桜と海と、艦娘と   作:万年デルタ

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本編で名前出してないのに、
モロにいずもマンと公言してしまいました。


一体何者なんでしょうね…?






0-9 星々の煌めきと戦乙女 【横須賀基地】

 

ギュッ!!

 

 

 

「そうそう、もーっと頼っていいのよ」

 

 

 

 

 

 

そうやって雷を満喫していると…

 

 

 

 

 

「…なに?どんな提督かと見に来れば、

ロリコンなのかしら?」

 

 

 

 

通路から聞こえる声の方向に顔を向けると、

そこには…

 

 

 

 

「えっ?!まさか君はっ…!」

 

 

 

 

 

そこには白い軍服の様なブレザーに赤い長スカートという、まるで巫女の様な美女。

 

 

 

 

「まさか軽空母、いずもマン?!」

 

 

 

 

 

「誰よ、いずもマンって!!

私の名前は出雲ま、じゃなかった…

飛鷹よ!!とにかくよろしくね、提督!」

 

 

 

 

ふむ、やる価値は有るな…。

 

 

 

 

ずっと抱きしめていた雷を離してやり、

ゆっくりと飛鷹に歩み寄る。

 

 

 

 

じぃーー

 

 

 

 

「な、何か文句でも?!」

 

 

 

 

目の前には黒髪の美女。

 

 

 

そして巫女の様な服装と

見事な富士山が2つ。

 

 

 

 

行けるっ!(グッ)

 

 

 

 

 

ギュッ!!

 

 

 

 

「えっ、なになに?!何なのよ?!」

 

 

 

 

まーたやってしまった初対面のハグ。

 

 

 

 

だって目の前に可愛い女の子がいたらさ、

抱きしめてあげないといけないだろ?(?)

 

 

 

 

それも村雨以上のバインバイン!

 

 

 

 

「よーしよし、よく来たね!

これから一緒に頑張ろう」

 

 

 

 

「そりゃ頑張るけど、さすがに激し過ぎない…?」

 

 

 

 

「そんなことはないさ、ハグは愛情を示す

世界共通の挨拶だ。

豪華客船になりたいと思っている割には、

出雲丸さんあんまり知識がない?」

 

 

 

 

「そ、そんな事はないわ!

ハグくらい知ってるわよっ!」

 

 

 

 

 

 

フッ、また罪無きオナゴを抱きしめてしまった…。

 

 

 

 

「そうかそうか、よしよし…」

 

 

 

 

飛鷹を離してやり、雷にしたように

頭をそっと撫でてやる。

 

 

 

 

なでなで!

 

 

 

 

 

「あ、あんまり子供扱いしないで…。

少し、恥ずかしいし…」

 

 

 

 

おっと、飛鷹も満更ではない様子。

 

 

 

セクハラギリギリをこのまま突っ走って

行きたいものだ。

 

 

 

 

※完全にセクハラです。

紳士淑女の提督方はやめましょう。

 

 

 

 

「…で、どうしてここに?」

 

 

 

 

通路を見れば、部屋の前にいたはずの警務隊員は

いなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

「村雨と私が朝帰ってきたでしょ。

私はまだ他の人に見つかって無かったから、

そのまま普通に岸壁を歩いて、

飛鷹さんのところまで行ったの」

 

 

 

 

後ろにいた雷が説明してくれた。

 

 

 

「『いずも』にある飛鷹さんの部屋で

村雨の処遇や戦いの事を話していたら、

2人とも急に胸が苦しくなって。

 

 

気が付いて周りを見渡したら、

いつの間にか昔のフネ、私は駆逐艦で飛鷹さんは

軽空母の艦長席に座っていたの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

雷がボディランゲージを交えつつ続ける。

 

 

 

 

「目の前に護衛艦の『私』が見えたから、

すぐに妖精さんに頼んで内火艇を

出してもらったわ」

 

 

 

飛鷹もうんうんと頷く。

 

 

 

 

「で、そこの内火艇岸壁に着いた私たちを

あの人がここに入れてくれたわけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精さんもこの世界に来たんだねぇ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

相変わらず変なところに注目していると

 

 

「…と、いうわけだ菊池士長」

 

 

 

 

さっき聞いた声が聞こえ、

まさかと振り返ればその通りだ。

 

 

 

 

 

「改めて自己紹介しよう。

私は横須賀警務隊隊長の2等海佐、

黒木正義(まさよし)だ」

 

 

 

 

「…先ほどはどうも」

 

 

 

 

 

 

 

でた、警務隊長。

 

 

 

 

 

 

山本司令は悪い人間じゃないと言っていたが、

どうも好きになれなそうな人間だ。

 

 

 

 

冷徹、陰気、公安。

そんな言葉を表したようなやつだ。

 

 

 

 

「して、警務隊長。

このように『村雨』と同じ艦娘を

一応軟禁されている私に会わせてよいのですか?

