桜と海と、艦娘と   作:万年デルタ

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一ヶ月以上空けてしまいました…。
許してくださいませ。


さて絶体絶命に追い込まれた主人公たち。

そこに現れた謎の女性?
このパターンばかりな気もしますが、
そこは王道なのですよ…。



とある魔法少女風になった気がします。







0-11 集合、横須賀組! 【海幕】

 

 

 

 

バタン!

 

 

 

 

 

 

会議室の扉が唐突に開く。

 

 

 

 

 

 

「その必要は有りません。」

 

 

 

 

 

 

物静かなトーンの女性の声が

会議室に響き渡った。

 

 

 

 

 

「なっ、なんだ一体ッ?!

お前は誰だっ、

どうやってここに入った?!」

 

 

 

 

 

「人に名前を聞くときはまず自分から

名乗るのが筋では無いでしょうか?

 

 

…まあいいです。

私は艤装中の護衛艦『かが』の艦娘、

正規空母『加賀』です。

 

 

 

 

洋上試験途中ですが、後ろの黒木2佐

に緊急に来て欲しいと連絡を受け、

『かが』に運用試験で艦載中だったHS(SH60のこと)で市ヶ谷まで

直接飛んで来ました。」

 

 

 

 

ドアの向こうを見れば、さっき別れた

はずの警務隊長がニヤリと笑っていた。

 

 

 

…その後ろに誰かいる様だが、

俺はすぐに加賀に視線を戻す。

 

 

 

 

「許可は取ってありますし、

いずれ来る予定が早まっただけ。

 

 

それで、この騒ぎは何なのかしら。

どなたか説明して欲しいのだけれど?」

 

 

 

 

事態を悪化させた張本人である糞幕僚が

悪びれた様子もなく話し始める。

 

 

 

 

「そこの菊池とかいう海士長の言葉遣いがなっとらんと指摘したら逆上したのだ。

 

 

 

この私を糞幕僚と罵倒し、挙句には

殴りかかってきたのだ!

 

 

だから警務隊に

拘束させようとしていたのだ!

 

 

それに私は幕僚などではない、

装備計画部長という立派な

職名があってだな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

(((よくそんなことが

言えるよなぁ…)))

 

 

 

 

 

 

 

 

自分に都合のいいことだけを並べて、

原因を俺に押し付けようとする

装備計画部長こと、糞幕僚。

 

 

 

 

 

なんとか部長だか何だか知らないが、

お前は糞幕僚で決定だ。

 

 

 

 

 

 

その白々しさに呆れそうになるが、

俺たちが危ない場面なのは変わらない。

 

 

 

 

「アンタの肩書はどうでもいいんだよ。

 

 

とにかく俺たちを自由にさせろ。

艦娘を〝連行〝するな、

でないと彼女たちも協力しないぞ?」

 

 

 

 

後ろの村雨たちも力強く頷く。

 

 

 

 

「…今聞き捨てならない単語が

聞こえたのだけれど、

どういうことかしら?」

 

 

 

 

「そっ、それはっ!

そいつの勝手な、戯言…!」

 

 

 

 

「…待ちたまえ装備計画部長。

先程からの君の言動を黙って見ていたが、もう我慢ならん」

 

 

 

 

 

先程から事態を黙って見ていた海幕長が

ドスの効いた低い声を発する。

 

 

 

 

 

 

「彼らがどう反応するかワザと君を

遊ばせておいたが度が過ぎるぞ!

 

 

 

仮にも人間の彼女らに『バケモノ』など

言語道断だ!

 

 

 

 

 

…ああ、警務隊の諸君、

彼らを放してあげなさい。

 

 

それと銃をしまって席を

外してもらっていいぞ」

 

 

 

 

バツが悪そうに部屋から退散する

警務隊員たち。

 

 

 

 

 

あれだ、水○黄門に出てくる

悪代官の手下って感じで。

 

 

 

 

 

村雨たちに銃を向けた時は

殺意しかわかなかったけど。

 

 

 

ま、糞幕僚のせいだから恨みはしないさ。

 

 

 

 

 

警務隊員が退出したところで

海幕長が話を続ける。

 

 

 

「あえて止めなかったが、

君には警務隊に命令する権限は

無いんだぞ?

 

 

警務隊は防衛大臣直轄であると、

候校(幹部候補生学校)で

習わなかったのかね?」

 

 

 

嘲笑しながら糞幕僚に問い掛ける海幕長、いいぞもっとやれ。

 

 

 

 

「あのっ!それはっ、ええと…」

 

 

 

 

しどろもどろになる糞幕僚。

 

 

 

 

「…まだ私の質問に答えてもらって

無いのだけれど?」

 

 

 

そこに加賀さんの一声が

カミナリの如く投げかけられる。

 

 

 

「ええっと、それはですね、

少し失言してしまいまして…」

 

 

 

 

加賀の凜とした口調と態度に

怖気付いたのか、糞幕僚の口調が

丁寧になり見ていてさっきの怒りも

萎えてしまった。

 

 

 

 

 

「失言…?しかも少し…?

 

 

言っている意味がわかりかねます。

 

 

はっきり言いなさい、私たち艦娘は

兵器でありバケモノとしか見ていない、

そう言いたいのね?」

 

 

 

 

「そそそんな、バケモノなんて…!」

 

 

 

 

「はっきり言ったではないか?

嘘はいかんなぁ装備計画部長、

男なら自分の発言に責任を

持ちたまえ?」

 

 

 

海幕長の皮肉発言で糞幕僚の顔から

血の気が引き、真っ白になる。

 

 

 

 

そんな糞幕僚にゆっくりと歩み寄る加賀。

 

 

 

 

 

 

「ひぃっ…!」

 

 

 

 

コツン、コツン

 

 

 

 

 

静かに、だが加賀の周りのオーラが

見えるぐらいに黒くなっている。

 

 

 

 

 

そのまま糞幕僚に近づく。

 

 

 

 

「あわわわわわ…わわわ」

 

 

 

席から立とうとしてその場に

子鹿のようにへたり込む糞幕僚。

 

 

 

 

「…頭にきました。」

 

 

 

糞幕僚を見下ろす形で喋る加賀。

 

 

 

 

 

 

 

バタン!

