桜と海と、艦娘と   作:万年デルタ

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無事に横須賀に戻ってきた
むらさめといかづちの2隻。



これからどうなってしまうのか、
少しだけ期待しながらご覧ください。







0-8 戦闘報告と第1護衛隊の艦娘 【横須賀】

 

 

 むらさめ某士官寝室 0630i

 

 

 

 

「ふぁ〜あぁ…、眠てぇ…」

 

 

 

 

 

イ級との戦闘の後、村雨は医務室に入室という名の

実質的軟禁を余儀なくされ、

俺と村上も空いていた士官寝室に放り込まれ、

部屋の外にはご丁寧なことに

士官室係の海士が貼り付けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

トイレに行くのも監視が付いて、

食事は部屋に持って来てくれる。

 

 

 

 

 

 

横須賀に着くまでとはいえ、ヒマなわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴重なフリータイムを睡眠に使おうと思ったが、

目が冴えてしまっており全く眠れん。

 

 

 

 

 

 

 

持ち込みが許されたペンと手帳に、

今日までの経緯を書き出すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

椅子に座り机に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数行書いたところで睡魔が襲ってきた。

 

 

 

(うぉ、せめて1ページは書かないと…)

 

 

 

 

 

 

 

そっからどうにか一行をヘビの様な文字で

書いたところで、俺は机に

ヘッドスライディングした。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 むらさめ医務室 同時刻

 

 

 

 

私は戦闘の後、提督に医務室に運び込まれた。

 

 

 

 

駆逐艦の頃はこんな一戦どうって事無かったのに、護衛艦になってから腑抜けてしまったのかしら。

 

 

 

 

 

 

 

久々の戦闘で少し気を使い過ぎたみたい。

 

 

 

 

 

 

海に浮かぶイ級をウイングから見ていたら、

提督がいきなり告白してくるから

私気が動転しちゃった!

 

 

 

 

 

 

 

面倒を見るとか責任は取るとか、

唐突すぎるって!!

 

 

 

 

 

 

 

…私が初めて提督、菊池さんと出会ったのは

彼が教育隊を出てこの『むらさめ』に着任した時。

 

 

 

 

 

 

 

 

その時私が空いていた士官寝室で

ゴロゴロしてたら、いきなり覗き込んできたの。

 

 

 

 

 

 

 

 

5秒くらいじっとこちらを見つめてて、

私が見えてるのかと思って話しかけたの、

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの〜、私が見えてますか?』って。

 

 

 

 

 

 

 

そしたらいきなり私が横になっていた2つある内の下段の士官ベッドに転がり込んで来て、

私びっくりして飛び起きちゃったわ。

 

 

 

 

 

 

外から同期の村上さんが提督を叱って、

部屋の外に連れて行ったわ。

 

 

 

 

 

 

 

…ただ士官ベッドに興味があっただけみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが最初の出会い。

 

 

 

 

 

 

 

私は2人を気に入ってよく彼らの居住区に

遊びに行って、2人の話を横で聞いたりしてたの。

 

 

 

 

 

 

 

私は艦娘で、2人は人間。

 

 

 

 

見た目こそ同じでも、

そこには越えられない壁があり、

それは昔から変わらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

この世に駆逐艦として生を受けてから、

艦娘以外の人には認識されず、

その艦娘の仲間たちも戦争で沈められ悲しむヒマも無く戦いに明け暮れる日々。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして私も沈められて、すごく辛かったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村雨は今までの道のりを思い返す。

 

 

 

 

 

(…でもなんでいきなり告白してきたのかしら?

提督って実は結構なプレイボーイなのかしら?

 

う、嬉しいけどなんか複雑ぅ〜…)

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

ぶぇっくしょぉーい!!

 

 

 

 

 

 

 

ガン!

 

 

 

 

「いったぁー!!」

 

 

 

 

書き物をして寝落ちした俺は、

顔を机に着けたまま派手なくしゃみを

してしまった。

 

 

 

 

 

「うぐぅ…、艦首に大激動ぉ…」

 

 

 

 

鼻がグシャってなったぞ。

骨いったんじゃね?

 

 

 

 

 

「とりあえず風邪ひかない様に、ベッドで寝るか」

 

 

 

 

 

 

鼻を摩りながら、ベッドに横になる。

 

 

 

 

どうせこれからしばらくは寝られないんだ、

今のうちに寝とかないとな。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 むらさめ某士官寝室 時刻不明

 

 

 

 

コンコンコン!

 

 

 

 

 

「んー…、もう少し寝かせろー…」

 

 

 

コンコンコン!

