ですが、2800文字とかいうクソみたいに短いです。次回への繋ぎです。
佐久間まゆという少女をご存知だろうか。元は読者モデルで、アイドルに転身した今でも変わらず人気を得ている。
そんな彼女には想い人がいる。ヒントとして上げるならば、彼女の所属は美城プロダクションだということだ。このヒントでピンと来た人もいるだろう。そう、自分の担当プロデューサーの河合彰だ。
「プロデューサーさぁん?」
「おお、来たなまゆ。こっちだ」
自らのプロデューサーに呼ばれて来てみると、とある会社から送られてきたドレスの写真を眺めていた。
「うわぁ……綺麗ですねぇ。でも、このドレスがどうしたんですかぁ?」
「あぁ。このドレスはこの会社で今度発表する予定の新作のドレスらしくてな? そこで、」
「モデルになってほしいってことですよねぇ?」
そういうことだ。と、何時も自分の言いたいことを理解してくれるまゆに嬉しそうに彰は言う。
本当に綺麗なドレスだ。女の子ならば一度は着てみたいと思う。もちろんまゆもそう思っていた。だからこそ聴いた。誰がこのドレスを着られるのだろうかと。
「今回は二種類あるらしいから、こちら側の2人で行こうと思う」
「そうですか。羨ましいですねぇ〜……。それで、誰を選ぶつもりなんですか?」
「いや、人事みたいに訊くなよ。1人はお前で決定してるんだから」
「え、そうなんですか?」
「だからここに呼んだんだろ? 『わざわざドレスを見せて羨ましいだろ。でも、違うヤツが着る予定だから』とか、嫌がらせ以外の何物でもないじゃん」
そんな風に話している彼の言葉はもう、まゆの耳には意味のある音としては聴こえていなかった。
「プロデューサーさん、私を選んだのはあちらからの指名とかですか?」
「いや、俺だけど? こういうドレスとかが似合うのはまゆが俺の知ってる中では一番だと思ったからな。この仕事が入ってきた時にはまゆはもう決まってたよ」
「そうですか!」
「なんだよ、えらく嬉しそうじゃないか、まゆ」
「もちろん嬉しいですよぉ? このドレスが着られるというのもありますけど、まゆが一つでもプロデューサーさんにとって一番だってことが分かりましたから!」
「そっか」
羨ましかったのは本当だ。だがそれは、ドレスを着られないことではもちろん無い。それは、ドレス姿をプロデューサーに見てもらえることにだった。プロデューサーに選ばれたその誰かに嫉妬してしまう程に……。
だからこそ、嬉しかったのだ。自分が選ばれたことに。
「まゆちゃん、ホントに嬉しそうだねフレちゃん!」
「本当だね、シキちゃん!」
「「!?」」
ここにはいないはずの二人の声が部屋の中に響いた。フレちゃんこと宮本フレデリカはソファーの下から、シキちゃんこと一ノ瀬志希は驚くことに、プロデューサーの真後ろから現れた。
「ふっふっふ〜、驚いてるねーシキちゃん!」
「にゃふ〜ん♪ ドッキリ大成功だよフレちゃん! くんかくんか……おぉ! 驚きとやる気に満ち溢れたいい匂いがする!」
「それは褒めてるんですかぁ〜?」
「もっちろん! 仕事を頑張ってっていうことの証だからね!」
「それで、なんで2人はここにいるんだ? というか、いつの間に部屋に入ったんだ?」
まゆがこの部屋に訪ねて来るまでは確かにプロデューサー以外の人影は無かった。
来るまでの間に珈琲を飲みながら理由もなくうろうろと部屋の中を歩き回っていたので間違いない。まさかこんな風に役に立つ立つとは思わなかったけれど。
後ろにいたというのならば、書類を引き出しから取り出したりそれこそ珈琲を入れた時に気づかないわけがない。フレデリカが隠れていたソファにいたっては一度座っている。
「プロデューサーとまゆちゃんがパソコンのドレスの写真に夢中になってる間にスルスルーッとね」
