桜と海と、艦娘と   作:万年デルタ

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かつてエリート軽巡へ級。
今では艦娘の『那珂』としてドロップし、時に歌い
時に艦隊運用の為に電卓を叩き事務仕事をこなす(させられている)日々。

そんな彼女は出撃前夜に深海棲艦だった時の記憶らしい夢を見るが…?


1-12 深海棲艦の狙い 【敵海底基地】

太平洋 某地域

深海棲艦海底基地

 

 

「…作戦の主目的は海底資源の回収になっただと?」

 

「その通りだ」

 

南鳥島攻略を前に深海棲艦は作戦会議を行っていた。フレッチャーは司会の戦艦ル級の説明に食いついた。

 

「日本の南鳥島沖には『レアアース』と呼ばれる希土類が多く発見されている。これを回収し我ら深海棲艦の戦力増強を図る」

 

フレッチャーが不満そうな顔をするがル級は気にせずに続ける。

 

「我らが西之島近海に設営した『西之島基地』は日本海軍による継続的な監視下にあり増強を送るのは不可能という結論に達した。

そこで彼らには作戦発動と同時に出撃して敵を陽動あわよくば監視を突破させる」

 

(そんな皮算用で上手くいくはずがないだろう。人間どもとて半端な部隊な訳がない)

 

「戦力の準備がやや遅れたが『戦艦』クラスも変換可能となり戦闘の憂いもなくなった。この作戦には1隻のみだが融通してもらった!」

 

「「おおーっ!!」」

 

これにはフレッチャーも驚いた。

この作戦までには困難と思われていた戦艦の実艦化実験が成功するとは思っていなかったからだ。

 

「続けて参加戦力と役割についてだが…」

 

 

……

 

 

…………

 

 

「フラヘに対する贖罪にもなるだろうか?」

 

会議の後自室でフレッチャーは思いに更けていた。

 

「あいつは敵に壊滅的打撃を与えた後沈んだと聞いた。その奮闘に肖り私も多くの敵を道連れにそっちに行く、待っていろよ…」

 

父島砲撃を行う前憎き人間の海軍部隊に遭遇したフラヘ以下6隻の水雷戦隊は劣勢なるもこれを刺し違え見事壊滅的打撃を与え沈められた、深海棲艦上層部からはこう発表された。

 

無論民間人を攻撃するのを嫌ったとか不都合な事実は上層部によって揉み消された。

かなりの地位にいるフレッチャーでさえその情報は伝えられなかった。

 

「それにしても戦艦をこの攻略作戦に引っ張るというのはいささか大袈裟ではないのか?」

 

南鳥島は飛行場があるだけの小さな島だ。守備隊も潜水カ級やヨ級の偵察によると御粗末の一言、要塞やトーチカも無く庁舎がいくつか建つのみらしい。

だからこそ艦砲射撃は小型艦のみで十分という判断を下したのに上層部は一体何を企んでいるのだ?

 

我ら深海棲艦は確かに資源不足に陥っている。日常生活にも必要だし『変換』して100mクラスの駆逐艦や200mを超える戦艦の実艦へと姿を替えるのにも莫大な資源を消費する。

 

人間と戦いを繰り広げつつ各地の資源を回収してはいるものの慢性的な資源不足を改善するには至っていない。

たまたま目標としていた南鳥島周辺にレアアースがあっただけで、今回は単純に人類殲滅の第一歩として占領しようとしたのだ。

 

開始直前になって『資源も回収出来る、増援も出す』という上層部は何か企んでいるに違いない。

 

「この私を利用しようとする浅はかさ、だが今は私が出来得る贖罪は南鳥島占領。フラヘよ、私はどうしたら良いのだろうな…」

 

 

※※※※

 

 

同時刻

横須賀基地某所 川内姉妹の部屋

 

 

 

「…へくちっ!!」

 

「…んんっ、あら那珂ちゃん風邪?」

 

「ゴメン神通ちゃん起こしちゃった?」

 

