346のプロデューサー達の女難な日常   作:黒いファラオ

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予想外だろ?この人選は

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アイドルコミュ『向井拓海』

 物音がする。そのおかげで目が覚めた。方向的に台所。誰かが台所で何かをしている。俺は一人暮らしだし、誰かが訪ねてきたのだろうか。いやでも、鍵閉めてるし。……誰だ?

 考えているとコンコンッと部屋の扉をノックする音が。

 

「あきら~?」

「……あい」

「開けるぞ。ん、目ェ覚めたか?」

 

 その声と扉を開けて見えた顔でホッとする。

 

「ああ。おはよう、拓海」

「おう。おはよう、彰」

 

 来ていたのは、美城(ウチ)のアイドル、向井拓海だった。

 

「飯ももうすぐ出来上がるから、用意してこいよ」

「んー……了解」

 

 顔を洗って歯を磨いて……と、一連の流れを終わらせて席に座る。

 

「「いただきます」」

 

 最初に卵焼きに手をつける。うん……

 

「今日は薄めの味付けだな。出汁の方使ったのか?」

「ああ。今日はお前休みだし、そっちの方がいいかと思ってよ。それとも、何時もみたいに砂糖使った甘めのヤツの方がよかったか?」

「いや、これで大丈夫。昨日は次の日が休みってのが分かっててぐっすり早めに寝てたから、何時ものだと口ん中甘ったるくなってたかも。助かるよ」

「へへっ……だろ?」

 

 拓海は得意そうに笑った。

 

「で、味噌汁はいつも通りと」

「お前が合わせ味噌派ってのは嫌ってほど聞かされたからな」

「失敬な。まるで俺が『合わせ味噌以外は認められない』みたいな過激派みたいじゃないか」

 

 俺は、『合わせ味噌があるなら基本的に合わせを使ってほしい。あ、でも別に赤も白も嫌いだ!ってわけじゃないからね?』な温厚派だ。

 

「別にそこまで言ってねぇよ」

「知ってる」

「ったく……」

 

 怒るのではなく、しょうがないなという風に拓海は笑った。それからは黙々とご飯を食べていく。俺たちの食事は何時も(・・・)特にこれといった用事もなければ、静かなまま進んでいくのだ。

 

 

 

 

 

「ごちそうさま」

「ん。食器は」

「俺がやるよ。用意は拓海がやったんだから、片付けは大人しく座って待ってな」

「気にしなくていいって何時も言ってるだろ?」

「諦めてくれとも何時も言ってる」

 

 ………………

 

「「ふふっ」」

 

 堪えきれずに2人してにへらっと笑う。今まで幾度となく朝の度に行われてきたやりとりだ。このやり取りがあるだけでなんちとなくほっとする。こう……なんかお互い分かり合えてるって感じで。

 

「なんか恥ずかしいこと考えてるだろ」

「べっつに~?」

「……嘘だな。まあ、いいけどよ」

 

 相変わらずそういうことには感がいいこと。拓海はリビングに置いている大きめのソファに腰を下ろす。

 

「…………」

「~~♪」

 

 耳に入るのは食器を洗う時の水道から出る水の音と、上機嫌な拓海の鼻歌。聴こうと耳に意識を集中させると、この前のライブで炎陣のメンバーと歌った『純情Midnight伝説』だ。……可愛い。上機嫌になると鼻歌とか可愛すぎだろ。

 後片付けも終了し、濡れた手をタオルで拭いてから、拓海のいるソファに行く。

 

「終わったのか?」

「終わったよ」

 

 ポフンと拓海の隣に座る。

 

「……」

 

 ……横から視線を感じる。視線の方を見れば、拓海がすごい目でこっちを見ていた。何事?

 

「え、隣に座っちゃダメだった?」

「そうじゃねぇよ」

 

 ん。と言いながら、ホットパンツのため空気に晒されている自分の太股をポンポンと叩いた。……え、マジで?

