あ、エクスキャリバーにオリジナルでエクストラ効果をつけました。原作でも完全に明かされてないみたいなのでやっちまったZE!!
では82話、始まります。
決戦場で繰り広げられている激戦を観て、観客達の誰もが思った。
────こんな激しいデュエルは観たことがない。
「おおぉ!」
「せぇぇ!」
咆哮と共に繰り出される互いの剣が交差する度に、激しい衝撃音を鳴らし、火花が散る。
どちらも譲ることなく放たれる剣戟。
右で打ち合っては左で打ち合い、そしてまた右で打ち合う。
冷静に見れば其れだけなはずなのに、相対するスプリガンとウンディーネ──────キリトとソラが纏う気迫が観客達にそうとは思わせなかった。
キリトの右に握れた『フルンディング』が引き絞られ、次の瞬間には勢いよく突き出される。
それをソラは左に持つ鞘で受け、軌道を逸らして回避。
空かさず反撃の斬撃が繰り出される。
迫り来る刃を左手の『聖剣エクスキャリバー』で受け止め、引き戻したフルンディングで水平斬りを放つキリト。
その斬撃はソラが左手で握る鞘によって阻まれた。
互いに受け止めている相手の剣を弾き、バックステップで後退し距離を取る。
着地して最初に駆け出したのはソラの方だった。
キリトは二刀を構え、迎撃態勢をとる。
離れていた間合いは一瞬で詰まり、アタックエフェクトを纏ったソラの斬撃が放たれる。
それをエクスキャリバーで防御し、カウンターの刺突を繰り出すキリト。
その攻撃を、ソラはステップを踏んでキリトの左側面に移動することで回避した。
戻した剣を振り上げ、勢いよく放たれる斬り下ろし。
しかし、キリトもステップを踏み、僅かに間合いを離して身体を時計回りに捻り、回転斬りを繰り出した。
互いの剣が交差し、またも激しい音を響かせ、衝撃が奔る。
それに怯むことなく、ソラは剣を戻して引き絞り、片手平突きを繰り出した。
だが。それは空を切る。
何故なら、すでにキリトはそこに居ないからだ。
ソラが、視線を上空へと向けると、翅を広げ、飛翔しているキリトの姿が映った。
会場内は飛行禁止エリアにはなっておらず、また、大会のルールにも飛行することは禁止されていなかった。
ソラも翅を展開し、勢いよく飛翔する。
一気に加速し距離を詰めていく。
飛行していたキリトも反転し、ソラへ向かって一気に加速する。
「せぁ!」
「らぁ!」
一瞬で間合いは詰まり、声と共に放たれる互いの斬撃は、またもぶつかり合った瞬間に激しい金属音を響かせて
数秒の鍔迫り合いの後、どちらともなく間合いを離し、再度剣戟の応酬が始まった。
地上戦の時と比べ、移動出来る範囲が前後左右だけでなく上下も追加され、先ほど以上の打ち合いが繰り広げられていた。
右斜め下からのフルンディングによるキリトの逆袈裟斬りを、ソラは上体を逸らして躱し、空かさずに水平斬りを放つ。
それを同じように上体を逸らして躱したキリトは、今度はエクスキャリバーを振り上げて斬り下ろしを繰り出した。
その斬撃を鞘で受け止め、反撃しようと銀竜刀を握る右手に力を入れ込めた────瞬間、キリトはホバリングを止め、翅を広げて飛翔した。
瞬時に反応してソラもキリトを追いかける。
キリトは反転して追ってくるソラへ向かい加速。
またも同時に斬撃が放たれ、ぶつかり合った剣同士が衝撃音を響かせた。
会場内を高速飛行しながら2人は何度もぶつかり合う。
空中には2人の飛行による軌跡が描かれていた。
あまりの速さと激しさに、観客達は歓声を上げることを忘れたかのように息を呑んで2人の攻防に魅入っている。
幾度かの打ち合いが終わり、キリトとソラは地上へと着地した。
互いのHPは残り7割弱。
試合時間は、既に2分経過していた。
互いを見据えたまま構えていたキリトとソラだが、不意にキリトがニッと笑う。
「流石だな、ソラ。その剣の正確さ、インチキレベルだぞ? おかげで思った以上にダメージ受けてるし」
「何言ってるかな。君こそ、その反応速度はインチキレベルじゃないか。当てたと思った攻撃も躱されるか防御されるし」
キリトの言葉に、ソラは不満げな表情で言う。
すると互いに笑みがこぼれ
「やっぱり強いな、ソラは」
「君こそね。本当に、君は強いな……だからこそかな、キリト」
ソラはそこで一旦区切り
「このデュエルが楽しくて仕方ないよ。互いに全力を尽くして戦うのは本当に楽しいな」
そう言った。
本当に楽しそうに、表情を綻ばせている。
キリトも同じように楽しそうな表情で言う。
「そうだな、俺も楽しいよ。出来ることなら、いつまでも続けたいくらいだ……けど」.
