桜と海と、艦娘と   作:万年デルタ

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久々の更新です。
間が空き過ぎて、読者の方に
忘れられていないかと
すごく心配です…。



投稿日は16日の夜になっていますが、
携帯の修理前に『予約投稿』して
作品をアップロードしようとし、
なぜか即投稿されてしまい
こうして校正した次第です。




さてやってきました海幕!


ここは海自のトップ。
横須賀から市ヶ谷に一旦舞台は移る。


海幕長以下の海自制服組トップと
面会を果たした主人公たち。



だが、敵は深海棲艦だけでは
無いことを実感するのであった…。






0-10 市ヶ谷での騒乱 【海幕】

「…んむ?もう0540か…」

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日の騒動が嘘のような快適な目覚めだ。

 

 

 

 

 

艦娘たちとその船体、帝国海軍の

駆逐艦から戦艦までが日本各地の

海自の基地そして洋上の護衛艦等の

そばに出現し、大騒動になった

昨日の夕方。

 

 

 

 

 

 

 

横須賀周辺の艦娘と俺たちはこれから

東京の市ヶ谷の防衛省に

呼ばれる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

朝食後、警務隊長から本日の行動予定が

示達され、マイクロバスで防衛省に向かい事情聴取を受ける。

 

 

 

 

 

 

 

なお『加賀』さんに関しては、

『かが』が洋上試験中だったため、

横須賀に入港次第、別便にて

市ヶ谷に向かうとの事だ。

 

 

 

 

 

 

 

…早く『加賀』さんにも会いたいな。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

市ヶ谷に向かうバス内

 

 

 

 

 

「「「朝の光眩しくて

…weighancor!!♪」」」

 

 

 

 

 

 

(で、なんでバスの中に

カラオケセットがあんだよ…)

 

 

 

 

 

バスの通路を挟んで左に一人座る

警務隊長にそっと聞いてみる。

 

 

 

 

 

「…なんでマイクロバスに

カラオケセットがあるんですか?」

 

 

 

 

 

「それはだな、私が要望して用意させた」

 

 

 

 

 

何故か自信満々の笑みを

浮かべるマサヨシさん。

 

 

 

 

 

 

「めっちゃうるさいんですけど…」

 

 

 

 

「菊池士長、彼女らが楽しく

歌っているのに水を差すつもりか?」

 

 

 

 

 

「…もういいです、ハイ」

 

 

 

 

 

バスに乗りいきなりカラオケセットが

あるものだから、艦娘がカラオケしたいと

言い出してこうなった。

 

 

 

 

 

歌はとても上手だと思うが、

音量がかなりうるさい。

 

 

 

 

 

耳に響くし、音量を下げるよう

頼むべきか?

 

 

 

 

 

 

「あ、次コレ歌おうよー!」

 

 

 

「いいね、照月もそれにする!」

 

 

 

「音量マックスでお願いしまーす!」

 

 

 

 

「了解した」

 

 

 

警務隊長がちゃっかり音量を最大にした。

 

 

 

(なんだろう、すごい嫌な予感がする…)

 

 

 

 

 

曲名は???と表示され、他の人には

わからないようになっている。

 

 

 

 

 

今演奏されていた曲が終わり、

一瞬車内が静かになる。

 

 

 

 

 

 

パッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『加賀岬』

 

 

 

 

 

 

デデン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待てぇーーい!!」

 

 

 

 

 

「何?提督も歌いたいの、はいマイク!」

 

 

 

 

「お、村雨サンキューでは俺も…

って違うわ!!