「…ちなみに私は起きてたよ!」

 

「姉さん(川内ちゃん)は早く寝て?!」

 

 

艦娘たちは横須賀基地に設けられた艦娘用の生活スペースで出撃前の睡眠を取っていた。

 

 

「川内ちゃん朝早いんでしょ、寝なくていいの?お肌にも悪いよ?」

 

「そうですよ姉さん、特に姉さんは出撃するんですから早く寝ないと!」

 

「そう言われてもねぇ…なんだか興奮して寝付けなくって」

 

「川内ちゃんはいつもの事だけどね」

 

「私と那珂ちゃんは修理と現代化改装で一緒に行けませんが無理をしないでくださいね」

 

「当然ッ!ま、二人の分も夜戦してくるから私の武勇伝を楽しみにしててね!」

 

「夜戦の機会が有ればの話ですけどね」

 

「川内ちゃん、寝ると夜戦が出来るって提督がさっき言ってたよ!!」

 

「こら那珂ちゃん、そんな嘘を姉さんが本気にするはずが…」

 

「zzzz…」

 

((思いの外純粋だったー?!))

 

「「お、おやすみ(なさい)…」」

 

 

騒がしい川内が寝たところで神通と那珂も再び寝ることにした。

 

 

……

 

 

その後那珂は不思議な夢を見た。

深海棲艦として生活し他の深海棲艦と仲良く会話する夢だ。

 

名前は分からないが『駆逐棲姫』というカテゴリーの深海棲艦と話したりしていた。

 

那珂はそんな深海棲艦に何故か見覚えがあった。

 

(たしか『F』から始まる名前だったかなぁ?)

 

(ファ…フィ…フ、フ…ふ…)

 

駆逐棲姫の名は『フ』から始まるようだ。

 

(『春雨ちゃん』みたいな姿してるけど春雨ちゃんは『は』だから違うしぃ…)

 

もう少しで出そうなのだがどうもあと一歩閃きが足りないようだ。

 

(フラ…フランス、フリ…フリー、フル…フルハウス、フレ…ふれ…ふれ…フレグランス、なんか違うなぁ…)

 

色々と惜しいところを間違える那珂。

 

(ふは…不発?、ふひ…不評?ふふ…フフ怖?いやそれ天龍ちゃんだしぃ~。ふぶ…なんかこれ近いなぁ。ふぶ…ふぶ…ふぶ?ふぶ…ふぶ…天下布武?ふぶお…フブオって誰?ふぶか…不部化もおかしいしもう誰なのぉ?!)

 

結構答えの出なかった那珂は駆逐棲姫の名前を考えるのをやめ、素直に眠ることにした。

 

(そういえば…妹がたくさんいそうな…感じ、だっかな?)

 

(例えば『睦月ちゃん』や『陽炎ちゃん』…みたいなネームシップの深海棲艦…かもしれ…な…い)

 

そこまで考えて那珂は眠りに落ちた。

 

 

翌朝出撃前に次女に叩き起こされる長女と三女の騒がしい声が基地に響いた。

 

「姉さん、那珂ちゃん早く起きて!!」

 

「あと五分だけ寝かせて…zzz」

 

「あの後寝付けなかったのぉ…zzz」

 

「…いい加減に、起きてださーい!!」

 

その後某軽巡二名は頭にたんこぶができたそうな。

 

 

 




今回は別に物語において重要な話ではないです。
『フレッチャー』とは何者なのか…それだけです。

駆逐棲姫フレッチャー
かつての米駆逐艦『フレッチャー』を船体とする
敵の駆逐艦のボス的存在?
調べていただくとびっくりの大姉妹の長女。
でも元は米軍では無いらしい?

日本でいうとどんなタイプの艦種(艦娘)なのか。
日本側が大量建造したクラスの艦艇といえば、そうあの娘!(誰?)

那珂ちゃんが名前を思い浮かべるも失敗。
ふぶお、ふぶか…誰?
そこまで考えたらわかると思うんですがねぇ…。

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