ソードアート・オンライン 黒と紫の軌跡   作:藤崎葵

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大変長らく更新出来なくて申し訳ないデス。お待たせいたしましたロストソング編最新話更新です!
基本はゲーム本編をなぞりつつ、オリジナル要素を入れながら進めたいと思ってますのでちょっとゲーム本編とは違う形になるかもしれませんが生温かく読んだってくださいな^^



では85話、始まります。


第八十五話 浮島草原ヴォークリンデ

2026年6月。

ついに実装された新エリア『スヴァルト・アールヴヘイム』に上陸したキリト達。

第一の浮島である『浮島草原ヴォークリンデ』を攻略するために、まずは手頃なクエストを受けることから始めたようである。

そのクエストは二つあり、そのうちの一つは転移門からフィールドに出て北東にあるダンジョンにあるらしい。

なので、キリト達は二手に別れてクエストを攻略することにし、パーティーを二つに別けた結果

 

「北東にあるダンジョンには、俺とユウキ、リーファとシノン。もう片方のクエストには残りのみんなで行ってくれ」

 

「了解したよ。何かあったらメッセージを飛ばすってことでいいかな?」

 

「あぁ」

 

必要事項の確認を行った後、ソラ達は転移門の方へと向かっていく。

残されたキリト達も、メニューを開いて装備や所持アイテムの確認を行い、問題ないと判断すると

 

「じゃぁ、俺たちも行くか」

 

「うん。どんな冒険になるか楽しみ!」

 

「腕が鳴るわね」

 

「それじゃ、いってみよー!」

 

キリトの言葉にユウキ達がそれぞれ答え、転移門へ行き

 

『転移、ヴォークリンデ』

 

そう声を合わせて口にした瞬間、彼らの体がライトエフェクトに包まれ、次の瞬間、目に映った街並みは緑溢れるフィールドへと変わる。

辺りを見回し『ヴォークリンデ』に転移したことを確認すると、キリトはメニューを開いて

 

「よし、目的のダンジョンまで飛ぶか」

 

そう言って翅を広げて飛び上がった。

ユウキ達も後を追うために翅を展開し飛翔する。

すると、キリトのジャケットのポケットから小妖精のユイが顔を出し

 

「パパ、『スヴァルト・アールヴヘイム』では、それぞれの浮島で飛行できる高さの限界が決められているようです。ここ『ヴォークリンデ』では比較的高く上昇できますが、それでもALO本土よりは低く設定されているようです」

 

そう言ってきた。

ここ『スヴァルト・アールヴヘイム』では、各浮島大陸で飛行できる高さの限界が決まっている。

高度限界より高い位置に存在する浮島には現在は行くことはできないが、『ヴォークリンデ』を始め、浮島大陸を攻略していくと設けられている高度限界は解除されるらしい。

『ヴォークリンデ』での高度限界ギリギリの高さで飛び続けること約数分。

目的地であるダンジョンの入り口が見えてくる。

キリト達は降下を始め、ダンジョン入り口前で地上に降り立った。

ダンジョンに歩み寄ってみるが、入り口は固く閉ざされているようだ。

リーファが扉に手を当ててみて、数秒後に困った表情で首を振りながら

 

「魔法で封印されてるみたい」

 

そう口にした。

その言葉にシノンは

 

「と言うことは、物理攻撃じゃ破壊できないってこと?」

 

そう問いかけた。

それに応えたのはユウキだ。

 

「そうみたいだね。これじゃ先に進めないよ」

 

リーファ同様に困ったような表情で言うユウキ。

その横で

 

「となるとだ。おそらくこの扉の封印を解除する仕掛けがあると思うんだが・・・・・・ん?」

 

キリトが言いながら扉を観察していると、何かに気付いたようで扉に近づいてみる。

 

「どしたのキリト?」

 

疑問符を浮かべて、同じように扉を見ながらユウキは問う。

するとキリトは扉の一角を指さし

 

「ここに不自然な穴が空いてる」

 

言われたユウキ達が指の先に視線を向けてみると、確かに長方形の不自然な穴が空いていた。

それを見たシノンは考える素振りをしながら言う。

 

「石版か何かを納めるのかしら・・・・・・怪しいわね」

 