 

 

 

 

 

 

ちっ、うるせぇなあ…。

 

 

 

「はーい、どうぞー!」

 

 

 

人が寝てるってのに誰だよ全く…。

 

 

 

 

俺は寝るのに忙しいんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが訪問者を放置するわけにはいかず、

ベッドを軽く整えドアを開けに行く。

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ菊池士長、少しは休めたかね?」

 

 

 

そこにはにこやかな笑顔の司令と

その愉快な仲間たちの艦長といった

幹部のミナサマ。

 

 

 

 

 

 

「はいっ!おかげさまで休めたのですっ!」

 

 

 

 

 

寝起きという事もあり、咄嗟の言葉が

おかしな口調になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「早速だが荷造りをしたまえ、まずは総監部で話がある」

 

 

 

 

 

 

やはりか、俺の予感は当たっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『まずは』ってのが

嫌な予感しかしないんだが…。

 

 

 

 

 

どうやらもう入港したようで、

艦内は少し慌ただしくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

乗員も取り調べがあるようで、

肩から負のオーラが漂っている。

 

 

 

 

上司の通信士付き添いの元、

職場の電信室にその旨を伝え、荷造りを行う。

 

 

 

 

10分程で支度も終わり、

村上も一緒になり後は村雨を待つだけとなった。

 

 

 

 

「村上、これからどうなっかな?」

 

 

 

 

「しばらくはフネに戻れないだろうな

総監部に海幕。下手したら統幕や内局まで

行くかもしれん」

 

 

 

 

 

「もうダメだぁ、艦これできねぇ…」

 

 

 

 

 

 

村上の推測に、全く筋の通らない落胆を見せる。

 

 

 

 

 

 

「諦めるしかないな…金剛ぉ」

 

 

 

 

 

 

顔には見せないが、コイツも相当な

ダメージの様だ…。

 

 

 

 

 

WAVEに付き添われた村雨も合流し、

業務隊が用意したマイクロバスで総監部に向かう。

 

 

 

 

護衛艦が停泊する岸壁を走りながら

ふと思う。

 

 

 

 

 

 

 

(そういや、

他のフネの艦娘は現れていないのかな?)

 

 

 

 

 

 

 

バスの窓から他の護衛艦を見る限り、

そういった騒動は起きてはいない様だ。

 

 

 

 

 

 

 

そうこうしているうちに総監部に到着し、

背中を押される様に庁舎に歩いて行く。

 

 

 

 

 

門の方向を見ればマスコミやら平和団体が集まり

ある種の祭り騒ぎになっていた。

 

 

 

 

「マスコミにはその少女の事は

まだリークしていない。

決定が出るまで許可されたこと以外は話すなよ」

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか横にいた見知らぬ幹部にそう言われ、コクンと頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(誰だアイツ、陰気臭そうな感じがすっぞ)

 

 

 

 

 

 

 

そいつはつかつかと先に行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「彼は横須賀地方警務隊の隊長だ、

陰気臭そうなヤツだが正義感は強い。

見た目ほど悪いヤツではないよ」

 

 

 

 

 

 

司令がそっと耳打ちしてくれる。

 

 

 

 

 

 

「け、警務隊ですか…」

 

 

 

「おや、何かやましいことでも有るのかね?」

 

 

 

「いえ、決して!」

 

 

 

はっはっはと司令が笑いながら前を向く。

 

 

 

 

俺はケーサツとかは苦手なんだ。

好きな人もあまり居ないと思うが…。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 横須賀地方総監部作戦室 0950i

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

取り調べは作戦室で行うらしい。

 

 

 

 

 

 

 

初めて入ったが結構ハイテクな会議室

といった感想だ。

 

 

 

 

 

 

 

だがそれ以上に目の前の重鎮が気になる気になる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の所属する第1護衛隊の上、

第1護衛隊群の群司令から地方総監、

さっきの警務隊長や防衛部長やら

陸自空自に海保といった

お偉いさん方のオンパレード。

 

 

 

 

 

 

 

「ではまず、戦闘詳報から行きたいと思います。

第1護衛隊司令、お願いします」

 

 

 

 

 

司会役なのであろう、『総監部管理部長』

と机に貼られた1佐が、隊司令に説明を促す。

 

 

 

 

 

 

 

「はい、海上警備の名目で行動命令が出され

『むらさめ』『いなづま』の2隻が…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてイ級を撃沈し、残留物は油しか回収できず

帰港したと司令が言うと、

『技術補給監理官』から苦言が入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「隊司令、せめて船体の残骸は残そうと

努力して欲しかったね。

 

 

敵は何者なのか、今知りたいのはそれなんだ。

それに弾薬やミサイルの補給や調達

だってあるんだ、もう少し上手く

やってもらわねば…」

 

 

 

 

「申し訳ありません」

 

 

 

 

立って説明していた司令が

技術補給監理官に頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おい待て。

司令は『責任は”俺”が取る!』と言って、

フネや乗員を危険に晒さないために

慎重策を取ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

戦場に出てこない陸上の幕僚が

文句を言うんじゃない!

