346のプロデューサー達の女難な日常   作:黒いファラオ

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ここまでかかるとは思わなかった……難産でしたね


25×72

「顔合わせ……?」

「ああ」

 

 俺の言葉に美城のカフェテリアでノンビリとカフェオレを飲んでいた楓が首を傾げる。

 

「誰と?」

「そりゃ今回コラボが決定してる如月千早とだよ。一度顔合わせした方がいいと思ってさ。設定しておいた」

「分かりました」

 

 コクリと一つ頷き、カフェオレを口に運んだ。すると、何かを思い出したのかすぐに顔を上げた。

 

「それにしても、赤羽根先輩と会うのも……久し振りよね?」

「いいや、俺は前会ったぞ」

「なんで誘ってくれなかったの!?」

「仕事だっつの」

 

 お前はそもそも収録だったし、裏での決め事の会議で会っているのだ。楓をその場に呼んでどうしろいうのか。

 

「今度の水曜日に向こうの事務所に行くから、そのつもりで」

「交通手段は?」

「俺が車出す予定」

「珍しいわね」

「下手に時間かかって待たせるわけにもいかないしな。使えるものは使うに越したことはない」

 

 免許は普通に持っているわけだし、他の交通手段を使って合同イベントの相手が765だとバレてはいけない。

 

「それじゃあ俺は行くから」

「あら、もう少しゆっくりしていけばいいじゃない」

「まだ仕事が残ってるっつーの。楓はもう終わったんだっけか」

「ええ。このカフェオレを飲み終えたら帰るつもりよ」

 

 ニコリと笑う。

 

「ホッと暖まってからってか」

「あら、先に言われちゃった」

「やっぱりな。そう考えてると思った」

「以心伝心ね。嬉しい」

「そりゃ良かったな」

 

 何年も一緒にいれば、思考ぐらい読めるわ。この25歳児は隙あらばダジャレを挟もうとするからな。

 

「あんまり遅くならないようにな」

「もう……子供じゃないんだからそんなこと言わなくてもいいのに」

「心配ぐらい素直に受け取れよ」

「うふふ、はーい」

「それじゃ」

「ええ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここ?」

「ああ。ここが765プロダクションだ」

 

 俺と楓で2人して上を見上げる。雑居ビルの3階。そこに有名プロダクション、765プロダクションがある。

 

「何故かここから移転しないんだよな」

「いや、本当になんでだろうな」

 

 俺の言葉に反応したのは

 

「赤羽根先輩」

「よお、よく来たな」

「お久しぶりです、赤羽根先輩」

「こちらこそお久しぶり、楓ちゃん。俺が卒業して以来だよな」

「現場でご一緒することもなかなかありませんでしたしね」

「そろそろ入ろうか。バレちゃマズいしな」

「そうですね。行こうか」

「ええ」

 

 カツっ……カツっ……と音を響かせながら、赤羽根先輩の後ろに着いて階段を上って行く。

 

「如月さんはもういらっしゃるんですか?」

「ああ。事務所で待ってるよ」

「今日は赤羽根先輩だけですか?」

「いや、社長たちもいるよ。まずはそっちに挨拶するんだろ?」

 

 そりゃあそうでしょうよ。と、先輩の言葉にツッコんでいると扉の前に着いた。

 

「それでは、765プロへようこそ」

 

 赤羽根先輩がガチャリと扉を開ける。

 

 

 

 

 

「あ、にーちゃんお帰り!」

「おう、ただいま」

 

 赤羽根先輩が事務所に入るなり、いかにも快活そうな少女が反応した。

 

「右側の短い結び……てことは双海亜美か」

「にーちゃん、その人たちが?」

「ああ」

 

 周りを見渡し、奥の方に社長がいるのを確認しそちらに向かう。何はともあれ、1番上の人に挨拶をしなきゃな。

 

「先日の会議以来ですね。改めて簡単ではありますが、御挨拶させていただきます。美城プロダクション、プロデューサーの浅葱遼哉です。こちらが」

「高垣楓です。本日はよろしくお願いします」

「ああ、よく来たね。私がこの765プロダクションの社長の高木順二朗だ。堅苦しいのはここで終わりだ。くつろいでくれ」

 「ありがとうございます」

 