「ねぇねぇ、ここみてよ。何か書いてある!」

 

その時だった。

扉の端にある場所を指さしながらユウキがそう言うと、キリト達はそこに視線を向けてみる。

そこには古ぼけた文字が刻まれていた。

 

「なになに……『トールの耕地』? そう書いてあるよ」

 

刻まれている文字をリーファが読み上げると、キリトがメニューを開いて操作、マップを表示して『トールの耕地』の位置を確認した。

 

「確かここにくる途中農場みたいなとこがあったから、きっとそこだ」

 

「扉を開くヒントがあるかもしれないわね」

 

「じゃ、『トールの耕地』に行ってみよー!」

 

ユウキの掛け声と同時に、4人は翅を広げ、扉解放のヒントを求めて『トールの耕地』を目指して空へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一方その頃。

 

「いいじゃん。オレらと一緒にクエストやろうよ」

 

「ドロップしたアイテムとか優先して君にあげるからさぁ〜」

 

「こ、困ります……」

 

目の前いる如何にも軽薄そうな態度の男性プレイヤー(2人とも種族はシルフ)に行く手を遮られ、しつこくクエストに誘われている小竜を連れたケットシーの少女─────シリカは明らかに迷惑そうな表情で自身に起こっている事柄に困っていた。

 

(うぅー……なんでこんな事に……)

 

諦める様子のない男性プレイヤー2人にシリカはうんざりしながら胸中で呟いた。

そもそも、どうして彼女がこんな状況になっているのか──────事の発端はキリト達とは別のクエスト攻略に向かっていたソラ達が、目的のクエストをクリアして丁度街へと戻ろうとしていた時の事だった。

街への転移門へ向かう途中、シリカは使い魔用の素材アイテムを採集するから後から戻ると言ってきた。

それに対し、アスナとリズベットが付き合おうかと提案するも「そんなに手間のかかる素材じゃないから大丈夫ですよ」とやんわり断り、何かあったらメッセージを送ると行ってソラ達と別れ、近場の浮島へと向かったのである。

立ち寄った浮島で必要な素材を粗方採集し、いざ街へ戻ろうとしたところで

 

「あれ? 君、もしかしてソロ?」

 

「ならさぁ、オレらとパーティ組まね? オレ達頼りになるよぉ〜」

 

この2人のプレイヤーに声をかけられたのだ。

仲間が街にいるからと断るも、彼女の言い分を信じようとせず2人は行く手を阻むようにしてシリカの前に立ち、尚もしつこく彼女を誘い続けているというわけだ。

アスナかリズベットにメッセージで助けを求めようにも、2人のシルフはメニューを開く隙を与えてくれない。

どうしたものかと困り果てるシリカ。

すると、痺れを切らした片方のシルフが

 

「いいから行こうよ。損はさせないからさぁ!」

 

腕を伸ばしてシリカの右腕を掴んできた。

途端に彼女の目の前にハラスメント警告のウインドウが表示され、シリカは素早く左手で『YES』を押そうとする。

しかしそれより速く、もう一人のシルフによって左腕も掴まれ阻止されてしまった。

 

「っ───!」

 

「へへ、させねぇよ」

 

両腕を拘束されて身動きが取れないシリカを、2人は舐め回すような厭らしい目で見てくる。

その視線で背筋に悪寒が疾ったシリカは、男達から逃れようと身を攀じる。

しかし体格の差なのか、はたまたパラメータ的な差なのかビクともしない。

 

「きゅるぁ!」

 

その時、シリカの相棒である子竜────ピナが彼女の頭の上から左腕を掴んでいるシルフに向かって飛び掛かる。

 

「邪魔だ!」

 

「きゅるぅ!」

 

しかし、飛び掛かったピナをシルフは空いている片手を振って薙ぎ払った。

振り払われ、ピナは地面に叩きつけられる。

 

「ピ、ピナ!」

 

「このトカゲが……ぶっ殺してやる」

 

苛立ったように言い、男はシリカの左腕を離して地面に転がっているピナに歩み寄っていく。

 

「や、やめて!」

 

「おっと、逃がしゃしねぇよ!」

 