「そう、スルスルーッと! アタシとシキちゃんの隠密スキルを舐めてもらっちゃ困るね!」
「その努力はもっと別の方向に回せないのか……」
いわゆる、『無駄に洗練された無駄の無い無駄な技術』という奴だ。なんで天才という奴はこうも頭のネジが外れているのか……いや、ネジが外れているからこそ天才なのかもしれないが。
「あはは〜、レッスンとかはちゃんと受けてるし〜?」
「そーだよ? まゆちゃんもくんかくんか」
「くすぐったいですぅ……」
「おお、恋する乙女の匂い! 流石まゆちゃん!」
それを見ながらプロデューサーはちゃんと考えていた。
(フレデリカ……なんかこのドレスはイメージに合わないんだよな。どちらかといえばカジュアル系がいい。なら、志希はどうだ? ん、結構似合う気がする)
「志希、ちょうどいい。この仕事をまゆと一緒に頼みたいんだが」
「そのドレスの宣材をまゆちゃんと一緒にってこと? プロデューサーも、もちろん一緒に来てくれるんだよね?」
「そりゃプロデューサーだからな」
「そっかそっか、それじゃあ受けさせてもらおっかな〜」
「えー! アタシはぁー!?」
「そんなこと言いながら『アタシにはこのドレスはちょっと似合わないかな〜』とか思ってたんじゃないのか?」
「ありゃりゃバレてましたか」
テヘッといった感じでフレデリカは舌を出しておどけた。宮本フレデリカという少女は頭がいい。アホではあるが、頭の回転は志希と波長が合っている時点でお察しだろう。
フレデリカは自分のキャラクターというものを理解している。この性格を作っているという訳ではなく、自分のセールスポイントというべきモノを理解しているのだ。だからこそ、ゴネる。自分にも仕事が欲しいというアピールをする。
プロデューサーはそんな彼女のこと理解したうえで接している。そのことはフレデリカにとっても気持ちの良いことだった。
「お前はファッション雑誌の表紙に起用する予定だから、安心しろ」
「やったー! アタシ表紙飾れるー! ファッションリーダーフレちゃん爆誕って感じだね!」
「おおー! ファッションリーダー!」
「表紙ですか、懐かしいですねぇ〜」
「そっか、読者モデルだったんだよね。まゆちゃんは」
「そうですよぉ?」
ちょうどいい先輩がいるのだ。フレデリカはまゆから色々とアドバイスを貰うことに決めた。
「アドバイスみたいなの無いかな〜? アタシ宣材はノリでなんとかなったんだけどさー」
「にゃははー! 私もいっしょー! ビビって感じで撮ったしー」
「いいですよぉ?
アドバイスになるかは分かりませんけど……」
チラリとプロデューサーの方を見る。
「今日はこれだけだから行ってきても大丈夫。このことに関してはまた追って説明するから、2人ともいい?」
「はい」
「おっけー!」
「フレデリカも、決まったら連絡するから」
「はいはーい」
「ねぇねぇまゆちゃん」
「どんなのがプロデューサーのハートを射抜けるかな?」
「やっぱり、そのために受けたんですねぇ?」
「ドレス姿を見せられるチャンスなんて滅多に無いじゃん? だから、まゆちゃんも一緒に頑張ろうよ〜って」
「アタシもおなじくー」
「分かりました、じゃあこんなのはどうですかぁ?……」
「おおっ、まゆちゃんってばダイタンなんだから!」
如何ですか。次回はこの後のお話、ドレスでの宣材を撮るお話です。前回言っていたセリフは次のお話で登場しますので。許してください。お願いします、なんでもしまかぜ。
さて、次回予告です。
おや? ままゆの ようすが?
本当はね?1話でこの話終わらせる予定だったのに……書く時間なさすぎてこの有様だよ……
感想誤字報告評価などお待ちしております。それでは