ソードアート・オンライン 黒と紫の軌跡   作:藤崎葵

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みなさんお久しぶりです、藤崎です。
前回の投稿から間が空いてしまい申し訳無いです。連日の仕事ラッシュに加え、ついにPCが使い物にならなくなり執筆作業が滞ってしまいました。
次はなるべく間を空けないように投稿したいです(願望)


では79話、始まります。


第七十九話 風王の纏(エアロヴェール)

ベスト4が決まったものの、準決勝が始まるまで少し時間があるようだ。

その為、キリト達は観客席にて寛いでいる。

そんな中で、深い溜息を吐いている人物が2人いた。

「「はぁぁぁ……」」

「ちょっと、そのでっかい溜息やめなさいよ」

「り、リーファちゃん、クラインさんも元気出してください」

重苦しい表情で重苦しい溜息を吐く2人――――リーファとクラインに、リズベットが呆れ顔で、シリカが苦笑いでそう言った。

「んなこと言ってもよぅ……」

「まさか……私達の活躍がカットされるなんて……」

どんよりとした表情で言う2人。

そんな二人に

「仕方ねぇんじゃねぇか?」

「尺の都合ってやつね」

褐色のノームと水色髪のケットシーがクールな表情を崩さずに言う。

「「詐欺だぁ!!」」

尚も納得のいってない様子の2人。

けれど

「それはさて置いて」

無慈悲にユウキが話の方向を変えてきた。

がっくりと項垂れるクラインとリーファ。

そんな彼らの様子もお構いなしに、ユウキは話を続ける。

「キリトの対戦相手の人のメイン武装。あれって本当に伝説級の武器なの、リズ?」

「『聖凱槍ロンゴミニアド』。その一突きはあらゆるものを突き穿つ。そんな感じの事しか聞いてないけど……ユージーンの防御をいとも容易く貫通したアレを見せられると、伝説級武器なのは間違いないわね」

真剣な表情で応えるリズベット。

「ロンゴミニアド……アーサー王伝説でも登場する武器だね。別名で『ロンの槍』とも呼ばれていている。カムランの丘での戦いにてアーサー王が叛逆の騎士モードレッドに致命傷を負わせた槍として有名だ」

「じゃぁ、キリト君の『聖剣エクスキャリバー』と関係があるのかな?」

ソラの言葉に疑問符を浮かべながらアスナが言った。

「多分、そこまで関係はないんじゃないか? 武器をデザインしたスタッフがたまたまアーサー王伝説好きで、名前を使ったくらいだろ」

そういうと、キリトは徐に視線を右側に向けた。

ユウキ達が釣られて目を向けると、そこには無骨なサラマンダーが立っていた。

「よぅ、ユージーン」

「邪魔するぞ」

キリトのあいさつにそう返し、ユージーンは彼の前まで歩み寄った。

「残念だったな。出来ればあんたと戦いたかったんだが」

「負けてしまったものはどうにもならん。それよりも、貴様等に聞きたい事がある」

「聞きたい事?」

疑問符を浮かべながら問い返すユウキ。

「先程の俺と奴の試合。貴様等にはどう映った?」

「どうって……かなりハイレベルな戦いだったなってくらいしか……」

問いかけにリーファが戸惑いながら応える。

すると、ソラがユージーンに視線を向けて

「気になった点があると言えば……必中と思った攻撃が躱された事ですね。それも、二度」

言われたユージーンの眉がピクリと動く。

「はやり気付いていたか。貴様もだろう、スプリガン」

「まぁな。あんたがデュエルで手心を加えるとは思えないし、言っちゃなんだが『エセリアルシフト』の怖さは俺が一番よく知ってるつもりだ。アレを軽く躱す……偶然で一度くらいならわかるが、二度続けば明らかに偶然じゃない」