 

「いいの?」

「ダメだったらアピールしねぇっつの」

 

 悪態を吐きながらも、その顔は赤くなっていた。

 

「恥ずかしいならやらなきゃいいのに」

「うるせぇ! やんのかやんねーのか、どっちにすんだよ!」

「じゃあ、遠慮なく」

「最初から素直にそう言やぁいいじゃねぇかよ……。ほら、どーぞ」

 

 拓海のシミ一つない綺麗な太股に頭を預ける。いわゆる、ひざ枕というやつだ。

 

「スベスベだよなぁ~」

「そりゃ、手入れしてるからな。……ってか、撫で回すな!」

「嫌だった?」

「別に嫌ってほどじゃないけどくすぐったい」

「なるほど。……ふぅ~」

「ひゃっ!? 息かけられたら普通にくすぐったいっての! あーもう、こっちに顔向けろ!」

 

 グイッと体勢を変えられる。横を向いていた顔が拓海を仰ぐように上を向く。……ひざ枕の状態でこの体勢になれば、当然否応なしに視界に入ってしまうモノがある。

 

「確かに息はかからなくてくすぐったくはないだろうけど……この体勢はいいのか?」

「何がだよ」

「いや……その……ほら、胸がさ」

「あー……」

 

 そう、胸だ。乳房、おっぱい、おもち。呼び方は色々ある。拓海のバストは雫の105に次いで、2番目に大きい驚きの95。その双丘が俺の視界の半分ほどを占めている。なかなかにすごい。

 ちなみに雫のあれはもう、何かのバグだと思う。何処かで見たが、計算すると雫はKカップらしい。なんだそれ。

 

「他のヤツなら恥ずかしさとかイライラとかでぶん殴るけどな、彰なら別に構わねぇよ」

「なんで?」

「だってお前、大きい胸好きだろ?」

「いや……まぁ……その……好きだけどさ」

 

 やっぱり男としては、大きい胸には何か惹かれるモノがあるというか何というか。

 

「昔はこんなモノ、鬱陶しいだけでなんでアタシにはこんなモノがついてんだって思ったこともある。無駄に視線も集めちまうし、喧嘩も邪魔にもなるしな。でも、今は彰が喜んでくれる。……それならこの胸でよかったなって思えるからよ」

 

 俺の頭を何故か撫でながらそう言う拓海の顔は穏やかで。本当に愛おしいものを見ている……そういう目だった。それが自分に向けられているということが何だか無性に恥ずかしくて、顔を背けた。

 

「目ェ逸らすなっての」

 

 戻された。

 

「つーか、触ったことだってあるんだから、んなに恥ずかしがることでもねーだろ? そもそも恥ずかしがるのはアタシだろ」

「それとこれとは話が別。男ってのは欲望には単純な癖して、心は常に思春期で恥ずかしがり屋なモンなんだよ」

「そんなもんなのか?」

「そんなもんなんじゃねー? 知らんけど」

 

 叩かれた。避けようと思えば避けられたが、身体の力は抜けきって拓海の柔らかい太股に全て預けているので動こうという気が全く起きなかったので甘んじて叩かれた。

 

「今日はお前休みだろ、ちょっと付き合ってくれてよ」

「そういや、サラッと2人でくっついてて和んでたけど拓海も休みなんだよな?」

「ああ。お前が久々に休みだって聞いてたからな。休み取ったんだよ。まさか申請が通るとは思わなかったけどよ」

「多分、今西さんの仕業だろうなぁ……」

 

 拓海の独白にうちの部長のなんとも言えない笑顔を思い浮かべながら、力の抜けきった身体に力を入れて起き上がる。拓海は起き上がった俺を見て、?という他の奴には絶対に見せないキョトンとした顔をする。可愛い。

 

「もういいのか?」

「可愛い顔してんなよ」

 

 と言いながら、拓海がしたように太股をポンポンと叩く。その仕草にキランッと拓海の目が輝く。

 

「交代するだろ?」

「する!」

 

 ポフンッと俺の太股に頭を下ろした。俺がサラサラな髪の頭を撫でると猫みたいに気持ちよさそうに目を細める。

 拓海は元々特攻隊長だし、見た目からガサツそうに思われるが家事もしっかりこなせる可愛い女の子だ。

 

「彰にひざ枕するのも嫌いじゃねーけど、やっぱり彰にしてもらう方がいいよなぁ~」

「男のかったいひざ枕の何がいいのやら……」

「分かってね~な~。『男の』ひざ枕がいいんじゃなくて、『彰の』ひざ枕がいいんだよ。そこ勘違いするなよ? こうしてると……包まれるっつーかなんつーか……安心するんだよ」

「すっごい恥ずかしいんだけど」

「さっきの仕返しだ」

「さいですか」

 

 拓海の頭を撫でながら、ふと思う。よくもまあ、ここまでの関係になったものだ。

 

 

 

 

 