 

 

 

 

 

 

 

糞幕僚が白目を剥いて倒れ込む。

 

 

 

 

(…やりました。)←心でガッツポーズ

 

 

 

 

加賀のあまりの覇気に失神したようだ。

 

 

 

「…君たちすまなかった。

日頃から目に余る装備(計画)部長を

ここらで更迭しようと策略を

立てたのだがまさかここまでとは

私も正直思わなかったんだ。

 

 

 

さっき彼が言っていた研究や連行云々は前もって中止命令を出してあるから

心配しないでほしい。

 

 

艦娘の加賀だったね、私の芝居に

付き合ってもらってすまなかった」

 

 

 

「…別に構いません、ただこの人が

もっと言うようであれば流石に

理性が保てませんでした。」

 

 

 

怒り顔でニヤリと笑う加賀に

鳥肌が立つ室内の全員。

 

 

 

 

(((加賀さんを

怒らせてはいけない…)))

 

 

 

 

 

 

不意に加賀が俺に視線を向け、

思わずビクリとしてしまう。

 

 

 

(おおお落ち着けっ!

俺は悪いことはしてないんだぞっ?!)

 

 

 

明らかにビビりながら

加賀の視線に耐える俺。

 

 

 

(表情が読めないから、怖過ぎる!)

 

 

 

 

そんな俺に歩み寄る加賀。

 

 

 

(殺されないよね?!

俺死なないよねぇ〜?!?!)

 

 

 

目の前に来てじっと俺を見る加賀に、

ささやかに対抗しようとする。

 

 

 

 

「な、何か用かなっ?!」

 

 

 

思い切り声が裏返っているのは

聞き逃してほしい。

 

 

 

 

「はじめまして、航空母艦『加賀』です。

…貴方が菊池士長?」

 

 

 

「ああ、『むらさめ』通信の菊池だ。

よろしく頼むよ」

 

 

 

「…相手が上官であっても間違った事に

対してはっきり否と言える貴方の態度、

正直感心しました。

 

 

貴方のような人が上層部に多くいたら

これからの戦いに憂いは無いわ。」

 

 

 

 

「あ、ありがとう。俺も加賀さんの様な

強力な艦娘がいれば、この戦いに

勝てる気がするよ」

 

 

 

「心配いらないわ、

みんな優秀な子たちですから。」

 

 

 

 

少し加賀の表情が緩み、

俺も肩の力を抜く。

 

 

 

 

 

「…海幕長、本日はこの辺で

よろしいでしょうか?」

 

 

 

 

加賀がくるりと海幕長に振り返り尋ねる。

 

 

 

 

 

「ああ、今日は本当に申し訳ない。

この後と明日は休養日にしよう。

 

 

 

 

菊池士長も艦娘の娘(こ)たちと

ゆっくり話でもするといい。

 

 

まだ各所と調整中だが、君たちには

近日海上公試をしてもらうつもりだ。

 

 

 

 

 

まだ出会って日も浅いだろう、

君には日本を守る使命があるから

彼女らと信頼関係を築きたまえ。」

 

 

 

 

「はっ、ありがとうございます!」

 

 

 

「さて、今日の査問はこれにて終了する、なにか他にある者はいるか?」

 

 

 

 

出席者からは手は上がらず、

査問は解散になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…ああ〜、終わるかと思ったぁ〜…」

 

 

 

 

俺と村上が床にへたり込む。

 

 

 

「提督大丈夫?!」

 

 

 

 

村雨たちが駆け寄り、

俺たちの心配をしてくれる。

 

 

 

 

「いやこっちが心配したぞ、

みんなに銃を向けられた時なんて

心配で堪らなかったぞ!」

 

 

 

 

半分涙目になりながら答える。

 

 

 

 

「えへへ、とにかく無事で

良かったよ、うん!」

 

 

 

 

安堵からか、みんなで笑いあう。

 

 

 

 

 

そこに警務隊長と加賀、

そしてある少女が近づいてくる。

 

 

 

「…警務隊長ワープでもしたんですか?」

 

 

 

「私をなんだと思っているんだ?

そんな芸当できるはず無いだろう」

 

 

 

「いや、フツーに答えられても…」

 

 

 

実はワープしてても驚かないぐらい

ぶっ飛んでるヒトだしな。

 

 

 

「君たちを送り届けた後に

緊急連絡が入ってな、どうやら海幕長が

この展開を読んで手を回していたようだ」

 

 

 

 

警務隊長は続ける。

 

 

 

 

「洋上試験中だった『加賀』、

そして横須賀に帰投中だった『親潮』を

ヘリで拾い、私も途中の空き地で

乗せてもらい市ヶ谷まで

来たというわけだ」

 

 

 

 

あー、どっかで見た女の子だと

思ったら『親潮』か!