音がうるさすぎるだろ!」

 

 

 

 

「「「えー…」」」

 

 

 

 

歌おうとしていた艦娘から

ブーイングが上がる。

 

 

 

 

 

 

「えーじゃないだろ、

少しボリュームを下げなさーい!」

 

 

 

 

「ぶー、提督がそこまで言うなら

下げてあげるわ」

 

 

 

 

村雨が渋々ボリュームを下げ、

リスタートを押す。

 

 

 

 

 

…よし、これぐらいならいいだろう。

 

 

 

 

 

強烈な加賀岬は、心地の良い音になり

気分も安らかになる。

 

 

 

 

 

(そうそうこれぐらいがいいよな〜)

 

 

 

 

 

 

 

「司令、一緒にデュエットしませんか?」

 

 

 

 

前に座っていた霧島が誘ってきた。

 

 

 

 

 

「ありがたいけど

俺そんなに歌わないしなぁ…」

 

 

 

 

そこまで歌も知らないし、

あまりカラオケにも

行かないためどうしようか悩むな。

 

 

 

 

それに女子とデュエットなんて

高校以来したこと無いし。

 

 

 

 

 

 

 

「…もしかして、私と歌うのが

お嫌いですか?」

 

 

 

 

 

少し上目遣いでこちらを見つめる霧島。

 

 

 

 

 

 

(グハッ!!

その上目遣いは反則やでぇ…)

 

 

 

 

 

 

クールで委員長キャラの霧島が

そんなことしたら、惚れてまうやろー!

 

 

 

 

 

…やべぇ、鼻血で出血多量で

死に至る自信があるぞ、

死なないけど…。

 

 

 

 

「嫌いなわけ無いだろ、

ただ俺自信無いからさ。

うまく歌えるかわからなくて…」

 

 

 

 

「カラオケとは楽しく歌うもの

ですよ、司令。

どの曲にしましょうか」

 

 

 

「うーむ、そう言われてもなぁ…」

 

 

 

 

 

「フッ、それならとびっきりのを

入れてやろう」

 

 

 

 

…またアンタか、横から

しゃしゃり出て来やがってー。

 

 

 

 

 

予約リストの最後に???の曲が

入れられる、何の曲やねん。

 

 

 

 

「次は私のソロですので、

少しお待ちくださいね」

 

 

 

 

 

「もちろんさ!

霧島と一緒に歌えるなら喜んで待つさ!」

 

 

 

 

 

 

(昨日会ってからあまり時間は経って

いないけれど、私の想像以上に

心が広いお方のようね。

 

 

…少し格好良いし、この方の下で

戦いたいわね!)

 

 

 

 

 

 

待ちます、全力で待ちます。

霧島さんと歌えるなら全裸でも待ちます。

 

 

 

 

何とか言いつつ、楽しんでいる。

 

 

 

 

 

おや、霧島の曲は『提督との絆』。

 

 

たしか金剛4姉妹の提督への思いを

歌った曲のはず。

 

 

 

 

俺も艦娘に慕われたいなぁ…。

モテモテのウッハウハな提督に

なりてーぜ!!

 

 

 

 

 

 

「俺もみんなにモテたいなぁ…(ぼそ)」

 

 

 

 

「……にぶちん(ぼそっ)」

 

 

 

 

「え?照月なんか言った?」

 

 

 

 

「ううん、照月何も

言ってないよー(棒)」

 

 

 

 

「そ、そうか…?」

 

 

 

 

 

なんか隣の照月が呟いたような?

そんなキャラじゃ無いし、空耳かも。

 

 

 

 

そう言えば霧島を始めとした

金剛4姉妹の声優って誰だったかな…?

 

 

 

 

 

 

…この話題には触れないほうが

いい気がする。

 

 

 

 

 

 

次は高波の番だ。

 

 

少しおとなしいイメージの彼女だが、

歌に関しては別人の様だ。

 

 

 

 

 

(村雨が言ってたけど艦娘って

以外と歌知ってるんだな。

俺が知らない曲や艦これの曲とか。

 

 

それも恋愛絡みの曲ばっかり!

 

 

テレビでM○テとか見てるんかね?

 

 

 

これが俺への愛だったら

めっさ嬉しいんだけどねぇ〜…)

 

 

 

相変わらず肝心なところは鈍い。

 

 

 

(この人ならきっと頼りに

なるかも、です…。

 

 

優しいし一緒にいたら

楽しいかも、です)

 

 

 

 

 

 

照月の曲は『きみの音色』。

 

 

 

「きみのそばにいたい

願いを叶えて〜♩」

 

 

 

 

(照月は海軍時代は『秋月』とほとんど

一緒に居られなかったって聞くし、

秋月との姉妹愛が感じられるなぁ)

 

 

 

 

 

(秋月姉ともずっと一緒に居たいけど、

提督のそばにもいたいな、

結構イケメンだし…。

 

 

結構鈍感だけどこの提督となら有り!