 それは助かる。敬語自体は嫌いじゃないんだが、本当に目上に使うようなガチガチの敬語ってのはどうも馴染まないんだ。

 高木社長の近くのデスクには2人の女性がいる。

 

「あっ、私は事務員の音無小鳥です。経理とかは私の担当なので、関わってくるのはもっと忙しくなってきた頃ですね。よろしくお願いします」

 

 何処か馴染みのある緑の事務員服を着ている音無さん。アイドルプロダクションの事務員服は緑色じゃないといけない決まりでもあるんだろうか。

 

「1度会議でお会いしてますよね。秋月律子です。765(ウチ)は彼と私の2人がプロデューサーなので、色々と迷惑をかけちゃうと思うんですけど……ごめんなさいね?」

 

 こちらはレディーススーツの秋月さん。過去にはアイドルもやっていたのだが、今は引退してプロデューサーになっている。

 

「それじゃあ、早速本題に入ってもらいますね。あっちでプロデューサーと千早が待ってますから」

「分かりました。行こうか」

「ええ」

 

 秋月さんに言われた方に向えば、ちょっとした談話スペースがあり、2人はそこに座っていた。

 如月さんは俺達を認めると、立ち上がった。

 

「お久しぶりです、如月千早です。今回はお呼び立てしてすみません」

「お久しぶりです、高垣楓です。いえ、1度きちんとお話ししてみたいと思っていましたから」

「そうだったんですか」

「とりあえず座ってくれよ」

 

 立ったまんまじゃ、ゆっくり話も出来ないしな。と、高校時代から変わらないことを言いながら俺達を座らせた。

 

「今回は顔合わせという名目になってるけど実際は、親睦会に近い感じだな」

「ですね」

 

「高垣さんは元々モデルだったんですよね」

「そうですね」

「なんでアイドルに?」

 

 その言葉に何かを思い出しながら楓は答えていく。

 

「スカウトでモデルになったものですから……お仕事はお仕事。そう割り切ってやっていました。モデルというお仕事に……特にやりがいとかは感じていなかったんです」

 

「そんな中、美城に知り合いが入社してきたんです。それがきっかけの一つですね」

「それって……」

 

 如月さんは俺の方を向く。

 

「はい。俺のことですね」

「何よりも大きかったのは、『彼の側にいたかった』からですね。実に4年ぶりでしたから」

 

 そう。楓とは高校を卒業して以来その時まで1度も顔を合わせていなかった。電話などの連絡はしていたが、俺は大学、楓はモデルの仕事で会う暇などなかった。

 

「今はお仕事に不満なんてありませんけどね。やりがいがありますし。大好きな歌もお仕事で歌えますから」

 

 歌の話が出た所で如月さんの目がキランと輝いた。

 

「そう。歌なんです。私、高垣さんのラストスパートに入ってからの走り抜ける感じがすごく好きなんですよ」

「ラストスパートは、すぱーっと歌い上げることにしてますから。うふふっ」

「お前は……」

 

 なんでこんな所までダジャレを言う必要があるのか……

 

「そういえば楓ちゃんってダジャレが好きだったね……」

「ほら見ろ如月さんだっ……て……」

「すぱーっとって……くっふふ……ふふ……」

 

 めっちゃ笑ってる!? 何故かめっちゃ笑ってる!? つまらなすぎて逆にツボに入ったのか……?

 というか楓、お前も驚くなよ。驚く気持ちも分からんでもないが。

 すると、それを見ていた赤羽根先輩が俺達に説明してくれた。

 

「あー、千早ってな? 笑いの沸点が異様に低いんだよ」

「いくら何でも低すぎませんか!?」

「ホントにな……。何気なく口から出たダジャレとかあるだろ? 自分でもこれは無いな……って、思ったのも千早が聴いてると高確率で笑ってる」

 

 楓のあのダジャレでこんだけ笑うとか……。上田しゃんと難波審査員の漫才とか見たらどうなるんだろうか。笑いすぎて死ぬんじゃねぇの?