 

 

 

俺は16年春イベントでは収穫無し

だったから親潮は詳しく見たことは

無かったな。

 

 

 

 

無理もないか。

 

 

 

 

「陽炎型駆逐艦四番艦、親潮です。

司令、お願いいたします!」

 

 

 

 

ビシッと見事な敬礼をする親潮。

 

 

 

「まだ司令になったわけじゃ無いけど、

菊池士長だよ。

親潮、よろしく頼むよ!」

 

 

 

敬礼には敬礼で返す。

 

 

 

親潮に答礼し、挨拶をする。

 

 

 

「そして君が加賀だね」

 

 

 

横に並ぶ加賀に改めて声をかける。

 

 

 

「ええそうよ。

航空母艦、加賀です。

 

 

先程も言ったけれど、

上官を相手に立派な態度でした。

 

 

貴方が私たちの提督になるのであれば、

それなりに期待できそうです。」

 

 

 

「海士長、菊池圭人。

期待に応えられるかは別として、

最大限の努力は欠かさないつもりだ。

よろしく頼む」

 

 

 

加賀とも挨拶を交わし、これで

『横須賀組』全員揃ったわけだ。

 

 

 

「で、警務隊長。

この後の予定を示達してくださいな?」

 

 

 

このところ俺たちの引率?となっている

警務隊長に指示を仰ぐ。

 

 

 

 

 

「おいおい、私は君たちの

世話係では無いのだが…。

 

 

まあ言われずとも示達するがね。

 

 

この後は海幕長が仰っていたように、

明日までフリーだ。

 

 

今からバスで『グランドヒル市ヶ谷』に

移動し、ゆっくりしてもらう」

 

 

 

 

グランドヒル市ヶ谷って言ったら

防衛省御用達のホテルじゃん?!

 

 

 

防衛省様々だなおい!

 

 

 

「おぉ〜、グッド〜!」

 

 

 

「グランドヒル市ヶ谷っていったら、

そこそこな高級ホテルじゃない!

警務隊長もやっるぅ♪」

 

 

 

 

艦娘たちの受けも上々なようだ。

 

 

 

 

 

 

 

一時はどうなるかと思ったが、

終わりよければ何とやらだ。

 

 

 

 

あの糞幕僚に逮捕されかけたり、

艦娘に銃を向けられた時はやばいと

思ったが、まさか海幕長が

芝居をしていたとはなぁ…。

 

 

 

 

 

補給や兵站を担う装備計画部長を更迭し、

後釜にまともな人材が来てくれるなら

ほっとできるな。

 

 

 

 

…海幕長結構やるじゃん!!←失礼

 

 

 

 

 

 

ワイワイはしゃぎながら

正面玄関まで降りる俺たち一行。

 

 

 

 

とりあえずはリフレッシュと行きますか!

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

グランドヒル市ヶ谷 1500i

 

 

 

 

 

 

「うおおおぉーー!ベッドが

めっちゃ柔らけぇー!」

 

 

 

 

すごいよこのベッド!

めっちゃ柔らかい。

 

 

 

 

自衛隊に入ってから固いベッド

以外使ってないから、

ホテルのふかふかベッドなんて新鮮だぜ!

 

 

 

 

教育隊で使ってたフ◯ンスベッドとは大違いだな!

 

 

 

 

ちなみにフラ◯スベッドってのは

教育隊で使っていたベッドメーカーで

白い格子に固いマットという

『機能的』なベッドだ。

 

 

 

 

3自衛隊に納品しているメーカーなんだが、部内用のモノは何故か固すぎる。

 

 

普通の製品を採用すればいいのに、

わざわざ固くする意味がわからん。

 

 

自衛隊の仕様書を書いてるヤツは

どんな神経してるんだか。

 

 

 

「んー。このままゴロゴロしてるのも、

なんだかもったい無いな」

 

 

 

 

午後はフリーとはいえ、艦娘と

イチャイチャ…じゃなかった親交を

深めたいしな。

 

 

 

 

「そうだ、ラインで連絡しよっと…」

 

 

 

思い立ったらすぐ実行、

これぞ自衛官の鑑。

 

 

 

 

ちなみに海幕を出る前に、担当者から

艦娘全員にスマホが支給され、

連絡手段を作ってもらった。

 

 

 

 

こうやって利用しているラインも

自衛隊内の部隊や学校でもうまく活用されていて、部外にも開示可能程度な内容の

業務連絡や教務の情報を回すのに

よく使われている。

 

 

 

 

流石に部隊行動とかは書けないけど、

使い勝手がいいからな。

 

 

 

 

「面談やります、順番は立候補で

よろしく…っと」

 

 

 

 

 

先ほど作ったグループ

『横須賀組(仮)』に送信すると、

早くも全員が既読になり

数人からは返事が返ってくる。

 

 

 

 

 

はいは〜い♪村雨最初ね。

 

 

照月は2番目で!

 

 

高波は3番がいいかも、です。

 

 

 

俺はその後だ。←(村上)

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

返信もそこそこ。

 

 

 

 

さて、のんびりとお話しましょうかねぇ。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

菊池の部屋 1930i

 

 

 

 

「ふぁーあ…、あとは加賀さんかぁ」

 

 

 

 

途中に夕食と入浴を挟みつつ

艦娘たちや村上と面談し、

あとは加賀一人のみとなった。

 

 

 

 

「面談っていっても、ただの

おしゃべり会になっている気が

するけどな」

 

 

 

 

 

コンコンコン!

 

 

 

「菊池士長、加賀です。

入ってもよろしいですか?」

 

 

 

 

 

「はーい!どうぞ〜!」

 

 

 

 

加賀が入ってきて、のんびりした空気が

少し張り詰める。

 

 

 

 

(うーん、なんだか緊張してきた…)

 

 

 

 

加賀本人は意識してないだろうが、

威圧感とまではいかないものの

それに近いものを感じるし、

どうも加賀とは腹を割って

話がし難い気がする。

 

 

 

 

 

 

…だが、それに負けずにお話するぜ!

加賀さんとトークしたいし、

鉄壁のガードを崩してデレた

加賀さんを見てみたいッ!!

 

 

 

 

 

俺は静かに興奮していた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

〜Side of 加賀〜

 

 

 

 

着きました。

 

 

 

 

ここが菊池士長の部屋ですか。

 

 

 

 

コンコンコン!