…ですね、うん!)

 

 

 

 

 

 

 

みんな上手いなぁ…。

 

 

何故が恋愛の曲ばっかりな気がするが、

女子だからかねぇ?

 

 

 

 

誰か俺への愛を

歌ってくれねぇかなぁ!!

 

 

 

 

 

(会ってすぐの男に一目惚れなんて、

あるわけないか…。

 

 

でも何となく認めてもらっている

ような気がするな)

 

 

 

 

真面目な話、艦娘たちの

俺や村上といった人間を

見る目は悪くないと感じる。

 

 

まだ一緒に居る時間は短いし、

戦ったりしていないが、

彼女らの目を見ればある程度の

信頼は持ってくれているようだ。

 

 

 

 

 

だってホラ、隣の照月なんて

俺にぴったりくっついてきているし…

 

 

 

 

 

 

 

ん?ぴったり…?

 

 

 

 

 

 

もにゅっ!

 

 

 

 

 

 

…あれ?

なんか右腕に質量と弾力性のあるモノが

当たっているんですが?

 

 

 

 

「照月サン、

近過ぎやしませんかねぇ…?」

 

 

 

 

 

「そうかなぁ、提督は照月の事嫌い?」

 

 

 

 

「いやいやいや!!

大好きです堪らないです、

じゃなくってけしからん!

でもなくって違うだろ!

 

 

嫌いとかそういうのじゃなくて、

密着し過ぎだから、少しだけ

離れてくれないかな?」

 

 

 

 

 

 

「えー、照月このままがいい〜!」

 

 

 

 

(えー、俺だってこのままがいいけど

流石に理性が保てねーよ!

 

 

しかしだ、ここで我慢できれば

信頼を勝ち取ることができるのでは

ないだろうか?!←意味不明

 

 

ここは敢えて意識せずに、

この身を委ねてみるとしよう!)

 

 

 

 

 

 

「参ったな。わーった!

照月がそうしたいならいいぞ。

存分に俺を頼ってくれ給え!」

 

 

 

 

 

 

「提督やっさしぃー!!」

 

 

 

 

照月も俺を頼ってくれているみたいだし、

その心を受け入れてあげないとな。

 

 

いかんいかん、劣情ばかりで

自分が情けない。

 

 

 

 

 

…にしてもなんだ右腕に当たっている

この高度の柔軟性を維持しつつ

臨機応変に腕に当たっている

けしからんモノは?!

 

 

 

 

柔らかく、適度や弾力のあるマシュマロ

クッションという表現しか浮かばない。

 

 

 

 

村雨の時と全くの異次元の感覚、

即ちここが天界であるというのか!

 

 

 

 

こ、これが駆逐艦だというのか?!

 

 

 

 

い、いかんいかん!

照月とは「まだ」恋人でもないし、

ケッコンもしてないんだ。

い、いやらしい事を考えてはいかんぞ!

 

 

 

 

 

頭の中でミッドウェーさながらの

劣情の大海空戦を繰り広げていると、

目の前の霧島が、座席の横から

凄い目でこちらを見ていた!!

 

 

 

 

 

まるで昼ドラの姑が「この泥棒猫…!」

と言わんばかりの迫力で。

 

 

 

 

「あら照月、

貴女何をしているのかしらぁ?」

 

 

 

霧島さん、目が笑ってないです…

半目で迫力がぱねぇ…。

 

 

でもこれはこれでありかも

…いやねーよ。

 

 

 

 

 

「あらあら霧島さん、艦隊の頭脳と

自負する割には目が怖いですよ〜?

イージス艦になって頭も

『キレ』者ですねぇ…?」

 

 

 

 

 

「へぇ〜、防空駆逐艦だけあって

口だけは達者なようね、

『また』夜間に艦尾に衝突されても

知らないわよ〜?」

 

 

 

 

「そっ、それは前の護衛艦の時だもん!

