346のプロデューサー達の女難な日常   作:黒いファラオ

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今回の話は、本編には一切関係ありません。自分の想いを、遼哉に代弁してもらったモノです。気に入らない方はブラウザバックをどうぞ


番外編

「お兄ちゃん」

「ん? 加蓮か」

 

 読んでいたマンガに栞を挟んで机の上に置く。

 

「あれ、なんか邪魔しちゃった感じ?」

「いやマンガ読んでただけだし大丈夫」

「へぇ〜、マンガなんて珍しいね。何読んでたの?」

「読む暇がないだけで元々マンガは好きだっつの。BLEACHだよ。加蓮は知らないだろ」

 

 奈緒なら間違いなく通じるだろうけど。

 

「あ、知ってる! 懐かしい!」

 

 机の上に置いていた単行本を持ち上げて表紙を加蓮に見せると、意外な反応が返ってきて驚いた。

 

「え、知ってるのか?」

「うん。入院してた時に読んだことある」

 

 っていうと、忙しくなってお見舞いに行けなくなった5,6年前ぐらいか。

 

「でも、加蓮はこういうマンガとか興味ないと思ってたんだが」

「ちょっとしたきっかけがあってさ」

「きっかけ?」

 

 それは非常に気になる。加蓮から見舞いに行けなくなってからの空白期間の話を聞くこと滅多に無いからな。加蓮いわく、「あの頃のカッコつけてスレてた自分を今になって思い返すと恥ずかしさで死にたくなるから」だそうだ。俺としてはそれが気になるんだよなぁ……(ゲス顔)

 

「近くの病室にさ、高校生くらいかな? それぐらいの感じの男の人がいつも入院しててさ、その人がよくBLEACH読んでたよ」

「ほう……仲が良かったのか?」

「仲が良かったというか……よく面倒見てくれてたって感じかな。病室近かったからさ。その人の病気の方が私のなんかよりずっと重いヤツだったらしいんだけどね」

「そっか」

「うん。そのお兄さんの影響でBLEACH読んでた。その人がこういう単行本いっぱい持っててさ、貸してもらってたんだ。入院中なんてやること無いし」

 

 確かになぁ……昔俺が加蓮のお見舞いに行った時も、加蓮は大体何をするでもなくただボーッとしてることが多かったし。

 

「どんな人だったんだ?」

「えーっとね。元々普通に学生してたらしいんだけど薬で抑えてた病気が突如悪化して、病院に縛られることになったらしいよ」

 

 気持ちは察する。今まで普通に生活していた学生がずっと病院に縛られることになるなんて、俺なら耐えられない。

 

「でも、その時に知ったBLEACHに救ってもらったって」

「救ってもらった?」

「そう。一護たちの諦めない姿を見て、自分も頑張ろうって思えるようになったって嬉しそうに話してたよ」

「ふーん……ん?」

 

 なんだろう。何かが引っかかる。この話を、何処かで聞いた気がする……あっ。

 

「加蓮」

「ん? 何?」

「そのお兄さん、手紙を書いてたりしなかったか? 看護師さんに代筆頼んだり」

「手紙? どうだったかな……あっ、でもそのお兄さんの部屋から封筒みたいなのを持って出てきたのを見たことあるかも」

 

 ビンゴかもしれない。

 

「そのお兄さん、亡くなってるか?」

「う、うん。五年前に……でもお兄ちゃん、なんで分かったの?」

「BLEACHの作者……久保帯人先生って言うんだが、その久保先生がTwitterであることを言ってな?」

「あること?」

 

「五年前、連載10周年の頃に久保先生が体調をずっと崩してて休載が続いた時があったんだ。それがいたくメンタルにキたらしくて、スランプ状態に陥ってたらしい」

 

「そんな時ファンレターの中に、名前も住所も書いてない封筒があったんだと。イタズラかと思って、それを読んだらしい」

 

