ソードアート・オンライン 黒と紫の軌跡   作:藤崎葵

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連☆続☆投☆稿だZE!!!

まさか今日中に書きあがるとは・・・


ではでは始まります!どうぞ~



第七話 竜使いの少女

2024年2月23日 35層迷いの森

 

きっかけは些細な事だった。

街に戻った時のアイテム分配についてパーティーメンバーの一人がこう言ったのだ。

 

「あんたはそのトカゲが回復してくれるんだから、回復結晶なんていらないでしょう?」

 

前髪をいじりながらそう言ったのは槍使いの女性プレイヤー。

その言葉に子竜を頭に乗せたツインテールの少女がムッとした表情になり

 

「ロザリアさんこそ、ろくに前衛に出ないのに、回復結晶が必要なんですか!」

 

そう言って反論する。

ロザリアと呼ばれた女性プレイヤーは尚も髪いじりを続けながら

 

「もちろんよ。()()()アイドルのシリカちゃんみたいに、男たちが回復してくれるわけじゃないもの?」

 

そう言ってのけた。

その言葉にシリカと呼ばれた少女は益々ムッとした表情になる。

残りのパーティーメンバーは険悪な雰囲気にオロオロとするばかりだ。

 

「わかりました!」

 

直後、シリカはそう言って

 

「アイテムなんて要りません! もう貴女とは絶対に組まない! 私を欲しいっていうパーティーは山ほどあるんですからね!!!」

 

背を向ける。

メンバー達が止めるのも聞かずシリカは森の奥へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

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パーティーと別れ、シリカは森を一人迷い歩いていた。

この森は踏み入れた者を惑わせ道を迷わせる。

地図がなければまず突破は不可能だろう。

そんな中、彼女は森の中でも最強の部類に属するドランクエイプとエンカウントしてしまった。

その数は3体。

前にも彼女はこのモンスターと遭遇していたが、その時はパーティーメンバーがいたので難なく倒す事ができた。

それに自分には相棒の子竜もいる。

故にシリカは今回も大丈夫だろうとタカをくくっていた。

それが仇となった。

最初はソードスキルを駆使し、ドランクエイプのうち一体を一気の追い詰める。

しかし、止めを刺そうとした瞬間、別のドランクエイプがスイッチして飛び込んできたのだ。

それだけではなかった、奥に引っ込んだドランクエイプは持っていた壺の中の液体を飲み始める。

直後、HPが全快してしまったのだ。

その光景にシリカは驚きつつ焦った。

戦況は徐々に傾いていき、シリカは追い詰められていく。

減っていくHPを子竜が回復させるが、それはアイテムには遠く及ばない。

連続してくる攻撃を躱し、HPを回復させようとポーチから回復アイテムを出そうとして─────そこで気付く

 

(アイテムが……ない!?)

 

そう、彼女のポーチにある回復アイテムはすでに底を尽きていたのだ。

一瞬の動揺。

それが大きな隙となり、ドランクエイプの攻撃が彼女を襲った。

が、それは彼女に届く事はなかった。

相棒の子竜がシリカの前に飛び出し攻撃を受けたのだ。

そのまま子竜は地面に叩きつけられる。

 

「ピ……ピナ!!」

 

シリカはピナと呼ばれた子竜に駆け寄った。

表示されているHPは勢いよく減っていく。

そしてそれはあっという間に尽きてしまい、ピナの身体が光と共に四散した。

眼の前で起きた事にシリカはただ呆然とする。

そんな彼女にドランクエイプは無慈悲に武器を振り上げた。

それは勢いよく……

振り下ろされなかった。

刹那、三体のドランクエイプはポリゴン片になり爆散した。

舞い散るポリゴン片の向こうには一人のプレイヤーが立っていた。

黒いロングコートに黒い剣。

漆黒の瞳をした少年がそこに居た。

しばらくの沈黙。

やがてシリカは眼の前に落ちていた羽を拾う。

それを抱える様に握りしめて

 

「ピナ……あたしを独りにしないでよ……ピナぁ……う、うぁぁぁぁ……」

 