 

 

もしかすれば彼女らが、先ほどいいました

『深海棲艦』と同じような襲撃をしない保障が

無いとは言い切れませんが…?」

 

 

 

 

それでも俺に2人を合わせたのは

何か狙いがあってのことだろうが、

俺はその意図が知りたい。

 

 

 

 

 

 

「まあそう鋭い目をするな菊池士長。

立ち話もなんだ、別室で茶でも飲みながら

話そうではないか」

 

 

 

 

 

ニッと、キザな笑みを浮かべ踵を返し

歩み始める警務隊長。

 

 

 

 

 

 

 

俺たちは一瞬ついて行くか悩んだが、

お互い頷き、着いて行くことにした。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 横須賀警務隊会議室 時刻不明

 

 

 

 

「メンバーが揃ったことだ、話を始めよう」

 

 

 

 

会議室には軟禁されていた俺と村上

そして村雨、ついでに今来た雷と飛鷹。

 

 

 

 

 

 

村雨が部屋に入ってきた時に聞いたのだが、

彼女は駆逐艦の『村雨』が現れた時、

胸に重みを感じたがフネに

移動はしなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

つかワープするってどうよ?

もう驚かないけどさぁ…。

 

 

 

「君たちには全て話そう。

艦娘が現れたこの現象の経緯を」

 

 

 

 

(経緯だと?こいつは何か知っているのか?)

 

 

 

 

「まず艦娘という存在だが、

今まで全く認知されていなかった。

……”全く”、な」

 

 

 

 

 

 

 

警務隊長が『全く』という単語に重点を置き話す。

 

 

 

 

 

(今までも艦娘が現れたことが

あったというのか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずはこの資料を見て欲しい」

 

 

 

 

 

そう言うと部屋が暗くなり、

会議室のプロジェクターが投影される。

 

 

 

 

白黒の写真が写っている。

 

 

 

 

これは…、護衛艦の艦内だろうか?

結構古そうなタイプだな。

 

 

 

 

 

「これは廃艦となった護衛艦『はるな』の

就役して間も無い艦内だ。

 

このあたりをよく見て欲しい」

 

 

 

警務隊長がレーザーポインターで示す場所に

僅かながら少女の様なものが見える。

 

 

 

 

 

 

((これ、榛名(さん)じゃね?))

 

 

 

 

 

どう見ても、大丈夫じゃない榛名さんです。

 

はい、榛名さんはだいじょば無いです、

けっこうドジなのかな?

 

 

 

 

 

 

俺たちは同じことを思ったはずだ。

 

 

 

 

「心霊写真か何かと思ったが、乗員から

非公式の聞き取りを行った結果、

どうやら他のフネでも

『艦内で少女が歩いていた』

『艦橋で複数の少女が話している』

との証言が得られた」

 

 

 

 

 

 

…バレバレじゃねーか、艦娘たち。

 

 

 

 

ぎろりと3人を見れば、目を泳がせている。

 

 

 

こいつら、後でお尻ペンペンしてやる…!

 

 

 

 

 

「その証言者の共通点を調べると、

実家が神社だったり、人より霊力が高いらしい

ということがわかった」

 

 

 

 

(れ、霊力ぅ?なんとオカルティックな…)

 

 

 

 

「だが当時の警務隊はこの調査を

馬鹿馬鹿しいと判断したらしく、

すぐに打ち切った。

 

 

ただこういった現象は海自では昔からよくあり、

実例では旧海軍の駆逐艦『梨』を護衛艦『わかば』

として再就役させた際に、

そういった心霊現象は実際にあったんだ」

 

 

 

 

 

へぇー、知らなかった。

 

 

 

 

 

「で、どうしてこうやって諸君らにこの話を

しているか、本題に入ろう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

む、ついに本題に入るか。

 

 

 

艦娘の現象以上に重要な事なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

固唾を飲んで警務隊長の話を待つ。

 

 

 

 

「私の父はその『わかば』に乗っていたんだ」

 

 

 

 

うん?