「となれば、考えられるのは彼女のロンゴミニアド……そのエクストラ効果によるものだろうね」

キリトの言葉にソラが続けて言う。

「ね、キリトとソラはあの人の武器の効果がわかってるの?」

そんな二人に、ユウキが疑問符を浮かべながら問う。

当のキリトは苦笑いを浮かべ

「いんや、流石にわからないよ。けど、なんとなくだが見当はついてる」

言いながらユウキに視線を向けた。

「そんなので大丈夫なの?」

「負ける気はないさ。ま、なんとかなるよ」

呆れた表情で言うユウキに、キリトは慌てることなくそう返す。

その様子にユージーンは溜息を吐き

「スプリガン。貴様の実力は俺も認めている。だからこそ、無様な試合だけはするなよ。俺以外に負けるなどもってのほかだ」

「わかってる」

言われたキリトはユージーンに視線を向けてそう言った。

その時だった。

「続きまして、決勝トーナメント準決勝第一試合を始めます。対戦選手は控室へお願いします」

カナメのアナウンスが会場に響き渡る。

キリトは立ち上がり

「じゃ、いってくるかな」

そういって控室へと歩き出した。

「気をつけろ、キリト。武器の性能を除いても、彼女は強いだろうからね」

「あぁ」

ソラの言葉に、キリトは振り返ることなく応え、控室へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「お待たせいたしましたぁーーーー! これより決勝トーナメント、準決勝第一試合を始めたいと思います!! 選手入場! まずはこちら! 細腕で大槍を華麗に操るウンディーネの女戦士! アルト選手!!」

紹介と同時に決戦場へとアルトが現れる。

途端に歓声が巻き起こった。

無理もない、先程のユージーンを破った彼女の実力は本物だ。

加えて隠れていた素顔が明らかになっている。

男子プレイヤーのほとんどが彼女のビジュアルに魅せられているのだろう。

「うぉぉぉ!! アルトちゃーーーーん!!」

無論、自称武士道の男クラインもこの有様である。

そんなクラインの様子にユウキを始めとする女性陣からは呆れた溜息が漏れていた。

「ほんっとに馬鹿だね……」

ぼそりと呟くのはリズベットだ。

そんな彼女の様子を見て

(……クラインさんも意外と罪作りだな……)

そう胸中で呟くのはソラだ。

どういう意味なのか、それは後々判る……かもしれないだろう。

「続きまして、皆さんご存じ『黒の剣士』キリト選手の入場だぁーーー!」

続いて決戦場に現れたキリト。

大きかった歓声は更に大きくなっていく。

互いに中央まで歩み寄り、向かい合うキリト達。

「貴方の噂は聞いている。どれ程のものか、見せてもらおう」

「あぁ、お手柔らかに」

アルトの言葉にそう返すと、キリトはメニュー操作を開始した。

装備メニューを開き、左手の部分をタッチ。

すると、すでに背に背負っている剣に交差するようにもう一本の剣が出現した。

「ほう……二刀流か。なるほど、そのスタイルが貴方の全力なのだな?」

投げかけられた言葉にキリトは苦笑いになり

「別に、二刀流だから本気って訳じゃない。一刀だろうと二刀だろうと、俺は俺の全力を尽くすだけさ」

そう返す。

するとアルトは息を吐き

「だが、見たところその背にある二刀……プレイヤーメイドだな」

キリトが背負う二本の剣を一瞥する。

「何故プレイヤーメイドの剣を使う? 貴方も持っているのだろう? 伝説級(レジェンダリー)……あの剣を」

「何故って言われても、今使ってるのが一番手に馴染むんでね」

「……なら、はっきり言わせてもらおう。武器は性能だ。私のロンゴミニアド、ユージーンのグラム。優れたプレイヤーは皆、性能の高い武器を使う。貴方は強い、今までのデュエルを見ていれば判る。だからこそ解せない。それ程の実力を持つ貴方が、何故そんな性能の低いナマクラを使っているのかが」

