦・夜襲を行う

可能性も極めて低いってこと~」

 

言われてみればその通りか、

他の者は納得した顔をする。

海上自衛隊の艦娘は攻撃してきたが

現代艦(護衛艦)はしてこなかった。

 

ここから導き出される

人間側の思惑は…

 

「現代兵器は射程もあるけど

数は多く無いから控えたい、

艦娘の攻撃もあまり激しく

行うと何かしら支障がある。

彼らはそう考えているようね~。

…というわけで基地に戻るわよ~」

 

 

……

 

 

駆A「敵は昨日と同じく

艦娘主体で攻めてくる。

これにどう対応するか、

そこがこの対策会議の目的だ」

 

真面目な深海駆逐艦Aが

重要テーマを切り出す。

 

駆A「敵には戦艦や重巡もいる。

これにどう対処するか、軽巡以下の

敵艦にも打撃を与えねば…」

 

駆D「うぅーん、無理ィ…

どうしようもないって。

昨日みたいに遠距離砲撃で

やられるのが関の山、

つーかマジ上層部適当っしょ?」

 

駆A「お前はどうして他の

駆逐艦と同じでやる気がないんだ?!

いつもダルそうにして、

それで駆逐艦としての役目が

務まるとでも思っているのか?」

 

 

わーわーと喚く駆逐艦Aであったが、

この『西之島海底基地』に配属された

深海棲艦は何かしら問題があった。

 

まずリーダーのホ級は

腕は確かだが常にふわふわしており

深海棲艦としての自覚が足りない。

他の軽巡・駆逐艦については

言動が不真面目、熱の入れどころが

おかしい等の理由である。

そして駆逐艦A自身、真面目ではあるが

それ故仲間と衝突を繰り返していた。

 

この左遷ともいえる配属には

深海上層部のある思惑もあった。

 

【彼女らはどうやら『以前』の、

つまり『人間側のフネ』だった頃の

記憶が少し戻っているようだ】

 

このままでは人間側に味方して

攻撃をしてくるかもしれぬと

危惧した上層部は、いっそ

この海底基地に押し込めて敵の

侵攻を足止めさせようと考えたのだ。

 

仮に記憶が戻ったとしても

人間が撃ってきたら応戦せざるを得ない。

口封じに沈んでも痛くないしが、

それならあわよくば損害を与えてもらう。

その程度の思惑であった。

 

 

駆D「Aはいっつも真面目でウザい。

もっと気楽になろうよ、

そんなんじゃ長生きできないってぇ…」

 

駆A「敵が攻めてきているんだぞ、

いま動かないとやられてしまう!」

 

…駆逐艦たちはエンドレスな

言い争いを続けている。

それを優しく見守る深海軽巡たち。

 

「人間たちと戦うのは避けられない

でしょう、せめてあの娘たちだけでも

どうにか救えたらよいのですが…」

 

その中の一人、

雷巡チ級エリートが呟く。

 

チ級は『前世の』記憶を思い出す。

おぼろげながらも、新人を教育して

それを送り出しそして自身は

敵の潜水艦によって沈められた。

何処の国に所属していたかはわからない。

 

そんな彼女だからこそ

思うところが有るのだろう。

 

軽ホ「あら~、チーちゃんにも

優しいところがあるのね、

私、見直しちゃった~!」

 

雷チ「茶化さないでください。

それよりもうすぐ時間です、

『上』に戻りましょう」

 

ホ「はいはい、貴女も上手ね。

…みんな~、そろそろ時間よ~!」

 

その言葉に騒いでいた深海一同は

気持ちを切り替え、雰囲気も変わる。

 

人間を倒してやる、とか

やられる前に暴れてやるみたいな

血気盛んな雰囲気ではなく、

今の自分たちがすべき事を把握し

諦観しきったという様子。

 

 

軽ホ(せめて『あの娘』に…。

名前は思い出せないけれど、

私のお姉ちゃんだったあの娘に。

沈む前に会いたかったなぁ〜…)

 

彼女の姉、やや男勝りで

自信満々にアピールする姿に

憧れていたのかもしれない。

天を昇る龍の様な勇ましさ。

 

それも、今となってはもう無理だ。

 

 

 

 

…………

 

 

軽ホ「もう敵の射程距離内よ〜」

 

雷チ「こちらの射程ギリギリまで

弾を温存しようってこと?

…チッ、舐めてるわ。

ってやだぁ!

私別に怒ってなんかないですよ、

あらやだー!」

 

チ級が舌打ちを誤魔化すが

他の者は無反応、単純にスルーした。

 

「チーちゃんが猫被りなのは

みんな知ってるからいいとして…」

 

そろそろ撃ってくるはずだ。

それからやや間があって、

敵艦隊方向で発光が視認できた。

 

駆A「敵が撃ってきたぞ!