 

 

 

私は少し強めにノックする。

 

 

これは自分を奮い立たせるためだ。

 

 

 

 

意外かもしれないが、実は私は

臆病な性格をしている。

 

 

それを知られまいと振る舞い、

こうして日々自分を奮い立たせている。

 

 

 

 

 

 

 

「菊池士長、加賀です。

入ってもよろしいですか?」

 

 

 

 

 

「はーい!どうぞ〜!」

 

 

 

 

 

 

…もう後戻りはできない。

 

 

 

たかが部屋に入り面談するだけ、

そう思うかもしれないが、私に

とっては結構辛いのだ。

 

 

 

 

(な、何を聞かれるのかしら…?

まさか変な事を命令されたり

しないわよね?!)

 

 

 

 

 

想像と妄想の境を越え、

頭の中が大変な事になる。

 

 

 

無論それを表情に一切出さず、

すぐに頭を切り替える。

 

 

 

 

(男性とどう話したらいいのかしら?

ずっと艦娘としか話していなかったし、

困ったものだわ…)

 

 

 

 

『かが』として命名されるまで、

私はミッドウェーの海底に一人居た。

 

 

 

他の艦娘は沈んだ後、気が付いたらまた

フネ(自衛艦)になっているようだが、

私のみ70数年間魂のみ生き続けた。

 

 

 

 

久々に横須賀の海をめぐると、

かつての戦友は少ない。

 

 

 

呉の蒼龍は元気そうだった。

 

 

 

 

だが同じ一航戦の赤城さん、

それにニ航戦の飛龍とは

あの海戦以来会っていない。

 

 

 

 

フネから離れられず、ずっと一人。

 

 

 

 

他の艦娘は沈んだ後存在は

消えるらしいが、私だけは何故か

存在が消えることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

こうしてまた艦娘として復活してみると、日本は大きな変化を遂げていた。

 

 

 

 

(環境や状況が変化しても、

ここは私たちが守るべき日本。

それは変わりません…。)

 

 

 

 

 

菊池士長に促され、椅子に腰掛ける。

 

 

 

 

 

それからは予想通り、私の経歴や戦歴、『かが』になってからの出来事を

聞かれました。

 

 

 

 

意外と真面目そうな方のよう。

 

 

 

 

話し方は少し軽い感じがしますが、

場面をわきまえているし使い分けも

できているようね。

 

 

 

 

「ところでだけどさ、

俺の呼び方なんだけど…」

 

 

 

「なにかしら、菊池士長?」

 

 

 

「それ、菊池士長って名前で呼ぶやつ。

 

 

他の娘は『提督』とか『司令官』とか

呼んでくれているんだけど、

加賀はどうして名前なのかなーって

ふと思って」

 

 

 

 

ああ、そういうことでしたか…。

 

 

 

 

「それは深い意味はありません。

ただ単にあなたはまだ提督に

なられたわけではないので、

呼ばないだけです。」

 

 

 

「あっ、そうなの…」

 

 

 

 

「はい。」

 

 

 

 

そう、彼を提督と呼ばないのは単純に

まだ指揮官と決まったわけではないから。

 

 

 

別に彼が気に入らないとか

そういった訳では無い。

 

 

 

 

(そういえば、彼はどれぐらいの技量を

持っているのかしら?)

 

 

 

 

 

楽しそうに話す彼の顔を見ながら考える。

 

 

 

 

(そういえば、この前の東京湾防衛戦

の際に1護隊司令に作戦立案を

任されたと聞きます。

 

 

 

案外戦術・戦略家の素質が

あるのでしょうか…?)

 

 

 

 

人は見かけによらないと言うし、

よく見極めてからでないと彼に失礼ね。

 

 

 

 

「ところで加賀…おーい加賀さん?」

 

 

 

 

「は、はいっ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

(やってしまいました……ors。)

 

 

 

私としたことが考えに没頭するあまり、

菊池士長の話を全く聞いて

いませんでした…。

 

 

 

 

「どうしたの?

俺の話ってやっぱつまらないかな…?」

 

 

 

 

「そ、そんなことはありませんっ!

ただ私の集中力が足りなかった

だけであって、菊池士長は悪くなど…」

 

 

 

 

自分でも何を言っているのかわからない。

 

 

 

集中力が足りないって

どんな言い訳なのかしら。

 

 

つまらないという言葉を

オブラートに包んだだけじゃない。

 

 

 

 

「お疲れのところ悪かったね。

 

 

ヘリで駆けつけてもらったのに、

その程度の気遣いも出来ないなんて、

提督になる前から失格だね…」

 

 

 

 

 

(私こそ、部下、いえ艦娘失格かも

しれないわ…。)

 

 

 

菊池士長が寂しそうな笑みを浮かべる。

 

 

 

 

「じゃあ最後に一つ聞きたいんだけど…」

 

 

 

 

無言の私に菊池士長が問いかける。

 

 

 

 

「リクエストというか、

何か『お願い』はあるかな?」

 

 

 

 

「…『お願い』、ですか?」

 

 

 

 

「そそ、お願い。

別に堅いことじゃなくていいし、

一つと言わず何個でもいいんだけど…」

 

 

 

 

「ええと、そうですね…。」

 

 

 

 

 

そういったことを聞くとは思わなかった

ものだから、すぐに返答できない。

 

 

 

 

(私の…願い…?)

 

 

 

 

 

私の目を優しくじっと見つめる菊池士長。

 

 

 

 

そんなに見つめられると、

困るのだけれど…。

 

 

 

 

 

…そうね、私の願いは…一つ。

 

 

 

 

 

 

あの人とまた逢いたい…。

 

 

 

 

 

「願いは…。」

 

 

 

 

 

「うん?」

 

 

 

 

 

「私の願いは『赤城さん』に逢いたい、

ただそれだけです。」

 

 

 

 

「やっぱりね…、言うと思ってたよ」

 

 

 

 

…予想されていたということかしら?

 

 

「私の考えは単純ということかしら?」

 

 

 

少しムスッとします…。

 

 

 

 

「いんや、そんなつもりは無かったんだ。

気を悪くしないでくれよ」

 

 

 

悪びれた素振りもなく、

答えてくれました。

 

 

 

「加賀さんは『優し過ぎる』から、

きっと思い詰めているんじゃないかと

思ってね!」

 

 

 

 

 

(私が……『優し過ぎる』?