ボロボロと涙を零し、相棒の名を呼んだ。

そんな彼女を見て少年は剣を収めて

 

「君はビーストテイマーだったのか。ごめん……君の友達を助けられなくて」

 

言いながら歩み寄る。

シリカは首を振って

 

「いいんです……あたしが馬鹿だったんです、一人で森を抜けようとしたから……」

 

「……その羽根、アイテム名設定されてる?」

 

少年はしゃがみ込んでシリカに訪ねる。

彼女が羽根をタップすると『ピナの心』と表示された。

それを見てシリカの眼に再び涙が溢れ始めた。

少年は慌てて

 

「お、落ち着いて。心アイテムがあれば使い魔を蘇生できるかもしれない」

 

そう言った。

その言葉にシリカは少年を見る。

 

「最近わかった事なんだけど、47層のフィールドダンジョンの『思い出の丘』に使い魔の主人が行けば蘇生用のアイテムが入手できるらしいんだ」

 

それを聞いてシリカは一瞬明るくなるがすぐにの表情は曇ってしまう。

アイテムのある層は47。

自分のLVは44。

基本この世界では階層数よりもLVが+10されてないと安全とはいえない。

 

「……今は無理でも頑張ってレベル上げすれば……」

 

「蘇生できるのは死んでから3日以内なんだ」

 

少年が静かに告げる。

それを聞いてシリカは再び泣きそうな表情になった。

すると少年は立ち上がり、メニューを開いて操作を始める。

しばらくしてシリカの眼の前にトレードメニューが表示された。

記されているのは彼女が聞いた事もないような装備品ばかりだった。

 

「これなら5、6LVは底上げできる。俺も一緒に行くし、コンビ組んでる奴にも協力してもらうからなんとかなる筈だ」

 

そう言ってシリカに向かい合った。

立ち上がったシリカは疑問符を浮かべて

 

「どうして……そこまでしてくれるんですか?」

 

問いかける。

すると少年はバツの悪そうな顔をして

 

「……笑わないって約束するなら……言うよ」

 

「笑いません」

 

真剣な表情でシリカは返した。

 

「君が……妹に似てるから……」

 

少年は恥ずかしそうに、そう呟いた。

それを聞いてシリカはキョトンと呆気にとられるも

 

「ぷっ……あはははははは」

 

すぐに堪え切れず笑いだした。

少年は苦い表情になって顔を背けた。

 

「あ、ごめんなさい」

 

言いながら残っていた涙を拭い

 

「これ、足りないかもしれないけど……」

 

自分の所持金からいくらか出そうとするが

 

「お金はいいよ。俺の目的と被らないでもないし……」

 

そう言って少年はシリカの方を向いた。

当の彼女は一瞬キョトンとしたがすぐに笑って

 

「あたし、シリカって言います」

 

手を差し出す。

 

「俺はキリトだ、しばらくの間よろしくな」

 

そう言って黒衣の少年-----キリトは握手に応じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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35層 ミーシェ

 

森を脱出したキリト達は街に戻ってきた。

転移門の前で誰かが来るのを待っている。

しばらくすると

 

「キリトー!」

 

一人の女性プレイヤーが駆け寄ってきた。

黒紫の長髪を揺らし、青紫のチュニックとロングスカートを身につけている。

 

「ユウキ」

 

ユウキと呼ばれた少女は彼らの前で立ち止まり、キリトとシリカを交互に見て

 

「……ナンパ?」

 

そう言った。

 

「なんでだよ! さっきメッセ送っただろ!!」

 

「あははー、冗談だよキリトの怒りんぼーw」

 

そんな軽いやりとりを交わす。

シリカは呆気にとられていた。

 

「あ、あの……」

 

彼女の様子に気付いたユウキは

 

「話はこの()()()から聞いてるよ。ボクはユウキ、よろしくねシリカ」

 

