電話のコールの音が鳴る。その音は時間がかからずにすぐ途切れた。
「もしもし」
『もしもし? 久しぶりだな!』
「久しぶりって……この前会ったばかりじゃないですか」
『あれ、そうだっけか。まあいいや。それで電話をかけてくるなんて珍しいな。どうしたんだ?』
「今度のイベントについて色々と話したいと思いまして」
『そっか』
「はい。そちらの準備はどうなってますか?」
『うちは順調だよ。何処かのプロダクションと合同でやることなんて滅多にないからな。みんな張り切ってるよ』
「そちらは、もう皆さんに話されたんですね」
『ああ。そう隠すようなことでもないし、何より隠し事が苦手なんだよ。お前だって知ってるだろ?』
「そういえばそうでしたね」
電話の相手の言葉にふふっと笑みが零れる。
『そういえば武内、お前……また笑えるようになったんだな』
「え?」
『今笑っただろ? 前は仮面被ったような感じだったんだろ?』
「そうですね……遼哉と、シンデレラプロジェクトの皆さんもおかげです」
『そりゃよかったよ。そっちはまだ公表してないのか?』
「はい。ですが、明日辺りに発表すると思います」
『そっか。楽しみにしてるよ』
相手は安堵した溜息を漏らした。よほど彼を心配していたのだろう。
『そうだ。千早がそっちの高垣楓さんと一緒に歌えるのを楽しみにしてるってのを言っておいてくれ』
「如月千早さんですか。というか、それは遼哉に頼んでくださいよ。でも、先輩も同じ高校だったんですし遼哉を通じて高垣さんとは交流も会ったんじゃないですか?」
『一応はな。ただ、今は別のプロダクションで彼女はアイドルだからな。危険な橋はあまり渡りたくはないから』
「それもそうですね」
今はそれが大丈夫な状況にはなっているのだが。
『そういえば、今美城さん『恋愛推奨』なんていうとんでもないことになってるんだってな?』
「先輩ご存知だったんですか?」
『貴音から聴いたんだ』
彼のプロダクションで貴音と言えば……
「四条さんですか」
『そう。なんでも346にいる知り合いと、この前の休暇でばったり会ったらしくてな。その時に聴いたらしい』
「誰でしょう? それを知っているということはアイドル部署なんでしょうけど」
『それなんだけど、知り合いって言う前に1回言い直してるんだよな。確か……きあ……とかなんとか』
きあ……何処かで聞いたような……と首を傾げる。
「私だけじゃなんとも……」
『それもそうだよな。悪い』
「いえ。ところで先輩」
ここでさっきまでビジネスライクに話していたが、親しげに話を変える。
「〇✕日の夜、空いてませんか?」
『〇✕日って、そっちで色々と詰めるためにお邪魔する日だよな。空いてるけど』
「じゃあ、終わった後で飲みに行きませんか? 遼哉や彰も誘って親睦を深める意味でも」
『おぉっ、いいな! 店とかはそっちに任せていいか?』
「はい、そのつもりです」
『楽しみにしてるよ。……おっと、呼ばれてしまった。それじゃあ武内、楽しみにしてるよ』
「はい。それではお疲れ様でした、
次回、新章開幕
シンデレラプロジェクトの存続をかけた一大イベント『シンデレラの舞踏会』。それは無事に大成功を収め、シンデレラプロジェクトは存続。美城常務……いや、美城専務との関係も良好なものとなり、アイドル達は平和にレッスンを受け仕事をし、プロデューサーはいつも通りにプロデュースに頭を悩ませ、いつも通りアイドル達に襲われていた。
そしてこれは、その『シンデレラの舞踏会』に至るまでの軌跡。シンデレラプロジェクトの2人のプロデューサーと14人のアイドル達の成長の記録。
アイドルマスターシンデレラガールズ『2人の魔法使い』
coming soon……
『2人の魔法使い』は簡単に言えば、この『346のプロデューサー達の女難な日常』の設定を使ったアニメ準拠で進行していく作品です。1話が出来上がり次第、お試しとしてこちらに更新しますのでお気軽にお待ちください。
新章は……想像がつきますよね?
実は俺、26日誕生日なんですよね。祝ってくれてもいいんですよ?