 

 

 

 

 

 

「総監、発言、よろしいでしょうか?」

 

 

 

 

 

拳をグーに握り、スッと手を挙げる。

 

 

 

 

「君はむらさめの菊池士長か、

構わん発言したまえ」

 

 

 

 

 

総監の許可を貰い、

監理官になるべく冷静に言いたいことを述べる。

 

 

 

 

 

「お言葉ですが技術補給監理官、

司令は我ら隊員を思ってそうしてくださいました。

 

 

 

監理官は戦場にいらっしゃらなかったため

ご存知無いでしょうが、先ほど司令から説明が

あった様に敵艦に接近した際、

まだ完全に撃破出来ていなかったのです。

 

 

もちろん司令は証拠物件を探そうと

尽力しましたが、フネや乗員と修理補給を

天秤にかけ人命を取っただけの事。

 

 

 

別にフネや乗員が失われても構わないのであれば、喜んで敵艦に接近しますが、

しかしその方が損失や補充がかさむだけかと

私は愚策しますが?」

 

 

 

 

 

 

言いたいことを薄いオブラートに包んで

顔面に投げつけてやる。

 

 

 

 

監理官の顔に苛立ちが浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

別に1佐と言えどただのおっさんに

睨まれようとどうでもいい。

 

 

 

 

 

「菊池士長、言いたい事はわかるが

少し表現を考えたまえ」

 

 

 

 

 

総監に注意され、一応非礼を詫びる。

 

 

 

 

「そこでだ、これからどうなるか、

どうしなければならないか。

諸君らの意見を聞きたい。

 

 

これは自衛隊防衛省だけの問題では無い、

日本政府を始め世界全体の問題なのだ」

 

 

 

 

 

 

「総監、それにつきましては菊池士長らが

私に提案をしてくれました。

 

 

彼らの意見をまずお聞きください」

 

 

 

 

 

 

 

おいィ!司令、何こっちに投げてくる訳?!

 

 

 

 

 

 

室内の視線が俺を中心とした村雨と村上に集まり、すごく嫌なプレッシャーを感じる。

 

 

 

「…まずは横におります少女、

『村雨』について説明します。

 

 

彼女の説明によると、駆逐艦初代『村雨』として

フネが就役した際、彼女もフネの魂として

この世に生を受けたそうです。

 

 

そして2代目の駆逐艦村雨は太平洋戦争で

連合軍と戦い撃沈、海上自衛隊が創設され

護衛艦初代『むらさめ』、そして2代目むらさめとフネの運用に携わってきました。

 

 

人間の乗員にはずっと認知されなかった

ようですが、昨夜CICに現れた次第です。

 

その原因は不明です。

彼女は自分”たち”の事を『艦娘』、

艦に娘でかんむすと呼んでいます」

 

 

 

 

 

 

一同が納得できないといった顔をする。

 

 

 

 

 

俺だってシラネーヨ、

こっちが聞きたいわ!

 

 

 

 

 

「今君は『自分”たち”』と言ったが、

それは他にも同じような少女が

いるということかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

だから知らんがな…。

 

 

 

 

 

 

「それについては私が説明します」

 

 

 

 

 

村雨がおもむろに手を上げ説明を引き受ける。

 

 

 

「他にも艦娘はいます。

全部の自衛艦にいるわけではありませんが、

少なくとも護衛艦『かが』『いずも』『こんごう』といった大戦時の主だった軍用艦には艦娘がいて、

 

潜水艦の『そうりゅう』や音響観測艦『ひびき』、潜水艦救難母艦『ちよだ』などに多数存在します。

 

 

彼女らはまだ認知されていないようですが、

その方法は私にもわかりません」

 

 

 

 

 

 

バタッ!

 

 

 

 

 

 

横を見ればずっと黙っていた村上が鼻血を出して

気持ち悪い顔を浮かべて床に倒れている。

 

 

 

 

 

 

さては『金剛』がいると聞いて興奮しやがったな。

 

 

 

 

 

 

 

「彼は大丈夫かね?!」

 

 

 

 

 

「ただの疲労です、少し休めば元に戻るでしょう」

 

 

 

 

総監の心配に素っ気なく答え、

外に控えていた警務隊員に

医務室に運んでもらった。

 

 

 

 

 

「というわけです。

彼女ら艦娘がフネの運用に携わり、

効率良く作業や戦闘が行いやすくなっています。

艦娘を排除せず保護してもらえるよう、

配慮していただきたい」

 

 

 

 

 

 

どういうわけなのか俺にもわからないが、

取り敢えず艦娘を変に扱わないように

お願いをしておく。

 