「わかってる。残り時間も少ないし、決着は着けないとね」
キリトの言葉にそう返しながら、ソラは鞘を腰のベルトに固定する。
次いで初級魔法のスペル詠唱。
魔法を待機状態にし、左手の人差し指と中指を揃えて刃へと当てた。
「僕の持てる全ての力で君に挑む……だから!!」
「あぁ。俺も今出せる全ての力で迎え撃つ!!」
そう互いに告げた瞬間、ソラは指を奔らせ、銀竜刀の固有効果『エンチャント』を発動、刃が青い輝きを纏い小さなスパークが迸る。
瞬時にベルトに固定した鞘を外して左手に持ち、勢いよく地を蹴って駆け出した。
同じようにキリトも二刀を構えて駆け出す。
間合いは一気に詰まり、ソラのエフェクトを纏った剣が唸りを上げて突き出された。
当たれば大ダメージ必至のそれを、キリトはソラの右側面をすり抜けるようにして回避。
素早く振り返り、フルンディングによる斬撃を繰り出した。
しかし、ソラも一瞬で振り返り逆手持ちにしている鞘で斬撃を受け止め、戻した剣を振り上げる。
そのまま右斜め上からの袈裟斬りをキリトに向けて放った。
迫り来る刃を、キリトはフルンディングを戻して回避────しようとせず、左のエクスキャリバーを構えて防御態勢に入った。
それを見た観客達、そしてユウキ達もまた驚いた表情をする。
当然だ。
先ほどのユウキとソラのデュエルで、彼の攻撃を防ごうとしたユウキの剣『マクアフィテル』が叩き折られたのは皆の記憶に新しいからだ。
最強の伝説級武器と謳われる『聖剣エクスキャリバー』の強度と耐久値なら叩き折られることはまずないはずだ。
しかし、掠めただけで多量のダメージを受ける攻撃だ。
かなりのHPが削がれることは免れないだろう。
青く輝く刃が黄金の剣と接触、次いで激しい金属音が響き、キリトのHPは大きく────削がれてはいなかった。
ダメージは確かに受けている。
それでも削れたのはほんの数パーセントだ。
目の前の現象に、観客達だけてなくソラも目を見開いて驚愕する。
ほんの僅かな隙、それを突くようにキリトのフルンディングが振り上げられ、唸りを上げて斬り降ろされる。
一瞬の隙を突かれた攻撃を、ソラはなんとか躱そうとするも、切っ先が頰を掠めて僅かにHPが減少した。
剣を引き戻し、再度ソラは斬撃を放つ。
またもキリトはそれをエクスキャリバーで防御。
結果は先ほど同様、僅かなHPしか削られていない。
「どういうこった? ソラの『エンチャント』攻撃が殆ど効いてねぇぞ!?」
観客席で声をあげたのはクラインだ。
無理もない。
ユウキとのデュエルの時とは打って変わってダメージを与えられてないのだから。
「ちょっとユウキ。何か知ってるんじゃないの??」
すると、リズベットが身を乗り出すようにしながらユウキに問いかけてきた。
当のユウキは
「……考えられるとすれば、エクスキャリバーのエクストラ効果だと思う。でも、ボクもアレの効果は知らないんだよね」
言いながら唸っていた。
と、その時だった。
彼女の方に乗っていたユイが翅を広げて飛び、ホバリングしながら
「パパからはナイショと言われていたのですが、このままではみなさん混乱しそうなので私が説明しますね」
そう言った。
「まず、『聖剣エクスキャリバー』には3つのエクストラ効果が存在するんです。パパが、ソラさんからの攻撃であまりダメージを受けなかったのはそのうちの1つの効果を使っているからなんです」
「うえぇ!? み、3つもあるの?!」
ユイの言葉に素っ頓狂な声をあげて驚いたのはリーファだ。
他の皆も声は出さないものの、驚きは隠せていない。
ユイがキョトンとした表情をすると、ユウキが咳払いして
「続けてユイちゃん」
微笑んで続きを促した。
「はい、ママ」
ユイは可愛らしく頷いてからエクスキャリバーの詳細についての説明を再開する。
「それで、パパが使っているエクスキャリバーの効果ですが、効果名は『