この私が、ですか…?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分が優しいなんて

思ったこともなかった。

 

 

 

 

 

私は自分に厳しく、

人にも厳しく生きてきた。

 

 

 

 

確かにそれは相手の成長を

望んでいたからであるが、

それを優し過ぎると指摘されるとは

思ってもみなかった。

 

 

 

 

「…それは何か意味があって?」

 

 

 

 

普段通りの口調で喋っているが、

顔には困惑と僅かな驚きが

現れていると思う。

 

 

 

 

 

 

「意味も何もそのまんまだよ。

厳しい指導を好まない娘も

いるだろうけど、結果で言えばそれは

その娘を思ってのことでしょ?

 

 

 

 

それにただ押し付けるだけじゃなくて、

それを自らも実践している。

 

 

口だけじゃない。

 

 

 

 

 

一言で表すと

『仏の心で鬼の指導』

ってところだね」

 

 

 

 

未だ困惑する私に諭すかのように

語る菊池士長。

 

 

 

 

「…俺の考え過ぎかもしれないけど、

加賀は自分を責めてないか?」

 

 

 

 

(…図星、かしらね…。)

 

 

 

 

 

そう、私はあの戦い、

『ミッドウェー海戦』を

ずっと悔やみ、赤城さんを失ったのは

自分のせいだと思い続けていたのだ。

 

 

 

 

 

 

(私がもっとうまく

やれていれば、赤城さんは…。)

 

 

 

 

 

 

敵の急降下爆撃機の奇襲により、

空母四隻中三隻が被弾したあの時。

 

 

 

 

 

 

赤城さんが沈められたのだって、

私だけのせいじゃないのはわかっている。

 

 

 

 

 

 

 

わかっているはずなのに……。

 

 

 

 

 

「でも、私がもっと、

もっとしっかりしていれば…。」

 

 

 

 

「奇襲で致し方なかったとはいえ、

もっとやり様があったはず、

そう言いたいんだね」

 

 

 

 

「…そうです。」

 

 

 

 

そう、本来なら負けるはずが

ない海戦だった。

 

 

 

 

 

緒戦の勝利に浮かれていて、

緩みもあったとは思う。

 

 

 

 

だが数ではこちらが有利、

兵力はもとより技量も卓越していた。

 

 

 

 

なのに…何故っ?!

やはり私がっ…!!

 

 

 

 

 

 

「…なあ加賀、君が泣いても

赤城は戻ってこないよ?」

 

 

 

 

 

 

 

「えっ…?」

 

 

 

 

 

 

 

気が付けば涙が頬を滴っていた。

 

 

 

 

菊池士長が指で涙を受け止める。

 

 

 

 

「自分を責めるな、なんて俺には

言えないし言うつもりもないよ。

 

 

ただ、それを見た赤城はどう思うか、

それだけを考えてごらん?」

 

 

 

 

 

赤城さんならきっと…

 

 

 

 

 

「赤城さんなら…。」

 

 

 

 

「うん」

 

 

 

 

「赤城さんなら、きっと…。」

 

 

 

 

私が詰まる言葉で話すのをゆっくり

待っていてくれる菊池士長。

 

 

 

 

 

「赤城さんならきっと…、

泣くなって言ってくれると、

思います…。」

 

 

 

 

「うんうん」

 

 

 

 

「それで…、

『加賀さん、自分を責めないで』

って言って、微笑んでくれると思います。」

 

 

 

 

「そうか、赤城は優しいんだね。

 

 

 

じゃあ逆の立場だったらどうなるかな?

 

 

 

 

赤城が『あかぎ』としてまた現れて、

加賀は音沙汰なし。

 

 

 

加賀は精一杯頑張った赤城を、

自分を責めて泣いている赤城に

何て声をかける?

 

 

罵声を浴びせるかい?」

 

 

 

 

「しない……。」

 

 

 

 

「加賀を守ろうとした赤城を恨むかい?」

 

 

 

 

 

「そんなことしない……!」

 

 

 

 

 

「そんな赤城が加賀を差し置いて、

護衛艦の艦娘としてこの世に現れたら

妬むかい?」

 

 

 

 

 

「絶対にそんなこと言いませんっ…!

 

 

私のために頑張ってくれた赤城さんを、

恨んだり、妬んだりなんて…!!

 

 

 

私だって、赤城さんだってそんなこと

絶対にっ…、言ったりなんてっ!!」

 

 

 

 

感情が高まり、思わず菊池士長に

迫ってしまう。

 

 

 

 

 

菊池士長の胸に手を押し付ける

体勢になり、思わず正気に戻る。

 

 

 

 

 

 

「…っ?!し、失礼しましたっ!」

 

 

 

 

「いいさ。

 

それに、もう『答え』は出たじゃないか」

 

 

 

 

「……あっ。」

 

 

 

 

 

そう。

 

 

私も赤城さんも、お互いを理解し、

尊重しているではないか。

 

 

 

 

私が自分を責めているのは、

赤城さんを失った事を合理化しようと

しているだけではないか。

 

 

 

 

「でも、でもっ…!」

 

 

 

 

 

それでも言葉にならない悔しさが

込み上げ、手を当てていた

菊池士長の胸にそのまま頭を埋める。

 

 

 

 

「それでいいんだよ加賀。

 

 

言いたい事を全部言ってごらん。

自分を責めたいなら、

泣きたいなら思い切り泣いていいんだよ。

 

 

 

俺が、みんながついてる。

 

 

 

 

だから、俺の前では

我慢しなくていいんだよ…。

 

 

 

君は、いいんだよ。

 

 

 

いいんだよ、素直になって。

 

 

 

 

俺が全部受け止めるから」

 

 

 

 

 

胸に頭を埋めたままの私を

菊池士長が撫でてくれる。

 