 

 

「恐らくですが、襲撃はまた、

いえこれからずっとあるでしょう。

 

 

この襲撃で終わりません。

今回こそ敵は1隻でしたが、

次は何隻でどこに来るかもわからないのです。

 

 

私ごときが言うまでもないでしょうが、

全自衛隊に第一か第二配備を。

 

 

海自と空自は最優先で、

陸自は対艦ミサイル部隊と攻撃ヘリ部隊を優先。

 

 

それと最後に防衛大臣へ、少なくとも

『海上警備行動』、『治安出動待機命令』の検討を上申します…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ざわっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「海士長ごときが何を言うか!」

 

 

 

「そうだ、身を弁えろ!」

 

 

 

 

 

 

俺の大胆発言に対し、

出席者から罵声が飛ぶわ飛ぶわ…。

 

 

 

 

 

防衛部長なんてハゲ頭に血管浮き出てやんの!

 

 

 

 

 

 

 

好き勝手言う人を冷めた目で見渡す。

 

 

 

 

 

 

総監と司令、群司令や

自衛・護衛艦隊司令官といった生粋の船乗りらは

目をじっと閉じ、腕を組んでいる。

 

 

 

 

 

 

反対に粋がっているのは幕僚やデスクワーク組。

 

 

 

 

俺が言わずとも、いずれそうなるだろうに…。

 

 

 

 

 

 

こっちは守るために戦わなくちゃ

いけないってのに、『参謀』ってのはいつの時代もイチャモンばっか付けやがるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば『海上警備行動』は自衛隊のみだが、

『治安出動』の命令があった場合、海保も

防衛大臣の指揮下に入れることができたな。

 

 

 

 

 

 

海保の人も出席してたけど、

本人たちはどう思ってるかな。

 

 

 

 

ちらりと海保の人たちを見る。

 

 

 

『第三管区海上保安本部 本部長』

と机に貼られた人。

 

 

たしか第三管区つーと南関東の海域管轄だったな。

 

 

 

 

視線を上げ顔を見たら、その本部長は

俺を強い眼力で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

睨んではいないようだが、何か言いたげだ。

 

 

 

 

 

 

「総監、海保第三管区本部長です。

発言よろしいでしょうか」

 

 

 

 

 

「どうぞ本部長、発言なさってください」

 

 

 

 

 

 

総監に許可をもらって、

本部長がなぜか俺の方を見る。

 

 

 

 

 

(え、何?やっぱり怒ってる?)

 

 

 

 

 

 

「菊池士長でしたね、

貴方はこれからどうしたい?」

 

 

 

 

 

 

「はい?」

 

 

 

 

予想もしてなかった質問に、

思わず目が点になる。

 

 

 

 

「私は必要とあれば海保を自衛隊の指揮下に

入れてもらって構いません。

 

 

ただ貴方はそうしてどうしていきたいのか、

それだけを伺いたい」

 

 

 

 

 

 

「えっと私は…」

 

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

 

 

 

取り敢えず立ち上がり、答えようとする。

 

 

 

 

 

 

ダメだ、全く思いつかん。

 

 

 

 

 

 

今までは下っ端自衛官として頑張ろう程度にしか

考えていなかったから、

これからのことなんて想像したことなかったぞ。

 

 

 

 

 

 

…下手な事は言えない。

だが完璧なコトバも思いつかず、

漠然とした考えが脳裏を行ったり来たりする。

 

 

 

 

「菊池士長、自分のコトバで、

言いたい事を言いたまえ」

 

 

 

 

 

司令が俺にフォローなのか、言葉を掛けてきた。

 

 

 

 

…なんか楽しそうな顔してねぇか、司令。

 

 

 

 

 

本部長もよく見れば、目が笑っているような…。

 

 

 

 

 

そんなことより、今は質問に答えないと!

 

 

 

 

「私は、これからどうなるか分かりませんが、

自衛官として、職務を全うしたいです。

 

 

これから日本と世界が深海棲艦、

私たちが勝手に呼んでいるのですが、

これらの襲撃を受けるでしょう。

 

 

日本も海上交通が分断され、

流通も滞り経済も大変な事になると思います。

 

 

私は戦いたいのではありません、できれば部屋で

ゴロゴロして過ごしたり、

友人と遊びに行ったりして平和を

満喫していたいです。

 

 

…でもそれじゃあダメなんです。

人が傷付くのを、安全な後方で見てるだけなんて

できません。

 

 

守りたいもののために戦って、大切なものを守れる可能性が自分で高められるのであれば、

その努力を惜しみません。

 

 

自分が傷付く以上に他人が、

仲間が傷付くのは許せません。

 

 

できることなら『幹部』になってこの戦いの

終焉をこの目で、この手で掴み取りたい。

私はそう考えています!」

 