そう言って笑いかけた。

何故か黒い人の部分が強調されている事が妙に面白く、シリカも笑いながら

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

そう応えた。

自己紹介を済ませ、キリト達はシリカの泊っている宿屋に向けて歩き出した。

その途中、何人かの男性プレイヤーに声をかけられる。

内容はシリカのパーティーへの勧誘だった。

キリト達とパーティーを組んでいる事を理由にそれを断ると、男たちは判り易い嫉妬の眼をキリトに向けた。

シリカに促されその場を後にする。

男たちは未だにキリトに嫉妬の視線を送っていた。

 

「君のファンか……」

 

「シリカは人気者なんだね?」

 

その問いかけにシリカは苦笑いになり

 

「違いますよ……マスコット代わりに誘われているだけです……」

 

可憐な容姿を持ち、なおかつアインクラッドでは珍しい子竜、フェザーリドラをテイムした彼女を中層では知らないプレイヤーはいなかった。

メイン武装の短剣も攻略組には及ばないものの中々の腕を持っている。

それゆえ彼女を勧誘するギルド、パーティーは後を絶たない。

 

「なのに……『竜使いシリカ』なんて呼ばれて……いい気になって……」

 

呟き思い出すのは相棒の子竜。

自身の頭にいつも感じる筈の相棒の重さと温もりは今は無い。

自身の慢心が招いた結果にシリカは再び涙目になった。

そんな彼女に

 

「心配ないよ、必ず間に合うから」

 

「そうだよ。だから泣かないで? ね?」

 

二人はそう言って微笑みかけた。

それを見てシリカは涙を拭い頷いた。

 

「そういえばお二人のホームって……」

 

ふと疑問に思った事をシリカは尋ねた。

 

「少し上の層にあるんだけど……面倒だし、今日はここに泊るか。構わないよな、ユウキ?」

 

「ボクは構わないよ」

 

問いかけにユウキは答える。

するとシリカは笑顔になり

 

「そうですか! ここのチーズケーキ、結構いけるんですよ」

 

「へぇ~、楽しみだなぁ~」

 

そうやりとりしていると

 

「あらぁ? シリカじゃない?」

 

シリカの耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

振り向くとそこには一番会いたくない人物がいた。

 

「ロザリアさん……」

 

表情を曇らせて眼を逸らす。

 

「無事に森を抜けられたのねぇ? よかったじゃない」

 

嫌味を含んだ声で言いながら歩み寄ってくる。

 

「あら? あのトカゲどうしたのよ? ……もしかしてぇ……」

 

更に厭らしい笑みを浮かべてロザリアは問いかける。

それに対しシリカは

 

「ピナは死にました……でも、絶対に生き返らせます!」

 

ロザリアを睨むように向かい合いそう言い放った。

 

「へぇ……って事は『思い出の丘』にいくんだぁ? でも、あんたのLVで突破できるのかしら?」

 

対してロザリアはそう返す。

その言葉にシリカは悔しそうな表情で口ごもる。

すると

 

「余計な御世話だよ。オバサン」

 

ユウキがシリカを庇うように前に出て言い放つ。

突然の言葉にロザリアは唖然とした表情になった。

 

「お、オバっ……」

 

「突破なら出来るさ。そんなに難易度の高いダンジョンじゃないからな」

 

続いてキリトも言い放つ。

そんな二人を見回して

 

「ふぅん? 見たとこそんな強そうじゃないけど……ま、がんばってね」

 

そう言った。

キリトは背を向けて

 

「行こう」

 

とシリカ達を促した。

そうして去っていく彼らの背中を、ロザリアは意味ありげにニヤリと嗤いながら見送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

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3人はNPCレストランの一席に座り夕食を採っていた。

食事を終えてデザートがくるのを待っていると

 

「なんで……あんな意地悪言うのかな?」

 

シリカが俯いたまま呟く。

それに答えるように

 

「君は、MMOはSAOが初めてなのか?」

 

キリトが問いかける。

シリカは頷いた。

 

「そうか……どんなMMOでも人格の変わる奴はいる。進んで悪人を演じるプレイヤーもね」

 

「ボク達のカーソルは緑色だよね? でも、犯罪を起こしたプレイヤーは、カーソルがオレンジになってオレンジプレイヤーって呼ばれるようになるんだ」

 

キリトの言葉にユウキが続けて口にした。

「キリトの受け売りだけどね~」と補足を加えて

 