 帰り際に見かけたタイマンでのステゴロ。その光景に懐かしさを覚えて眺めていると、片方の特攻服を着た少女の立ち振る舞いにおっ?と既視感を覚えた。それに加えて目を惹く容姿と存在感。よし、と思い勝利した片方の少女……まあ、拓海を怪我をしていたからという名目で事務所に問答無用で拉t……連k……連れていき手当した後にスカウトした。

 

 チャラチャラした衣装は着ないと言っていたが、実は可愛い物が好きだったりすることが判明したり(着ないと言っていたのは、自分には似合わないと思っていたし恥ずかしかったから。すごい可愛かった)。

 とある事件の折に俺の過去が拓海にバレてしまい、しばらく敬語で話されたり。いやぁ……あの時は未だに腕は鈍ってねーんだなって思ったよな。スーツっていうすっげぇ動きにくい服装だったのに、あの頃の髪型に戻すだけでスイッチが入るとは。

 

 

 

 

 

「こうやってずっとダレてるけど、買い物行くんじゃないのか?」

「昼からでいいだろ。今はこうやって彰とくっついてたいんだよ。ダメか?」

「拓海の買い物なんだから、拓海の好きなタイミングでいいよ。それまではこうしてよう」

「ありがとな」

「どーいたしまして」

 

 そこからは特筆すべきこともなく。とりとめのないことを話しながら、ただただ時間が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これとかどうよ?」

「お、結構似合ってる。たださっきのと比べると、さっきの方が俺は好みかな」

「じゃ、そっちにするか」

 

 買い物だ。今は拓海の服を見て回っている。

 

「そうだ。1回俺の選ぶ服着てみてくれない?」

「変なの選ぶつもりじゃねーだろうな?」

「違う違う。拓海って大人しめの服を着たらどうかなって思ってさ」

「考えたこともなかったなー……」

「だろ? ってことで、選んだ物がこちらです」

「早くねーか!?」

「ずっとスタンバってました」

 

 などと言いながらその服を持って試着室に入っていく拓海。イメージを崩さない程度にイメージを変えてみようと選んだんだが……どうだろうか

 

「……どうだ?」

「おおっ、予想以上!」

 

 特に凝った物は選んでいない。頭の中で思い浮かべたのは、藍子だ。薄いピンクのワンピースにスカイブルーのカーディガン。シンプルだ。というか、あんまり凝ったデザインは俺には考えられない。

 

「着てみてどう?」

「アタシがこんなの着て似合うかって思ったけど、結構好きだな。……恥ずかしいけど」

「じゃあ、今日はそれを着てこう。俺の奢りな」

「は!? 嘘だろ?」

「残念、本気でした。すいません、今着てるのそのままで行くのでお願いします。あと、これとこれと……」

 

 さっき拓海が選んでた服と今の服をまとめて購入した。

 

「誰もあの向井拓海がこんな乙女な大人しい服着てるだなんて思わないだろ?」

「それでお前……」

「趣味だけでここまでするわけないだろ? 着て欲しかったのは、俺個人の考えだけどな」

 

 メディアに出ている『向井拓海』のキャラはヤンキー上等。でも、そんな「向井拓海」がこんな可愛い服で出歩いているとは思いもしない。一種の変装だ。

 

「まあ、これなら堂々と歩けるな」

「だろ?」

 

 店を出る。凝った変装をしてないせいか、えらく上機嫌だ。

 

「なあ、久々に手繋いでもいいか?」

「ホントに久々だな。OK、繋ごうか」

 

 手を繋ぐとにっと笑った。

 

「最近どうよ?」

「この前の炎陣のライブは楽しかったし、順調そのものだな」

「そりゃよかった。炎陣のメンバーとはあれからも仲良くしてるんだろ?」

「ああ。元々亜季以外のメンバーとはつるんでたし、亜季ともすぐ仲良くなったしな」

「亜季の兄貴とは実は昔馴染みでな? 中学、高校……と一緒に馬鹿やってた仲間なんだよ」

「中学、高校……ってことは、大和って『スサノオのヤマト』か!?」

「あー……やっぱその名前知ってたか」

 

 亜季の兄貴である大和武蔵の高校時代のアダ名が『スサノオのヤマト』。もう一つは『47cm砲の武蔵』だったけか。武蔵はこの名前でもう一人の『阿修羅のキアラ』と一緒にヤンキーたちの恐れられていた。

 

「まさかこんな近くに伝説の2人がいるなんて……」

「案外世の中って狭いもんだろ?」

「片方がアタシをスカウトするくらいだしな」

「バレた時はどうしようかと思ったね」

 

「あれ、プロデューサー」

 