なんか艦長の時と同じ様なくだりじゃね?

 

 

 

 

「その父がつい先日亡くなってな、その時に

言い遺した事があるんだ。

 

 

『正義、若葉ちゃんを頼む。

 

 

あの子はあまり話さない子だが、

夜はよく1人泣いている。

 

 

レイテの夢をよく見ると言っていた、

彼女は悪夢にうなされているようだ。

 

 

フネにはな、艦娘っちゅう女の子がいるんだぞ。

 

 

 

俺はそんな子たちと現役時代から仲が良くてな、

 

 

日本にいる艦娘もいるが、

多くは戦地にまだ眠っている。

 

 

そんな子たちをこの日本に連れて来て欲しい。

この俺の最期の頼みだ、正義。

 

 

 

 

待ってくれ若葉ちゃん、天津風ちゃんそれに

雪風ちゃん。

 

なぜ離れていくんだ、いまそっちに行くからな』

 

 

そう言ってから、父は鬼籍に入った…」

 

 

 

 

 

駆逐艦若葉、結構無口だけど

実は寂しがり屋だったのか。

 

 

駆逐艦天津風、島風のプロトタイプとして

建造された。

ツンデレっぽいが、ちゃんと素直に

お礼が言えるえらい子。

 

 

駆逐艦雪風、奇跡の駆逐艦や疫病神と

言われるぐらいの幸運艦。

多くの兵士や民間人を救ったが、

同時に仲間の最期を看取ってきた。

 

 

 

 

 

 

「私は父の言葉は死ぬ間際の幻覚や妄想だと

思っていたが、今回の件で確信した。

諸君らは本当に存在するのだと。

 

 

どうかお願いだ、平和を守ると同時に

各地に眠る艦娘も救って欲しい。

頼む、この通りだ」

 

 

 

 

 

警務隊長は席から立ち上がり、

俺に深く頭を下げる。

 

 

 

 

「そんな、頭を上げてください警務隊長!

当然です、みんなを日本に連れて来ますから!」

 

 

 

「その通りよ!この村雨がみんなを

連れて来ちゃうんだから!」

 

 

 

「そうよ、村雨の言う通りよ!

この雷様に任せなさい!」

 

 

 

「私も手伝うわ!それに戦場には

私の先輩たちである民間商船だって

沢山眠っているもの…」

 

 

 

 

豪華客船として就役するはずだった飛鷹が、

戦地に散った商船の事を思う。

 

 

 

「そうですよ警務隊長。

我々にお任せください!菊池と私が

責任を持って任に当たります!」

 

 

 

 

艦娘や村上が一緒に賛同してくれる。

 

 

 

 

俺はいま猛烈に感動しているぞぉ!

 

 

 

 

 

「そうか、ありがとう。

父も浮かばれるというものだ。

 

 

ところで菊池士長、我々警務隊の情報網が

複数の情報を集めたんだが教えてあげよう。

 

 

良い情報と悪い情報、

どちらから聞きたいかね?」

 

 

 

 

 

いい笑顔を見せたと思ったら、

すぐにさっきまでの陰気なツラに戻ったぞ。

 

 

 

 

まあこれが仕事の顔ってわけか。

 

 

 

 

ベタな聞き方だが、

まずは良い方から聞くとしよう。

 

 

 

 

 

 

「…では良い情報から」

 

 

 

 

 

「そうか、君は好きなおかずは先に

食べる派か、私は後だがね」

 

 

 

 

そういう事を言ってるから陰気なキャラに

なるんじゃねーか、この人。

 

 

 

 

それに俺は後から派だし、

勝手な推測と偏見で決めつけて欲しくないな。

 

 

 

 

「ますは良い情報から。

先程から、日本各地の基地やフネから

『艦内で少女を保護した』との報告が

上がっている。

恐らく彼女たちの様な艦娘だと思う。

 

 

 

同時に各基地から

『旧海軍の艦艇が出現した』との

報告も上がってきている。

 

 

横須賀近辺も今居る3人の他にも表れている様だ。

護衛艦では『きりしま』『てるづき』

『たかなみ』

潜水艦部隊からは『ちよだ』から。

横須賀だけで計7隻、いや7人と言うべきかな?」

 

 

 

 

横須賀だけで艦娘とそのフネが7人もいるのか!

胸が熱くなるな…!