相棒に何をしようとしているのかを察したシリカはピナに駆け寄ろうとするも、依然右腕は掴まれたままで、更にさきほど解放された左腕も再び掴まれ拘束されてしまう。

必死に振り解こうとするもやはり振りほどけない。

その間にも、男はピナへと近づいている。

 

「やめて! お願いですからピナに酷い事をしないで!」

 

「ダメだね。お嬢ちゃんが素直にオレ達と来りゃぁ良かったのによぉ」

 

「そういうこった。安心しなよ。このトカゲをぶっ殺した後は、たぁっぷりお嬢ちゃんの事も可愛がってやっからさぁ」

 

言いながら下卑た笑いを浮かべ、男は腰の片手剣を抜き、高々と振り上げる。

 

「そんじゃぁ……死ねよやぁぁぁぁ!!」

 

「ピナぁ─────!!!」

 

声高に叫び、男の片手剣が振り下ろされようとした─────その時

 

「なぁ。面白い事やってるな、あんた達」

 

上空から声が聞こえ、男の剣を振る手が止まる。

声のした方へと視線を向けると、そこには1人の男性プレイヤーが翅を広げてホバリングしていた。

その人物は翅を仕舞い、シリカ達のいる浮島へと降りて着地し、シルフ2人を見た後、シリカに目を向ける。

髪は燃えるような赤色なので種族はサラマンダーだろう。

身長はシリカよりも頭一つ分高い位なので、彼女と歳は近いのかもしれない。

もっともアバターの姿と現実の彼の姿と同じとは限らないのだが。

 

「なんだぁ? おいクソガキ、いきなり現れて邪魔してんじゃねぇぇよ」

 

突然現れたサラマンダーの少年に、子竜を斬ろうとしたシルフが片手剣の切っ先を彼に向け、苛立ちを隠さずに言い放つ。

そのシルフの様子に少年はやれやれとかぶりを振って

 

「いやさ。いい歳した大人2人が、女の子1人相手にみっともない真似してるからついね。カッコ悪いと思わない? 思うようにいかないからって女の子を力尽くでどうこうしようなんてさ」

 

そう言って不敵に笑ってみせた。

その姿が癪に障ったのか、片割れのシルフは少年を睨み

 

「五月蝿ぇ!! 邪魔すんならテメェから死ねよや!!」

 

吼えながら彼に向かい駆け出した。

間合いが詰まり、勢いよく斬撃が少年に向かって放たれる。

 

「危な─────」

 

シリカが咄嗟に叫んだ────次の瞬間。

トスリと何かが地面に刺さる音がした。

次いで出てきたのは

 

「ぎ、ぎぃやぁぁぁぁぁ!!! お、オレの腕ぇぇぇぇ!?!?」

 

少年に向かい斬撃を繰り出していたシルフの絶叫が響き渡った。

そう、地面に刺さったのは彼の片手剣。

しかも彼の右腕付きのだ。

少年に目を向けると、彼は右手に武器を握っていた。

シルフの右手は斬撃を繰り出す直前に、シルフが認識できないほどの速さで抜かれた彼の得物よって両断されたのである。

握られているのは両手剣。

その刀身は煌めくような赤色で、長さは彼の身の丈に迫るほどのものだ。

右腕を押さえて喚くシルフを他所に、少年は両手剣の切っ先を、シリカを拘束しているシルフに向ける。

 

「その()を離さないなら、次はあんたの番だ」

 

鋭い眼光でシルフを見ながらそう言った。

その目にシルフは一瞬たじろぐも

 

「な、舐めんなクソガキぃぃ!」

 

拘束していたシリカの両腕を解放し、少年に向かって駆け出しながら自身の片手剣を抜き放つ。

そのまま勢いよく間合いを詰め、右腕を斬られた片割れのシルフ同様斬撃を繰り出す。

しかしそれはあっけなく躱され

 

「遅い!」

 

逆な少年の放った斬撃によって腹から斬り裂かれ真っ二つにされてしまった。

 

「ぐぁぁぁぁ!!」

 

その斬撃でHP画全損したのだろう。

男はあっという間に爆散し、リメインライトと化していく。

その様子を、斬られた右腕を押さえながら見ていたもう一人のシルフは息を呑んで数歩後退った。

 

「どうする? まだやるかい?」

 

「ひ、ひひぃぃぃぃ!?!」

 