あれは貨物船が突っ込んできて、

照月は悪くないもん!」

 

 

 

 

あ〜あ〜、霧島と照月の言い争いが

始まってしまった…。

 

 

 

俺にくっつく照月を霧島が窘めようとして舌戦が繰り広げられた。

 

 

 

 

(霧島が照月に嫉妬ってわけじゃ、

無いよな…?)←実は正解

 

 

 

 

「まあまあ二人ともその辺で。

霧島も照月を叱ってくれるのは

いい事だけど俺は気にしていないよ。

 

 

でも心配してくれてありがとう、

君のような気配りができる娘(こ)

がいるなら俺もやっていけそうだよ」

 

 

 

 

 

 

霧島の頭なでなで。

サラサラで気持ち良いなぁ〜。

 

 

 

 

「そ、そんな気配りなんてっ…!

それにありがとうだなんて…!!」

 

 

 

霧島も言い過ぎたと思ったのか、

恥じらいだろうか、顔をやや赤く

染めている。

 

 

 

 

「照月も霧島に言い過ぎない事。

 

 

照月には悪口は似合わないよ、

ずっと心優しい照月でいてほしい。

 

 

これからも霧島の事もそうだし、

俺の事もよろしく頼むぞ!」

 

 

 

 

右手は照月に抱きつかれたままなので、

頭同士を軽くコツンとしてやる。

 

 

 

 

「うぅ…、そんな、

よろしくだなんてぇ…!」

 

 

 

 

照月も自分の行動を恥じたのか、

頬を赤らめ俺の腕に顔を埋める。

 

 

 

 

「二人とも反省しているようだし、

これで一件落着だな」

 

 

 

 

 

 

ほっと一息つくと、警務隊長が

「…菊池士長、君は人から鈍いと

言われる事はあるかね?」

 

 

 

 

「いや言ってる意味が

わかんないんですけど」

 

 

 

「…罪深い存在だな」

 

 

 

「はぁ…?」

 

 

 

 

 

 

 

艦娘「「「…にぶちん(ぼそっ)」」」

 

 

 

 

「えっ、みんななんか言ったか?!」

 

 

 

 

ふるふるふる。

 

 

 

 

 

動きをシンクロさせて首を振る艦娘たち。

 

 

 

(鈍いってなんのこっちゃ?)

 

 

 

一人頭をひねっていると、

霧島とのデュエット曲が回ってきた。

 

 

 

 

 

 

警務隊長のニヒルな笑みが不安を生む。

 

 

 

(かな〜り嫌な予感…)

 

 

 

 

 

 

 

 

ぱっ

 

 

 

 

『3年目の浮気』

 

 

 

(浮気ってなんやねん!

俺が浮気者みてーじゃねーか!)

 

 

 

…やばい、車内の空気が、冷た過ぎる。

 

 

 

照月の腕に抱きつく力が強くなる。

抱きつくというより、

締め付けになっているんだが…?

 

 

や、やべえよやべえよ…。

 

 

 

後ろからはプレッシャー。

なんなのだこのプレッシャーは!

 

 

 

 

ニュータイプにでもなったのか、

後方からの危ない気配を察知できるぞ…。

 

 

 

 

だからと言って歌わない訳にはいかず、

俺はカチコチに歌い始める。

 

 

 

 

 

 

「…提督ぅ〜、楽しそうねぇ〜…?」

 

 

 

「司令官、春ですねぇ…?

乙女の敵発見かも!突撃します!」

 

 

 

「なに?提督、女タラシな訳?」

 

 

 

「…千代田艦載機、敵艦発見です!」

 

 

 

「提督ぅ…?

さあ、始めちゃいましょう?」

 

 

 

 

村雨、高波、飛鷹、千代田、照月の順で

罵声と怒りのオーラの籠った

開戦ボイスが飛んでくる。

 

 

 

 

…あれ、雷は?

