0-0 劇場版風予告編
———この国には自衛隊という組織がある。
大東亜戦争…所謂太平洋戦争で負けた日本は、軍事力の放棄を戦勝国によって押し付けられた。
「戦争はもうこりごりだ」という国民の思いと、戦勝国側の思惑が一致し、時の政府も戦後の経済対策の優先と財政負担の軽減を画策し、日本は軍備を放棄した。
しかし時の情勢はそれを許さなかった。
朝鮮戦争が勃発し、GHQは日本に国内保安を目的としたた警察予備隊および海上警備隊の設立を指示、これが後に自衛隊となり、現在に至る。
自衛隊は存在や装備こそ他国の軍隊と遜色ないが、目的や行動が異なる。それは“侵略はせず先制攻撃もしてはならない”という平和憲法の下での専守防衛。これは戦後70年以上破られたことがなかった。そして国民や当の自衛官は、それを平和国家である日本の誇りとしてきた。
しかしそれは世界情勢が作り出した単なる『綱渡りの平和』であったと後に人々は痛感する。
——敵は現れ、戦争が起きた。
だが敵は人間ではなかった。
“海の底から現れたらしい”との噂程度の情報とも呼べない情報しか、人類の誇る優れた情報機関は得ることができなかった。
高価で強力な武器を持っていても何の成果も上げられず海に散った者たち。その一方で、貧弱な武器しか持たずとも強い意志を持ち辛うじて生還した者たちもいた。
両者には一体どんな差があったのだろうか……。
だが、戦いに勝っても負けても戦局は変わらなかった。常に劣勢で後が無い人類。それは日本も同じであった。
“相手が人間であれば少しはマトモな戦争であったかもしれない”
ある者は晩年、自伝にそう書き遺した。
“戦争にマトモなものなど無い、それは有史から不変である。かの深海棲艦との戦いは悲惨過ぎた、よって後世に残すべきではない。だが我々は言い伝える義務がある、その責務を負ってしまったのだから…”
かつて国という枠組みを越え、“彼”と共に戦ったある退役軍人の歴史家は言う。
……
『This is Murasame!!相手は海賊やロボットなんかじゃありませんッ!!』
『相手との交渉が第一だ、まずは話し合いからだ…』
『統幕長、海幕長。それは先制攻撃になるのではないかね?』
『こっちゃあ戦争してんだッ!アンタらみたいに選挙の為に働いてる訳じゃないんだッ!!』
『提督、もしさ、もしもだよ…?この戦いが終わったらさ———』
『申し訳ないがそういう死亡フラグはNGな。あと“結婚”は一夫多妻制で頼む、もちろんお前を含めた艦娘全員とだ』
《国家とは何か、国民の為とは。
偽りの平和と正しい嘘は悪なのだろうか》
平和とは何なのか。戦いの中で求め、平和の中で見失う。
この物語は、
そんな防人(さきもり)達の苦悩と
束の間の平和を描いたものである。
そんなディープでラフな作品を
つつーっと書いていきますので、
どうぞのんびりご覧ください。
そのまま1話を読んでくださいませ。