サマカニ!のMaster+、キツくねぇ!?
始まり
『合同イベント?』
その場に集められていたアイドル達のほとんどの声が揃った。
「はい。今回は他のプロダクションと協力をしてイベントを行います」
「
遼哉の言葉にその場にいたプロデューサー達が苦笑いをする。自分達でイベントを企画し、実行するだけでも多大な時間と労力を労するというのに……そんな裏方としての哀愁漂うものだ。
「みんなの中には、レッスンの内容が普段やっているものよりもハードになっている。そう感じた人もいると思う。というか、実際そう感じたというのを直接聞いている。もちろん、それは勘違いじゃない」
それまでプロデューサー達から一歩下がって話を聞いていた女性が1人前に出る。トレーナー四姉妹の長女、青木麗。トレーナーランクでいうと最上位であるマスタートレーナーの資格を持つ女性だ。
「プロデューサー達から他のプロダクションとの合同イベントを行う旨とその相手を聞いて、生半可なパフォーマンスでは舞台にあげられないと思った。そこでプロデューサー達の許可を得て、普段のレッスンから難易度を上げさせてもらった。発表されて解禁されたこれからの厳しいレッスンに着いてこられなくなっては困るのでな。今回のレッスンはこの前の『シンデレラの舞踏会』の時よりもキツいものになるからな、覚悟しておけよ?」
麗の『厳しいレッスン』という言葉を聴いて多くのアイドルがうえぇ……という声を漏らした。ただでさえ、シンデレラプロジェクトにしてもプロジェクトクローネにしてももちろんプロジェクト以外の他の部署のアイドル達もいずれの例外もなく『シンデレラの舞踏会』に向けてのレッスンで地獄を見ているというのに、今回はそれよりも厳しいというのだ。既に何人かのアイドルの目が死んでいた。
そこで1人が手を上げた。
「ん、どうした唯」
それはプロジェクトクローネのメンバー、大槻唯だ。
「ねーねー、プロデューサーちゃん。その協力するっていう相手のプロダクションって一体何処なん? ここまで周到な準備をするってことは相当な所なんでしょ?」
唯の質問に全員が頷く。この質問は図らずともこの場のアイドル達全員の代弁になった。その質問に遼哉はニヤリと笑った。確認を取るように俊輔に目を向け、彼は頷いた。
「聴いて驚け。その相手は……」
わざわざ一呼吸間を空けてそのプロダクションの名前を発表した。
「765プロだ」
その場にアイドル達の驚愕の声が響き渡った。
「な、765プロってあの天海春香とか如月千早とかが所属してる有名プロダクションにゃ! なんでそんな大物のと!?」
それに答えたのは今西部長だ。
「765プロダクションの高木社長とは昔からの知り合いでねぇ……。会う機会があった時にこの話が持ち上がったんだ。その後は君達に情報が漏れないように、極秘にプロジェクトを進めていたんだ」
「社長と知り合いって……どんな交友網なんですか」
「ははは、勿論それは秘密だよ」
至極真っ当な質問を何時もの人好きのする笑顔で受け流した。
「今回の合同イベントだが、他のイベントで披露したユニットでの楽曲……例えるならLiPPSの『Tulip』とかだな。それを披露することが決定している」
「またあのメンバーで歌えるということよね?」
「そういうことだ。新しいユニットも組む予定だから楽しみにしててくれ。まあ、選ばれたってことはその分レッスン増加だから大変だけどな」
彰のその言葉を聴いて、実に複雑な表情を浮かべる。新しいユニットということは間違いなく、新曲だ。新曲を歌えるのは嬉しいことには嬉しいが、振り付けも歌詞も1から覚えるということになると他のアイドル達の何倍もの練習量になる。その二者択一は厳しいモノがある。
「それだけじゃない。何人かは、765のアイドルとパフォーマンスをしてもらう。全体曲はどちらのアイドルも全員参加なんだが、それ以外の個人曲を一緒に歌うという形だな」
「現状で決定しているのが、楓だ」
「私……ですか?」
楓は自分の名前を呼ばれたことに驚き、ポカンとした顔をする。
「俊輔があちらのプロデューサーから……まあ、赤羽根先輩なんだが、伝言を受けたらしくてな。だよな?」
「はい。如月千早さんが、『一緒に歌えるのを楽しみにしてます』と伝えてください。と仰っていたそうです。ですので、赤羽根先輩たちと協議して結果、一緒に曲を披露しようということになりました」
「まあ! 以前1度番組でご一緒させていただいた時に歌声を聴いたんですけど、如月さんの歌声ってスッと心に響くんですよね」
「それは楓さんも同じですよ! ナナ、応援してますからね!」