 

 

ペターン

 

 

 

ヘナヘナと席に座る。

 

 

 

言いたいことは言い切った、

もう言い残すことはない。

 

 

 

 

大層なことは言えなかったが、

言いたいことは言ったつもりだ。

 

 

 

 

 

さて、本部長はなんて言うのか…

 

 

 

肩で息をしつつ、本部長を見つめる。

 

 

 

 

「ありがとう、貴方の言いたいことは

よく伝わったよ」

 

 

 

 

それだけを俺に返すと、

総監に向かって

 

「総監、海保は全力で自衛隊の支援に

つかせてもらいます。

本庁はどう言うか分かりませんが、

私が説得しますのでご安心ください。

 

 

第三管区としては海自に喜んで協力いたします」

 

 

 

 

 

 

 

ざわっ!

 

 

 

 

 

「海保が喜んで協力だと、

あんな海士長の言葉で?!」

 

 

 

「いや、もし治安出動や防衛出動となれば

海保の協力は必要不可欠だ、ありがたい話だ」

 

 

 

「だがこんな事は前例がない、

もっと関係各省と調整をしてだな…」

 

 

 

「『鬼の東郷』が海保に行って丸くなったか?

勝手に話を進めるな!」

 

 

 

 

 

 

 

またもや幕僚組から罵声が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

今言ってた『鬼の東郷』ってなんだ?

海保に行った東郷、どっかで聞いたような…?

 

 

 

 

 

 

「貴様ら情けないとは思わんのか?!

こんな若い海士が守りたいものの為に

身をなげうって、戦いに赴くと言っておるのだぞ!

 

 

 

貴様ら幕僚組はどうした!

 

 

 

あ?!

 

 

情けない!

 

 

それでも防大をトップクラスで卒業した

エリートか?!

 

 

俺が4年の時はもっと貴様らには

熱意があった筈だ、それが今ではどうだ?!

 

 

自身の保身や職務の複雑化に頭を抱えやがって、

昔は自分の信ずる道をぶつかり合いながら歩んだ『仲間』ではなかったか?!」

 

 

 

 

 

 

 

にこやかな顔をしていた本部長が、

幕僚組の罵声を聞き息を荒げる。

 

 

 

 

 

「あっ、本部長。

貴方は確か先日の東京湾の襲撃の際の調査団の!」

 

 

 

 

「おおっ、知っていたかね。

そうだ、私は一等海上保安監、

防大で『山本』と一緒の釜の飯を食べた

東郷平次郎だ」

 

 

 

 

 

 

 

司令が言ってた海保に行った防大同期の人って

この人だったの?!

 

 

 

 

それも第三管区本部長という結構なお偉いさんとは…。

 

 

 

「山本司令、どういうことかね?」

 

 

 

 

話がわからなかった群司令が隊司令に質問する。

 

 

 

「はい、この東郷本部長とは防大で同期でして、

彼は任官拒否で海保に行ったのですが、

先日の東京湾の事案で海保側の調査団で

参加してまして。

 

今日来るのは知りませんでしたが、

まぁやらかしてくれましたなぁ」

 

 

 

 

「山本、東郷。まーたお前ら

やらかしておったなぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

今度は唐突に総監が話に乗り込んで来る。

 

 

 

 

 

訳が分からずオロオロする俺たちや他の幹部。

 

 

 

 

「そういう『南雲中将』も

まんざらではなさそうですな」

 

 

 

「相変わらず顔だけ厳つくて、

頭の中はトンデモなんでしょうなぁ」

 

 

 

 

 

 

司令と本部長が総監に茶々を入れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どういうこった?!

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、私が防大の4年の時にこの2人が

1年で入校してきてな、初日から色々やらかすわ

ピカールコーヒーを飲まされるわで

よく絞めてやったものだ」

 

 

 

 

 

 

その後も話は続き、どうやら総監と司令、

本部長や幕僚の数人は防大で一緒だったようだ。

 

 

 

 

 

 

なるほど、司令と本部長がニヤニヤしてたのも

そういう裏があった訳か。

 

 

 

 

 

出港してから司令は本部長と連絡を取っていない

筈だし、入室して知ったと言っていたから

アイコンタクトでツーでカーだったのか。

 

 

 

 

 

 

俺もハメられたということかな。

 

 

 

 

 

 

「取り敢えず今後のことは

次のオペに回すとしよう。陸自と空自、保安庁には連絡官や上に掛け合ってみる。

 

 

出撃した諸君はご苦労だった。

今日はゆっくり休むといい、

といってもこの基地からはまだ出られんがね。

 

 

明日からはまたバリバリ働いてもらう。

恐らく市ヶ谷や永田町を行ったり来たりすることになるだろうが、そこは我慢してもらいたい。

 

 

それと菊池士長、君たちの事は

悪いようにはしないと約束しよう。

 

 

そこの村雨ちゃんだったかな?