 

 

 

だがそんな疑問はすぐに消えていった。

 

 

 

 

 

腕は照月にロックされ身動きが取れず、

通路側には艦娘たちが仁王立ちしており、引くに引けない。

 

 

 

 

…譲ってもくれなさそう、これ死ぬわ。

 

 

 

(あ艦これ、ってのは

こういう時に言うんだな…)

 

 

 

 

嗚呼、轟沈するときの艦娘の

気持ちがわかる気がする。

 

 

 

 

 

「提督の馬鹿〜!!」

 

 

 

 

バチーン!!

 

 

 

「うぎゃっ?!」

 

 

 

 

あっ、頬に誰かのビンタが…意識が…

 

 

 

 

 

 

 

薄れ行く意識の中で、

ビンタの音だけが響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧島が残りを一人で歌い終わった頃、

俺はバスの一番後ろの座席で

燃え尽きていた。

 

 

 

 

頬を真っ赤に膨らませて

何重にもなった紅葉が激戦を物語る。

 

 

 

(俺が何をしたって言うんだよ〜…)

 

 

 

ただ『浮気がテーマの歌』を

歌っただけじゃないか…。

 

 

 

 

 

 

あっそうか、浮気とか最低な曲を歌って

気分を害してしまったのか!!

↑大ハズレ

 

 

 

なんだぁ、みんな歪んだことは

嫌いなんだ。

筋が通ってるいい娘たちだなぁ。

↑意味不明

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな俺に雷が

 

 

 

「司令官元気ないわねー、

そんなんじゃ駄目よぉ!」

 

 

 

力ある声を掛けてくれたのは、雷だった!

 

 

 

「雷は、俺を嫌いになって無い?」

 

 

 

「私が司令官を嫌いになる訳

無いじゃない!

司令官には私がいるじゃない!」

 

 

 

おお、天使や!

やっぱり雷は大天使だったんや!!

 

 

 

「あ〝り〝か〝う〝!!

い〝か〝つ〝ち〝ぃ〝ー!!」

 

 

 

雷が俺を優しく抱きしめてくれる。

 

 

 

雷は俺の母になってくれるかも

しれない女性だ!

 

 

 

 

 

 

どこかの赤い大佐が言ってた通り、

雷は母性にあふれた娘だよぉ〜!

俺めっちゃ嬉しいよぉ〜!

 

 

 

 

「そうそう。もーっと私に

頼っていいのよ!!」

 

 

 

 

雷が頭を撫でてくれる。

もうロリコンでもなんでもいいや!

 

 

 

 

 

愛は地球を救う、これが真理なのだ!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

…だがそのとき、

俺だけは気が付かなかった。

 

 

 

 

(((雷…恐ろしい娘っ…‼︎)))

 

 

 

艦娘たちが雷の顔を凝視する。

 

 

 

雷の顔は微笑んでいるが、目は薄目。

 

 

後の村雨の話によれば一言で表すなら、『ブラックサンダー』。

 

 

 

雷のあまりの迫力に、

艦娘たちも近づけなかったという…。

 

 

 

 

雷「ちょっと、司令官!

これじゃまるで

私がヤンデレみたいじゃない?!」

 

 

 

 

 

俺「…ご安心下さい。

ヤンデレ系の重い恋愛には

発展しないのでご安心を」

 

 

 

 

雷「誰に言ってるのかしら…?」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ふぃ〜、着いたか…」

 

 

 

 

「ああ、自衛官になってから

初めて来たな」

 

 

 

 

バスから降りた俺たちは、

目の前にある防衛省庁舎A棟を仰ぎ見る。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

ここには海上幕僚監部があり、

これから俺たちが査問を受ける場所だ。

 

 

 

 

 

 

ガキの頃は見学ツアーとかで

たまに遊びに来たが、入隊してから

こんなところに来る気にもならなかったが

運悪く(?)来てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

(しかも目的が査問とは名ばかりの

取り調べ…、鬱だぜ)

 

 

 

 

 

 

「では諸君、私はここでお別れだ」

 

 

 

警務隊長は俺たちを市ヶ谷まで

送り届けるのが任務、ここからは

東京警務隊や中央の管轄になる。

 

 

 

 

 