はっきりとした口調で言い放つアルト。

その言葉にキリトの眉がピクリと動く。

だが、それ以上に彼女の言葉に反応を示した者が観客席にいた。

「ほっほーぅ。アタシの作った剣がナマクラとは、言ってくれるじゃないあの女ぁ……」

リズベットだ。

無理もない話である。

キリトの背にある二本の剣は彼女の作品だ。

どちらも一切の妥協をせずに作った傑作品。

それをあろうことかナマクラと言われたのだ。

気にするなという方が無理だろう。

「リズさん、顔怖いですよ?」

苦笑いで言うのはシリカだ。

とはいえ、シリカもアルトの言葉には思うところがあるような表情をしている。

彼女だけではない。

リズベットに武器を作ってもらってたり、メンテをしてもらっているアスナ達も微妙な表情だ。

少々重い雰囲気になる会場内。

それを破ったのは

「確かにあんたの言う通り、武器の性能は大事だよ。けど、俺はそれだけじゃないと思う」

キリトだ。

まっすぐにアルトを見据えて言葉を続けていく。

「武器には想いが込められてる。持ち主や、その武器を作ったりメンテしてくれる職人の想いがさ。そこにプレイヤーメイドとか伝説級とかの括りなんてない。少なくとも、俺はこの二本の剣があんたの槍に劣ってるとは思えない。何と言っても、俺の最高の仲間が、想いって()を込めて作ってくれた剣だからな」