君にも非人道的な実験はさせないし、

あくまで了承を受けた上での検査や実験協力には

参加してもらうよ。それでいいかね?」

 

 

 

 

「ホントですか、よかったぁ〜…」

 

 

 

 

肩の荷が降りたかのように、

村雨はヘナヘナと肩の力を落とした。

 

 

 

ついでに髪がワンコのようにヘナ〜と動いたのは、俺の錯覚だと信じたい。

 

 

 

 

「今日は申し訳ないが安全の為に警務隊の部屋で

3人を保護させてもらう。

こればかりは保全上私にはどうしようもない。

差し当たって何か要望はあるかね?」

 

 

 

 

 

総監がリクエストを聞いてきた。

 

 

 

 

「そうですね、取り敢えずカツ丼とブランデー、

紅茶をいただければと。

 

あと携帯電話や筆記用具が持ち込めるのであれば

お願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

基地にアルコール持ち込んじゃダメだろ、

でもこれぐらいいいよね?

 

 

 

カツ丼なんて警察の取り調べみたいだって?

 

 

 

 

だって無性に食べたいんだから

しょうがないだろう。

 

 

 

 

「むぅ、アルコールか。

ブランデーぐらいならまあ私の方で

うまいことやっておこう。

 

 

ただ携帯電話となると厳しいかもしれんな。

良くても回線やネットは監視付きに

なるかもしれん…」

 

 

 

 

「全然大丈夫です、変なことはしませんので」

 

 

 

 

「私は特にありませーん!」

 

 

 

 

 

 

村雨が元気に答える。

 

 

 

 

なお後から聞いた話だが、

司令や艦長らはフネで一夜を明かしたそうだ。

 

 

 

 

 

 

俺たちは少し恵まれていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は警務隊の指示に従い、3人別々に

指定された部屋に向かった。

 

 

 

 

 

「トイレの際は外の者に言ってください、

それ以外は部屋から出られません」

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、そうなるな。

 

 

 

 

 

部屋に入れば留置所ではないが、

窓に鉄格子が付いている。

 

 

 

 

コンセントもねぇ。

許可が下りたケータイは寝るときに預けて

充電してもらうしか無さそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

部屋に入り落ち着いたのか、

腹が急激に空いてきた。

 

 

 

そう思っていたら、警務隊員が

要望していたカツ丼を持って来てくれた。

 

 

 

 

 

 

美味い!

戦いの後のメシは格別だよね。

 

 

 

 

「さっきは幹部になって戦いを見届けるなんて

言っちまったけど、流石に言いすぎたかねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

先ほどのオペを思い返す。

 

 

 

 

「にしても総監と司令、それと海保の本部長が

防大で一緒だったとはね、

世界は案外狭いのかもしれないな」

 

 

 

 

 

本部長が司令と同期というのも驚きだが、

総監もそれに関係があったとはな。

 

 

 

 

 

 

 

使用が許可されたスマホで、

3人の経歴を検索する。

 

 

 

 

 

 

南雲忠(なぐもただし)、横須賀地方総監。

防大27期。

防大での渾名は『南雲中将』

 

 

 

 

東郷平次郎(とうごうへいじろう)、

第三管区海上保安本部本部長。

防大30期、任官拒否して海保に入庁。

防大での渾名は『鬼の東郷』

 

 

 

山本五郎(やまもとごろう)、

第1護衛隊司令。

防大30期、防大での渾名は『イソロク』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで渾名なんて出てくるんだ…?

絶対身内が書き込んだろ、コレ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば今日の戦闘とかロシアの件は

どう報道されてるのかな。

 

 

 

 

 

 

 

『ロシア、襲撃』で検索。

 

 

 

 

『ロシア軍、不審船を追撃するも行方不明!』

 

 

 

『ロシア、潜水艦にて捜索するも見失う』

 

 

 

 

どうやら『イ級後期型』は

行方をくらませたらしい。

 

 

 

 

 

空軍や軍事衛星を使って徹底捜索したが、

ロストしてしまったようだ。

 

 

 

 

 

では日本はどうなのだろうか。

 

 

 

 

検索しようとしたが、

トップページにでかでかと昨夜の襲撃の

記事が書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

開いてみれば

 

 

 

『海自、不審船を追跡の後撃沈』

 

 

『大砲を積んだ不審船を交戦の末撃沈!』

 

 

『自衛隊不審船を攻撃、平和への暴挙』

 

 

 

3つ目の記事は自衛隊を悪く言う

記事だ、ひでえ書き方してるな。

 

 

 

 

『本日未明、東京湾沖に出ていた

 

海上自衛隊横須賀基地所属の護衛艦むらさめ、

いかづちは、突如発砲してきた不審船に対し

正当防衛と緊急避難の為、

これに応戦しました。

 

 

護衛艦の被害は無いとのことですが、当時

海上を航行していた船舶の乗員によりますと、

不審船はいきなり護衛艦に向け

大砲を撃ってきたとのこと。

 

 

これに対し防衛大臣の発表によりますと…』

 

 

 

 

 

よかった、『艦娘』については

全く書かれていない。

 

 

 

 

 

警務隊長の言った通りだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

ネットの反響はどんな感じだ?