 声をかけられた。後ろを見ると、

 

「よお」

「あ、ホントにプロデューサーだ」

 

 夏樹と李衣菜だった。

 

「2人ともどうしたんだ? デートか?」

「いや、ギターとか色々見て回ってたんだよ」

「そうそう。そういう所、なつきちならいっぱい知ってるからさ。そういえば、手を繋いでるけどそっちこそデートなの?」

「これ、デートって呼んでいいもんかな」

「アタシ的にはデートって呼んでもいいと思うけど」

「「……え?」」

「そっか。んじゃ、デートです」

 

 夏樹と李衣菜がポカーンとした顔で見ているのは俺ではなくその横。

 

「た……拓海なのか?」

「んだよ、気づかなかったのかよ」

「だ、だってその格好……」

「あー……そっか忘れてた。着替えてたんだったよな」

「気づかなくて当然か」

 

 まさか同業である2人までも欺くとは……

 

「俺が選んだんだが……」

「びっくりだよプロデューサー! 全然気づかなかった!」

「随分と印象変わるもんだな……」

「おい……あんまり見られると恥ずかしいっつーの」

「ご、ごめん」

「あんまり可愛いかったからな、悪い」

 

 近くで見ていた2人に流石に恥ずかしかったみたいだ。真っ赤。

 

「というわけで、今の俺達はデート中だ」

「デートって……2人とも付き合ってたの!?」

 

 ごもっともな質問だ。だが……

 

「いや、アタシたちは付き合ってるわけじゃねーよ」

「嘘だろ?」

「これが本当なんだな」

 

 よく一緒にいて、半同棲状態になってるだけで付き合ってるわけじゃないんだよ。

 

「そうか……おっと、時間がもうないな」

「なんかあるのか?」

「アタシたちはこの後収録控えてるんだよ。そういうわけで、もう行くな」

「そうか、俺はしばらくオフだから色々フリーダムな奴と一緒になったら、それとなく牽制してくれるとありがたい」

「ははっ……まあ、やるだけやるよ。それじゃあな」

「ああ、頑張れよ。李衣菜もな」

「もっちろん! ロックにやるよ!」

 

 そう言って2人と俺達は別れた。

 

「まあ、この関係だったら付き合ってると思われるよなぁ」

「アタシらの関係は微妙だからなー」

「付き合ってみるか?」

「お前、自分の状況分かってて言ってるか?」

「でも、拓海の方がまゆとか志希とかより俺のこと想ってるだろ?」

「それは負けるつもりはないな。何なら、全国生放送の場で公開告白出来るぞ」

「やめてくれ」

「それぐらい想ってるってこった。でも今は、この関係が1番心地いいから」

 

 繋いでいる手の力がギュッと強くなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、なつきち」

「言うな、だりー。言いたいことはわかってる」

「「絶対にあれは付き合ってる」」

「だってあんな優しい目の拓海ちゃん私見たことないよ!?」

「ああ……自覚はないだろうけど、もうなんか……すごかったよな」

 

「「あれは完全に恋してる目だった」」

 

「まさか拓海がねぇ……」

「なんでプロデューサーなんだろ? いや、悪いってことじゃないけどさ」

「なんかきっかけがあったんだろうな……」




実は彰と距離が1番近いのは、まゆでも志希でもなくたくみんなんだよってお話。後半が難産ですた。

プロット書いてる途中で色々思い浮かんでた。

『仮面ライダープリズマ☆エミヤ』
ゴーストの世界に士郎をぶち込むお話
カイガン、エミヤ! 己を信じろ、トレース、ブレード!とか
カイガン、ランサ-! 一撃、貰うぜ、その心臓!とか

『テンプレオリ主の(力を押し付けられた)彼は静かに暮らしたい』
神様にテンプレオリ主セット(ニコポ、ナデポ、銀髪オッドアイ、魔力膨大、王の財宝)を押し付けられた主人公が穏便に生きていきたい物語。
別にモテたくもないのに、ニコポとかのせいで女の子にやたらモテて原作に介入もしたくないのに、巻き込まれる。勘違いでやたらめったら大変な目に遭う。可哀想(愉悦)
俺のイチオシ。ふと、テンプレオリ主セットを無理やり押し付けられたらどうなるんだろう。リリなのに飛ばしたら絶対面白いよねって風呂の中で思った。

次回予告!
ちゃんみおです。
ただ、今週はテストなので更新出来るかは微妙です。

それでは、感想批評評価などなどよろしくお願いします

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