少年の言葉に、シルフは情けない悲鳴をあげながら翅を広げ、逃げるように浮島から飛び立っていく。

やがて彼の姿が見えなくなり、残された片割れのリメインライトも小さくなって消えていった。

少年は両手剣を納め、やれやれと肩をすくめる。

 

「ピナ! ピナ、ごめんね……あたしの所為で……」

 

「きゅぅ……」

 

解放されたシリカは地面に叩きつけられて傷を負ってしまった相棒の元へと駆け寄り、抱き上げると今にも泣きそうな声で子竜に謝っている。

思った以上にピナはダメージを受けているようで、鳴き声も少し弱々しい。

そんな彼女に少年は歩み寄って

 

「これ、使いなよ」

 

言いながら差し出したのは回復薬(ポーション)だ。

それも高位の回復薬。

 

「え……でも……」

 

「気にしなくていいからさ」

 

遠慮しているシリカに少年はそう言いながら回復薬を手渡す。

シリカは少し戸惑うも、少年の好意を受けることを決め、傷付いた相棒に回復薬を使用した。

すると、たちまちピナを優しい光が包み、傷を癒していく。

 

「きゅるぁぁ!」

 

十数秒後にはすっかり傷も癒え、子竜は元気に翼を広げシリカの腕から飛び立った。

そのまま彼女の頭の上に降り立つ。

元気になった相棒を見て

 

「よかったぁ……あの、ありがとうございました。助けてくれた上に、高位の回復薬まで……」

 

安堵の息を吐き、少年に向かって深々と頭を下げる。

それに対して少年はとくに気にした風ではなく

 

「だから気にしなくていいよ。相棒の使い魔、元気になってよかったじゃん。ま、これからはああいう輩には気をつけなよ。じゃぁな」

 

そう告げると少年はシリカに背を向ける。

 

「あ、待ってくだ────」

 

呼び止めようとするも、それより速く少年は翅を広げ、勢いよく空へと旅立った。

あっという間にその姿は見えなくなり、シリカは少年の飛んで行った方向を見ながら

 

「……名前……聞きそびれちゃったね、ピナ」

 

頭に乗っかっている相棒へそう言うも、ピナは「きゅるぅ」と鳴くだけだ。

シリカは軽く息を吐き

 

「早く街に帰ろっか、ピナ」

 

「きゅあ!」

 

そう言うとピナはひと鳴きする。

翅を広げ、浮島から飛び立ち、街への転移門に向かいながら

 

「……今度会えたら、助けてくれたお礼しないといけないよね?」

 

誰に言うでもなく、シリカは1人そうごちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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シリカが街に戻り、宿屋前でソラ達と合流したほんの少し後、キリト達もクエストを終わらせて街へと帰還してきた。

話を聞くところによると、キリト達の目的であるクエストをクリアするにはまずダンジョンへ続く扉を開く必要があった。

扉を調べ、怪しい窪みと刻まれた文字『トールの耕地』を発見し、まずは『トールの耕地』へと向かった彼らは、そこにあった建物の中で石版を発見する。

しかしそれは半分に割れていて、もう半分を探し出なければならなかったのである。

それのヒントが同じ建物の中にあった日記の中にあると判断したシノンが日記を読み、記されていた場所で石版を護るモンスター『ワイバーン』と交戦、勝利してもう半分の石版を入手に成功し、ダンジョンの扉を開くことに成功したのである。

その後、ダンジョンに挑んでそこの番人であるモンスターを倒し、クエストをクリアしたのだが、どうやらキリト達よりも先にクリアした者達がいたらしい。

どこかの有力なギルドに所属しているらしいところまでは聞けたのだが、ギルド名を聞く前に彼らは去って行ってしまったので、どんなギルドかは判らず仕舞いだったのだが。

互いのクエスト終了を確認した後、クラインは自身のギルド『新・風林火山』と落ち合う約束があり、エギルとリズベットも所用があるらしく、とりあえずは解散ということになった。

シリカとシノンは共にアイテム補充の為に道具屋へと向かい、残ったキリトとユウキ、ソラにアスナ、リーファの5人は街を見て回る事にして街中を歩いている。

しばらく歩いていくと、一際大きな建物が目に入った5人はその前で立ち止まった。

 