 

 

 

 

掲示板をみれば

 

 

『【速報!】深海棲艦の攻撃、

海自応戦【ヤバイ!】』

 

 

 

とか

 

 

 

『【艦これ】深海棲艦出現、

提督共どうする?【ガチ提督】』

 

 

 

といったスレッドが見受けられた。

 

 

 

 

 

 

 

結構話題になっているんだな。

 

 

 

 

今回の件の画像とかはまだ出回っては

いないようだが、ロシアの件で

『イ級後期型』では?と推測したスレッドも

あったがあまりまともな議論はされていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

記事や掲示板を見るのも飽きて、

スマホを閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

部屋の時計を見ればまだ1500を過ぎたぐらい。

 

 

 

 

 

 

今後の課題や俺たちの行方を

のんびりと考えるとするか…。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 横須賀警務隊本部 某所 1630i

 

 

 

「…んで艦娘の処遇に関しては、人間扱いで

幹部自衛官。給料も出して、生活を保障っと」

 

 

 

 

あれから俺は提案書ではないが、

こうすればいいのではないかと思う事を

支給されたノートに書き出していた。

 

 

 

 

 

 

 

まずは海自の編成、

総監部ごとに艦娘を集め、それらで艦娘艦隊を作り深海棲艦との戦いに備える。

 

 

 

所属はどうするか悩んだが、自衛艦隊直属にした。

 

 

 

護衛艦隊の隷下も考えたが、

いかんせん即応力が無さ過ぎる。

 

 

 

 

 

 

自衛艦隊の下に新たに艦隊司令部を編成し、

独自運用するのがいいと思ったからだ。

 

 

 

「名前は流石に艦娘艦隊司令部はマズイから…、『特務艦隊司令部』これだ!

なんか締まりが無いけど、こんぐらいで」

 

 

 

「自衛艦隊司令部内に設立して、

全国の作戦をここで指揮する。

各地の総監部に艦娘隊や群の司令部を置いて、

そこで前線の指揮」

 

 

 

この辺は本職の人に任せるとしよう。

 

 

 

 

「俺や村上は隊司令として艦娘の指揮、

できればフネに乗り込んだほうがいいな…」

 

 

 

 

ノートにどんどん付け足していく。

 

 

 

 

 

 

「艦隊っていっても幾つかのグループに

分かれるからな、まずは数隻の『隊』の

ネーミングを考えないと」

 

 

 

 

 

 

 

 

第1艦娘隊、違うな…。

 

 

横須賀鎮守府艦隊、だから鎮守府じゃねーよ。

 

 

第1特務護衛隊、少し違うなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

うーん、無難な名前のほうがしっくり

きそうな気がするな。

 

 

 

 

 

そうだな、通常の護衛隊は

1桁や2桁の名前をつけているから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

第101護衛隊、何の捻りも無いが意外としっくり。

 

 

 

他に駆逐隊とか戦隊とかも浮かんだが、

速攻蹴られるのでパス。

 

 

 

 

 

俺の『守りたいものがあるから戦う』信念にも

合致してるし、いい感じ。

 

 

 

 

見てろよ深海棲艦、これで勝つる!

 

 

 

 

 

「艦隊名だけで勝てるなら苦労しないってーの」

 

 

 

あんまり痛い名前や厨二な名前にすると

恥ずかしくて名乗れなくなる。

 

 

 

 

『村雨』や『電』とかが所属を聞かれて、

赤面してモジモジした光景は見てみたいが、

俺もそうなりたくは無いからな…。

 

 

 

 

 

「俺や村上は幹部自衛官として

『提督』になるっていっても、

ならせてくれるもんかね?」

 

 

 

 

 

そこは非常時の措置として、

優秀な人材を採用したりだな…。

 

 

 

 

「お、それいいな」

 

 

 

「部内から艦これに精通する者を

提督に採用したり、民間から登用も

検討すべしっと」

 

 

 

とはいえゲームで勝てても実戦で

うまくいくとは限らない。

 

 

 

 

 

 

それはアメリカ軍の実験で証明されていて、

FPSで上手い奴を採用しても、

所詮ゲームに特化したものであり、

基礎体力や戦術は全く戦いには

通用しない結果となった。

 

 

 

 

 

俺みたいな現役ならまだしも、

パソコンの前にずっといるような奴らに

教育隊が務まるとは到底思えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てか『俺の艦娘』に手を出させてたまるかてんだ!