「そこには、薬で病気が突如悪化して普通の学生生活から一転。病院から一歩も動けない生活に変わったこと」

 

「何をしてても、友達と一緒に普通に楽しく過ごしていた時を思い出して何も楽しめないこと」

 

「親も医者も言わなかったけれど、自分の病気が治らないものであるのをしっていたこと」

 

「荒れて、今すぐ死にたいと言った時にちゃんと生きてほしいと医者から告げられた余命が1年半であること」

 

「それからは、ベッドの上でも楽しめることを探して。マンガなら世界に潜り込んで、友達のことを思い出さずに楽しめるんじゃないかと思ったこと」

 

「いろいろ読んだ結果BLEACHに辿り着いて、次の話が読みたくて入院してから初めて明日を考えるようになったこと」

 

「BLEACHが自分の世界を変えてくれた。生きる勇気をくれたこと」

 

「自分がもう生きていないこと。そんなことが綴られていたらしい」

「それって……」

「多分加蓮が話してくれた『お兄さん』のことだろうな。で、最後はこう書かれていたらしい」

 

『どうか、先生の思うままのBLEACHを描き切って下さい。僕はそれが読みたい』

 

「この手紙に後押しされて、先生はまた筆を握ることが出来たらしい」

「そうだったんだ……」

 

 確かに、あの時期にBLEACHの休載が続いていたのは良く覚えている。休載のお知らせを見る度に、大丈夫だろうかと考えていた。ちなみに、BLEACHの穴を埋めるために代わりに連載されていたマンガはほとんど読んだことはない。

 

「なあ、加蓮。その『お兄さん』の名前覚えてないか?」

「ごめん、流石に6年も前だから覚えてない。あの時も『お兄さん』って呼んでたから、名前までは……どうして?」

「さっきのはマンガ形式で書かれてたんだが、その絵の続きで、頼み事をしてたんだよ。『この手紙の送り主を捜す手伝いをしていただけませんか』ってさ」

 

 それを見た時の俺は、ただもっと多くの人に知ってもらうために拡散することしか出来なかったが、まさか加蓮がその送り主のこと知ってるかもしれないなんて思いもしなかった。

 

「病院名とかでもいいから、何か教えてあげて欲しいんだ。俺は何も分からないからさ」

「分かった。どうすればいいの?」

「えっと確か……あった。久保先生のTwitterに投稿フォームのリンクがあるから」

 

 加蓮は投稿フォームに自分の知っていることを書いていった。自分がが入院していた病院にその人かもしれない学生がいたことを。それを隣で眺めながら俺は、送り主が無事に見つかることを祈っていた。




はい。知っている方もいるとは思いますが、BLEACHの久保帯人先生がTwitterに投稿していた話です。

BLEACHは小学生の頃からずっと好きな作品でした。先日15年という長い連載の末に完結しました。物語は終わりがあるものですけど、いつまでもやっていて欲しいと思うのはやっぱり仕方の無いことですね。二次小説とかネット小説を読む時はやっぱり長く続いていたり文字数の多い話を検索してます。読み応えもあるし。

さてこのTwitterの件ですが、最初はただリツイートをしただけでした。というのも、リツイートしか出来ることは無かったんです。でもふと思いました。自分には、物語を書く事が出来るじゃないかと。そういう経緯でこの話を書きました。自分のこの作品で、少しでも多くの人にこの久保先生の『お願い』が広まるように。

加蓮の休みがちで入院していたことも多かったという設定を利用させて貰いました。ありがとう、そしてごめんね加蓮。今後はもう少し遼哉との絡みも増やすから。

手紙の内容は概ね上の本文で書きましたが、見ていない方は1度久保先生のTwitterで先生の言葉で描かれた『願い』を見て欲しいです。

気分を変えて、ポケモンについて話したりフレコ乗せたりしたいですけど、自重して今度ちゃんみお誕生日話の時(予定)とか活動報告とかでします。

最後に、手紙の送り主がどうか見つかりますように。

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