性懲りもなく新作です。ISを書けというのに……(自虐)
今回軽い語録が使われております。軽いエッセンス程度ですが、不快に思われた場合は感想にお願いします。修正しますので。
これが日常
「ねえねえ、浅葱さん」
「ん? どうしたみりあ」
控室でスマホを弄りながら暇を潰していると、赤城みりあが声を掛けてきた。何か不具合でも合っただろうか。
みりあの方に顔を向けてみれば、何やら目をキラキラとさせている。
「新しい人達って、何時になったら来るの!?」
「あっ、あたしもそれ知りたーい!」
みりあと仲が良く、いつもつるんでいる城ヶ崎莉嘉もノってくる。
「えーっと、確か20分前くらいに武内が今から連れていくって連絡が来たからそろそろだと……」
「申し訳ありません、遅れました」
「……ほらな?」
入ってきたのは4人。それぞれ違う制服を着た3人と、パッと見そっちの筋の人間かと疑ってしまうような固い表情をしたスーツ姿の男性だ。
「遅かったな、武内」
「すみません。色々と……滞ってしまって」
「いや、問題ない。それで、後ろの3人が
「はい。彼女達が最後のシンデレラ候補です」
目を向けられた3人がピクリと反応する。
「皆さん、自己紹介を」
黒く長い綺麗な髪の少女は冷静に。
「渋谷凛です。よろしく」
短い髪の活発そうな少女は情熱を感じる挨拶を
「本田未央! 高校一年、未央って呼んでね!」
茶色の長い髪の少女は可愛らしい笑顔で。
「島村卯月です! えっと、頑張ります!」
「この3人に皆さんを加えた、14名がシンデレラプロジェクトのメンバーとなります」
「それじゃあプロデューサーさん、これで?」
独特のエロ……色気を持った現役女子大生、新田美波が訊いてくる。
「ああ、そういうことだよ。なぁ、武内?」
「はい。これで全員揃いました。シンデレラプロジェクト始動です」
そこにいた少女達は「やったー!」と手を取り合い、喜び合った……
「そんな感じで始まったはずなんだけどなぁ〜?」
「そうだったねぇ〜」
目の前の惨状を眺め、お茶を啜りながら零した言葉に、隣で『うさぎ』のソファに身体を預けている双葉杏が同意する。
「なあ、杏さんや。何時からああなったんでしたっけね? 特にあの蒼い人」
「何時からだっけねぇ〜。そんなこと杏に訊かれても困るよ、遼哉さんや。というか、割と最初の方からその片鱗があったように杏は思うけど?」
「言われてみればそうだよなぁ〜」
改めて現状を確認してみる。
「プロデューサー、とりあえず印鑑貸して」
「な、何故でしょう……」
「大丈夫、大事な書類に印鑑を押すだけだから。婚姻届に」
「落ち着いてください、渋谷さん! 貴女の年齢では結婚は出来ません!」
「安心してよプロデューサー。そんなこと分かってるから」
「この状況でどうやって安心しろと言うのですか……」
正論である。ちなみに武内は凛にのしかかられている。少しでも気を抜けば、凛に(性的な意味で)美味しくいただきますされてしまうだろう。あぁ……凛の周りに蒼いオーラが見える。蒼い、蒼いよ……。
「ちなみにどうするつもりなんですか?」
「大事に仕舞っておく」
「そ、そうですか……」
武内のやつ露骨に安心してやがる。
「杏、続く言葉は希望か絶望か」
「絶望に来週一週間、文句言わず真面目に働くでベット」
おうふ、まさか賭けになるとは思わなかったぜ。しかも高額ベットときた。
「なるほど。FA?」
「FA」
さって、どうなるかな。
「それで……」
「それで?」
「16になったら即役場に行ってくる」
「やはり安心出来ないじゃないですか!」
やっぱり、そうなるわな。
「杏の正解だ。後で何かしてやろう」
「やったー」
「プロデューサーさん!」
おや? 卯月があの固有結界に近づいていく。まさか武内を助けるために!? 今まで凛と同類に見たりしてごめんな。やはり卯月は大天使ウヅキエルだったか……
「島村さん……?」
「私ならもう結婚出来ますよ!」
知 っ て た『わかるわ』
あれ、今kwsmさんの電波を受信した気がする。おい、今電波っていって何処ぞのウサミミ声優アイドル17歳(笑)の歌を思い出したのヤツ! いるだろ!? 先生怒らないから名乗り出なさい!(叱らないとは言っていない)