 

 

「……っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

『自分を責めていい』

 

 

 

今まで自分を責めてきたことへの

後悔の心と、それを我慢しようと

していた心がその一言で一気に溢れ、

言葉にならない喚きとなる。

 

 

 

 

「赤城さんっ…!ごめんなさいっ…!!」

 

 

 

 

「いいさ、俺が許すさ…。

 

 

俺が全部受け止めるから、

君の全てを…」

 

 

 

 

 

 

 

私の感情の決壊は30分ほど続いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……思いっきり泣いたら、

少しスッキリしました。

 

 

 

今日初めて会った菊池士長。

 

 

 

 

見たところ少し軽い人かと思いましたが、

心はとても優しい人の様ね。

 

 

 

 

心の中を全て曝け出し、安堵感と

少し恥じらいが込み上げてくる。

 

 

 

 

 

(私もそのうち赤城さんに会えると思うと流石に気分が高揚し……て?)

 

 

 

 

 

 

安堵と恥の次は高揚感…、ではない様だ。

 

 

 

気持ちが高ぶっているのは事実であるが、

その原因は赤城さんでは…無い?

 

 

 

 

「……あの。」

 

 

 

 

「ん、何かな?」

 

 

 

 

 

「…い、いえっ。

な、なんでもないわっ…。」

 

 

 

 

口を開こうとして、ついどもってしまう。

 

 

 

 

 

私は一体何に高揚しているのかしら?

 

 

 

赤城さんと会える、だからこう気持ちが

高ぶっているのでは無いの?

 

 

 

 

目の前の菊池士長のことを考えると、

何故か気分が高揚します。

 

 

 

 

赤城さんに会わせてくれると

約束してくれたから…?

 

 

 

 

…違う。

 

 

 

 

私の話を聞いてくれた優しい方だから…?

 

 

 

それもなにか違う…。

 

 

 

 

 

…菊池士長を真っ直ぐ

見ることができません。

 

 

 

 

この感情は一体何なのかしら…?

 

 

 

 

 

 

 

それに何故か彼の笑顔を見ていると

心が暖かくなります…。

 

 

 

 

す、少し動揺してしまうのだけれど…。

 

 

 

 

 

『恋』という単語を知らぬ青い戦乙女は、

しばらくの間赤城への友情と突如現れた

未知の感情と葛藤をすることになる。

 

 

 

 

 

(この心のモヤモヤは何なのかしら…。

流石に頭にきます…!)

 

 

 

 

 

後日このことを相談された

ドロップした大型正規空母は

 

 

 

『ところで加賀さん、

恋って言葉知ってるかしら?

 

 

 

加賀さんにも春が来たようね。

 

 

 

 

飛鷹や蒼龍も言っていたけど

あの人モテるそうね?

 

 

 

私も会ったばかりだけど好きよ、彼』

 

 

 

 

と答え、加賀を慌てさせたそうな。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

side of 菊池

 

 

 

 

 

「…どう、落ち着いたかな?」

 

 

 

 

 

「はい、先ほどは取り乱してしまい、

失礼致しました。」

 

 

 

 

 

加賀の大号泣も収まり、

目と頬の赤み以外元に戻りつつある。

 

 

 

 

 

(いやぁ、まさか加賀さんが

大号泣するとは思わなかったぜ…)

 

 

 

 

 

 

クールキャラな加賀さんからは

想像できない感情の大爆発だった。

 

 

 

 

でもここで泣いてくれて良かったと思う。

 

 

 

目はまだ腫れているものの見たとこ

ろスッキリした様子だし、

加賀も感情を溜め込んでしまう

タイプのようだしこんな俺でも

役に立てたようだ。

 

 

 

 

艦これでは感情をあまり表さない

キャラだけど、やはり女の子だものな。

 

 

 

泣きもするし、喚いたりもする。

 

 

 

 

 

バツが悪そうに俯いたまま

俺の胸から離れる加賀。

 

 

 

 

 

(ヤバイ、可愛いっ…!!)

 

 

 

 

 

「あの、ありがとうございました。

私…こういったことは初めてで、

つい勝手が分からず…。」

 

 

 

 

 

 

いやいやいやその言い方は誤解を招くぞ。

 

 

 

 

 

 

口に手を当て、視線を逸らしつつも

チラチラとこちらを伺う加賀に

思わずドキリとしてしまう。

 

 

 

 

 

(ほっ、惚れてまうやろ〜!!

…ってもう惚れてるけど)

 

 

 

 

いや、惚れてるってのは違うかな?

 

 

 

 

「まあ、いつにとは確約できないけど、

みんなで赤城を探そうよ。

一生懸命探していればきっと

見つかるよ!」

 

 

 

 

「…はい!」

 

 

 

 

 

加賀も吹っ切れたようで何よりだ。

 

 

 

 

 

 

それからは今後の行動について話し合い、

加賀も普段通りのポーカーフェイスへと

戻っていった。

 

 

 

 

 

口調もトゲのあるような堅い口調で、

苦笑いする場面もしばしあった。

 

 

 

 

 

 

加賀さん、さっきの可愛さは

どこに行った…。

 

 

 

 

もちろん普段の加賀も可愛いけどな。

 

 

 

 

 

 

(にしても頬赤過ぎじゃね?

なんだろう、熱でもあるのかな?)