こちらももうすぐ射程距離だ、

よく狙って撃つんだ!!」

 

そう駆逐艦Aが言わずとも

全員が凝視して敵を狙っている。

朝日が昇っていない以上、

東雲の明かりを頼りに照準を

定めて攻撃するしかない。

 

それと同時に飛来するであろう

砲弾にも気を付けねばならない。

 

 

……

 

 

軽ホ(あら〜?

砲弾が落ちてくるのが遅いわね〜…)

 

ふと不思議に思った深海棲艦たちが

空を見上げた時だった。

 

<<ピカッ!!>>

 

「「キャアアア!!」」

 

間も無く日出にもかかわらず

空中にいきなり【太陽】が現れた。

それは見た者の目を一時的に奪い、

それに伴って戦闘力も喪失する。

 

 

※※※※

 

『金剛』艦橋

 

 

「おっしゃ、敵の陣形が崩れた!

突撃だ!みんな、【照明弾】は

絶対に直視するなよ?!」

 

「暗視装置越しでも眩しそうデース!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

射撃前に金剛たちには

照明弾を装填させた。

深海棲艦に『めくらまし』が

効くかどうか不安だったが、

その心配はいらなかったようだ。

 

裸眼で見たら失明するぞアレ。

だが艦隊には見ないように示達済み、

興味本位で見るヤツはいない…

 

『ぬわぁ〜!!

効果があるか確かめようとしたら

吾輩の目が見えなくなって

しまったのじゃ〜!

筑摩ぁ、助けて欲しいのじゃ〜!』

 

いました…。

嫌な予感はしてたけど、

やらかすお馬鹿が約一名。

 

『姉さん…(諦め)』

 

流石の筑摩も匙を投げるか。

艦長たる利根が使い物に

ならなくなってしまったが、

妖精がサポート…というか代役で

どうにかやってくれるみたいだ。

 

基地に帰ったら利根の評価は

不良(デルタ)】にしておこう。

この調子だと万年不良(デルタ)になりそうだ。

海自部内のみで使われる

人事評価のランクのことだ。

 

「何やってんだ利根は…」

 

そんな利根に好きだと言ったのも

この西之島近海、あの時の

セリフを返して欲しいくらいだ。

 

『わ、吾輩なら大丈夫じゃ!

しばらく経てば目も治る!』

 

いや、初っ端が肝心なんだけど…?

 

「金剛と霧島は通常弾に切り替え!

利根と筑摩は交代で照明弾を撃ち

敵が照準を付けるのを妨害しろッ!」

 

 

※※※※

深海棲艦サイド

 

「クッ…、やってくれるじゃない〜!」

 

ホ級は未だ見えぬ目を、

敵艦隊がいるだろう正面へと向けた。

 

敵は絶え間無く照明弾を

深海艦隊の前方上空へと放つ。

狙いを定めようにも

人工太陽がある為不可能だ。

 

もっとも、視界が回復しても

それは変わらないだろう。

 

じわりじわりと敵は迫ってくる。

深海艦隊は燃料も少なく、

積極的な艦隊運動も取れず

歯痒い思いを強いられる。

 

眩しさを我慢して遠くを見れば

ぼんやりと敵影が確認できる。

 

敵は戦艦を先頭に単縦陣。

その後方からは重巡2隻、

そして更に後方から水雷戦隊。

こちらの反撃が弱いから

本腰を入れ、魚雷で仕留める魂胆か。

 

(戦艦や重巡による砲撃は

激しくしてこないみたいね〜…。

最初を耐え抜けば『勝機』が

あるかもしれないわ…)

 

ホ級の考える『勝機』とは

敵を壊滅させることではない。

敵の痛い所を突き、

今後の作戦遂行をさせなくすること。

 

こちらの戦力は軽巡と駆逐艦。

陣形こそバラバラではあるが、

立派な水雷戦隊である。

 

目には目を、雷撃には雷撃を。

 

つまり…

 

「今はとにかく凌ぐのよ〜。

そうしたら敵の水雷戦隊が

こちらに雷撃しようとするはず、

つまり敵はありがたいことに

柔らかい下腹部をさらけ出すわけ〜。

 

私たちが狙うは『水雷戦隊』。

主力艦を沈めたいところだけど

質より量、特に軽巡と駆逐艦を

減らすことができたら残りは

本隊が撃滅してくれるわ〜」

 

深海棲艦たちは覚悟を決める。

 

 




1ヶ月掛けてネタトークしか
浮かばず情けない限り…。

この小笠原戦役後の日常話は
ホイホイと執筆できるのですがねぇ。

間違いの指摘を頂きました。
もっと精進していきます!

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