 

 

 

 

 

 

 

ん、待てよ。

 

 

 

誰かもう1人忘れているような…?

 

 

 

 

「おっと、追加の無線が飛んできたぞ。

洋上で艤装中の『かが』からも同様の報告が

たった今上がった。

 

 

これで8人だな、だが『かが』の横に

空母の『加賀』が並んでいて

現場は混乱しているようだ」

 

 

 

これは嬉しいニュースだ、

あの加賀さんがいれば深海棲艦なんて怖くないぞ!

 

 

 

「警務隊長!その艦娘をこちらに呼び寄せて

もらうことは可能ですか?!」

 

 

 

 

「そうくると思って既に横須賀警備区の

警務隊と部隊にはそう指示を出してるさ」

 

 

 

 

 

この隊長かなり使えるっ!

 

 

 

 

「そして君が艦娘に手を出したら逮捕するよう

特別命令も出しておいたぞ」

 

 

 

 

…前言撤回、やっぱこの人変だわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、悪い情報というのはなんなの?」

 

 

 

飛鷹が警務隊長に尋ねる。

 

 

 

 

「それについてだが、酷いことに味方であるはずの

他国の動向についてだ」

 

 

 

 

警務隊長は続ける。

 

 

 

 

「アメリカやフィリピンを始めとした友好国、

それにロシアや中国、韓国といった諸国が

警戒している様だ。

 

 

今回のニュースはすぐに全世界に伝わり、

未明の戦闘と合わせて日本の動きを

危険視する兆候がある。

 

 

アメリカ軍も非公式だが海幕に

調査団の派遣を打診している。

 

 

それに国内のスパイ、まあ深くは言えんが

朝から横須賀他海自の基地を嗅ぎ回っている。

 

中国やロシアの潜水艦は何隻か緊急出港を

しているし、韓国軍も海空軍を動員して

北朝鮮をそっちのけで日本海を嗅ぎ回っている。

 

 

霞ヶ関の官庁街は今ある種のスパイ天国さ、

無論泳がせているだけだがな」

 

 

 

 

「深海棲艦と戦わなきゃならないっていうのに、

人類は何をやってるんだ!!」

 

 

 

 

「そう熱くなるな、菊池士長。

まだ人類は敵の脅威を実感した訳ではない。

 

そんな中で日本に旧式とはいえ、

戦艦や空母といった軍艦が現れたとなると、

警戒するのは至極当然だろう」

 

 

 

 

納得がいかないが、これが人類の現状だ。

 

 

 

共通の敵が現れたとはいえ、

他国のパワーバランスが崩れたとなると

危機感を抱くのも無理は無いか。

 

 

 

 

「流石にこの総監部庁舎ではやや手狭に

なりそうだな。場所を変えるとするかね?」

 

 

 

 

 

かえるって言っても何処にするんだ?

 

 

 

 

聞いてきた癖に、勝手に無線機に指示を出す

警務隊長。どうなるんだよー?

 

 

 

 

「既に手配はできてる。

次は『自衛艦隊司令部』だ。

少しはのびのびできるはずだ」

 

 

 

 

 

 

 

この人なんなのマジで。

 

 

 

手筈が良過ぎるだろ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言われるがまま再びマイクロバスに乗り込む。

 

 

 

 

「おーおー、帝国海軍がいるわいるわ」

 

 

 

 

 

 

 

海側を見れば港の外に駆逐艦から空母、

それに戦艦までぎっしりと軍艦が並んでいる。

 

 

 

 

軽空母が…2隻?

もしかして『千代田』って千代田航で来た系?!

 

 

 

 

 

マジかよ!!

 

 

 

後方に見える戦艦は霧島か!

 

 

 

俺が『ゲーム』の建造で

お世話になった戦艦霧島。

 

霧島にはボス戦でお世話になったなぁ…。

 

 

 

 

そんな事を思いつつ、正門を出て

自衛艦隊司令部がある船越へと向かう。

 

 

 

 

 

「艦娘諸君は頭を下げて!