言いながら不敵に笑う。

相も変わらず怖いもの知らずな彼に、観客席にいるユウキ達は呆れつつも

「あはは、やっぱりキリトはこうでなくちゃね!」

「はい! パパらしいです」

そう言いながら笑ってキリトに視線を向けた。

するとリズベットがおもむろに立ち上がり

「キリトォー! アタシの作った剣で負けたら承知しないわよーー!」

決戦場に向かって叫ぶ。

キリトは観客席に目を向けはしないものの、不敵に笑って頷いてみせた。

そんな彼に対し

「そうか。いいだろう……ならば私が教えてやろう。武器は性能が全て。想いなどという曖昧なものなど無意味だとな」

そう言ってメニューを開いて操作する。

直後にデュエル申請のウインドウがキリトの目の前に開かれた。

キリトは迷わず完全決着モードを選択。

同時にカウントダウンが開始された。

アルトは大槍を後ろに引くように構え、キリトも背の二刀を抜き放って構えを取る。

互いの静かな闘志が会場内を沈黙させ、観客達は皆息を呑んで時をまった。

カウントは確実に減っていき、やがてゼロになった。

デュエル開始のブザーが鳴り響いたーーー瞬間、キリトが勢いよく駆け出した。

一気に間合いが詰め、まず繰り出したのは右の剣による斬撃。

それをアルトはバックステップで躱した。

同時に大槍を突き出す。

迫り来る切っ先を、速力を落とすことなくキリトは躱し、さらなる斬撃を繰り出した。

アタックエフェクトを纏った剣が、線を引いていく。

その剣速は並のプレイヤーでは目で追うことすら敵わないほどのものだ。

しかし、その驚異的な連続斬撃をアルトは躱す、ないし武器防御により捌いている。

幾らかの斬撃は彼女を掠めているため、徐々にHPを減らしている。

だがそれはキリトも同様だ。

彼の攻撃の合間を縫うように、アルトもまた大槍による攻撃を仕掛けている。

高速で連続斬撃を繰り出しているキリトに全てを躱す余裕などない。

そのため、アルトよりも減っているHPは多いようだ。

バックステップでキリトから間合いを取るアルト。

しかしながらキリトに逃がすつもりはない。

「おぉ!!」

持ち前の反応速度で後退したアルトとの間合いを詰めなおすキリト。

左の剣が勢いよく突き出される。

瞬間、アルトは徐ろに自身の身体を時計回りに捻った。

それに反応したキリトは突き出した左の剣を引き戻し、右の剣と交差させて防御態勢を取る。

直後、大槍が勢いよく横一閃に振り抜かれた。

ガギン!! と激しい金属音が鳴り響き、同時にキリトのHPが少しばかり減少し、衝撃で後方に圧されるキリト。

振り抜いた大槍を瞬時に戻し、アルトは思い切り引き絞る。

「穿て……」

呟いた刹那、大槍の周囲の大気が震えた。

「ロンゴミニアド!!」

勢いよく突き出される大槍。

アタックエフェクトを纏った強力な一撃が、バランスを崩したままのキリトに襲いかかる。

アルトにとっては必中の一撃。

しかしながら彼、キリトの反応速度は並のプレイヤーのソレではない。

瞬間的に崩れた体勢を整えて、上空へと跳躍した。

突き出された大槍は見事に躱されたのだ。

キリトはそのまま身体を捻り

「りゃぁ!」

声と共に左右の剣でアルト目掛けて斬撃が放たれた。

迫り来る二刀を捌くべく、アルトは大槍を上へと振り上げる。

またも激しい金属音が会場内に響いた。

衝撃を利用し、キリトは彼女から間合いを取った。

アルトは無理な体勢で斬撃を捌いたため、未だバランスを崩したままだ。

絶好のチャンスをキリトが逃すはずはない。

着地と同時に、右の剣を肩と同じ高さまで掲げ、大きく引き絞り地を蹴って駆け出す。

同時に右の剣が紅いライトエフェクトを纏い、勢いよく突き出された。

片手剣上位ソードスキル『ヴォーパルストライク』。

圧倒的な加速力を誇る単発型の重突進攻撃だ。

紅い線を引きながら、強力な刺突がアルトに迫り来る。

当のアルトは瞬時に大槍を引き戻し、防御態勢を取った。

大槍を水平に構え、キリトの『ヴォーパルストライク』を迎え撃とうとしている。

『ヴォーパルストライク』は片手剣ソードスキル随一の貫通力がある。

ただの武器防御では弾かれ、ノックバックが発生してしまうだろう。

仮に防御に成功したとしてもかなりのHPを削られることは間違いない。

誰もがアルトの防御は失敗する。

そう思った。

ディバイネーションの切っ先が、ロンゴミニアドに接触する直前ーーーーーーアルトの口角が僅かに上がったのをキリトは見た。

瞬間、キリトはある違和感を感じた。

一緒、ほんの一瞬だが突進を止められたように感じたのだ。

それもつかの間、アルトは身体を右側へと逸らす。

キリトの『ヴォーパルストライク』は躱されたのだ。

勢いよくアルトの左側を通り過ぎ、ソードスキル終了と同時に技後硬直が課せられた。

その隙を逃すことなく、アルトは再び大槍を引き絞る。

またも大槍の周囲の大気が震え、直後、強力な刺突が放たれた。

「っ……ぉぉ!!」

大槍が突き刺さる寸前でキリトの技後硬直が解けたようだ。

自身の身体を反時計回りに捻り、左の剣で大槍を迎え撃つ。

交差した剣と大槍が三度激しい金属音を響かせる。

衝撃で2人は体勢を崩すも、瞬時に立て直して互いに距離を取った。

獲物を構え直し、キリトを見据えて

「……噂に違わない反応速度だな。それに太刀筋も迷いがない」

「お褒めに預かり恐悦至極……」

言葉を並べるアルトにキリトは表情を崩すことなくそう返した。

「だが、やはりその程度の剣では私のロンゴミニアドには及ばない。貴様は私には勝てない」

「確かに性能差は否めないな。けど、さっきまでの打ち合いでわかったよ。あんたの槍のエクストラ効果がさ」

その言葉にアルトの眉が一瞬動く。

「なに?」

「ユージーンとのデュエルを見たときにある程度の憶測は立ててたが、さっきの『ヴォーパルストライク』を躱されて確証を得たよ。あのタイミングでのソードスキルはほぼ必中、それをノーダメで躱すなんて離れ業簡単にできるはずが無い。俺の剣があんたの槍に接触する直前、俺の突進が一瞬だが止められたように感じたよ。何かに阻まれたみたいにな。その上、ほんの僅かだが軌道も逸らされた。動きを止められ、軌道な外れれば躱すのなんて簡単だ。そして、そんな事が出来るとすれば、間違いなく物理的な効果じゃない」