 

 

 

 

「…菊池士長、何か?」

 

 

 

 

「いんや、何でもないよ?」

 

 

 

 

「…そうですか。」

 

 

 

 

 

おっと、無用な心配だったか。

 

 

 

 

 

 

 

横須賀組のトップとも言える加賀から

他の基地の艦娘について情報をもらい、

今日の面談は終了した。

 

 

 

 

加賀がヘリの中で警務隊長から聞いた

出現した艦娘の船体の詳細と、

その船体出現前からいる艦娘の

各基地における艦娘の主なメンバーは

次の通りらしい。

 

 

 

 

 

 

●横須賀はご存知、加賀。

 

 

なお『かが』艤装終了後は呉基地に

配置される予定だったらしいが、

艦娘が現れた今となっては未定。

 

 

 

 

そういや呉のFバースだって

『いずも』型の係留を見越して

増設工事したもんな。

 

 

 

だがこうやって大型艦が沢山現れたら

おいそれと配置できないからな。

 

 

 

 

ま、防衛省にとっても

事態の把握が優先だな。

 

 

 

 

 

●呉は伊勢。

 

 

第4護衛隊群の直轄艦の『いせ』の艦娘。

呉は伊勢はもとより蒼龍や利根といった

大型艦が多数出現しており、

呉港内は艦艇で溢れているとのこと。

 

 

 

 

今の潜水艦の『おやしお』型や

『そうりゅう』型には結構艦娘と

同名のフネがあるため、

結構な戦力になっている様だ。

 

 

 

 

そりゃアンタ主力艦だけで

蒼龍に雲龍、伊勢ですよ。

空母2杯に戦艦や重巡て、やべーよ!

 

 

 

 

まあ横須賀も劣らないが。

 

 

 

 

 

駆逐艦も多数いて、特に驚いたのが

除籍艦になったはずの『しらゆき』。

吹雪型2番艦の白雪も現れたことだ。

 

 

 

 

フネが残っていれば、魂(艦娘)も

存在するらしい。

 

 

 

都合のいい話だこと。

 

 

 

 

 

少しでも深海棲艦との戦いに備え、

戦力が欲しい俺としても大喜びだ。

 

 

 

 

昨日警務隊長が言っていた

『はるな』の様に、既に廃艦となった

フネの艦娘はいないらしい。

 

 

 

 

(寂しいけど、しょうがないか…)

 

 

 

 

ネットでも大艦隊出現と大騒ぎらしい。

 

 

 

 

 

後で携帯で調べてみよっと。

 

 

 

 

 

●佐世保は妖怪紅茶くれ…

じゃなかった、帰国子女の金剛。

 

 

 

 

 

イージス艦になってるから帰国子女なのか

デース!とか言うのかわからんが。

 

 

 

 

こちらも金剛をはじめ、足柄や

鳥海といった大型艦が佐世保港外に

連なっているらしい。

 

 

 

なお佐世保のアメちゃんが某SNSで

つぶやいてしまお、世界中に艦娘の存在がバレてしまっているらしい…。

 

 

 

しかもオチがあり、そのアメリカ兵は

艦これが大好きで腕にタトゥーを

しているらしい。

 

 

 

 

 

 

…それも曙と罵声付きの。

 

 

 

 

 

 

(ドMなのかよ…?)

 

 

 

 

いや可愛いけどさ!

ツンツンな曙を俺色に染めてやるっ!

↑恐らくセクハラ発言

 

 

 

 

やっぱアメちゃんはおかしい(褒め言葉)

 

 

 

 

これからは存在を隠さなくてもいいね。

やったね警務隊長、業務が減るよ!

 

 

 

 

…やめとこ、なんか

めんどくさくなりそう。

 

 

 

 

 

●次は舞鶴。

 

 

 

 

ここの番人?は日向師匠。

 

 

日向はご存知戦艦。

伊勢もそうだが、戦艦組は

航空戦艦では無いらしい。

 

 

 

それなのに何故千代田が『千代田航』

なのかは加賀も分からないらしい。

 

 

 

 

他にはぱんぱかぱーんな愛宕や妙高、

川内といった、ある意味キャラの

濃いメンツが集まっている。

 

 

 

 

 

もし愛宕にハグできるとしたら、

理性が保てない気がする。

 

 

 

 

 

バイーン!だぜ?!

下手したら後ろまで

手が回らんかもしれん…。

 

 

 

 

北のお国のテポド◯もアタゴンの胸で

弾き返せる気がする!

 

 

 

 

俺も愛宕にミサイルぶっ放したくなるぜ!(なお短射程かつ小型)

 

 

 

 

 

●最後は大湊。

リーダーは筑摩。

 

 

ここはあまり艦艇はいないが、

小規模ならではの和やかなムードらしい。

 

 

 

 

筑摩と大淀、そして夕立の3人。

 

 

 

大湊の港外にそんな三隻が

陣取っているらしい。

 

 

 

 

陣取っているというか、

動けないんだろうな。

 

 

 

大湊は港の内外が漁網だらけなため

航行がとても難しい。

 

 

 

 

前に『むらさめ』で入港した時なんて、

漁網に突っ込みかけてたもんな。

 

 

 

あれにはビビったぞ。

 

 

 

 

とっさの転舵で事無きを得たけど、

怖かったぜ。

 

 

 

 

 

前にも大湊の話題を出したが、

別に大湊をディスってるわけじゃない。

 

 

 

 

ただ在籍基地としては

どうなのかなって思うだけだ。

 

 

 

 

生活とか少し大変そうだし…。

 

 

 

 

 

基地の周りには飲み屋も少ないし…。

むしろ他の基地が都会過ぎるの

かもしれないな。

 

 

軍港なんて僻地の方が

保全上いいだろうし。

 

 

 

 

 

 

 

今出てきた艦娘の他にも、

名前は出ていないが多数の

艦娘がいるらしい。

 

 

 

 

みんなと会ってみたいぜ。

 

 

 

 

艦娘に囲まれた生活を想像して

ニヤニヤが止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…ん、なんか殺気が…)

 

 

 

 

妄想をやめれば、加賀が一段と

厳しく冷たい視線を俺に向けていた。

 

 

 

 

「あの、加賀さん…?

どうしたんですかねぇ…?」

 

 

 

 

「菊池士長は私の話を聞いている間、

ずっとニヤニヤしていました。

 

 

どうせ他の艦娘とのことで、

いかがわしいことでも考えて

いたのでしょう…?