「属性の無効化?」
「例えばですが、火属性の初級魔法を使ってパパに攻撃するとします。本来魔法はエフェクトの集合体で、当たり判定も中心部に僅かにしか存在しないものですし、そもそも物理攻撃では対消滅させることは出来ません。しかし、『属性拒絶』を使っている状態のエクスキャリバーで魔法の当たり判定に当てた場合、その属性によるダメージそのものを無効化して打ち消してしまうんです」
「じゃあ、キリトがソラの『エンチャント』攻撃を受けてもほとんどダメージを受けなかったのは、その『属性拒絶』でダメージが無効化されてたからってことなのね」
「その通りです、シノンさん」
ユイの説明に、シノンが納得したような表情でそう言った。
他の皆も感心したような表情をしている。
「流石は最強の
うへぇ、という表情で言うクライン。
そんな彼に苦笑い気味で
「側から見ればそう見えますが、一概にそうとは言えません」
ユイが口を開いた。
疑問符を浮かべるクライン。
「まず、パパはエクスキャリバーの効果のうち、『属性拒絶』しか使えません。理由は他の効果を使用する条件を満たしてないからです。しかも、その条件自体が不明の状態なんです。そして、今使っている『属性拒絶』ですが、一度使うと次に使うためには時間を空けなくてはいけないんです」
「それってどれくらいなの?」
アスナが問いかける。
「効果が終了してから約24時間です」
「つまり、『属性拒絶』は1日に一回しか発動できないってことだね」
問いかけの答えにマジクが決戦場に視線を向けながら言う。
「はい。さらに『属性拒絶』の効果を持続させるにはソラさんの『エンチャント』と同じように常にMPを消費しないといけません。パパの最大MPはソラさんと同じくらいなので、持続時間も殆ど同じくらいでしょう」
「そういうことなら、あとはどっちの効果が先に切れるかだな。ほぼ同時に効果を発動させたとしても、わずかな差はあるはずだろ」
マジクと同じように決戦場を見たまま言うのはエギルだ。
視線の先で繰り広げられている激戦は更に苛烈さを増していっているようである。
その時、ふと何かを疑問に感じたのかシリカが疑問符を浮かべながら
「そう言えば、あたし少しだけ気になることが有るんですけど……ソラさんの左手にある鞘なんですが……あれだけキリトさんの攻撃を受けても砕けてないなんておかしくないですか? 鞘ってそんなに耐久値高くないですよね?」
リズベットに視線を向けながら問うてきた。
「確かに変ね。キリトの一撃ってかなりの重さがあるんでしょ? 剣自体も重いのを好んで使ってるし、そんなあいつの攻撃を受け続けて壊れない鞘なんてアタシも聞いたことないわ」
どうやらリズベットもソラの使用している鞘についてはわからないようで、難しい顔をしながら唸っている。
すると、アスナが2人に視線を向けて
「あの鞘は、ソラさんが『銀竜刀』を手に入れた時、セットでついてきてたものらしいよ。前にステータスを教えてくれたけど、強度と耐久値だけなら軽く
そう言ってきた。
それを聞いたリズベットは苦い顔で言う。
「ウッソでしょ……道理でキリトの攻撃を防ぎ続けても壊れないわけだわ」
「んじゃよ。例のホルンカ村のクエストクリアした奴はソラと同じように『銀竜刀』を持ってんのか? だとしたらとんでもねぇ性能の武器がばら撒かれてることになるんじゃねぇ?」
クラインが言うと、その言葉に応えたのはユイだった。
「それなのですが、どうやらあのクエストで『銀竜刀』が手に入るのは一番最初にクエストをクリアし、ラストアタックを取得したプレイヤーのみみたいです。なので、2回目以降はどんなにラストアタックを取得しても『銀竜刀』は手に入らないようですね」
「ってことは、アレはユニークアイテムってことになるのか」
「そういうことになりますね」
ユイがそう言うと、クラインはまたもうへぇ、という表情になる。