「なかでも、それ以上に危険なのがレッド……進んで殺人を犯すプレイヤーがいるんだ」

 

真剣な表情でユウキは言う。

シリカは息を呑み

 

「そんな……人殺しなんて……」

 

そう返す。

 

「従来なら悪を気取って楽しめた。でも、SAOは訳が違う……ここで死ねば現実でも死んでしまうんだ」

 

そこまで言ってキリトはカップを持つ手に力を込めて

 

「このゲームは遊びじゃないんだ……」

 

苦い表情でそう言った。

 

「キリト……」

 

心配そうな表情でユウキはキリトの手に自身のそれを重ねた。

キリトはそんな彼女に微笑み返す。

 

「キリトさんはいい人ですよ! あたしを助けてくれましたから! それに、ユウキさんだって!!」

 

そう言ってシリカは身を乗り出した。

 

「……ありがとう、シリカ」

 

「ありがとね」

 

キリトとユウキは微笑んでそう返した。

デザートを食べ終えて、キリト達はそれぞれの部屋に戻った。

キリトとユウキは節約の為と言う事で一緒の部屋に居る。

ベッドに腰掛けてユウキは背筋を伸ばし

 

「ん~……キリト、さっきのオバサンだけど」

 

「ああ。お前の考えてる通りだと思うぞ」

 

言いながらキリトは椅子に座った。

 

「おそらく明日仕掛けてくるかもしれない。万が一の事を考えて、ユウキはシリカの護衛を頼む」

 

「らじゃ!」

 

キリトの指示にユウキは可愛らしく敬礼する。

その仕草にキリトから笑みがこぼれた。

その時、ドアを叩く音が聞こえた。

 

「はーい?」

 

「あの、シリカです。明日の事を聞きたくって……」

 

訪ねてきたのはシリカだった。

キリト達は彼女を招き入れ

テーブルを用意しそこにアイテムを設置する。

見慣れないアイテムにシリカは首を傾げて

 

「これ、なんですか?」

 

尋ねてきた。

 

「ミラージュ・スフィアっていうんだ」

 

問いかけにユウキが笑顔で答える。

キリトがタップすると、それは大きく展開されて47層の全体図が映された。

指をさしながら

 

「ここが主街区で、ここから南の道を下りていくんだ。その先に橋が……」

 

説明していたがそれを途中で止める。

疑問符を浮かべたシリカは

 

「キリトさん?」

 

と呼びかける。

瞬間、キリトは扉目掛けて駆け出した。

ユウキはシリカを庇うように前に出る。

 

「誰だ!!」

 

勢いよく扉を開けるキリト。

そこには誰もいなかった。

キリトは息をついて扉を閉めた。

 

「聞かれてたな」

 

呟く。

 

「みたいだね」

 

答えるようにユウキも言った。

シリカは疑問符を浮かべたまま

 

「ドア越しの声はノックしないと聞こえないんじゃ……?」

 

問いかけてきた。

キリトは首を振って

 

「聞き耳スキルが高い場合は別だ。そんなの上げてる奴、滅多にいないけど……」

 

言いながら扉の方に視線を向けた。

 

「で、でも……どうして立ち聞きなんか……」

 

シリカは不安そうな表情で呟いた。

 

「……今日はもう寝よう。説明は明日の朝、出発前に改めてするから。ユウキ、念のためにシリカと一緒に居てやってくれないか?」

 

「わかった。行こうシリカ?」

 

キリトの提案にユウキは頷いてシリカと共に彼女の部屋へと戻っていった。

残されたキリトは

 

(……明日は少し荒れるな……)

 

そう思考を巡らせてメニューを開く。

そしてメッセージを打ち込んで送信ボタンを押した。

 

 

夜は更けていき、朝が訪れる。

3人は準備を整えて47層の思い出の丘を目指し宿を出た。

 




待ち受けるオレンジプレイヤー。

迎え撃つは2人のプレイヤー。

黒と紫の剣閃が襲いいくる犯罪者を震え上がらせる。

次回「黒の剣士と絶剣」

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