「警務隊長ありがとうございました。

次はいつ会えるんですか?」

 

 

 

「私にもそれはわからないな。

言えるのは、君が全部正直に話して

〝言いたい事をハッキリ言う〝ことで

物事が早く進むだろうということだ」

 

 

 

「は、はぁ〜…」

 

 

 

相変わらず何を言いたいのか

よくわからん人だ。

 

 

 

 

「警務隊長さんありがと〜!」

 

 

 

「村雨ちゃんもまた今度だ」

 

 

 

警務隊長が歯を出して笑っている。

こう見るといい親父にしか

見えないんだかなぁ…。

 

 

 

 

 

「…菊池士長、少しいいか?」

 

 

 

警務隊長が俺に耳打ちしてくる。

 

 

 

「正門に6人、それぞれ違う国の人間だ」

 

 

 

 

 

 

「新宿区に入ってから27人と車両6台、

アメリカを含めると34人と8台だ」

 

 

 

 

「えっと、スパイがってことですか?」

 

 

 

「他にどんな話題がある?

今のところは危害を加えたり、

拉致などはせんだろうが、

用心しておけよ」

 

 

 

 

 

警務隊長の顔が公安のカオになる。

 

 

 

「敵は深海棲艦とやらだけとは限らん。

日本は既にパワーバランスを

崩してしまっている、

それだけは忘れるな」

 

 

 

それだけ言うとバスに

さっさと戻っていった。

 

 

 

 

「菊池、警務隊長は何と言っていた?」

 

 

 

今日あまり話さなかった村上が

問いかける。

 

 

 

「スパイに気をつけろってさ、

この周りもウヨウヨいるみてーだ」

 

 

 

あたりの高層ビルを見渡すと、

どれも怪しく見える。

 

 

 

 

防衛省を掘りを挟んだ市谷駅前のビルからスナイパーに狙われているような

感覚になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

「提督〜、村上さ〜ん!

早く中に来いってさ〜!」

 

 

 

 

「ああ、いま行くー!」

 

 

 

俺たちを呼ぶ声に応え、

庁舎内へと足を進める。

 

 

 

 

足を進めねばらという義務感と、

行きたくない生存本能が頭を

グルグルしながら

指定された会議室へと向かう。

 

 

 

 

(さて、どうなることやら…)

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

海幕エリア 某会議室 時刻不明

 

 

 

 

「おっ、このチョコ美味いな」

 

 

 

「ペットのお茶は合わないけどねー!」

 

 

 

 

会議室に入って早々、村雨と照月が

茶菓子に食いついた。

 

 

俺は窘めたんだが、あまりに美味しそうに食べるからどんなもんかと俺も

食べたら意外と美味かった。

 

 

 

 

 

室内には係の隊員以外居らず、

しばし待つようにと指示を受けて

只今待機中(ティータイム)である。

 

 

 

 

 

 

 

にしても海幕もいい気遣いだ、

取り調べをする人間(プラス艦娘)に

菓子を出すなんて。

 

 

 

まるで…

 

 

 

 

「警察の取り調べで出てくる

カツ丼ってところか」

 

 

 

「おお、それそれ。

お前俺の考えてる事わかった?」

 

 

 

「菊池は単純だからな、大体わかる」

 

 

 

「失礼なやっちゃな、シンプルイズベストって言うだろう」

 

 

 

「そうは言うが、

厄介な査問になりそうだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

村上が見る方向には、やや険しい顔の

佐官クラスの人たちがぞろぞろ。

 

 

 

 

(新戦力を歓迎、って訳じゃ無さそうだ)

 

 

 

 

 

 

 

左胸に知らない防衛記念章を沢山付けた

お偉いサンたちが腰掛けてすぐに

 

 

「海上幕僚長入られます!」

 

 

 

の声で全員立ち上がり、

海幕長を出迎える。

 

 

 

 

「…横須賀から朝早くからご苦労、

座ってくれ」

 

 

 

海幕長の言葉に一同椅子に腰掛ける。

 

 

 

「さて横監からの報告書は

読ませてもらった。

 