その時、不意に黙って観戦していたアルトが口を開いた。
「まるで、あの剣はソラというプレイヤーの為にあるような剣だな」
その言葉に皆が疑問符を浮かべている。
アルトは構うことなく続けた。
「彼は『抜剣』というスタイルで戦うのだろう? あの『銀竜刀』という剣の性能、更に鞘の強度と耐久値。どれも彼の戦い方に相応しいと私には感じる」
確かに彼女の言う通りだ。
反りの入った刀身は抜剣に向いているし、防御に使っている鞘の強度と耐久値も申し分ない。
何より彼があの剣を振るう姿に違和感がない。
ずっと昔から彼の手にあり、共に戦っていたかのような自然さがある。
正にALOで唯一と言っていい『抜剣士』であるソラの為に用意されたような剣だ。
「これもまた推測なのですが……あのクエストもまた、『カーディナル』の『クエスト自動生成プログラム』が作り出したものだと思われます。元々SAOのデータを利用してあるALOのプログラムの中に、『抜剣』に関する何らかのデータが残っていたのか、もしくは『カーディナル』がソラさんのプレイヤーデータを観測したのか、真相はわからないですけど、それらの情報を元に例のクエストと『銀竜刀』が作られたのではないかと」
ユイの言葉にアルトとマジクが疑問符を浮かべる。
この2人はALOがどうやって作られた世界なのかを知らないのだから当然だろう。
ユウキが誤魔化すように咳払いした。
「とにかく、あの剣はソラしか持ってないソラ専用の剣って認識でいいってことだよね、ユイちゃん」
「はい、ママ」
「それにしても……あの2人、楽しそうね」
シノンがそう言うと、皆が決戦場に視線を向けた。
その先で激戦を繰り広げる2人。
何度も打ち合いを繰り返すキリトとソラの表情を見て、皆シノンが言ったことに納得する。
それはそうだろう。
何せ2人とも笑っているからだ。
ほんの少し口角が上がっている程度の笑みだが、それでもユウキ達には彼らがこのデュエルを心から楽しんでいる事が伝わってくる。
「キリの字はともかく、ソラまで楽しそうにしてるとはよ」
「なんか意外ですね」
呆れ顔で言うクラインと、本当に意外そうな表情のシリカ。
「そうかしら? BoBの予選の時も、モニターで見た限りじゃあんな感じだった気がするけど」
シノンがそう言うと、アスナがクスクスと笑って
「シノのんが言ってる事ってあながち間違ってないんだよね。私とデュエルした時も、ソラさん何処か楽しんでた気がするもの」
かつて彼の過去を聞く為にしたデュエルの事を思い出しながら言う。
「クールなふりして熱い奴なんでしょ」
クライン同様、呆れ顔で言うリズベット。
「そうだね。いつも冷静で優しい、けど心の中には熱い想い秘めてる。そんなソラだからこそ、ボクもキリトも信じられたし、『血盟騎士団』の団員さん達もついて行ってたんだと思う」
決戦場を見ながら言うユウキ。
デュエルの残り時間は後1分半を切っていた。
キリトが『属性拒絶』を、ソラが『エンチャント』を発動させてから既に1分以上が経過している。
よく見れば2人のMPは残り僅かだ。
青く輝く剣を、黄金の剣が遮り、反撃で繰り出される斬撃は鞘によって防がれる。
幾度かそれを繰り返して、不意に2人はバックステップで後退。
距離を取ったかと思えば同時に翅を展開し、一気に加速して間合いを詰める。
同時に振るった効果付きの剣が交差し、次いで衝撃音。
剣が離れた瞬間、2人は飛翔を開始。
螺旋に回転ながら上空へと斬り合っていく。
銀竜刀とエクスキャリバーが交差する度に衝撃音が鳴り、会場内に木霊する。
天蓋間近まで打ち合いを続け、そこでまた数秒の鍔迫り合いの後に間合いを離すキリトとソラ。
その表情は先程ユウキ達が見た通り、とても楽しそうだ。
────楽しいな。
────あぁ、本当に楽しい。
────けど……
────それ以上に俺はソラに!!