「助けてください浅葱さん!」
おっと、こっちに助けを求めてくるか。武内の方に目を向けて頷いてみると、『助かった!』と言わんばかりに顔が晴れる。
サムズアップをしながら、
「駿輔ファイト♪」
「裏切ったな遼哉ぁぁぁぁぁぁああああああ!」
悪いな駿輔。自ら望んで戦地に向かっていくのは、戦場カメラマンか、報道陣か、ジャーナリストくらいなんだ。戦火の中心になっているお前が悪いんだ……。
それにしても、荒ぶってるな〜、駿輔。俺のせいだけど。あ、言い忘れていたが俺と駿輔、この場にはいないが千川ちひろは高校以来の同級生の親友だ。
あ〜、面白いなぁ〜。横に目を向けてみると相変わらず杏はソファの上でぐで〜んとくつろいでいる。……結構気持ちよさそうなんだよな、あのソファ。
そういえば、前に凛達がなかなかレッスンに来ないからってプロジェクトルームに探しに来たら、凛、卯月、かな子の3人がこのソファの魔力に取り憑かれていたってこともあったな。なるほど、杏の言う通りであれは人を堕落させるソファだ。
「杏、そのソファに俺も入れてくれ」
「ん? いいよ〜、その代わりに杏が遼哉さんの上に乗るね〜」
「おk」
座ってみると、思った通り気持ちいい。なるほど、これは堕落しますわ。そこに杏が乗って、ふぅー、と息を吐いている。絶妙にいい位置に座ってきたな。
「よいしょっと」
丁度いいので杏を抱いてみる。
「!? 何やってんの!?」
「いや、特に意味は無い。ただ杏が丁度いい位置に乗ったから抱いてみた」
「ふ、ふ〜んそっか。それじゃあさっきの賭けの報酬はこれってことで」
「え、こんなんでいいの?」
「これがいいの!」
「ならいいけど。ほれ、撫でてやろう」
えへへ、と杏は顔を緩ませる。杏にしてはえらく積極的だな。
『!?』
しかし、その行動に反応するヤツも勿論いるわけで。
「杏ちゃん、なんて羨まs……けしからんことを!」
いやいや、隠しきれてない上に、言い直した方が悪化してるんですがそれは……
「
最早アーニャは隠す気ゼロかよ。
「浅葱さん! 私も抱いてください!」
「蘭子は大声で一体何を口走ってるわけ!?」
てかお前熊本弁はどうしたよ!
「ふふふ〜♪ 遼哉が抱いてくれると聞いて〜」
「25歳児は帰れ!」
「聞いて〜♪」
「お前もか姉ヶ崎!」
楓に美嘉も……お前ら仕事入ってただろ……
「何か美味しい出来事が起きている雰囲気を感じたので、早く仕事終わらせて帰ってきちゃいました」
「右に同じく!」
いや、2人してテヘペロされても可愛いだけなんですが(真顔)。
「それで、抱いてくれるんですか。どうなんですか」
「抱きません」
途端に巻き起こるブーイングの大合唱。仲良しかよ……。仲良しだな。
「今杏ちゃんを抱いてるじゃないですか! ハッ!? まさか杏ちゃんみたいな小さい子が……」
「い、妹たちは渡さないよ!」
「誤解を招くようなことを言うな美波! てか妹
「みりあちゃんを忘れるなんて酷い!」
「ロリコンでシスコンなカリスマJK(笑)は部屋の片隅で座って、大人しく『ふひひ★』してろ」
「いくらなんでも辛辣すぎない!?」
「じゃあなんでですか?」
ふむ、この状況下だと蘭子は癒しだな。流石
「これは杏との賭けの正当な報酬だからな。そもそもお前らはアイドルだろうが。もし仮に有り得ないだろうが俺なんかと付き合って、金曜日さんあたりに激☆写されて『あの人気アイドル、プロデューサーと熱愛!?』なんてことになったらどうする」
そう言うと、マズイと思ったのか黙り込む。ふぅ……ようやく分かってくれたか。このタイミングで俺は『うさぎ』のソファから降りて、自分のデスクチェアに座る。その代わりに俺の上から降ろされた杏は大変不満そうだったが。
「買い物に付き合って貰うという名目でデート……はぐれないようにと手を繋ぐ……そのタイミングで週刊誌に写真を撮られる……スキャンダル……そういう関係だと世間に認知される……話題の中で引退発表……プロデューサーが責任をとって私と結婚」
「おい待て、何を恐ろしいことを考えてやがるんだそこのエロ大学生。お前最近既成事実を作ろうとしたり、そういう方面のアプローチ多くて、色々辛いんでやめてくれ」