さて、艦娘諸君はこれから

日本国海上自衛隊の海上兵力として

組み込まれる事になるが、

問題ないかな?」

 

 

 

皆黙って頷く。

 

 

 

 

 

「よろしい、では護衛艦『むらさめ』の

菊池士長と村上士長。

確認になるが報告とこちらからの質問に

答えてもらいたい…」

 

 

 

 

 

 

 

ここからはトントン拍子に話が進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

海幕長や他の幕僚を前に

緊張で噛みかみではあったが、

質問に答えていった。

 

 

 

「…結論から言わせてもらうと

君たちには何の処罰も無い。

 

 

 

 

強いて言うなら山本1佐の

越権行為の確認だな。

 

 

 

護衛隊司令の山本1佐の権限で2人に

作戦に携わらせ、立案の補助。

 

 

これは一護衛艦乗員の職務の範疇を

超えているが、専門に長けた隊員を

抜擢したまでの事。

 

 

次に戦闘部署からの乗員の引き抜き。

 

 

これも緊急時の措置、

しかも君たち二人はノーマーク。

 

 

 

通信員、ET員としての役割も

知れているし、差し支えは無いだろう。

 

 

減給も訓戒も無いし、

そこは安心してもらいたい」

 

 

 

 

 

((た、助かった〜…!))

 

 

 

 

横須賀の南雲総監が入っていた通り、

悪いようにはされないようだ。

 

 

 

 

ふぃ〜、一安心ひとあんしん。

 

 

 

 

 

 

俺と村上が安堵していると、

技術担当の幕僚が突如

爆弾発言をしやがった。

 

 

 

 

「おい、そこの娘(むすめ)たちを

別室に連れて行け」

 

 

 

「了解」

 

 

 

 

脇に控えていた警務隊員か何かだろう、

各艦娘に2人ずつ寄り添って

外に連れて行こうとする。

 

 

 

 

「ちょっと待ってください!

なんで彼女たちを連れ出す必要が

あるんですか?!」

 

 

 

「当然だろう?

艦船の魂だか何か知らないが、

今現在は人間扱いしたとしても不審者だ。

 

 

仮に魂の実体化と言うのなら

詳しい調査が必要だし、軍艦を操る能力があるのであれば兵器の媒体として研究、

あるいは人型兵器の研究にも

『使える』かもしれないからな。

 

 

…まぁ人型兵器なんぞ我が自衛隊は

マトモに研究せんがな!」

 

 

 

 

軽いジョークを言ったつもりなのだろう、幕僚の言葉に笑い声が上がる。

 

 

 

 

 

……カチン

 

 

 

 

(ああ?!艦娘が兵器だぁ?!

殺されてぇかこの野郎ッ!!)

 

 

 

 

 

「……おい、取り消せ」

 

 

 

 

「ハッハッハ…ん、何か言ったか?」

 

 

 

「今言った言葉、全部。即刻取り消せ」

 

 

 

「なんだその口の利き方はッ!

おまえは上官に対する態度が

なっていないぞ!!」

 

 

 

 

 

…あー、限界だわ。

 

 

 

ちらと横に座る村上を盗みみれば、

顔には出さないものの怒りのオーラが

滲み出ている。

 

 

 

 

お互い、次に何か言われたら手が出るな。

 

 

 

 

 

 

『提督』になるって夢もここで終わりか。

 

 

 

 

…だが今の言葉だけは絶対許せない。

 

 

 

 

「彼女たち艦娘が兵器って

さっきおっしゃってたけどよ、

それを取り消せって言ってんですよ」

 

 

 

 

冷静に言葉を発しようとするが、

無理だ、口が言う事を聞きそうに無い。

 

 

 

 

 

「おまえはバカか?

軍艦を操る能力があるヤツを

人間と思う奴がどこにいる?

 

 

 

女の姿をしていてもそれは軍隊では

兵器とみなされるんだ!