「うわぁ……大っきい建物だなぁ」

 

「ここはギルドマスターや各種族の領主達が会合で使われる建物だよ」

 

感心したような声で言うユウキに応えたのはキリトだ。

そのまま建物に目を向けながら

 

「確か今は領主会合が行われて────」

 

そう言い掛けたところで、大きな扉が音を立てて開き、キリト達は其方に目を向ける。

建物から出てきたのは────

 

「おや、リーファじゃないか。それに君はキリト君か。髪型が変わっていたからパッと見では判らなかったよ」

 

「おおー。キミ達もスヴァルト・アールヴヘイムに上陸してたんだネ」

 

シルフとケットシーの領主、サクヤとアリシャだった。

さらにその後ろには

 

「スプリガン、貴様らか……」

 

サラマンダー最強のプレイヤー、『猛炎の将」ユージーンだ。

錚々たる面子に驚きながらも、キリト達は彼女達に会釈して

 

「お久しぶりです、サクヤさんにアリシャさん。世界樹の時は本当にありがとうございました」

 

「お話はキリト達から聞いてます。ボクからもありがとうございます」

 

キリトとユウキは深々と頭を下げながら2人にそう告げる。

世界樹の時とは去年の1月に、旧ALOに囚われていたユウキを助け出した時の事である。

当のサクヤとアリシャは

 

「いやいや、君には大きな恩を受けたからな」

 

「そうそう。だからそんなに畏まらなくていいヨー」

 

大らかな笑いながらキリト達にそう言うと、2人は頭を上げた。

 

「で、サクヤ達が出てきたって事は、会合は終わったって事?」

 

「ああ、今しがたな。新しく実装されたこの浮島大陸。しばらくここが数多のプレイヤー達の活動拠点となるだろう」

 

「だから今のうちに、各種族で最低限の取り決めをしとこうってなってネ」

 

「とりあえず、各種族から数名選出して小規模の警備団を創り、迷惑行為を働くプレイヤーがいないかどうか見回る事が決定した。我らサラマンダーからはキバオウをリーダーとして推薦している」

 

リーファの問い掛けに、其々の応えが返ってくる。

彼女らの言う通り、この新エリア『スヴァルト・アールヴヘイム』には古参新参問わず多数のプレイヤーが集まってきている。

人が集まり増えると言う事は交流も増えるという事だが、そうなると必然的に大小括り無くトラブルが発生しやすくなるのも道理というものだ。

 

「なるほど。確かに違法プレイヤーを取り締まる小隊組織はあった方がいいかもしれませんね」

 

「そうですね。人が増えればそれだけトラブルも起きやすいですから」

 

納得したように頷きながら言うソラとアスナ。

 

「それに、最近規模を拡大している新気鋭のギルドもいるようだからな」

 

「えぇっとねぇ、確かギルド名は『シャムロック』で、ギルドリーダーの名前が───────」

 

サクヤに続いてアリシャが言葉を紡ごうとしたその時。

 

『うおぉぉぉぉぉ!! セブンだぁぁぁ!!』

 

少し離れた広場の方から大きな歓声が響いてきた。

何事かと思ったキリト達は急いで広場に向かっていく。

辿り着いた広場で彼らの目に入ったのは

 

「みんな〜元気〜? セブンはとっても元気だよ〜!」

 

数多のプレイヤー達によって出来た壁のような群衆と、その中心となっている音楽妖精プーカの少女だった。

少女が言うと、群衆は一気に大歓声を上げて沸き立っていく。

その中には悪趣味なバンダナを巻いたサラマンダーもいた気がしたが、キリト達は気のせいと断じ、視線を群衆の隙間から見えるプーカの少女へと向ける。

 

「ね、キリト。もしかしなくてもあの娘……」

 

「あぁ……間違いないだろ。あの娘がセブン……菊岡の言っていた『七色・アルシャービン博士』だ」

 

耳打ちしてきたユウキの言葉に頷き、キリトはプーカの少女──────セブンを見ながらそう言い、スヴァルト・アールヴヘイム実装数日前の事を思い出していた。

 

 

 




新エリア実装数日前。


少年達は仮想科の公務員からある人物の話を聞くこととなる。


次回「七色・アルシャービン」

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