 そこで閃いた考えを赤羽根先輩に耳打ちする。

 

「そういうの、ステージに織り交ぜてもいいかもしれませんね」

「そうだな。面白いかもしれん」

「皆さん、お茶が入りまs……ピヨッ!?」

「あ、ありがとうございます。ピヨ?」

「アッイエ、何でもないですよ……」

 

 お茶を淹れてくれた音無さんが謎の鳴き声を発した。一体どうしたのだろうか。

 気になりはしたが、何でもないとのことなので気にしないことにして、俺達は雑談とも呼べる他愛のない話を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まさかあんな美味しいシチュエーションを見ることが出来るなんて……男どうしの耳打ちっていいわよね。

 

(浅葱×赤羽根……耳打ちしてたのは浅葱さんだったものね。強気後輩攻め……)

 

 〖小鳥の餌場〗

 

「先輩、この後時間ありますよね? 最近ご無沙汰でしたし……鳴かせてあげますよ」

「あ、ああ……」

 

 

「ンブフッ……!?」

「うわっ、どうしたのピヨちゃん?」

「あ、何でもないのよ何でも」

 

 あ、危なかった……すごいしっくりくるわ……。今までのカップリングの中でも最高峰の出来よ……。でも落ち着きなさい。落ち着くのよ音無小鳥。まだ他の可能性があるわ。

 

(そう、逆。あの状況からの敢えての赤羽根×浅葱。つまりは、後輩による誘い受け……!)

 

 〖小鳥の餌場りたーんず〗

 

「せ、せんぱい……もう、我慢出来ないですよ……。この後、ダメ……ですか?」

「ったく、仕方ないな。まあ、言いつけ通り我慢出来たペットにはしっかりとご褒美をあげないとな?」

「……! はいぃ……」

 

「ピヨォッ!?」

「ど、どうしたんですか小鳥さん!?」

「いえ、ちょっと……でも、大丈夫ですから」

「ホントですか?」

「ホントですから!」

 

 何なの……この赤羽根×浅葱の破壊力は……。最高峰なんてモノじゃない。間違いなく今までの妄想の中でもトップ……

 

 いつも春香ちゃんたちアイドルには優しい笑顔を向けているけど、本性はとてつもなくドS……。あの人好きのする笑顔に釣られてしまったら最後。彼の本性を知った時には、もう身も心も彼から離れられなくなっている……。

 完全に堕ちきる前に、もうここでやめて、ここで自分から離れるか、このまま自分の元に居続けるかの選択を相手にさせるの。彼は相手を手放す気なんてない癖によ。そこで自分から最後の理性を断ち切らせることで、彼は満足するのよ。

 他にもペットはいるけど、アメとムチのバランスが完璧だから誰も彼から離れないしペット同士の不仲もない。その中でも浅葱さんは高校時代からの彼のお気に入りで……この業界に入ったのも、本当は彼からの命令で……

 

 あぁ……止まらない。妄想が止まらないわよ……。なんなのこのカップリングは……恐ろしすぎるわ……。

 

 待って、そういえば浅葱さんには確か同期のプロデューサーがいてそれは彼と同じ赤羽根先輩の後輩。

 話に聴くと、不器用で無愛想で……また餌なの!? なんなのこの餌場は!? 美味しすぎるわよ!? うあああああああああ……やってやるわよ!

 

 

 

 

 

「なんか、音無さん荒ぶってませんか?」

「ピヨちゃんって偶にあぁなるから、あんまり気にしなくていいよ。鼻血出てないだけマシだよ」

「そうなんですか?」

「あ、ああ……俺は滅多に見ないんだけどな」

「それにしても、一体何が原因なんでしょうか……」

「気づかない方が幸せだと、私は思うわよ……」

 

ダメ無小鳥……もとい音無小鳥。どうやら律子さんには趣味がバレている模様。みんなにバレてしまうのも時間の問題……かもしれない。




せめて19:00には更新したかった……。それにしても、小鳥さんの所に入ってから筆が加速したんだけど。これはR18を書けというお告げだろうか。

〖次回予告〗
前に言っていた、アニメ準拠のデレマスをこっちに投稿するかも。確定ではない。微妙なライン。

話は変わるけど、サンシャイン9話。控えめに言っても最高だった。泣いた。未熟Dreamerが始まる前の果南の「ハグ……ハグ、しよ?」で死んだ。あんなん卑怯やんけ……

それでは(唐突)、感想評価批評などお待ちしております。また次回のお話でお会いしましょう。バイバイ

P.S.最近感想が無くて寂しい(´・ω・`)スレ形式はダメだったかしら。

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