 

 

姿こそ人間でも、実態は

ただのバケモノに過ぎん、

見た目に騙されるな

たかが海士長の癖にッ!」

 

 

 

 

 

「ンだとこの糞ジジィー!!」

 

 

「そんな言い方があるかぁー!」

 

 

むかつく幕僚を殴り殺そうと、

俺と村上は机を踏み越え近づこうとする。

 

 

 

 

 

「けっ、警務隊!

そいつらを取り押さえろっ!」

 

 

 

 

 

すぐさま警務隊員が走り寄り、

俺たちを取り囲み拘束しようとした。

 

 

 

 

 

「離せッ!!あんにゃろ、

そのツラぶん殴ってやる!!」

 

 

「そうだっ!あんなやつ

幕僚の風上にも置けんっ!!」

 

 

 

 

だが所詮勢いだけの若造、

ベテランの警務隊員によって

捕まってしまった。

 

 

 

「邪魔なんだよオメーら!

俺の大切な艦娘を貶されて

だまってられっか!」

 

 

 

「離せぇー!許さんぞッ!」

 

 

 

 

ぐぅ、こいつら鎮圧方に慣れていやがる。

 

 

 

 

 

 

 

「あんたたち提督たちを

離しなさいよッ!」

 

 

 

「司令に手は出させません!」

 

 

 

「司令官に乱暴するなら

許さないかも、ですっ!」

 

 

 

「司令官、いま助けるわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちを助けようと村雨たちが

警務隊員に、ぽかぽかと

ささやかな抵抗をする。

 

 

 

「なんだこいつら!

ええーい、貴様ら動くなっ!

これが見えんのかッ!!」

 

 

 

警務隊員の1人が腰から拳銃を取り出し、

艦娘に向け威嚇する。

 

 

 

「くぅっ!」

 

 

 

「お前ら止めろッ!

俺たちは大丈夫だから!」

 

 

 

あの糞幕僚をこの手でブン殴りたいが、

村雨たちに危害が及んだら本末転倒だ。

 

 

 

 

 

悔しいがここは無抵抗しかない。

 

 

 

 

会議室が緊張感のある沈黙に満たされる。

 

 

 

 

 

 

 

………。

 

 

 

 

 

 

 

ババババババ……。

 

 

 

 

 

 

 

バタバタバタと、屋上だろうか

ヘリが近づく音が響く。

 

 

 

 

「抵抗しないから艦娘に危害を加えるな、頼む!!」

 

 

 

 

「貴様ら下がれ、ゆっくりだ!」

 

 

 

 

 

悔しそうに歯を食いしばりながら、

じわじわと後ずさる村雨たち。

 

 

 

 

 

(くそっ、どうしてこうなったんだ!

全部あの糞幕僚の所為なのにっ!!)

 

 

 

 

 

事態の急な変化にやっと追い付いたのか、糞幕僚が慌てて命令を出す。

 

 

 

 

「警務隊っ、

まずはそいつらを逮捕しろっ!!」

 

 

 

 

何の権限があるのか知らねーが、

警務隊員に俺たちの逮捕を

命令する糞幕僚。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

((アイツっ!殺すっ!))

 

 

 

 

 

俺たちはキッと睨みつけ、

糞幕僚がビビるが、それまで。

 

 

 

 

 

手空きの警務隊員が俺たちに

手錠をはめようと、腰に手を伸ばす。

 

 

 

 

パチン、カチャッ。

 

 

 

 

 

手錠を出した警務隊員が

俺たちの腕に手錠を当てる。

 

 

 

 

金属独特の冷たさが手首に

ぴとっと伝わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

(最早これまでなのか…!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警務隊員が力を入れ手錠を

掛けようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バタン!

 

 

 

 

 

 

会議室の扉が唐突に開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その必要は有りません。」

 

 

 

 

 

 

 

 

物静かなトーンの女性の声が

会議室に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




またどこかで見た流れの
新キャラ登場シーン。


ヒントは台詞の喋り方(書き方)です。
「……。」と、マルを付ける様な喋り方を
する人は誰なのしょうか…?


ヒントは作中に散りばめられています。
答えは前半にあるかも…?


もう少しだけ市ヶ谷(中央)編を
書きましたら、戦闘シーンですので
気長にお待ちくださいませ。

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