────僕はキリトに!!
─────────────勝ちたい!!!
瞬間、2人の纏う闘気と覇気がより一層強くなる。
銀竜刀の輝きが更に増し、心なしかエクスキャリバーの輝きも強くなったいるように見えた。
まるで2人の想いに武器が応えているように。
『おおぉぉぉぉ!!!』
同時に咆哮を上げ、次いで互いに出せる最高速による突進。
距離が詰まり、先に仕掛けたのはソラだ。
勢いよく突き出される銀竜刀。
それをキリトは持ち前の反応速度で回避、エクスキャリバーで弾き、ソラの体勢を崩した。
けれどソラは一瞬で体勢を戻し、翅を鳴らして地上へと下降する。
それを追ってキリトも下降、着地したソラへ向かいフルンディングを振りかぶり、効果による加速度を乗せた斬撃を放つ。
その後斬撃をソラは鞘で受けず、数歩退がる事で回避し、キリトが着地した瞬間を狙って剣を突き出した。
体勢が整ってないキリトは無理矢理に身体を捻って躱す。
しかし完全に躱せず刃が左肩を掠めた。
瞬間、キリトのHPが一気に減少し、レッドゾーンへと突入した。
が、それで怯むキリトではない。
瞬時に体勢を整えてフルンディングを振るってソードスキルのモーションを起こした。
刃がライトエフェクトを纏って振り出される。
片手剣単発型ソードスキル『スラント』だ。
突き出し剣を引き戻して躱そうとするソラ。
しかし間に合わずに『スラント』を受けてしまう。
途端にソラのHPが減少、キリト同様レッドゾーンへと突入。
「くっ……おぉ!!」
声を上げてソラは銀竜刀を振りかぶる。
ソードスキルの使用でキリトは技後硬直によって動けない状態だ。
勢いよく放たれる袈裟斬り。
それはキリトに直撃する。
『エンチャント』による大火力の斬撃を受けたキリトのHPは瞬く間に減り────僅か数ドットを残して停止した。
驚くソラだが、すぐに何故なのか気が付いた。
銀竜刀が纏っていた輝きが消えていたからである。
そう、刃がキリトに直撃する直前、ソラのMPが尽きて『エンチャント』の効果が終了していたのだ。
故にキリトは直撃を受けたものの無事だったのだ。
その間にキリトに課せられていた技後硬直が解け、エクスキャリバーで、銀竜刀を弾いてソラの体勢を崩した。
そのままフルンディングを振るい、左斜め下からの逆袈裟斬りが放たれた。
迫りくる刃を体勢を崩されたソラは為す術なく受け、HPを削られる。
残りはキリトと同様で数ドットだ。
キリトは勢いよくフルンディングを引き戻して、思い切り引き絞る。
ソラもダメージを受けながらも体勢を整え、銀竜刀を振り上げた。
「キリト!!!」
「ソラさん!!!」
それまで観客席に座っていたユウキとアスナが同時に立ち上がり
『頑張れぇぇぇ!!!』
あらんばかりの声を上げて声援を送る。
それが耳に届いたのか、キリトとソラは思い切り目を見開き
「キリトぉぉぉぉぉ!!!」
「ソラぁぁぁぁ!!!」
叫びを上げて、ソラは銀竜刀を振り下ろし、キリトはフルンディングを突き出した。
全力を賭した少年と青年。
激戦の結末は……
次回「終幕」