本当に辛い。何が辛いって、全面的に美波がエロいんだよ。俺だってね? 菩薩でも秘丹弥虚羅多尊像でもない、健康的な男なんだよ。ぴ〜にゃ〜。
『
なんだろう。すごく馴染みのある渋い声で、絶対に言わないようなセリフで喋る黒色の生物が頭に浮かんだ……。疲れてるのかな……。
『それだ!』
「「それだじゃねぇよ!(ありません!)」」
美波の案に、我、天啓を得たりといった風に叫ぶアイドルに、身の危険を感じて反論する俺と駿輔。
そこにドタドタと誰かが走っている足音。どうやら段々近づいてきているようだ。バンッと、プロジェクトルームの扉を開けて入ってきたのはよく見知った顔だ。
「駿輔、遼哉、助けてくれ! いや、一緒に逃げるぞ!」
それは別の部署のプロデューサーであり、同級生である河合彰だった。
「突然どうしたよ?」
「ちょっとまゆがな……とか暢気に説明してる場合じゃない! いいからお前らもとっとと逃げるぞ!」
え、俺らもなの? と混乱していると、
「プロデューサーさぁん?」
「ひっ!?」
甘い、耳に心地いい声が聞こえてきた。
心地いいはずなのに、心根がスーッと冷える。ドアの方を見ると、彰の担当アイドルである佐久間まゆが縄を持って立っていた。
うわーあの縄って一体何に使うんだろー?(棒)
「逃げることないじゃないですかぁ。まゆはぁ、プロデューサーさんとお話がしたいだけですよぉ?」
「身体を縛られながら歓談が出来るほど、鋼の心を持ってない!」
別にまゆに彰を差し出してしまっても、構わんのでは? などと思っていると、彰が俺達に逃げることを促した理由が来てしまった。
「お兄ちゃん?」「兄さん?」
「おいおい……」
「マジか……」
どれだけ目を擦ってみても状況が変わることはない。むしろ元凶はこちらに近づいてきている。プロジェクトルームに来たのは、駿輔の実の妹であり、346のアイドルでもある竹内絢香。小さい頃から面倒を見てきて、俺のことを兄と慕ってくれる、同じく346のアイドル『
これはマズイ。この3人がこの状況にいるというのが本当にヤバイ。
「兄さん、何をやっているんです? その手に持っているのは……婚姻届ですか! あぁ……兄さん、とうとう私と結婚してくれる気になったのですね! 分かりました、印鑑はここにあります。さぁ、その婚姻届を渡してください!」
「落ち着け絢香! これは俺のじゃないから!」
「それくらい分かってますよ、兄さん。それは凛ちゃんに渡されたものでしょう? 流石、考えたわね凛ちゃん」
「これくらいしないと、プロデューサーに一番近い絢香さんには勝てないから」
と、ここまでの行動から分かるように絢香は重度のブラコンだ。結婚するならば駿輔以外はありえない。駿輔以外は恋愛対象として見ることが出来ない。そういうヤツだ。あ、別に恋愛対象として見ることが出来ないってだけで男性にも優しい子です。
デスクチェアの凭れながら一連の微笑ましい流れを見ていると、後ろから首に手を回され誰かが
「ねえ、お兄ちゃん。最近構ってくれないから、私寂しいよ?」
「俺もお前も忙しかったし、仕方ないだろ。トライアドのスケジュール管理とか諸々の担当は全部駿輔に任されたからな」
「むぅ〜……それはそうなんだけどさ」
加蓮がこうやって撓垂れ掛かる時は昔からの寂しいという意思表示だ。昔でこそ凭れ掛かるという表現だったが、今の加蓮は妙な色気があるせいで撓垂れ掛かるという表現がピッタリ当てはまってしまう。本当に色々と成長しちゃって……
「だから、その成長した証を誇示するかのように押し付けるのはやめなさい」
「あ、バレた?」
「バレるわ! まったく……そんなことしてたら、俺が何時オオカミになるか分からんぞ?」
「むしろ望むところなんでバッチコイ」
「おいコラ」
すると、加蓮が耳元で囁く。
「ちなみに……
「は? 危ない……私……たち?」
「うん♪」
加蓮が向いた方向を順に見ていくと、まゆ、絢香、そして自分を指差した。この3人はさっき後から入ってきた。危ないってことはまさか……
「気づいた?」
あ、ヤベェ。こいつら狙ってやがる。日程を調整して、
そう判断した直後、俺は加蓮の腕から抜け出して2人に告げる。
「逃げるぞ! 172NGだ!」
『了解!』