船越までは基本そのままで頼むぞ」

 

 

 

 

警務隊長の指示で村雨たちは渋々頭を下げる。

 

 

 

 

正門を出ればマスコミと変な団体が騒いでいる。

 

 

 

カメラを持った人たちと艦これグッズを手にした

ファン?たちもチラホラ見受けられた。

 

 

 

 

 

 

10分弱の移動も終わり、俺たちは無事

自衛艦隊司令部へと到着した。

 

 

 

 

 

「幕僚やスタッフが使用している

仮眠室を臨時に確保してある。

 

 

諸君らには今夜はここで待機してもらう。

 

 

明日は朝一で海幕へ赴いてもらう。

今はそこまでしか予定が煮詰まってない」

 

 

 

 

とりあえず腹減った、飯にありつきたい。

 

 

 

 

 

 

 

グゥ〜

 

 

 

 

 

「おっ、すんません…」

 

 

 

この腹は空気を読まずに鳴りやがるなぁ。

 

 

 

 

「時間的に空腹だろうから、食事も用意

させてある。警務隊員はいるが、

みんなで仲良く団欒といきたまえ」

 

 

 

 

 

それから俺たちは司令部の予備会議室で、

ひとときの平和を楽しんだ。

 

 

 

 

途中から合流した霧島、千代田、照月そして

高波も交え、簡単な自己紹介の後

俺が夕方考えた今後の課題と道筋を発表した。

 

 

 

 

 

反応は様々だったが、概ね賛成してくれた。

 

 

 

 

 

 

ふぁ〜あぁ、もう眠くなってきたな。

 

 

 

 

壁の時計を見ればもう2100だ。

 

 

 

風呂に入って寝ますかね。

 

 

 

 

「今日はこれでかいさーん!

まだまだ話し足りないけど、それはまた

明日以降話そうな。

それじゃあおやすみ!」

 

 

 

 

 

 

全然霧島たちと話せなかった…。

 

 

 

ショック!

 

 

 

まだ挨拶のハグしてないのにぃ!!←意味不明

 

 

 

「村上、風呂行って寝ようか」

 

 

 

「うむ、そうするとしよう。

朝は早いからな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂に行ってすぐに仮眠室のベッドに入ると、

今日一日は人生で一番濃い日だったと実感する。

 

 

 

 

 

 

イ級との戦闘、艦娘との出会い、司令や総監、

それに警務隊長や艦娘の船体の出現。

 

 

 

 

今でも信じられないぐらいだ。

 

 

 

 

 

 

 

スゥー…

 

 

 

 

上のベッドにいる村上はもう寝てしまったようだ。

 

 

 

 

少し体が火照っている。

 

 

 

湯に長く浸かり過ぎたか?

 

 

 

 

 

少し夜風にでも当たるか…。

 

 

 

 

 

 

そう考え、静かに部屋を出て

外にいた警務隊員にその旨を伝え、

俺は非常階段の扉を開けた。

 

 

 

 

 

ギィ、バタン

 

 

 

 

 

そこには先客がいた。

 

 

 

 

 

 

「あら、提督も涼みにきたのかしら?」

 

 

 

 

村雨だ。

 

 

 

 

「よっ」

 

 

 

 

軽く挨拶を交わし、俺は非常階段の手すりに

両腕を乗せて目の前に見える

田浦の街と海を見渡す。

 

 

 

 

 

「綺麗だな…」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

外海が見えるわけでは無いが、

田浦の夜景を見て率直な意見を言う。

 

 

 

 

「そうね、平和が一番ね…」

 

 

 

 

村雨も答える。

 

 

 

 

下を見れば警務隊員だろう、厳正な立直をする

隊員が見える。

 

 

 

 

「俺はさ、ぶっちゃけると怖いよ、戦いが」

 

 

 

 

弱気な内を村雨に告げる。

 

 

 

 

「指揮官じゃないけど、上官がこんな事を

言うのはいけない事だと思う。

でもそれを隠して仲間に『恐れず戦え』なんて

言えないし、そんな上官になりたく無い」

 

 

 

 

「提督…」

 

 

 

 

「俺みたいなのより、実際に戦う村雨たちの方が

怖いって事は十分にわかるさ。

 

 

そうだろ?