「何を歌うのかは今後本人を交えて話し合うからそのつもりでいてくれ。他にも決まる予定だから、心の準備だけはしておけよ」
何人かの目処は既についてはいるのだが、敢えてここでは発表しなかった。
「そういうことですので、これから合同イベントに向けてのレッスンが追加されます。負担は重くなりますが……」
「なに、俺達プロデューサーのこれからの修羅場に比べればどうってことない」
遼哉のブラックユーモアにまたもやプロデューサーの苦笑いが。しかし、今回は先ほどの物よりも闇をじっくりコトコトブイヨンスープで煮込んだような暗いものだったが。何人かは、「俺、今回は何徹するんだろう……」や「新記録を樹立する自信がある」等の耳を塞ぎたくなるような言葉を漏らしていた。
「全くだ。肉体的疲労だけなんだからな。それに、『シンデレラの舞踏会』をきっちり成功させてるんだ、大丈夫」
「それじゃあ、みんな。合同イベントに向けてアイドルもスタッフも頑張るぞ!」
「おー!」と、その場の全員の声が揃った。
刻は遡って765プロダクション。
「合同イベントをする?」
その場を代表して、天海春香が質問した。
「そう。美城プロダクションと協力してイベントを行うことが決定したんだ。ウチの社長とあっちのアイドル部門の部長が昔からの知り合いらしくてな、そこから発展したらしい」
「美城ですか……高垣楓さんがいらっしゃるプロダクションですよね」
相手のプロダクションの名前を聴いて、如月千早が声を漏らした。
「知ってたのか?」
「はい。以前番組で共演させて貰いました。といっても、直接の交流は無いんですけどね。とても綺麗な歌声で、感心しました」
「楓ちゃんかぁ~確かに綺麗な声だよな」
「『楓ちゃん』ってえらく仲良さそうな呼び名じゃない」
プロデューサーの言葉に水瀬伊織が目敏く反応する。確かにファンでも無ければ呼ばなさそうな呼び方だ。
「あぁ~……高垣楓ってな? 俺の高校の後輩で知り合いなんだよ。というか、美城って後輩が何人もいるんだよな」
「そうなんですか!? すごい偶然ですぅ!」
確かに凄い偶然だ。何者かの意思を感じる()。
「プロデューサー、昔から高垣さんはあんなに歌が上手かったんですか?」
「上手かったな。カラオケ行ったりした時は凄かったな。感動モノだよ」
確かに感動モノだろう。あの美声にあの歌唱力なのだから。
「そういえば、キア……美城プロの知り合いに聴いたのですが、美城プロダクションのアイドル部門では『恋愛推奨』ということになっているそうです」
ここで唐突に四条貴音が爆弾を落としてきた。
「れ、恋愛推奨!?」
その言葉に萩原雪歩が顔を真っ赤にする。
「何それ面白そうなの!」
ずっとソファで寝転びながら話を聞いていた星井美希が飛び起きた。ちなみに他のメンバーは仕事に行っている。
「聞くところによると、社内恋愛が推奨されるようになったそうです。これによって水面下で行われていたアイドルによるプロデューサー争奪戦が表立った行動になり始めたらしく……」
そして誰にも聞こえない程の小声でボソッと、「またライバルが増えるってことよね……」と不満を漏らした。
「そんなことになってたのか……遼哉も俊輔も大変なことになってたんだな。あ、今のは後輩の美城のプロデューサーのことな」
「ホントに後輩多いのね……」
呆れたように伊織が呟く。
「ということだ。今いない5人には後で俺からちゃんと説明しておく。トレーナーさん達には話を通してある。今日からイベントに向けてのレッスンになるからみんな、よろしく頼む」
「任せてください!」
春香はニッコリと満面の笑顔で答える。他のメンバーはトレーナーの元へ向かっていく。途中で千早が何かを思い出したのか、プロデューサーの元に戻ってきた。
「どうした千早?」
「プロデューサー、高垣さんと知り合いなんですよね」
「そうだけど……」
「一緒に歌えるのを楽しみにしてますって、伝えておいてくれませんか。お願いしますね」
それだけ言って千早はトレーナーが待っている場所へ向かった。
「知り合いって言っても、今はアイドルだからなぁ……俊輔にでも頼むかなぁ……」
こうして、765プロ×346プロ合同イベントが始動した。
次回予告
1 以下、名無しに変わりまして魔法使いがお送りします
合同イベントキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
2 以下、名無しに変わりまして魔法使いがお送りします
それはいいとして、一体何処と合同でやるんだろうな?
こんな感じ。限定ガチャにSSR浴衣美波がいて戦々恐々としてる。超欲しい。めっちゃ欲しい。でも、課金はしない。つまり出ない。つらみ。