3人で扉の方に向かうと見せかけて反転、窓に突っ込む。外に飛び出した俺達を見て誰かが悲鳴をあげたが、予め用意していたパラグライダーで風に乗って離れていく。プロデューサーたるもの、パラグライダー等といった逃走用アイテムを常備していなければならない。
「おい、あの3人既成事実作ろうとしてやがった」
「冗談キツイぞ……」
「何時ものことだろ?」
えっ、それは……
「お前、相当苦労してたんだな……」
「分かってくれたか……」
「このまま飲みに行くか!」
「そうだな!」
街の人は突然の出来事に驚いていたが、原因が346プロからだと分かると
『なんだ346か』
すぐに納得した。そして、逃げてきたプロデューサーを見つけると声をかける。
「何時も大変だな、いい酒入ったけど一本持ってくか?」
「今日は一体誰だったの? 凛ちゃん?」
「いやいや、絢香ちゃんだろ」
「なあ、今日はまゆちゃん一体何を装備してた? 縄……あぁ、逃がさないつもりだったんだな……」
近所の人の協力があるからこそ、彼らプロデューサーは自重をライブ会場に置いてきたアイドルたちの魔の手から逃げおおせているのだ。
下の喧騒を見て、彼女は愉快そうに笑った。
「まったく……騒がしいな。体力が有り余っているようだ。これは仕事を増やすように言うべきか」
「騒がしいのは、嫌いかね?」
「……今西さんでしたか」
その女性に声をかけたのは初老の男性。美城プロダクションアイドル事業部の部長であり、遼哉たちプロデューサーの上司の今西だった。
「ノックしても返事がなかったから、勝手に入らせてもらったよ。すまないね」
「そうでしたか。構いません」
女性は納得すると、自分のデスクチェアに座った。
「彼らが、やはり気になるかい? 敦子くん」
「仕事場ですよ……まぁ、私たちしかこの場にはいないですしいいでしょう。気にならないと言えば嘘になるでしょうね、史法さん」
彼は、彼女――美城敦子がアメリカに出張する以前よりも昔からの顔馴染みである。今西と、敦子の父である、美城会長が同級生の親友であることもあり、プライベートでの交流があるのだ。
「君の考えとは、全く違うからねぇ。気に入らないかい?」
「そういう訳ではありません。あの時彼には、噛み合わないと言いましたが私はあの2人の考えを認めています。シンデレラの舞踏会で彼が私に言った言葉……そっくりそのまま返したいくらいです」
『星? 君はその星全てを見出せるというのか?』
『いえ。私に見えて常務に見えないこともあれば、その逆もあります。渋谷さんとアナスタシアさんの、別の可能性を常務が示されたように』
『触発された他の皆さんもそれぞれの可能性を広げ、輝きを増しています。それも、無限にある彼女達の可能性の一つに過ぎないのではないかと』
『君は……私の理想もその一つに過ぎないというのか?』
『私にとって一番大切なのは、彼女達が笑顔であるかどうか。その輝きを如何に損なわせないか。……それが私のプロデュースです』
『君とは噛み合わないな。私は城を。君は灰被りの夢を第一としている。我々は平行線のままだ』
「私は確かに、渋谷凛やアナスタシアの新しい可能性を見出しました。しかし、彼もまた私には見えなかった……思いつきもしなかったような様々なアイドルの可能性を見出していった。平行線というのは悪いことばかりではありません。何故なら常に相手とは違う目線で物事を見ることが出来ますからね」
そう言った敦子の顔は笑っていた。あの時のピリピリした空気からはとても考えられないことだ。
「それで、楽しいことは嫌いかい?」
「まさか」
そう言いながら彼女は再び立ち上がり窓辺に立ち、外の様子を見た。外には逃走した遼哉たちプロデューサーを捕獲するために、
「私はアイドル事業部の統括担当です。騒がしくて楽しいことが嫌いならばこんな仕事、父からの頼みでもやりません。そうでなければ、あんなにムキになったりしませんよ」
そう言って振り向いた敦子の顔は、とても楽しそうな笑顔を浮かべていた。
如何でした?
ずっとこんな感じです。シリアスさん?ああ、あの人は旅行に行くって言ってた。
お知らせです。
俺の小説は原則、日曜日に更新することにしました。日曜日を目処に待っていただけると嬉しいです。
それでは、感想批判諸々よろしくお願いします