相手と直に戦うのは戦闘艦たる艦娘の役目だ。

航空機とは違う、間近で敵を見て戦わなきゃ

いけないからな」

 

 

 

 

「私もね、実はすごく怖いよ。

昔沈められたのをたまに夢に見るもの。

 

 

仲間が沈めらて、最後の私に敵が攻撃してくる。

いつも同じ夢、でもなぜか見てしまうの…」

 

 

 

 

村雨は俺の腕を細い両手で弱々しく握る。

 

 

 

 

そんな村雨を俺は優しく撫でる。

 

 

 

「忘れたい事はみんなあるさ。

でも忘れちゃいけないことだって沢山ある」

 

 

 

 

「忘れちゃ、いけない事…?」

 

 

 

 

「うん、それは仲間の最期。

辛くてもその光景を目に焼き付けるんだ。

 

 

あの娘は最期まで諦めずに戦い、

決して挫けずに奮戦したって事をだ。

 

 

人やフネがいつ『死んだ』とみなされると

思う?」

 

 

 

 

「う〜ん、敵に倒された時?」

 

 

 

 

「惜しいね。

俺はその後。倒されてその記憶を人々が

忘れてしまう瞬間だと思うんだ」

 

 

 

 

例え兵士や軍艦が倒されても、ある程度

その記録というのは残る。

 

 

 

年月が経ち、その記録が消え去り人々が

忘れてしまう時その存在は『死んで』しまう。

 

 

 

 

「だから大切な人のことを絶対に

忘れてはいけないんだ。

忘れることは自分がその人を、この世から

殺してしまうのと変わらないんだ…」

 

 

 

 

「村雨忘れない!沈んでいったみんなを

絶対忘れないようにするわ!」

 

 

 

 

「よしよし、いい娘だ…」

 

 

 

少し強めに頭を撫でてやる。

 

 

 

「んふふ〜♪」

 

 

 

村雨が心地良さそうな声を上げる。

 

 

 

 

俺も大切なものができたようだ…。

 

 

 

「明日から忙しくなる。

今日以上にスケジュールも過密になるだろうし、

他の艦娘も増えてくると思う。

 

 

これだけは約束するよ。

俺は村雨を見捨てない。

 

 

一生、この命を賭けて村雨を守る。

どこにいても、すぐに駆けつける。

 

 

例え離れていても、俺たちは一緒だ。

 

 

ほら指切りしようぜ」

 

 

 

 

俺は中世の騎士の様に片膝をつき、

右手の薬指を差し出す。

 

 

 

「う、うん…!!」

 

 

 

村雨の差し出す震える小指を捕まえ、

指切りげんまんをする。

 

 

 

「指切りげんまん、嘘ついたら

酸素魚雷千発の〜ます!」

 

 

 

「えっ!酸素魚雷千発ぅ?!」

 

 

 

「ふふっ、指切った、っと!!」

 

 

 

 

うわっ、村雨、なんて恐ろしい娘!

 

 

 

 

「私提督のお嫁さんになるんだから、

ちゃんと守ってよね!」

 

 

 

えっ、まさかの逆告白?

 

 

 

だが村雨の笑顔を見てると、

やましい考えは浮かんで来ない。

 

 

 

 

「もちろんさぁ!俺がしっかり

守ってやるから、心配するなって!」

 

 

 

「提督大好きー!」

 

 

 

村雨が俺に抱きついてくる。

 

 

 

だが不思議と変な考えは浮かんでこない。

 

 

 

 

俺も普段艦娘にセクハラしてるけど、

今ばかりは素直に村雨を受け入れたい。

 

 

 

 

「さあ、もう遅いから今日は寝ようか」

 

 

 

村雨のハグは名残惜しいが、優しく

村雨から離れる。

 

 

 

「う、うん…そだね」

 

 

 

 

村雨も大人しく引いてくれる。

 

 

 

「俺は先に寝るけど、カゼひくなよー」

 

 

 

後ろ向きに手を上げ、ドアを開け中に入って行く。

 

 

 

バタン

 

 

 

 

「…やっぱり提督本気にしてないみたい、

はぁ〜…、乙女って複雑…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出会って数日の男女。

 

 

 

 

 

 

 

戦争という真っ只中で芽生える戦乙女の純愛。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな戦乙女を夜空の星々は応援するかの様に、

力強く光っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




恋愛モード入りましたが、かなりのハイペース。
1護隊以外の横須賀の艦娘を出しましたが、
かなりの飛ばしに自分でも落胆…。


次回こそは、次回こそはもっとまったりと
各艦娘とのトークをしていきます!






物語は数日しか経っていませんが、
ついに逆告白が早くも出ました。


でも肝心な時に鈍い主人公、
あまり本気にはしていない様子。


普段は積極的セクハラをする癖に…。



なんだか村雨がヤンデレになりそうな
感じに思えたので、ここで否定しておきます。


村雨は天使、古事記にも書いてあります(嘘)。




もっと戦闘シーンを書きたいです!

皆さんの力をお貸しくださいませ。



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