 

 

 

 

俺には沢山の艦娘とケッコンするという野望が

あるんだからな、

将来の嫁に指一本触れさせねぇ!!

 

 

 

 

ノートがしょうもないことで埋まっていくと、

外が何だか騒がしい…。

 

 

 

 

 

 

 

んだよ、人が薔薇色の未来予想図を

描いておいでだってのに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『港外に昔の軍艦がいるぞ!』

 

 

 

…おい、どういうこっちゃねん。

 

 

 

『あれは帝国海軍の駆逐艦の村雨だな、

ほら、横にムラサメってカタカナで書いてある』

 

 

 

『ミリオタ知識はいいから、早く走れ!』

 

 

 

 

外の隊員たちはそのまま走って行ってしまった。

 

 

 

 

「『村雨』が『むらさめ』に現れたとおもったら、『村雨』がまた現れたってかぁー?」

 

 

 

 

 

艦娘が現れたぐらいだ、

もう何が起きても俺は驚かんぞ。

 

 

 

 

 

フネの魂たる艦娘が現れたんだ、

そりゃ船体も現れるだろうさ。

 

 

 

 

このところの驚きの連続で、

もう何でもよくなってきた驚きの感覚。

 

 

 

 

 

 

 

部屋に軟禁され、どうしようもなくなっていると

唐突にドアがノックされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコンコンコン。

 

 

 

 

 

可愛い感じのノックが4回叩かれる。

 

 

 

 

 

「もう誰だよ。なんかあったんですか?」

 

 

 

 

文句を垂れつつ、ドアを開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前、視線を下に。

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃーん!雷(いかづち)よ、

かみなりじゃ無いわ!」

 

 

 

 

 

 

 

…バタン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺、疲れてんのかな?」

 

 

 

 

 

 

なんか部屋の外にいたんですけど…。

 

 

 

試しに頬をつねってみる。

 

 

 

痛い、現実だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再びドアを開ける。

 

 

 

 

ガチャ。

 

 

 

 

「なによもう、私に気付かなかったの?

ひどーい!」

 

 

 

 

 

「あのさ、どちらサマ?」

 

 

 

 

「だから雷って言ってるじゃない!

司令官、よろしく頼むわねっ!」

 

 

 

 

 

 

 

一歩雷に近寄り片膝をつき、

雷の視線に合わせる。

 

 

 

 

「な、なによ…」

 

 

 

 

 

 

 

ジーー

 

 

 

 

ふにふに!

 

 

 

 

「い、いっふぁ〜い!!」

 

 

 

 

雷の頬を両手で軽く引っ張る。

 

 

 

 

「…うむ、合格だ」

 

 

 

 

「にゃ、にゃんのことよ?!」

 

 

 

「いや、俺も雷に出会えて嬉しいよ。

よろしく頼むな!」

 

 

 

わしゃわしゃと手で雷の頭を撫でる。

 

 

 

「うん、雷、司令官のために出撃しちゃうねっ」

 

 

 

頬をやや赤くさせながら、

雷は俺に満遍の笑みで答えてくれる。

 

 

 

 

ぺかー!!

 

 

 

(オゥッ、ベリーキュート!)

 

 

 

 

思わず雷を抱きしめてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギュッ!!

 

 

 

「ち、ちょっと司令官!いきなりどうしたの?」

 

 

 

「いやぁ、雷が頑張ってくれるって言うから

俺嬉しくてついな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

菊池は嬉しくなるとついやっちゃうんだ!

 

 

 

「そうそう。もーっと私に頼っていいのよ」

 

 

 

 

 

 

幼女を抱きしめるという事案を華麗に流して、

胸を張っている雷。

 

 

 

 

 

 

 

 

…胸は無いけどな。

 

 

 

 

俺はおっぱい星人を自負しているが、

可愛い女の子ならいいのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうやって雷を満喫していると…

 

 

「…なに?どんな提督かと見に来れば、

ロリコンなのかしら?」

 

 

 

 

通路から聞こえる声の方向に顔を向けると、

そこには…

 

 

 

「えっ?!まさか君はっ…!」

 

 

 




ついに他の艦娘が登場しました。
ついでに隊司令の名前も明らかになりました。
そっちはどうでもいいですか、そうですか。



最後に現れた艦娘?はいったい誰なのか!
第1護衛隊のいずもマン、一体何者なんだ…?
さて、しばらくは内政回といったところです。


少しずつ物語が進んでいきます。




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