 

 

大概にしてほしいものね。」

 

 

 

露骨に不機嫌さを表し、

プイッと横を向く。

 

 

 

 

 

あらかわいい。

 

 

 

でも目の前で悲しむ(?)乙女を

放っては置けない優しい俺。

 

 

 

 

ここはハッタリ技能検定2級を持つ

俺の腕が鳴るぜ!

 

 

 

「うん、みんな揃ったらきっと

楽しいだろうなって思ってね。

 

 

今いる艦娘が全員集まったことなんてないだろうし、何かイベントでも

しようかと思ってね」

 

 

 

 

 

はい出たー!

あえて否定はしないけど、実は健全な事を考えていましたよパターン。

 

 

 

 

こっちは真面目だったんだけど、

そっちは何を考えてたの?的な

ニュアンスを漂わせ、

相手の攻撃を躱す戦法ね。

 

 

 

 

「イベント…ですか?」

 

 

 

 

 

「そそ、イベント。

せっかくこうして艦娘が人間に認識

されるようになったわけだから、

合同で何かしたいと思ってね」

 

 

 

 

 

これはでまかせではない。

本当に何かしたいと考えていたし、

むしろしなければいけないと思っている。

 

 

 

 

 

「まだアイデア程度なんだけど、

聞いてもらえるかな?」

 

 

 

 

 

「…ええ、拝聴します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が考えていた事を話し終えると、

加賀が神妙な面持ちになり

考え込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

(確かに今までそういったことは、

全艦娘で行っていないはず…。

 

 

みんな口には出さないけど、

きっとしたがっているでしょうね。)

 

 

 

 

 

「まああくまで案だから、

軽く覚えておく程度でよろしくぅ〜!」

 

 

 

 

「わかりました。」

 

 

 

 

時計に目をやるともう2146、

2時間以上話をしていたようだ。

 

 

 

 

 

「明日はフリーだから好きなように

過ごしてもらっていいよ。

 

 

外出も護衛とかつくけど複数なら

できるし、行きたいところに

行くといいよ!」

 

 

 

 

 

という訳で村上も含めた横須賀組の

面談ごっこは終わった。

 

 

 

 

加賀が泣き出した時は少し驚いたが、

無事立ち直ってくれてよかった。

 

 

 

 

 

寝るにはちと早いな。

 

 

 

 

「寝る前に紅茶でも頼むか…」

 

 

 

 

備え付けの電話で好物のブランデーと

紅茶を頼む。

 

 

 

 

 

「くぁあ〜!

寝る前の一杯はいいよなやっぱ!」

 

 

 

 

 

出てきた茶葉も銘柄はわからないが

いいのを使っているようで、

高級な香りがブランデーと絡み合い

鼻を刺激する。

 

 

 

 

 

「そういやさっき海幕長が

海上公試があるって言ってたな…」

 

 

 

 

海上公試とは艦艇の洋上テストのことで、速力や射撃等の性能をチェックする。

 

 

 

第二次大戦時の装備とはいえ立派な

軍艦、旧式といえどもかなりの戦力に

なり得るだろう。

 

 

 

 

戦艦だって湾岸戦争で艦砲射撃で

陸上部隊の援護で活躍したし。

 

 

 

 

「でも上陸戦があるわけ無いな、

相手は艦船なワケだし」

 

 

 

 

でも先日の深海棲艦の耐久力を思うと、

火力も必要か。

 

 

 

 

「あ、でもまだ戦艦クラスがいない、

とは言い切れんな…」

 

 

 

 

そうだった。

まだ敵戦力にはイ級しか

確認されていないんだ。

 

 

 

 

これからもっと強力なクラスが出てきたら

駆逐艦や護衛艦なんかじゃ

歯が立たなくなるな…。

 

 

 

 

重装甲の重巡や戦艦クラスに

ミサイルや魚雷が効果的とは思えないし。

 

 

 

 

 

 

何より対費用効果が悪過ぎる。

 

 

 

フネ一隻沈めるために高価な対艦ミサイルを何発も使ってたら、

国家予算が足りねーって。

 

 

 

 

 

それこそ『イベント』で資材を

溶かした後の提督になっちまう。

 

 

 

 

ゲームじゃ待っていれば自然回復

するが、現実はそうはいかない。

 

 

 

 

資源を取りに商船を送らないとだし、

その航路と船団の啓開と護衛に

戦力と資材を必要とする。

 

 

 

 

 

 

 

そして何より国民生活が

成り立たなくなる。

 

 

 

そりゃ江戸時代みたいに鎖国して

クニが成り立てばそれで

いいかもしれないが、

現代日本にそんな真似ができるはず無い。

 

 

 

 

それは俺たちが一番分かっているはずだ。

 

 

 

 

 

あれやこれやと問題が湧き出て頭が

パニックになるが、酔いが回り始めた

頭では処理しきれない。

 

 

 

 

 

「あー!もう寝るっ!!」

 

 

 

 

 

悩んだ時は寝る、この手に限る。

 

 

 

 

 

ベッドに横になれば頭がシェイクされて

いるかのような感覚に陥る。

 

 

 

 

「ブランデーの割合が多過ぎたか…?」

 

 

 

 

うーん、もう何も考えられん。

 

 

 

 

 

(そういや加賀の胸、

めっちゃ柔らかかったなぁ…)

 

 

 

 

胸当ての上からだったが、抱きしめた時

凄いボリュームだったな…。

 

 

 

 

 

(あっそうだ。

明日加賀さんに胸当を取ってくれって

頼んでみようかなぁ……グヘヘッ)

 

 

 

酔いで最低な事しか考えられなくな

った俺はニヤニヤとした顔付きで

眠りに落ちていった……。

 

 

 

 

 

 




横須賀の艦娘集合です!

やっと始発点です、全員出してたら
1000話は書かないとですね。



物語が動き始めるのはもう少し先ですが、
間も無くです。

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