そこで一度区切り

「あんたの槍は視認できない風を纏っている。それを操作し、俺やユージーンの攻撃の軌道を逸らした……違うか?」

そう言い放つキリト。

するとアルトは不敵に笑い

「その通りだ。我が槍は風の守護を受けている。効果名は『風王の纏(エアロヴェール)』。槍全体に風を纏わせ、あらゆる攻撃を受け流すものだ」

「ユージーンの炎の壁を突き破ったのはその効果を応用ってとこだな?」

「目敏いな。貴様の推測通り、纏わせた風の流れを操ることも出来る。槍を中心にして渦を廻すようにしてやればほとんどの防御は貫通できる」

アルトから出た言葉に、観客席で観戦していたユージーンが納得したような表情をする。

「ってーことはよ。その効果がある限り、どんな攻撃も受け流し放題って事か? そんなもん最早チートレベルじゃねーか!?」

声を荒げたのはクラインだ。

他の観客も騒ついている。

「この効果を破れる者などいない。それは貴様も例外では無いぞ」

「どうかな? やってみなくちゃ……」

アルトの言葉に、キリトは言いながら構えを取り

「わからないさ!!」

言い終わると同時に地を蹴って駆け出した。

全速で間合いを詰め、繰り出すのは高速の連続斬撃。

それに対し、アルトは大槍を構える。

直後に大槍の周囲の大気が震えた。

襲いくる斬撃を、展開させている風で壁を作り、軌道を逸らしながらアルトは次々に躱していく。

それでもキリトは攻撃の手を緩めない。

一瞬でも止まれば螺旋の渦を纏った大槍の一撃を見舞われるからだ。

更に速力を上げて左右の剣を交互に撃ち出すキリト。

しかし、そのどれも軌道を逸らされて掠りもしない。

「ぉお!」

右の剣での打ち込みが終わった瞬間、左の剣がライトエフェクトを纏う。

放たれたのは『ノヴァ・アセンション』、10連撃を誇る片手剣最大威力を誇る片手剣ソードスキルだ。

だが、その強力な連撃も『風王の纏』によって阻まれる。

キリトの表情に焦燥の色が浮かび始めた。

8撃目、9撃目と受け流され、最後の一撃が放たれる。

それさえも軌道を逸らされてしまうと思った次の瞬間、アルトはバックステップで後退してそれを躱した。

『ノヴァ・アセンション』最後の一撃は空を切り、技後硬直がキリトに課せられる。

その隙を突いてくるかと思いきや、アルトは更に後ろへと退がっていった。

明らかな絶好の攻撃チャンスを逃したアルトに、キリトは疑問符を浮かべている。

(どう言う事だ? 今のは躱す必要なんてなかったはずだ。最後の一撃を受け流して、動けなくなった俺に一撃を見舞う最高のチャンスだったのに。それに、あそこまで間合いを離してきたのも不自然だ……いや、待てよ……そうか……そういうことか!?)

そこまで思考を巡らせた直後、課せられた技後硬直が解け、キリトは二刀を構えてアルトを見据える。

当のアルトも大槍を構えて

「まだわからないようだな? ならばもう一度言おう。私のロンゴミニアドを破るのは不可能だ。ましてや性能の低いそのナマクラではな」

そう言い放つ。

するとキリトは不敵に笑い

「なら、俺ももう一度いうぜ。武器は性能だけじゃ無い、強い想いが込められてるんだ。最高の熱が込められたこの剣が、あんたの槍に負けるはずがない」

そう返した。

「想いなどという曖昧なもので何ができる? そんなもので性能差は覆せないぞ」

「どうかな? 強い想いは、時にシステムを超える事がある。俺はそれを知ってる」

「強がりを……ロンゴミニアドに死角はない」

「死角のないものなんてこの世にないさ。さっきのあんたの行動で見つけたよ。ロンゴミニアドの攻略法を!」

言いながらキリトは二刀を握る手に力を込めて、不敵な笑みを浮かべそう言った。

 

 

 




あらゆる攻撃を受け流す風。

打ち破るべく少年は剣を振るう。


次回「武器に宿る熱」

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